成長か?利益か?:米国SaaS株に対する投資家のスタンスの変化
TechCrunch「Investors have flipped their weighting of growth versus profitability」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ソフトウェア分野のトップVC Battery Ventures 二ラージ・アグラワル(T2D3, Rule of 40の提唱者)による米国SaaS市場の最新分析レポートに関する解説記事。このレポートから読み取れる重要なポイントは、投資家のSaaSに対する評価が、成長性重視から収益性(フリーキャッシュフロー)重視に変化していることです。今年初頭のハイテク株の下落を受け、新興企業ではこの「ファンダメンタルへの回帰」が叫ばれるようになりました。彼らの分析によると、「Rule of 40」を満たすことが望まれるように変わりました。これまでの市場は、成長は遅いが収益性のおかげでRule of 40を超える企業よりも、成長は速いがRule of 40を満たさない企業を評価していました。しかし現在では、これは評価が逆転しています。言いかえれば、非効率的で速い成長が報われなくなったとも言えます。
あくまでアメリカ市場、かつ上場マーケットの話なので、日本のアーリーステージのSaaSスタートアップ全てがこの方針に沿って今すぐ経営するのは適切ではないと考えます。ただ一方で、日本のSaaSスタートアップも海外投資家から資金調達するケースも増えているので、海外のマーケット動向に注視しつつ、中長期のストーリーを柔軟に組み立てていくことが大切です。
SaaSスタートアップでよくある11の失敗する理由
Debonkar Roy氏「WHY SAAS STARTUPS FAIL」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
近年、日本のみならず、世界的にSaaSスタートアップが増えました。その中で成功するスタートアップと失敗するスタートアップはもちろん出てきます。こちらの記事では、よくある失敗する理由を解説しています。今年の7-8月に開催するALL STAR SAAS BOOT CAMPでも、これらの失敗をしないためのノウハウについて話しますので、ぜひ気軽にご参加ください。
- Nice to Haveで、顧客の関心を引くプロダクトになってない
- マネジメントが悪い
- 資金・リサーチ・情熱が足りない
- テックサポートを軽視し、安定しない
- マーケティング投資をしていない
- ユニットエコノミクスが成立しないプライシングモデルを選んでいる
- データ漏洩へのセキュリティが無い
- PMFしていない
- チャーンレートが高い
- ファーストムーバーにこだわる
- チームの人選を見誤る
高いNRRが問題を隠すリスクとNRRを使用する上の注意点
SaaStr「High NRR Can Mask a Lot of Problems」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
高いNRRはSaaSにとって高い成長率を実現する強い武器になります。しかし、高NRRにばかりにフォーカスすると「木を見て森を見ず」で重要な問題を見過ごすリスクがあります。全ての指標に言えますが、万能な指標はありません。この記事では、高NRRが問題を隠すリスクとNRR使用上の注意点を解説しています。
NRRが問題を隠すリスク
- 新規顧客獲得の遅さ:最もよくある問題。高いNRRで全体のMRRが成長していても、新規顧客の獲得が遅ければ成長は中長期的に停滞します。
- ロゴチャーンを軽視:高いNRRの場合、顧客(ロゴ)のチャーンについて十分に議論されないまま放置されるリスクがあります。ロゴが失われていけば、中長期の成長性は失われます。
- カスタマーサクセスの能力の低さ:プロダクトの強さにより、高いNRRが実現している場合、カスタマーサクセス担当者が十分に能力が無いことを覆い隠してしまうリスクがあります。
NRRを使用する上での注意点
- 新規と既存の売上比率のバランスを最低でも1:1は保つ。新規:既存=1:2は危険信号です。
- NRRとロゴリテンションを一緒に測る。NRRが120%以上であれば、ロゴリテンションは90%を目指しましょう。
- NRRとロゴリテンションを案件のサイズごとに区分する。顧客規模の大小で何が起こっているか精査するのに役に立ちます。
事業計画の達成はなぜ大切なのか
COMEDO「事業計画の達成はなぜ大切なのか」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
LayerX代表取締役の福島さんが「なぜ事業計画を達成することが大事なのか?」を解説した記事を投稿。お客様の価値の最大化と事業計画の達成がどのように繋がっているかがわかりやすく書かれている。また、適切な成長(事業計画)についても触れている。経営者が社内に目標を達成する重要性を伝えるときにとても参考になる記事。
面接の中で信用(Trust)を築き、誠実さ(Integrity)を見極める方法
Andreessen Horowitz「Building Trust and Assessing Integrity as You Interview」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Andreessen HorowitzのFutureから参照。面接は単なるスキルチェックをする場ではなく、候補者と面接官の間で信用を築き、候補者の中にある誠実さをチェックする場でもある。ここでは、その方法について具体的に紹介する。
信用(Trust)を築く方法
候補者に下記の質問を投げかけ、彼らがよりオープンに自身のことについて話してくれるかチェックする。プライベートに関わる質問も含め、予期していない問いを投げかけつつ、面接官自身も自分の考えをシェアすることで相互の理解に努める。
- あなたの幼少期のことを教えてください。あなたの親や家族、メンターなどからはどのような価値観を教わりましたか?
- あなたはどのような価値観をチームに浸透させたいと思いますか?
- 信用するべき人とそうでない人を、どうやって見極めますか?
- どの会社のカルチャーが好き(もしくは嫌い)でしたか?それはなぜですか?
- あなたの最悪の上司はどのような人でしたか?それはなぜですか?
- あなたの失敗した経験について教えてください。
- 今のあなたを作り上げ、人生の中でもっとも影響力のあった出来事は何ですか?
- 対人関係で難しさを感じたことを教えてください。そして、それに対してどのように対応したかも、教えてください。
- 倫理的に疑問に感じた経験について教えてください。そして、それに対してどのように対応したかも、教えてください。
- あなたは周りからどう誤解されることが多いですか?
誠実さ(Integrity)を見極める方法
ここで言う「誠実さ」とは、「約束を守ること」。面接の過程で候補者と信用を築いたのち、より候補者の誠実さを確認する質問を投げかける。
- 何かについて「No」と言い、押し戻した経験があるか。上司に対して異論を唱えた経験があるか。
- 守れない約束を結んだ経験があるか。それにどのようにして対応し、どのような気持ちを持ったか(約束を守れないことにフラストレーションがどれだけ溜まったか)。
- 面接の中で話した内容をフォローアップするように依頼し、改善されているか計測する。フォローアップする約束を守ることができ、候補者から出てくる結果からどれだけ約束したことを真剣に捉えているか確認する。
海外
ノンデスクワーカーのスキルアップSaaS Guild、シリーズFにて$175M(229億円)調達
Guild Graduates To $175M Series F At $4.4B Valuation As ‘Upskilling’ Startups Raise Billions
2015年創業のGuildは、飲食店や小売などのフロントワーカーがスキルアップするために、オンライン教育を提供するSaaSスタートアップ。小売大手Targetや飲食チェーンChipotle、Lowe’s、ホテル大手ヒルトンなどが顧客。米国の失業率が低いため、ジョブホッパーが増えており、多くの企業が優秀な人材の確保に苦労しており、追い風になっている。シリーズFはWellington managementがリード。バリュエーションは$4.4B(約5,800億円)。
建設業向け管理業務支援+下請け融資Fintech×SaaS Constrafor、$100M(131億円)調達
Payment, admin contech firm Constrafor draws $100M in funding
Constraforは、建設事業者向けに契約、保険証書、請求書、支払い、多様な調達など、ゼネコンや下請け業者のプロジェクト管理を合理化するSaaS。今回の調達を受けて、下請け業者向けの請求書融資「アーリーペイ・プログラム(EPP)」を拡大させる。下請け業者は、支払い遅延に悩まされており、承認された請求書に対して24~48時間以内に支払いを受けられる。同社CEOによると「建設業界は、材料費の高騰から、プロジェクト遅延を悪化させる信用収縮まで、複数の課題に直面している」。本ラウンドはFintech Collectiveがリード。
納期に厳しい国際物流を効率化するSaaS Airspace、$70M(92億円)調達
Airspace Announces $70 Million Round Of Funding Focused On Global Expansion & Sustainability
2016年創業のAirspaceは、タイムセンシティブな納期対応が求められる国際物流に革命を起こすSaaSスタートアップ。今後の成長計画は、サスティナビリティに焦点を当て、企業のESGインパクトを最大化するユニークな価値提供を目指している。また欧州での市場浸透を加速させ、アジアでの更なる成長にも投資していく。本ラウンドは、DBL Partners、Telstra Ventures、HarbourVestがリード。
マルチクラウド等のログデータ解析SaaS Coralogix、シリーズDにて$142M(186億円)調達
イスラエル発のCoralogixは、独自の機械学習アルゴリズムを用いて、マルチクラウド、ハイブリッド、オンプレミス問わずログデータをリアルタイムで解析することを可能にする唯一のSaaSスタートアップ。本シリーズAdvent InternationalとBrighton Park Capitalがリード。
顧客エンゲージメント分析SaaS MoEngage、シリーズEにて$77M(101億円)調達
SaaS startup MoEngage raises $77 million in funding led by Goldman Sachs, B Capital
2014年インド創業のMoEngageは、オンラインのユーザーデータから多様な顧客エンゲージメント分析を可能にするSaaSスタートアップ。直近12ヶ月でARRは2倍超、新規顧客の獲得は500社、NRR 135%超と目覚しい成長を遂げている。本シリーズEは、Goldman Sachs Asset Managementがリードし、インド系SaaS投資第1号案件。
Web3.0アプリ構築インフラSaaS InfStones、$66M(86億円)調達
SoftBank co-led $66 million round for blockchain-focused InfStones
2018年アメリカ創業のInfStonesは、50以上のブロックチェーンプラットフォームにまたがるアプリ構築を支援する”Web 3.0版AWS”を目指すインフラ系SaaSスタートアップ。今回は、3ヵ月前のシリーズBに続くラウンド。SoftBank Vision Fund 2とGGV Capitalがリード。
ピザ屋向け受注&マーケティング管理SaaS Slice、シリーズCにて$43M(56億円)調達
Slice Closes $43 Million in Series C Funding Led by KKR
2010年米ニューヨーク発のSliceは、地域のピザ屋向けにオンラインオーダーとマーケティングをワンストップで支援するSaaSスタートアップ。アメリカでは、地域のピザ屋は長い間、地域コミュニティの中心的存在だったが、消費者のデジタル嗜好が高まるにつれ、大規模チェーンと競争するためのリソースが不足するのが課題だった。全米12,000店舗で利用されている。本シリーズCはKKRがリード。
国内
コーディング試験サービスを提供するHireRoo、プレシリーズAで2億円を調達
コーディング試験サービス運営のハイヤールー、プレシリーズAで2億円の資金調達を実施
エンジニア採用時の候補者スキルの測定をサポートするサービスを提供。2021年3月末よりβ版として提供を始め、現在導入企業数は約50社、累計選考数は3,000件を突破。デライト・ベンチャーズ、Coral Capital、Primal Capitalを引受先とした第三者割当増資を実施。調達資金は、開発・運営組織の強化、機能拡充、顧客サポート体制の整備に充てる。
顧客対応クラウド『Re:lation』を運営するインゲージ、シリーズDラウンド 2nd/3rdクローズで総額10億を調達
顧客対応クラウド『Re:lation』を運営するインゲージが総額10億の資金調達を実施
メール・チャット・LINE・Twitterなど様々な問い合わせ情報の一元管理・社内共有を実現するサービスを提供。リリース7年で導入社数は3,500社超、利用継続率は99.7%を達成。オリックス、南都キャピタルパートナーズ、日本ベンチャーキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資、及び、三菱UFJ銀行、京都銀行、商工組合中央金庫からの融資を実施。調達資金は、Re:lationの事業基盤の構築を目的に、人材採用の強化・開発力の強化に充てる。
オールインワン型在庫管理ソフトを無償提供するSpes、シードラウンドにて資金調達
オールインワン型在庫管理ソフトを無償提供する「Spes(スペース)」社がシードラウンドにて資金調達を実施。卸売をするメーカー企業など、国内200万社以上の受発注・在庫管理の課題を解決へ。
企業の受発注、入出庫、在庫管理を管理する多機能クラウドソフトを提供。30社超の企業が現在利用中。島田亨 氏、SOLERA INVESTMENT、ザ・スタンド株式会社および美容化粧品メーカー2社を引受先とした調達を実施。調達資金は、Spes(スペース)の追加機能開発およびオンボーディング支援のCS部隊構築に充てる。