「今週のSaaS×AIニュース」ピックアップ!
*SaaS×AI Weeklyは、ALL STAR SAAS FUNDが毎週ピックアップした記事を日本語で要約し、一部メンバーからのコメントを入れてお届けしています。

灯台戦略か、陣取り合戦か──AI企業が選ぶべきGTM戦略の分岐点
「Lighthouse or Landgrab? How to Pick Your AI Sales Strategy」 by Joe Schmidt IV and Julian Marx on a16z
a16zのJoe Schmidt IV氏とJulian Marx氏による記事で、AIスタートアップが取るべき2つの営業戦略「Lighthouse(灯台)」と「Landgrab(陣取り合戦)」を、業界の性質から見極める方法を解説しています。日本でもさまざまなユースケースでAIソリューションが生まれていますが、顧客ニーズが顕在化し、新規参入が多く競争の激しい領域と、そうでない領域に分かれてきています。そのなかで取るべき営業戦略は異なり、最良の企業はまず「灯台」で市場を制圧したのち、「陣取り合戦」へと戦略をシフトさせていきます。限られたリソースをどちらの営業モーションに投下すべきかを判断する実践的なフレームワークとして極めて有益です。
有名企業の「ロゴ」への執着は罠になり得る
多くの創業者は、AIは新しい技術だから市場教育が必要だと思い込み、大手有名企業の顧客ロゴ(実績)を取ることに固執します。しかし、本当にその戦略が必要かどうかは業界によって異なり、間違った戦略選択は資金と時間の浪費につながります。
Lighthouse(灯台)戦略が効くのは「前例なき新カテゴリ」
前例のない新カテゴリを作る場合に有効な戦略です。リスク回避的な業界(法務、金融など)では、買い手にとって参考にできる社内モデルがありません。そのため、権威ある企業が最初に導入することで市場全体の信頼が生まれます。Harvey(リーガルAI)は大手法律事務所を、Hebbia(金融インテリジェンス)はPE・ヘッジファンド・コンサルティングファームを最初の顧客とし、いずれも業界全体への波及を実現しました。Hebbiaはその後、運用資産で上位の資産運用会社(KKRやBlackRockを含む)の40%超へ広がっています。
Landgrab(陣取り合戦)戦略は「数字(ROI)」とスピードで勝つ
買い手がすでに課題を理解しており、ミスのコストが低い市場で有効です。「既存コストをこれだけ削減できる」という明確なROI(数字)の勝負に持ち込み、スピード重視で顧客数を最大化します。Stuut(債権回収自動化)やDecagon(カスタマーサポートAI)はこの戦略で急成長し、Decagonは18ヶ月でARRゼロから8桁規模に到達しました。評価額もその後6ヶ月弱で3倍に伸び、45億ドルに達しています。
戦略選択を決める「2つの問い」
①「決裁者が負う個人的なリスクはどれだけ大きいか」(規制業界か、基幹システムの置き換えか、社外向けのアウトプットか)
②「社会的証明(実績)は市場内で波及するか」(業界内で評判が共有される密な市場か、バラバラな市場か)
この2軸の組み合わせで自社がどちらの象限にいるかが明確になります。もし2つの答えが逆方向を指す場合は、常に「リスクの大きさ(①)」が優先されます。
見極めのサインは「営業サイクル」に表れる
営業サイクルが60日を超える場合や、概念実証(PoC)のためのカスタム開発が必要な場合、さらには「いくらか」よりも先に「安全か」を聞かれる場合はLighthouse寄りの市場です。逆に「AIだから新しいはずだ」という思い込みだけでLighthouse戦略を選ぶのはよくある誤りだと指摘しています。
それぞれの戦略が陥りやすい罠
Lighthouse型は「ロゴの人質になって不利な条件を飲まされる」「終わらないパイロット(PoC)地獄にはまる」「1社専用のカスタムプロダクトになってしまう」リスクがあります。一方、Landgrab型は「顧客を選別せず消化不良になる」「プロダクトが未成熟なまま規模を拡大し、評判を損なう」といったリスクを抱えています。
最良の企業はLighthouseからLandgrabへ移行
<yellow-highlight-half-bold>1つの業種で権威ある顧客を獲得し、その業種を制圧した後、隣接業種へ展開していくのが理想的な流れです。<yellow-highlight-half-bold>決済のAffirmがマットレス企業(Casper)を起点にフィットネス機器業界へ拡大した事例が象徴的です。買い手側から「予算があるのでデモを見せてほしい(=実績はもう知っている)」と言われるようになったときが、Landgrabへと移行する絶好のタイミングです。
「学習速度」こそがフィジカルAIの差別化要因──次のAI Moatは「賢いモデル」ではない
「The Next AI Moat Isn't a Better Model」 by Peter Ludwig on a16z
Applied Intuition共同創業者兼CTOのPeter Ludwig氏による記事で、自律走行車やロボットなどフィジカルAI(Physical AI)分野において、モデルの賢さよりも「エンジニアリングシステムの学習速度」こそが真の競争優位(Moat)になると論じています。フィジカルAIの領域ではモデル単体の進化にばかり注目が集まりがちですが、中長期的な差別化要因は「検証・実装・運用のループをどれだけ速く回せるか」というシステム側に移行しています。この視点は事業や組織戦略を考えるうえで非常に重要なポイントです。
フィジカルAIのボトルネックは「モデル」ではなく「エンジニアリング」
デプロイ(実戦投入)されたフィジカルAIは「モデルの性能」と「その周辺のエンジニアリングシステムの能力」という2変数の掛け算で決まります。現在、業界全体がモデル性能への投資に偏る一方で、要件をソフトウェアに落とし込み、検証・監視・改善する仕組みは10年前とほぼ変わっていません。優れたモデルがあっても、古いエンジニアリングシステムのうえでは、フロンティアの成果は生まれないと指摘しています。
モデルが賢くなっても、稼働する機械は増えない
ベンチマーク上で20%優れたモデルが開発されても、それを実運用に乗せるまでには膨大な工程が必要です。ほかの多くのソフトウェア構成要素と統合し、数百万通りのシナリオでテストし、安全要件のトレーサビリティを確保し、ハードウェアで実証し、フリート(稼働中の車両・機械群)に展開しなければなりません。
実際、多くのプログラムではこのパイプライン自体がスピードのボトルネックとなっており、性能向上したモデルを受け取ってから安全に出荷できると証明するまでに2四半期(半年)もかかっているのが実態です。モデルがコモディティ化していくにつれ、同じ知能を手にした2社であっても、それを実運用に乗せるスピードの差で結果は大きく分かれることになります。
フィジカルAIには「専用のエージェント基盤」が不可欠
コーディングエージェントなどがもたらした生産性向上は、書類や会話、コードといったデジタル世界にとどまり、走行ログやセンサーデータ、シミュレーション結果といったフィジカルAI特有のデータには対応できません。そのため、フィジカルAIの領域では、専用のデータ層やツール、ドメイン知識にアクセスでき、評価とガバナンスが組み込まれた「独自のエンジニアリング用エージェント基盤」が必要だと述べています。
スピードは安全性を損なわず、むしろ安全性の源泉になる
検証サイクルに数週間かかると、不定期なマイルストーンでしかテストできません。数分で完了すれば変更のたびにテストでき、安価な段階で問題を早期発見できます。ここで重要なのは、「開発・検証・運用のワークフローは自動化」しつつ、「認証や規制対応、最終的なエンジニアリング判断は人間が担う」という線引きです。高リスクなエージェントは提案にとどめ、本番システムに触れる操作はすべて人間の承認ゲートの内側に置くべきだとしています。
モデルではなく、システムが「複利」で進化する
「現場で性能不足が発覚する → エージェントが運用データから原因を分析しシナリオを合成する → 発見事項が要件・テストケースになる → 検証済みソフトウェアがフリートに展開される → 新たなデータでモデルが向上する」。<yellow-highlight-half-bold>このフライホイール(学習ループ)が速く回るほど、スピードと知能の両方が複利的に向上します。<yellow-highlight-half-bold>
Applied Intuitionは自社のエージェント基盤「Dana」でこの仕組みを実証しており、開発サイクルを約20倍高速化し、数週間に1回だったデプロイ頻度を1日に複数回へと引き上げました。現在、エンジニアはDana上に1,000を超える社内アプリやエージェントを構築しており、数ヶ月かかっていたアプリ開発が数日〜数時間で完了するようになっています。
今後10年の勝敗を分けるのは「学習ループの速さ」
モデル性能だけに賭け続ければ、フィジカルAIの進化は「素晴らしいデモは出るが実際の稼働は進まない」という停滞したカーブを描くことになります。逆に、フロンティアの知能とエージェント型エンジニアリングシステムを組み合わせれば、農業、鉱山、物流、防衛など数千億ドル規模の市場で本格的な自動化が進むというのが筆者の見立てです。20年後に記憶されるのは「最も優れたワールドモデルを持っていた企業」ではなく、「知能を継続的に実運用システムへ転換する方法を見つけた企業」であるという言葉で締めくくられています。

賢さとコストのトレードオフは幻想だ──Decagonがワークフローの90%をオープンソースに移した理由
「Decagon's Playbook for Building Enterprise AI Applications」 by Sarah Wang, Kimberly Tan on a16z
Decagon共同創業者のJesse Zhang氏(CEO)とAshwin Sreenivas氏(プレジデント)が、a16zのポッドキャストに出演しました。エンタープライズ向けAIエージェントを提供する同社は、すでにワークフローの90%をオープンソースモデルで動かしています。
本エピソードでは、フロンティアモデルからオープンソースへ移行した理由、アプリケーション層とラボの役割分担、Forward Deployed Engineer(FDE)という職種が陥る落とし穴、そして大企業への売り方について語っています。2026年前半を支配した「フロンティアラボがすべてを飲み込み、アプリケーション層は実装がくっついた薄いUIに過ぎない」というナラティブに対して、実際に大企業へ売っている当事者がどう見ているかがわかる内容です。
オープンソースに移った理由は、コストではなく「レイテンシー」だった
創業当初は「とにかく動くものを作る」のが目的だったため、OpenAIとAnthropicのフロンティアモデルを使用していました。しかし顧客の規模が拡大し、音声エージェントをローンチしたことで、「レイテンシー(遅延)」が決定的な制約になります。レイテンシーを下げつつ、エージェントの挙動を思い通りに制御するには小さいモデルが必要ですが、フロンティアラボが提供する小型モデルは「思い通りには制御できない」とZhang氏は語っています。
そこで1年ほど前からオープンソースを活用しはじめ、現在はワークフローの90%をオープンソース、残り10%をクローズドモデルで回しています。社内のリサーチチーム「Decagon Labs」は、新しいオープンソースモデルを評価し、自社のタスク向けにファインチューニングする「モデル工場」として機能しています。
「賢いが高価」対「安いが賢くない」というトレードオフは存在しない
X上でよく交わされるこの二択は、実務においては「偽のトレードオフ」だとSreenivas氏は指摘しています。<yellow-highlight-half-bold>ファインチューニングした小型モデルは汎用性こそ落ちるものの、やらせたい特定のタスクにおいては最先端の大型モデルを上回る<yellow-highlight-half-bold>、というのが同社の実感です。
結果として「精度・コスト・速度」の3つを同時に獲得できています。モデルはコスト・知能・レイテンシーの3軸で評価でき、自社が必要とする限界点に張り付けばいいと彼は整理しています。
フロンティアモデルの出番は、会話の本体ではなく「探索的なタスク」
現在、Decagonがフロンティアモデルを使っているのは、補助的なタスクと、コアの会話エージェントを改善する「Duet Autopilot」の機能です。Duet Autopilotの仕事は、過去数百万件の会話履歴をレビューして傾向を見つけ、主モデルのバリアント(別バージョン)を作成し、どれが良い結果を出すかを比較検証することです。これは狭い分類タスクではなく、広く開かれた探索問題です。だからこそ、フロンティアモデルの持つ汎用性が値段に見合うのだとSreenivas氏は説明しています。
エンタープライズでオープンソースが担う推論の比率は、いま逆に下がっている
いずれエンタープライズ企業も自社でオープンソースを事後学習(ポストトレーニング)するようになるとZhang氏は語りますが、それには思っている以上に時間がかかります。自社の研究チームを持っていても、ファインチューニングは一筋縄ではいきません。データが必要なうえ、公開の評価セット(Eval)は役に立たず、自前のベンチマークを作る必要があるからです。そのうえで彼が指摘したのは、オープンソースへの期待の高まりに反して「エンタープライズ内でオープンソースが担う推論の比率はいま下がっている」という事実です。
新しいユースケースを立ち上げるときは、誰もがまず確実なフロンティアモデルを使います。ユースケースが固まり、本番スケールに乗って初めて、レイテンシーとコストの引力がオープンソース側に効きはじめるのです。
ファインチューニングは顧客ごとの調整ではなく、ユースケースの調整
「ファインチューニング=特定の顧客向けのカスタマイズ」というのはよくある誤解だとSreenivas氏は指摘しています。Decagonが行なうファインチューニングの大半は、個社のカスタマイズではなく「カスタマーサービスというユースケースそのものへの最適化」です。全顧客に恩恵があるからこそ、そこに研究リソースを注ぎ込む価値があります。
一方で、単一のエンタープライズ企業が自社の貴重なリサーチ資源を、こうした汎用的なカスタマーサービス挙動のチューニングに割く価値はおそらくない、というのが彼の見立てです。
業務ロジックはファインチューニングではなく「コンテキスト」に載せる
自社の業務手順をAIに教え込む作業は、ファインチューニングでは成立しないとZhang氏は語っています。手順が変わるたびに学習を巻き戻してやり直すことになるからです。業務ロジックはコンテキスト(プロンプト等)で教え込む必要があり、そのためには業務ロジックを捉えるソフトウェアスタック、各種システムとの統合、テストと実験、会話のレビュー、コンプライアンスチーム向けのモニタリング機能が不可欠になります。そしてこれらは、モデルそのものとは何の関係もありません。
Sreenivas氏はさらに踏み込み、「人間はある意味でAGIだが、それでもデータベースやCRMを必要としてきた」と指摘します。AGIが到来しても、エージェントが仕事を保存し、情報を引っ張ってくる場所は必要です。「人が作業するためだけに作られたSaaS」は苦しくなるかもしれませんが、ソフトウェアの層そのものが消えることはない、と述べています。
FDEは、プロダクト化できなければ「罠」
Sreenivas氏は、AI企業の間でFDEを大量採用する現在のトレンドを「罠だ」と言い切っています。初期のAI企業にFDEが必要なのは、まだ誰もAIエージェントの正しいワークフローを知らないからです。FDEは、顧客がワークフローを学ぶのと同時に自分たちも学ぶために現場に入っています。
しかし、ワークフローが判明した後もFDEに依存し続けるのであれば、それは「体のいいコンサルティング会社(モダンなアクセンチュアのようなもの)」を作っているに過ぎないと同氏は指摘します。
Decagonでは、FDEのアウトプットは必ずコアプロダクトに組み込まれ、同じ機能を求める次の10社はそれを無料で手にすることができます。
彼は、Palantir社内で語り継がれてきた「FDEは痛みを食べ、プロダクトを排出する(excrete product)」という格言を引きつつ、そもそもPalantirのように初手から巨大な契約を取れる会社はほとんどない(だからこそ汎用的なプロダクト化が必須である)と釘を刺しました。
エージェントを作るエージェント「Duet」
以前のDecagonでは、エージェントの業務手順書であるAOP(Agent Operating Procedure)を人間が手で書き、エージェントが呼び出すツールを実装し、テストとシミュレーション環境を作り、本番投入後は人間が手作業で会話ログを読んでいました。「Duet」は、これらすべてを自動で行う、より大規模で遅い「2つ目のエージェント」です。
過去の会話トランスクリプトやドキュメントを渡して「いい感じに手順を組み立ててくれ」と指示すれば、自ら手順を構築し、付随するテストやシミュレーションも自動生成します。
本番稼働後も会話を監視し、対応精度の低いトピックを特定して改善案まで起草してくれます。Zhang氏によれば、これは創業時には不可能だった機能であり、推論モデルが進化して初めて成立したといいます。OpenAIなどのフロンティアラボが主に「コーディングエージェント向け」に鍛え上げてきた推論能力が、そのままDuetの性能向上に直結しているという興味深い指摘です。
Moatは「エンタープライズでの運用基盤」、ただし賞味期限つき
「AGIが到来したとき、DecagonのMoatは何になるのか?」という問いに対し、Sreenivas氏は「モデルの能力は、すでにエンタープライズでの使われ方をはるかに上回っている」と答えました。AIに社内システムのすべてのアクセス権限を渡して自律的に動かさせるという運用は、現実の企業では成立しません。
いま大企業で必要とされているのは、やっていいことといけないことを制御する手段、そして数百人の担当者が自分の専門領域でエージェントの挙動に関与できる仕組みです。さらに、規制ラインを越えていないかをテストする方法、数百万件の会話からインサイトを抽出して他部門に渡す仕組み、レガシーシステムとの接続も欠かせません。
ただし、彼はそれを「これから数年間のMoat」と期限付きで語っており、エージェント自身がそうした運用基盤すら自力で作れるようになったらどうなるかについては「わからない。3年後に考える」と率直に答えています。
売っているのはプロダクトではなく「本番稼働までの道筋」
大企業の内部で問われるのは「このAIプロダクトが機能するかどうか」だけでなく、「そもそもこれを自社の本番環境にデプロイできるのか」だとSreenivas氏は語ります。金融のような規制業種では、このプロセスが非常に複雑です。
だからこそDecagonはその道筋を細かくマッピングしています。初回のミーティングの時点で「御社のモデルリスク審査はこうなる」「テスト環境はこう組む」「初期のロールアウトはこう進め、問題が出たらこう検知して再発を防ぐ」と、極めて解像度高く説明できるようにしています。
Zhang氏自身、現在もリソースの8割を営業に割いており、銀行や航空会社、通信キャリアといった巨大企業を相手にする際は、全ユースケースを一度に展開するのではなく、まずは上位1〜2個のユースケースに絞って「初期の成功(クイックウィン)」を確実に作るアプローチをとっています。

ARR 10億ドルで成長率25%、伸びが速いのは決済──ServiceTitanに学ぶ5つの教訓
「5 Interesting Learnings from Vertical B2B Leader ServiceTitan at 1B+ in ARR. Not Slowing Down, Growing 25%, Fintech Growing Fastest, 110% NRR」 by Jason Lemkin on SaaStr
HVAC(空調設備)や配管など現場サービス事業者向けに業務基盤を提供するServiceTitanが、買収に頼らない自力の成長でARR 10億ドルを突破しました。2027年度第1Qは売上2億6,880万ドル(前年比25%増)、取扱高(GTV)は217億ドル(同23%増)に達しました。NRRは110%超を維持し、非GAAP営業利益率は前年の7.5%から15.2%へと倍増しています。決済収益がサブスクリプション収益より速く伸びている点や、利益改善分をAIエージェント開発に再投資している点が特徴です。
ARR 10億ドル規模でも成長率25%を維持し「Rule of 40」をクリア
四半期売上は前年比25%増の2億6,880万ドルとなり、母数の小さかった前年同期の27%増からはわずかな減速にとどまりました。非GAAP営業利益率15.2%とあわせると「Rule of 40」のスコアは40を超えますが、売上高倍率(時価総額÷年間売上高)は6〜7倍にとどまっており、規模や成長率の割に市場の評価は控えめです。
真の成長エンジンはシート課金ではなく「フィンテック(決済)」
取扱高(GTV)は四半期217億ドル(前年比23%増)に達しました。サブスクリプション収益(24%増)よりも決済由来の従量課金収益(29%増)のほうが伸びが速く、従量課金はすでにプラットフォーム収益の約22%を占めています。Toast、Shopify、BILLなどと同じく、<yellow-highlight-half-bold>業界の記録システム(System of Record)を握ったうえで決済を収益化する<yellow-highlight-half-bold>強力なビジネスモデルです。
利益率を一気に押し上げた「営業・マーケティングの効率化」
非GAAP営業利益率は前年の7.5%から15.2%へ倍増しました。売り上げが5,300万ドル増える一方で、営業・マーケティング費用の増加は400万ドル未満にとどまり、売上成長が費用成長を大きく上回ったことが利益率改善の最大の要因です。
利益改善分をAIエージェント開発へ再投資、R&D比率33%に
研究開発(R&D)費は27%増の8,800万ドルとなり、売り上げの約33%を占めています。現場業務向けAIエージェントプロダクト「Max」の導入拠点数は四半期で2倍以上に増え、次四半期もさらに倍増する見通しです。
NRR110%超でも株価は評価されず、市場全体の再評価局面に
NRRは前年同様110%超を維持しましたが、株価は過去1年で約46%下落しています。GAAP会計ベースでは2,280万ドルの純損失を計上しており(非GAAP純利益は3,670万ドル)、売り上げの20%超を占める株式報酬費用がGAAP黒字化の足かせとなっており、この点が市場の懸念材料です。
資金調達ニュース
[海外]
🏢 エンタープライズ
- Simile
人間の行動をシミュレートする基盤モデルと予測シミュレーションソフトウェアを開発。企業が意思決定を実環境導入前に仮想検証できるプラットフォームを提供。シリーズBで2億ドルを調達。評価額は20億ドル。投資家はGreenoaks、Index Ventures、Bain Capital Venturesなど。(TechCrunch) - groundcover
BYOC構成とeBPFセンサーで全量テレメトリを取得するObservability(可観測性)プラットフォーム。シリーズCで1億ドルを調達。投資家はOne Peak、Morgan Stanley Expansion Capital、Zeev Venturesなど(FinSMEs) - Prentis
Ritankar Das氏(CEO)がReid Hoffman氏、Mark Pincus氏と共同設立した、オフィスワークのPC操作を自動化するAIエージェント研究ラボ。1億ドルの調達に向けて交渉中。評価額は10億ドル。(TechCrunch) - Freehand
請求書を支払うか、異議を唱えるか、減額交渉するかを判断して実行する買掛金(AP)業務の自律化AIエージェント。判断の99%を人間を介さず実行する。シリーズBで7,500万ドルを調達し、累計調達額は1億ドル。Battery VenturesとNewRoad Capital Partnersが共同リードし、PSP Growth、Nexus Venture Partnersが参加(Forbes/Crunchbase News) - Fish Audio
音声生成モデルと音声クローンを提供するAI音声プラットフォーム。ボイスエージェント企業やAIアバター企業に音声を供給する。シードで5,000万ドルを調達。Coreline VenturesとCapital Todayが共同リードし、359 Capitalなどが参加(TechCrunch) - DataBahn
エンタープライズ向けにテレメトリデータの収集・統合・活用を担うエージェンティック・データ・コントロールプレーンを開発。AIエージェントやコパイロットが利用する信頼性の高いデータ基盤を提供。シリーズBで4,000万ドルを調達。投資家はInsight Partners、Forgepoint Capital、GTM Capitalなど。(Yahoo! Finance) - Harmony
Slack/Teams上でIT・人事・財務・調達などの社内問い合わせ対応を自動化するAIエンタープライズサポートプラットフォーム。シードで3,400万ドルを調達。投資家はLightspeed Venture Partners、Hitachi Ventures、Fin Capitalなど(CTech) - Paper
HTML/CSSで描画し、デザインを本番コードに直結できる、エージェント時代のデザインプラットフォーム。シリーズAで3,400万ドルを調達し、投資家はAccelとICONIQがリードし、Designer Fund、Michael Grinich氏(WorkOS CEO)、Anton Osika氏(Lovable CEO)らが参加。(FinSMEs/Business Wire) - Encore AI
顧客との通話・チャット・メールなどのやり取りを分析する「インタラクション・マイニング」技術により、優秀な営業担当者の対応パターンを学習したAIエージェントを構築。銀行・保険会社など規制業界向けに展開。シリーズAで3,000万ドルを調達。Team8、Planven、The Garageの3社が共同リードし、Lukatzおよび導入済みの銀行・保険会社が参加(TechCrunch/PR Newswire) - Trooly
AIネイティブなユーザーリサーチプラットフォームで、世界中の消費者と45分間の深いインタビューを実施し、質的インサイトを提供。シードで約2,000万ドルを調達。(Yahoo! Finance) - Centralize
エンタープライズ営業チーム向けにステークホルダー関係を可視化するリレーションシップ・インテリジェンス・プラットフォーム。シリーズAで1,500万ドルを調達。投資家はNEA、Salesforce Ventures、Y Combinatorなど(Crunchbase News) - telli
音声・チャット・メールなど複数チャネルで顧客対応を自動化するAIエージェントプラットフォーム。シードで1,500万ドルを調達。投資家はredalpine、Cherry Ventures、Mutschler Venturesなど(FinSMEs)
🔒 サイバーセキュリティ
- Spur Intelligence
VPN・レジデンシャルプロキシ・ボットなど匿名化トラフィックを特定するIPインテリジェンスプラットフォーム。Insight Partnersがリードする2億ドルを調達(TechCrunch) - ThreatLocker
アプリケーション許可リストを軸に、未承認ソフトウェアの実行を遮断するゼロトラスト・セキュリティプラットフォーム。AI関連リスク向けの制御開発を進める。シリーズFで1億9,000万ドルを調達。Elephantがリードし、D. E. Shaw Ventures、Arthur Ventures、Koch Disruptive Technologiesが参加(FinSMEs) - Inforcer
MSP(マネージドサービスプロバイダー)向けにMicrosoft 365のセキュリティ・AI管理を統合するプラットフォームを提供。Shadow AI検知や脅威検知・対応(TDR)機能を備え、中小企業のAI/セキュリティリスクに対応。シリーズCで5,000万ドルを調達。Insight Partnersがリードし、Dawn Capital、Meritech Capitalが参加。(TechCrunch) - Act Security
クラウド環境のアクセス過多を排除するアクション中心型クラウドセキュリティプラットフォーム。シリーズAで4,000万ドルを調達し、累計調達額は6,000万ドル。投資家はNotable Capital、Startpoint Capital、SVCIなど(FinSMEs) - AegisAI
自律型AIエージェントによってメール内の脅威をリアルタイムで検知・無害化するメールセキュリティプラットフォーム。シリーズAで3,600万ドルを調達し、Battery Venturesがリードし、既存投資家のAccelとFoundation Capitalが参加。(Yahoo! Finance) - Mate Security
AIエージェントによるセキュリティオペレーション(SOC)自動化プラットフォーム。シリーズAで3,500万ドルを調達。Canaan Partnersがリードし、MicrosoftのCVCであるM12、Insight Partners、Team8が参加(CTech) - Hush Security
非人間ID(NHI)およびAIエージェントのガバナンスを行うプラットフォーム。シリーズAで3,000万ドルを調達。投資家はAkamai Technologies、Battery Ventures、YL Venturesなど(FinSMEs) - Abstract Security
SIEMに代わる、データソースと分析先を分離できるストリーミング型のコンポーザブル・セキュリティオペレーションプラットフォーム。シリーズAエクステンションで2,500万ドルを調達。Cheyenne VenturesとAtlantic Vantage Pointが共同リードし、Crosslink CapitalとRally Venturesが参加。(SiliconANGLE) - Way Security
AIを活用したID・アクセス管理(IAM)運用自動化プラットフォーム。シードで2,000万ドルを調達。Insight PartnersとGlilot Capitalが共同リード(CTech)
🏗️ バーティカル
- Dwelly
英国の賃貸仲介業界向けAIネイティブ物件管理オペレーティングシステム。英国各地の独立系賃貸仲介会社を買収して自社OSに統合するロールアップ戦略を軸に据え、調達資金の第一用途とする。シリーズBで1億7,000万ドル(うちエクイティ9,500万ドル、負債7,500万ドル)を調達。EQT GrowthとGeneral Catalystが共同リードし、s16vc、Begin Capital、DVCらが参加。7,500万ドルの負債枠はTrinity Capitalが提供(FinSMEs) - LearnVector
Andrew Ng氏が設立したAIネイティブ学習プラットフォーム。Courseraから1億ドルの戦略的出資を獲得(Business Wire) - Agon
AI搭載の自律型兵器を仮想戦場で訓練させるプラットフォーム。プレシード/シードで合計3,000万ドルを調達。投資家はLakestar、201 Ventures、D3(プレシード700万ドル)/XYZ、Lux Capital、Northzone(シード2,300万ドル)(Tech.eu) - COR
代理店・プロフェッショナルサービス企業向けAI搭載プロジェクト収益性管理プラットフォーム。3,000万ドルの投資をFTV Capitalから調達(Business Wire) - Greyparrot
AIカメラでリサイクル施設の廃棄物を分析するAI廃棄物インテリジェンス企業。シリーズBで2,700万ドルを調達し、累計調達額は6,000万ドル。テクノロジー投資家のOmar Mir氏が単独でリード(FinSMEs/Greyparrot公式) - Terminal
商用フリート向けテレマティクスデータを統合・標準化するプラットフォーム。シリーズAで2,000万ドルを調達し、累計調達額は2,600万ドル。Battery Venturesがリードし、新規戦略投資家としてIntact Private CapitalとPenske、既存投資家のY CombinatorとWayfinder Venturesが参加(PR Newswire) - Dili
インフラ・建設・エネルギー業界向けにAIネイティブなコンプライアンス監査プラットフォームを提供。大規模言語モデルで非構造化記録を構造化データに変換し、規則判定は決定論的なエンジンが担う仕組みで、賃金・見習い規定などの連邦規制違反をリアルタイムで検知。シリーズAで1,500万ドルを調達。Khosla Venturesがリードし、Allianz、Rebel Fund、Brick and Mortar VenturesのDarren Bechtel氏、Y CombinatorのGarry Tan氏が参加。(TechCrunch)
🛰️ ハードウェア×AI
- Multiverse Computing
量子物理学由来のテンソルネットワーク手法でLLMを圧縮するAIモデル効率化企業。シリーズCで最大5億7,000万ドルの調達を発表(追加の戦略投資家を受け入れる余地を残す)。プレマネー評価額は17億ドル。投資家はForgepoint Capital International、BNPP Solar Impulse Venture Fund、Bullhound Capital(共同リード)(Yahoo! Finance) - Enigma
ロボットアームと基盤モデルを自社でゼロから開発し、人間とロボットの対話インターフェースを研究するAIラボ。ステルスを脱し、シードで7,100万ドルを調達。Index VenturesとRibbit Capitalが共同リードし、Conviction PartnersのSarah Guo氏が参加(TechCrunch) - ChipAgents
半導体設計・検証を自動化するエージェント型AIプラットフォーム。シリーズA2で6,000万ドルを調達し、累計調達額は1億3,400万ドル。投資家はB Capital、Bessemer Venture Partners、Micron、MediaTek、Ericsson、ScOpなど(FinSMEs) - Foundational Industries
AIがオペレーション全体を制御する「AIネイティブ工場」を構築するスタートアップ。第一弾としてデータセンター向け特殊ハードウェア(電圧・冷却仕様が異なる機器)の製造に着手。シード資金として2,500万ドルを調達。投資家はBoxGroup(共同リード)、Zigg Ventures(共同リード)、Abstract Ventures、Adverb Ventures、Buckley Ventures、Offline Ventures(Fortune) - Elio
人間の目ではなくAIのために設計されたセンサーを開発し、AIがリアルタイムで必要な情報だけを取得できる光学技術を提供。顕微鏡検査、半導体検査、ロボティクスなど幅広い用途に対応。2,100万ドルの資金調達を実施。Innovation EndeavorsとXoraが共同リードし、Kevin Weil氏と同氏のファンドScribble VCが参加。前回ラウンドをリードしたUpWestとResolute Venturesも継続支援。(Business Wire)
💰 フィンテック
- PEX
コーポレートカード・支出管理・与信プラットフォーム。1億6,000万ドル(デット・エクイティ混合)を調達し、Bluff Point Associatesがリード(PYMNTS/GlobeNewswire) - BusinessNext
インド発の銀行向けソフトウェア企業で、インド・東南アジア・中東・米国の70行超に自律型AIエージェントを組み込んだ銀行業務プラットフォームを提供。ServiceNow Venturesから4,000万ドルを調達。評価額は7億ドル、約5%の株式を取得。(TechCrunch) - Corgi
フルスタックの保険プラットフォームを運営し、商業保険の引受・保険金請求管理・組込型保険(エンベデッド保険)を提供するAIインシュアテック企業。シリーズBのエクステンションを実施。調達額・投資家はいずれも非公開で、評価額は40億ドル。(Fintech Global)
🏥 ヘルスケア
- TidalSense
ハンドヘルド端末「N-Tidal Diagnose」に75秒間ふつうに呼吸するだけでCO₂波形を取得し、AIがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を検出する非侵襲的呼吸器診断プラットフォーム。従来1時間かかっていたスパイロメトリー検査を、検査全体で平均5分未満に短縮する。1,900万ドルを調達。新規投資家のCross-Border Impact Venturesに加え、既存投資家のBGF、Airstream Capital、Foresight Groupが参加。(Tech.eu) - Prosper Medical
AIを活用したコンシェルジュ型プライマリケアプラットフォームで、患者ごとに専属医を配置し、診察の合間もAIが継続的にケアを補助。1,600万ドルの資金調達を実施。FUSEがリードし、Aurum Partners、Better.vc、Cal Innovation Fund、Fluent、Latitude Capital、Knoll Ventures、WTIが参加。(Yahoo! Finance / Business Wire)
[国内]
- TAIAN
ブライダル・バンケット事業向けのSaaS・データ基盤に加え、宴会幹事エージェント「Canjii」やインバウンドウェディング支援まで、祝祭市場に特化したAIプロダクト・サービスを展開。AI時代における「人が集い、心が動く」リアルな祝祭体験の創出を目指す。シリーズBラウンドにて約7億円を調達。投資家はグロービス・キャピタル・パートナーズ、JFR MIRAI CREATORS Fund、東京海上日動火災保険、ポーラ・オルビスホールディングス、イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、NOBUNAGAキャピタルビレッジ、北海道共創パートナーズ。(PR Times) - Asclepath
事務員ゼロのAIネイティブクリニックの実現を目指すスタートアップ。予約・受付・問診・カルテ作成・患者対応・医療文書・会計・マーケティング・経営分析までを一つのプラットフォームに統合するAIOS「Asclepath AIOS」を開発する。プレシードラウンドにてGarnet Capitalより3,000万円を調達。(PR Times) - Scale Technology
広島発、中小企業向けHR採用・育成アセスメントAI「PitA」を開発・提供。ビッグファイブ理論をベースに先天的な性格特性と後天的な行動特性の2軸を測定し、両者のギャップまで可視化することで、採用ミスマッチや早期離職の低減を支援する。シードラウンドにて初の資金調達を実施(金額非開示)。荻野工業、グリーンメタル、新光電気、ドーワテクノス、ワールドサービスの事業会社5社を引受先とするJ-KISS型新株予約権の発行、および日本政策金融公庫からの資本性ローンによる調達。(PR Times)



