「今週のSaaS×AIニュース」ピックアップ!
*SaaS×AI Weeklyは、ALL STAR SAAS FUNDが毎週ピックアップした記事を日本語で要約し、一部メンバーからのコメントを入れてお届けしています。

プロダクトの勝敗を決めるのは「ストーリー」だ──元Twitter・LinkedInのPdMが語る、AI時代のプロダクトマネジメントの本質
「Product Management is Still All About Telling Stories」 by Josh Elman on a16z
Twitter、LinkedIn、Facebookなどでプロダクトづくりに携わり、Robinhood、Musical.ly、Discordへの投資にも関わってきたJosh Elman氏の、a16zへの寄稿です。AIによって変わるPdMの仕事と変わらないPdMの本質を、自身の実体験を交えて解説しています。AIでプロトタイプを誰でも一瞬で作れる時代だからこそ、「何を作るか」という判断力とストーリー設計力が、日本のAI・SaaSスタートアップの差別化要因になります。
PdMの最重要アウトプットは「仕様書」ではなく「ストーリー」
LinkedInの採用面接でReid Hoffman氏から「PdMが生み出す成果物は何か」と問われ、Elman氏は「仕様書」と答えましたが、後にそれは誤りだったと振り返っています。仕様書はシステムの要件を定義するものにすぎず、PdMの本質はプロダクトを使う人にとってなぜそれが重要なのかというストーリーを語ることです。そのストーリーは誰にでもすぐ理解でき、本人がいなくても社内で正確に語り継がれる「再現性」を持つ必要があります。
開発ループが「仕様→構築」から「構築→体験→設計」へ逆転
従来は、限られたエンジニアリング工数を守るためにアイデア、仕様、スコーピングを経てから開発しており、年に6〜8回しかループを回せませんでした。AIで作るコストが桁違いに下がったいまは、まずAIで素早く作り、触って感触を確かめ、その後にUX・エンジニアリングの両面で設計し、出荷して学ぶ流れになっています。Elman氏は、この逆転こそが現在PdMの仕事を最も大きく変えている要因だと述べています。
デモはほぼ無料でも、実用に耐えるプロダクトは無料ではない
「プロトタイプができたならそのまま出せばいい」という発想は、仕様から入るやり方とは正反対の誤りだと警告しています。プロトタイプから本物のプロダクトまでの距離を埋めるには、いまも時間がかかります。PdMが問うべきは「スケジュールに収まるか」ではなく「プロダクトに収まるか」であり、何を作るかはリソースの議論ではなくインパクトの議論になりました。
最大のリスクはプロダクトにおける「AIスロップ」
AIで速く作れるようになったことで、あらゆる機能を詰め込んでしまう危険が高まっています。<yellow-highlight-half-bold>誰でも何でも作れる時代には、何を作るかを決めることこそが仕事のすべてになります。<yellow-highlight-half-bold>ユーザーがなぜここにいて、各ステップで何を感じ、どこが印象的でどこが退屈なのかという「脚本」を描けなければ、プロダクトは平凡なものになると指摘しています。
「本当に使われているか」を目的・コアアクション・サイクルで測る
創業者に利用状況を尋ねると、多くはDAU/MAU、サインアップ数、ARR、トークン消費量などを答えますが、それは問いへの答えになっていないと述べています。ビジョンとは、目的・コアアクション・サイクルから成るものです。目的はユーザーがなぜ使うのか、コアアクションは何をするのか、サイクルはどの頻度で行うのかを指します。LinkedInでは「見つける・見つけられる」が目的で、サイクルは年に1〜2回と想定していたため、毎日の利用を促すよりもプロフィールを正確に保つことに注力しました。コアアクションを定義できないなら、それはまだプロダクトとは言えないと断言しています。
AIプロダクトは会話ログという「ユーザージャーニーの記録」を持つ
ユーザーがプロダクトに話しかけるAIプロダクトでは、ユーザー自身の言葉、諦めて言い直した瞬間、期待が裏切られた箇所がそのまま記録として残ります。Elman氏は「これを必ず読め」と強調しています。ただし、AIにすべてを要約させたり、自分の意見の形成まで任せたりしてはならず、ストーリーを見出すことこそがPdMの仕事だと説いています。
オンボーディングこそストーリーを伝える最大の機会
ユーザーからこれほど注目を集められる瞬間は二度とありません。熱心な層と冷やかし層の間にいる、好奇心を持った「中間層」に向けて設計すべきです。A/Bテストでは、少数の複雑なステップより多数のシンプルなステップが一貫して勝ったといいます。AIプロダクトの「何でも聞いてください」という空のプロンプト欄は、ある意味で最悪のオンボーディングです。機能を1つずつ教え、できればユーザー自身のデータで早期に価値を体験させるべきです。評価指標はフロー完了率ではなく、翌日・翌週のリテンションとコアアクションの実行率です。Twitterでは、ツイート、フォロー、タイムラインを1つずつ教える「Learn Flow」を導入し、その年に出荷したどの施策よりもリテンションを改善しました。
AI時代のSaaSは「2〜4年でARR 1億ドル」組と「そのほか」に二極化する
「2026 State of Scaling: The Great Sorting」 by ICONIQ Venture & Growth on ICONIQ
ICONIQのVenture & Growthポートフォリオ・アナリティクスチームによるレポートです。137社のソフトウェア企業の四半期データをもとに、成長率が上位25%に入り、かつAIフォワードな「Pacesetters」とほかの企業の間で広がる成長・効率の格差を解説しています。従来のSaaSベンチマークが「勝者」を見分ける物差しとして機能しなくなりつつあるいま、日本のシード・アーリー起業家が資金調達やKPI設計の基準を置き直すうえで欠かせない一次データです。
ソフトウェアは全セクター最下位、市場の評価軸が変わりつつある
過去1年でソフトウェア指数は3%下落し、ほかのすべてのセクターを下回りました。一方、半導体はAIによるコンピュート需要を追い風に47%上昇しています。ソフトウェアの中でAIディスラプションを免れたサブセクターはなく、過去に機能した運営パターンがいまは弱い結果しか生まないとレポートは指摘しています。
高成長企業だけがバリュエーションを回復し、FCFマージンも再び重視されはじめている
高成長企業(主にインフラ・セキュリティ)のNTM売上倍率は、2026年Q1の約7倍からQ2には9.2倍へ回復しました。これに対し、成長率20%未満の企業は2.7倍にとどまっています。成長の維持が難しくなるなか、FCFマージンとバリュエーションの相関が約2年ぶりに強まっており、目に見える効率改善への期待が高まっています。
AI導入の加速で、上場企業は人員削減とAIユニットエコノミクスに舵を切る
AIプロダクトに有償で支払う米国企業の割合は、2023年1月の7.5%から2026年7月には50%超へ拡大しました。その影響は上場ソフトウェア市場に表れており、今年10〜20%の人員削減に踏み切った企業が複数あります。また、上位企業の決算説明会では、AIに関する発言のうち売上・マネタイズへの言及が2025年Q2の5%から2026年Q2には15%へ3倍に増えました。AIの収益化が主要な論点になっています。
カテゴリリーダーは、わずか1〜3年でARR 1億ドルに到達
AI時代には、収益スケールの常識を塗り替える新しいクラスの企業が現れています。Pacesettersの中でもカテゴリリーダーはARR 100万ドルから1億ドルまでを1〜3年で駆け上がっており、ほかのソフトウェア企業が5年以上かかるのと比べて大きな差があります。これが、今日の上位25%の新たな基準になりつつあります。
成長の源泉は既存顧客のエクスパンションではなく新規ロゴである
Pacesettersの躍進は主に新規ロゴARRによるものです。<yellow-highlight-half-bold>新規ロゴARRは粗新規収益の70%超を占めています。<yellow-highlight-half-bold>一方、ほかの企業はエクスパンションを主な成長レバーとして頼る傾向が強まっています。AIネイティブ企業にとって、新規顧客獲得のスピードそのものが競争力の中核になっていることがわかります。
「意図的なマージントレード」で先行投資し、スケール後に効率で回収
FCFマージンは前年比で改善しているものの、ARR 1億ドル未満のPacesettersは、赤字の深さが同業他社の約5.6倍です。OpExは売上の284%に達し、他社の124%を大きく上回っています。その差の多くはS&Mに集中しています。ただし、ARR 1億ドル超のPacesettersは2026年にバーンマルチプル1倍未満を維持しており、スケール後は投下1ドルあたりの売上ROIで同業を上回っています。
成長率100%超の企業ほど、2026年に人員を中央値+146%増やす
「AI導入によって人員を絞る」という通説とは逆に、成長率100%超の企業は2026年に人員を中央値で+146%増やしています(2025年は115%)。人員の増加が全体として抑えられているなかでの例外です。同時に、ARR per employee(社員あたりのARR)も多くの売上規模帯で上昇しており、特に上位25%に入る2,500万ドル〜1億ドル企業では、2025年から2026年にかけて生産性の伸びが続いています。最も成長の速い企業は、需要に追いつくために積極的に採用しながら、1人あたりのARRも高い水準を保っています。
AIはオペレーティングレイヤーになったが、組織モデルの変革はまだこれから
2026年初頭時点で、ICONIQポートフォリオ企業の社員の70%超がAIツールを日常的に使っており、特にR&D部門での定着が最も進んでいます。一方、R&D・S&M・G&Aといった職能別の人員構成比はほぼ変わっていません。現時点のAIは、新しい職種を生み出すというより、既存の役割の中で生産性を底上げする段階にあり、運営モデルを根本から作り変えるには至っていないと、レポートは結論づけています。

第二の成長エンジンは、全社で数年かけてつくる
「Databricks' Ali Ghodsi Never Wanted to Be CEO. Now He's Among the Best」 by Brian Halligan on Long Strange Trip
Brian Halligan氏のポッドキャスト「Long Strange Trip」で、Databricks共同創業者兼CEOのAli Ghodsi氏が事業の転換と組織づくりを語るエピソードです。すでに成功している事業から次の成長へ進むために、競合のどの弱点を突き、採用や報酬をどう変え、成果が見えるまでどう数年間やり抜くのかを、Databricksの実体験から理解できる内容です。
CEOが集中すべきボトルネックは、数週間ではなく数年かけて解く
Ghodsi氏は、会社の最大のボトルネックを特定し、極端なほど全社の注意とリソースを集中させるべきだと語っています。その時間軸は1〜3年です。<yellow-highlight-half-bold>毎週優先順位が変わっているなら、それは戦略ではなく、目の前の問題への対処だと指摘<yellow-highlight-half-bold>しています。Databricksでは、当初は商業化、その後は「Lakehouse」というカテゴリの確立に集中しました。社内外の反対があっても数年続けるからこそ、最初に何をボトルネックと定めるかが重要になります。
テクノロジーに詳しい人が、優秀なセールスとは限らない
Databricksは当初、セールス候補者の技術力を試し、自分たちと同じ種類の賢さを求めていました。しかし、Ghodsi氏が優秀なセールスから学んだのは、粘り強く働きかける姿勢、感情を読み取る力、場を主導する力、そして顧客企業の意思決定構造を理解する力でした。あるセールスは、怒っていた顧客に対して、その人のチームが取り組んでいる仕事へ話題を切り替え、関係を立て直したといいます。大型契約は一人の決裁者だけで決まるものではなく、社内の複雑な影響関係を動かす仕事だと説明しています。
セールス責任者には、完成した車の運転手ではなく、車を作れる人を採る
Ghodsi氏は、既存のセールス組織を運営できることと、セールスの仕組みをゼロから作れることを分けて考えています。セールスリーダーとして採用したRon Gabrisko氏には、事業をARR約5,000万ドルまで伸ばし、買収後にはさらに大きな規模を経験した実績がありました。技術の素養もあり、エンジニア出身の創業者たちと、なぜそのセールスモデルが必要なのかを議論できたといいます。セールスの仕組みを作るには数年かかるため、厳しい局面や意見の衝突ですぐに離れない人であることも採用理由でした。前職では買収を挟んで約11年間在籍していたことも重視しました。
経営幹部の採用ミスは、2〜2年半を失わせる
経営幹部の採用に失敗すると、問題の見極めと決断に時間がかかり、退職後には再び採用と立ち上がりが必要になるため、合計で2〜2年半を失いかねないとGhodsi氏は指摘しています。そのため、必要になってから探すのではなく、先回りして採用をはじめ、6ヶ月〜1年かけて候補者を見極めます。優秀な人を見送ることがあっても、間違った人を採る確率を下げる方針です。過去の上司へのリファレンスも徹底しています。実際に失敗した採用を振り返ると、面接段階で見えていた警告サインを、自分が都合よく解釈していたと語っています。
競合を研究しても、競合と同じものは作らない
Databricksはかつて、Snowflakeの約半分の売上規模で、成長率も下回っていたとGhodsi氏は振り返っています。そこで狙ったのは、独自形式へのデータの囲い込み、AI対応、コストの3点でした。同氏が当時の弱点と見ていたものです。セールスも全面的な置き換えを迫るのではなく、機械学習に適したワークロードを見つけ、オープンな形式へ移す共存戦略を取りました。単に「より優れたデータウェアハウス」を売っても、すでにその領域をリードする競合には勝てないと考えたためです。違いを「Lakehouse」というカテゴリにまとめ、顧客ごとに数年かけて実行したと説明しています。
セールスに戦略を実行してほしいなら、報酬設計に入れる
Ghodsi氏は、セールスが新しい方向に動かないとき、議論を重ねるよりも報酬設計を変えると語っています。Databricksでは、戦略上売りたいものに対して、報酬の倍率や追加インセンティブを設定してきました。もちろん、その戦略が正しいかどうかは先に見極める必要があります。そのうえで実行すると決めたなら、セールスに求める行動を報酬に反映させるという考え方です。
投資家に語る未来と、実際の事業の差を直視する
2018〜2019年ごろ、DatabricksはすでにARR数億ドル規模に達していましたが、Ghodsi氏は満足していませんでした。投資家には大きなビジョンを語りながら、面談後には、実際にはまだSparkを売っている会社だと自分で認めていたといいます。複数の成功したプロダクトを持つ会社になりたいなら、既存事業が好調でも、自ら変わる必要がありました。そのための賭けは、成果が見えるまで4〜5年かかることもあると語っています。周囲が「どうして急にできたのか」と驚くころには、社内ではもう何年も取り組んできているのだといいます。
衝突を避けるCEOの下では、会社の方向が曖昧になる
Ghodsi氏は、CEOが衝突を避けると、断るべき依頼に同意したり、回答を避けたりして、会社がさまざまな方向へ進みはじめると指摘しています。約1万2,000人の組織では、曖昧な発言が部署ごとに違う意味で受け取られかねません。廊下やエレベーターでの雑談に承認依頼を紛れ込ませられても、正式なプロセスを通すよう明確に伝えるといいます。衝突そのものが好きなのではなく、不快でも向き合うことがCEOの仕事だと語っています。
企業向けAIに足りないのは、企業のコンテクスト
Ghodsi氏は、モデルの能力に対して企業でのAI活用が限られている理由として、企業固有のコンテクストが足りないことを挙げています。社員の頭の中にある知識、日々の意思決定、会議やメールの内容を、AIが使える形にする必要があります。Databricksでは、こうした業務の知識を構造化した「オントロジー」を整備し、Genieを通じて質問への回答や業務の自動化に活用しているといいます。同じプロダクトを購入した顧客でも、同じようにコンテクストを蓄積していなければ、同じ成果にはならないと説明しています。
情報の流れをAIで変えても、人のマネジメントは残る
Ghodsi氏は、組織図と、情報を集めて意思決定する仕組みを分けて考えるべきだと指摘しています。AIによって情報が管理職の階層を順番に通る必要は減っても、それだけで人のマネジメントまで不要になるわけではありません。特に、管理職に25人の直属部下を持たせながら、時間の80%は自分でコードを書くよう求める設計には懐疑的です。キャリアの相談、不満への対応、目標のすり合わせには、人と向き合う時間が必要だからです。管理する人数を増やし、同時に個人の開発業務も増やせば、社員が上司と話せず、何をすべきか分からなくなると警鐘を鳴らしています。
2日でできた試作品が、9ヶ月かかる開発プロセスを問い直した
Ghodsi氏はコネクタの試作品を2日で作りましたが、既存チームでは一人が1つを開発するのに3四半期かかっていました。本番で使うための安全性やテストが必要だという説明を受け、工程を調べると、要件収集とPRD作成に1四半期、最後のテストにも1四半期を使っていたといいます。そこで、要件整理を1週間に縮め、接続先システムの設定は専門のコンサルタントを活用し、テストを前倒しするなど、プロセス全体を組み直しました。一人が1つを担当する形も見直し、七人で7つのコネクタに取り組み、1四半期で7つを開発できるようになったと語っています。2日で本番版が完成したという話ではなく、試作品との大きな差をきっかけに、コードを書く前後の工程まで変えた事例です。
AIが社会に浸透するには、少なくとも10年かかる
Ghodsi氏は、人類がAIを吸収し、広く使いこなすまでには、少なくとも10年かかると予測しています。根拠にあるのは、Databricksでの経験です。AIを歓迎する技術者が集まった同社でも、コード生成が速くなるだけでは開発全体が速くなりませんでした。要件定義、外部システムの準備、テスト、担当の割り振りまで変える必要がありました。同じような業務プロセスの再設計が世界中の組織で必要になるため、モデルの進化だけでは導入は完結しないと見ています。
経営会議は、情報共有だけでなく「同じチーム」を作る時間
Databricksの経営陣は週3回、月曜日に60〜90分、水曜日と金曜日にそれぞれ30分集まっています。短い会議では目の前の課題に加え、ニュースや雑談も交わすとGhodsi氏は語っています。狙いは、各幹部が自分の担当部署だけでなく、経営陣同士を一つのチームとして捉えることです。セールス、法務、マーケティングがそれぞれの都合を優先して壁ができるのを防ぐには、互いを知り、信頼する関係が必要になります。情報をGoogle Docsに書くだけでは、その関係は生まれないと指摘しています。

複数年契約のディスカウントは何%が正解か?
「Dear SaaStr: How Big a Discount Should I Give For Multi-Year Deals?」 by Jason Lemkin on SaaStr
SaaStr創業者Jason Lemkin氏による記事で、複数年契約に対する割引の適切な水準を、自社の状況に応じて逆算する考え方を整理しています。「とりあえず20%引き」ではなく、解約率・更新コスト・キャッシュ状況・競合ロックアウト効果の4軸で判断すべきだと説きます。
割引率の水準は「何を解決したいか」から逆算する
複数年契約のディスカウントに一律の正解はなく、自社が何を優先するかで最適解が変わります。チャーンがほぼなく、コホートの収益でネットネガティブチャーンなら、複数年契約の価値は相対的に低くなります。逆にチャーンが高ければ、囲い込みの価値は高まり、より大きなディスカウントが正当化されます。
更新コストとキャッシュの必要性がディスカウントの判断基準になる
契約更新には人的コストや、更新コミッションなどの金銭的コストがかかります。その場合、次回の更新コミッションにあたる額を実質的にディスカウントの形で先払いしてしまう手法は、手早く簡単で合理的です。また、創業初期のキャッシュ確保が最優先であれば、前払いを条件にした大きめのディスカウントを出す判断も成立します。ただし、キャッシュフローがプラスに転じたあとは、将来の受注額を今の現金と交換する必要性は薄れます。
競合ロックアウト効果を織り込めば、ディスカウントは投資になる
3年以上の契約には、顧客が長期間にわたってほかのソリューションを検討しにくくなるという利点があります。特に競争が激しいカテゴリではこのロックアウト効果は大きく、ディスカウントの一部はそのための投資として考えることができます。競合の参入リスクが低い場合はこの効果は限定的です。
結論:10〜20%が相場、20%超は将来収益を大きく損なう
<yellow-highlight-half-bold>多くの企業が最終的に落ち着くのは、複数年契約に対する追加10〜20%のディスカウントです。<yellow-highlight-half-bold>チャーン率が低い場合、20%を超えると、2年目から10年目にわたって積み上がるはずの収益を大幅に失うことになります。ネットネガティブチャーンがある企業では特に、ロックインより自社のプロダクトと自分自身に賭けたほうが、長期的により多くの収益を、より少ない摩擦で生むことを強調しています。
資金調達ニュース
[海外]
🏢 エンタープライズ
- Mirendil
元Anthropic研究者が立ち上げたAIラボ。人の手をほとんど介さずに自らを改良する「再帰的自己改善」型AIモデルの開発。最大10億ドルの新規資金調達を交渉中との報道。評価額は50億ドル。投資家はKleiner Perkins(リードで交渉中)、Andreessen Horowitz(参加を協議中)(Bloomberg) - Snorkel AI
AIラボや大企業向けに学習用データセットと強化学習(RL)環境を構築するAIデータ企業。自社ソフトとモデルによる合成データ生成と専門家の知見を組み合わせた、データ・アズ・ア・サービス型への事業転換。シリーズEで3億5,000万ドルを調達。評価額は35億ドル。投資家はInsight Partners、S32、Additionなど(TechCrunch) - Verda(旧DataCrunch)
データセンター・ハードウェアからクラウド基盤、AI研究までを自社運営するフルスタックAIクラウド。推論への投資強化と、1年で計算容量を数倍に拡大する計画。シリーズBで1億8,900万ドルを調達。評価額は10億ドル以上。投資家はEmergence Capital、MUFG Innovation Partners、Supermicroなど(The Next Web) - Factory
"Droid"と呼ばれるAIコーディングエージェントを開発し、大企業のソフトウェアエンジニアリングチーム向けに自律的な開発自動化基盤を提供。2億ドルを調達。評価額は50億ドル。投資家はBlackstone、Khosla Ventures、Sequoia Capital、Insight Partners、Evantic Capitalなど(The Next Web) - Profound
AIによる回答エンジン(ChatGPT、Perplexity等)上でのブランドの見え方を監視・最適化するマーケティング基盤を提供。シリーズDで1億8,000万ドルを調達。評価額は18億ドル。投資家はSequoia CapitalとKleiner Perkins、Lightspeed Venture Partners、Khosla Venturesなど(SiliconANGLE) - Ema
HR・IT・財務の業務を複数のAIエージェントで自動化する「AI Employee」プラットフォーム。企業の既存アプリ上での作業実行から承認フローまでを含む、エンドツーエンドのプロセス処理。シリーズBで7,700万ドルを調達。投資家はCreaegis、Accel、S32など(TechCrunch) - Firecrawl
AIエージェント向けのWebデータ取得・構造化基盤。公式データプロバイダー、自社インデックス、ライブWebを1つの窓口で使える「Alexandria」も同時発表。シリーズBで7,500万ドルを調達。投資家はSmash Capital(リード)、Altos Ventures、Nexus Venture Partnersなど(SiliconANGLE) - Xapien
企業や個人に関するバックグラウンドチェック・デューデリジェンスレポートをAIで自動生成するプラットフォームを提供。米国事業拡大を見据え、5,600万ドルを調達。投資家はSpectrum Equityがリード、既存投資家のYFM Equity Partnersが参加(Pulse2) - Hang Ten Systems
元Infosys CEOのVishal Sikka氏が創業した大企業向けAIサービス企業。エージェント型コード生成と再利用可能なスキルライブラリを活用した、従来のSIより低コスト・短期間での企業システム構築・運用。シードで追加5,300万ドルを調達(累計8,500万ドル)。投資家はXora(リード)、Mayfield、Aramco Venturesなど(TechCrunch) - Ande
接待・会食・チームイベント・ケータリングなど、企業のエンタメ支出を一元管理するAIネイティブネットワーク。会場の空き確認から予約、承認、契約、経費精算までのエージェントによる自動処理。シードとシリーズAで合計5,200万ドル超を調達。投資家はLightspeed Venture Partners、Redpoint Ventures、Duration Venturesなど(PR Newswire) - Nuance Labs
音声・表情・視線・タイミングをリアルタイムに解釈し人間らしい対話応答を生成する、フルデュプレックス型の視聴覚基盤モデルを開発。シリーズAで5,000万ドルを調達。投資家はLightspeed Venture Partnersがリード、Accel、South Park Commonsなど(Unite.AI) - TypeSafe AI
元OpenAIでRLHF/ChatGPTの共同発明者、Diogo Almeida氏が率いるAIラボ。文章ではなく確率付きの型付き判断を返す"マシンネイティブ"モデル「Jev」による、ソフトウェアに直接組み込めるAIの提供。シードで4,000万ドルを調達。評価額は2億ドル(Financial Times報道)。投資家はDCVC(リード)(Yahoo! Finance)
🏥 ヘルスケア
- Enveda
植物や微生物など自然界に存在する分子をAIで同定・構造予測し、経口医薬品候補へと最適化するAIネイティブ創薬企業。シリーズEで3億1,100万ドルを調達。評価額は20億ドル。投資家はCatalio Capital Management(リード)、ICONIQ、Lightspeedなど(TechCrunch) - Heidi
臨床医向けAI医療スクライブを起点に、臨床ガイドライン検索やエージェントによる業務実行へ領域を広げる「AI Care Partner」。シリーズC(株式1億ドル)と、General CatalystのCustomer Value Fundによる非希薄化の成長資金2億4,000万ドルの合計3億4,000万ドルを調達。評価額は9億ドル。シリーズCはBlackbirdがリードし、Point72などが参加(MobiHealthNews) - Basecamp Research
30ヶ国以上から収集した独自の生物多様性データで学習した生物学基盤モデル「EDEN」を開発。長く複雑なDNA配列を設計し、患者の体内で細胞を直接リプログラミングするin vivo細胞療法への応用を進める。シリーズCで1億4,000万ドルを調達。評価額は8億ドル(Reuters報道)。投資家はS32(リード)、NVIDIA、Anthology Fund(Anthropic/Menlo Ventures)など(Tech.eu) - Penelope Health
米国の保険会社(ペイヤー)の保険適用ポリシー、事前承認要件、医療必要性基準、コーディングルールをリアルタイムに参照できるポリシーインテリジェンスプラットフォーム。特定のペイヤー・プラン・州ごとに、どのCPT・ICD・HCPCSコードが保険適用されるかをAPIで提供し、2億人超の米国被保険者と1万5,000超の処置・薬剤コードをカバー。1億ドルの出資コミットメントを獲得。投資家はThoreau(リード)、Bertelsmann Healthcare Investments、Twine Venturesなど(Yahoo! Finance) - Biolevate
ライフサイエンス向けのエージェント型AIプラットフォーム。科学・規制関連の知見を監査可能なワークフローに変換し、創薬から承認申請までを自動化する仕組み。シリーズAで約3,400万ドル(3,000万ユーロ)を調達。投資家はRAISE France、Orange Ventures、EQT Venturesなど(Tech.eu) - Altis Labs
がん領域の臨床試験向け「AIエンドポイント」企業。通常の画像検査データから生存予測を自動生成するモデル「IPRO」による、治療効果の早期見極め。シリーズAで2,500万ドルを調達。投資家はOrbiMed、Qiming Venture Partners USA、Innovation Endeavorsなど(Yahoo! Finance) - UltraSight
構造化トレーニング、リアルタイムAIガイダンス、解析機能を組み合わせた心臓超音波プラットフォーム「Echosystem」を提供。超音波の専門技師でない医療従事者でも、医師の監督下で心エコー検査を実施できるようにする。シリーズB2で2,400万ドルを調達。投資家はAlive HealthTech Growth Fund(リード)、Deep Insight、Star51 Capitalなど(Ynetnews)
🏗️ バーティカル
- Buildots
建設現場の映像をAIで解析し、進捗を3Dデジタルツインとして可視化する建設管理プラットフォームを提供。データセンター建設需要の拡大を追い風に、1億3,000万ドルを調達。評価額は約10億ドル。投資家はO.G. Venture Partnersがリード、Lightspeed Venture Partners、Intel Capitalなど(CTech) - Confido
消費財(CPG)ブランド向けに財務・会計・営業・オペレーションを1つのデータ基盤に統合するAIプラットフォーム。控除処理、トレードスペンド、需要予測などの業務自動化。シリーズBで5,500万ドルを調達。投資家はInsight Partners(リード)、Trenches Capital、Watchfireなど(Business Wire) - Archy
予約管理から保険請求、AIによる診療記録作成までを統合した歯科医院向けオールインワンAIプラットフォームを提供。シリーズCで5,000万ドルを調達。投資家はJMI Equityがリード、TCV、Bessemer Venture Partnersなど(Pulse2) - BackOps
小売や物流など"モノを作る・運ぶ"企業向けに、クレーム・紛争・受注例外の処理を自動で解決するAIレイヤー。シリーズBで4,200万ドルを調達。投資家はInsight Partners(リード)、Theory Ventures、Construct Capitalなど(PR Newswire) - Adaptive
建設会社向けのエージェント型会計プラットフォーム。原価管理・買掛金・請求・WIP・支払・コンプライアンスを自動化する「Project Accounting Agents」の提供。シリーズBで3,000万ドルを調達。投資家はTidemark(リード)、Emergence Capital、Andreessen Horowitzなど(Yahoo! Finance) - Spott
人材紹介会社向けのAIネイティブなATS/CRM。候補者管理・検索・アウトリーチ・ワークフロー自動化を1つに統合したプラットフォーム。シリーズAで2,100万ドルを調達。投資家はBalderton Capital(リード)、Base10 Partners、Y Combinatorなど(Tech.eu)
💳 フィンテック
- Numeral
米国の売上税・VAT・GSTの対応をAIで自動化するプラットフォーム。課税義務の追跡から登録、税率計算、申告、納付までの一貫処理。シリーズCで1億ドルを調達。投資家はInsight Partners(リード)、Salesforce Ventures、Benchmarkなど(Finovate) - Go.AI(旧Go Abacus)
銀行など規制の厳しい業種向けのオンプレミスAIアプライアンス「Go1」とOS「Go.OS」。クラウド非依存・データ外部送信なしでの社内AI推論。シリーズAで8,500万ドルを調達。投資家はUpdata Partners(リード)、GFT Ventures、LAUNCH(Yahoo! Finance) - Baselayer
金融機関向けの企業本人確認(KYB)・不正検知基盤。AIエージェントの身元や権限を検証する「Agentic Identity Suite」も同時発表。シリーズAで3,500万ドルを調達。投資家はM13(リード)、Torch Capital、Picus Venturesなど(FinTech Global) - Paymob
MENA地域向けの決済インフラ。60種類超の決済手段を1つの仕組みで扱えるオムニチャネル決済と、中小企業向け商品やエージェンティックコマース対応の強化。プレシリーズCで3,500万ドルを調達。投資家はMubadala、EBRD、British International Investmentなど(Yahoo! Finance) - Kastle
銀行・レンダー向けのAIワークフォースプラットフォームで、まずは消費者向けローン領域から展開しています。大手金融機関が使うレガシーシステムを置き換えずに、その上で動作する設計です。同社のAIエージェントが処理した取引額は18億ドル超です。シリーズAで2,400万ドルを調達。投資家はInsight Partners(リード)、Y Combinator、Commerce Venturesなど(FinTech Global) - Sela
住宅ローン販売に特化した音声AIエージェント。借り手の複雑な質問への回答や関係構築と、必要時のみのローンオフィサーへの引き継ぎ。シードとシリーズAで合計2,100万ドルを調達。投資家はCostanoa(リード)、Emergence Capital(PR Newswire)
🔒 サイバーセキュリティ
- Island
エンタープライズブラウザのカテゴリを切り拓いた企業。現在は、人間とAIエージェントがデバイス、アプリ、ネットワーク、データをまたいで行う作業を、単一のポリシーエンジンと監査証跡で統制する「エージェンティック・コントロールプレーン」へと事業を拡大している。シリーズFで4億ドルを調達。評価額は64億ドル。投資家はEvolution Equity Partners(リード)、Sequoia Capital、Coatue Managementなど(SiliconANGLE、FinTech Global) - Cyera
データとアイデンティティのセキュリティを統合したプラットフォーム。人・マシン・AIエージェントによる機密データへのアクセス範囲の可視化と統制。シリーズGのエクステンションで4億ドルを調達。評価額は120億ドル超。投資家はGoldman Sachs Alternatives(CTech) - MIND
AIネイティブのデータ損失防止(DLP)プラットフォーム。SaaSアプリ、生成AIツール、エンドポイント、IT環境全体で機密データの発見・分類・保護を行います。過去1年で売上は1,700%超、顧客数は800%成長しました。シリーズBで7,200万ドルを調達。評価額は3億ドル(関係者の推定)。投資家はCrosspoint Capital Partners(リード)、YL Ventures、Paladin Capital Group(CTech) - Comp AI
SOC 2やISO 27001などのコンプライアンス対応をAIエージェントで自動化するプラットフォーム。リアルタイム監視やセキュリティテストなど、継続的サイバーセキュリティへの領域拡大。シリーズAで3,400万ドルを調達。投資家はRoo Capital、Grand Ventures(TechCrunch)
🛰️ ハードウェア×AI
- Maven Robotics
倉庫内での混載パレタイジングや荷物搬送を自律的に行う産業用ロボットを開発。ステルスから脱し、シリーズAで1億ドルを調達。投資家はRoboStrategyがリード、LocalGlobe、Vine Venturesなど(TechCrunch、GlobeNewswire) - Noetive
製造・物流・建設などの物理産業向けAIネオラボ。自己改善型AIと自社設計のマルチモーダルセンシングPODを組み合わせた、現場の状況把握と業務判断の支援。シードで4,100万ドルを調達。投資家はEclipse(リード)、Craft Ventures、The Westly Groupなど(Yahoo! Finance) - Viabot
商業施設の屋外清掃を担う自律型ロボットを開発。カメラ、LiDAR、深度センサー、DGPSで周囲をマッピングし、スケジュールに沿ってゴミ・落ち葉の回収や敷地監視。シリーズAで2,400万ドルを調達。投資家はWalden International(リード)、CDIB Capital Group、Stalwart Venturesなど(FinSMEs)
⚖️ リーガルテック
- Chamelio
企業法務部門向けのAIネイティブプラットフォーム。契約の起草・交渉・承認・義務管理を担う自律エージェントと、人の判断が必要な案件のみのエスカレーション。シリーズAで2,600万ドルを調達。投資家はEntrée Capital(リード)、Work-Bench、Emerge Venturesなど(CTech)
[国内]
- キャディ
製造業のバリューチェーンに散在するデータをAIで解析・構造化する「製造業AIデータプラットフォームCADDi」を展開。177億円を調達し、企業価値は1,820億円に到達。投資家はMoore Strategic Ventures、Coreline Ventures、Woven Capitalなど(PR TIMES) - Voxela
ネットワークカメラの映像をAIで解析し、介護施設の記録・報告・管理を自動化する映像AI「Vケア」を展開。シリーズAを完了し、累計調達額は約21億円。リードはデライト・ベンチャーズ、参加投資家はSOMPO Growth Partners、Happiness Capitalなど(PR TIMES) - nocall
生成AI電話サービス「nocall.ai」を展開し、自動車・金融・人材業界のエンタープライズ企業へ導入が進む。シリーズAで約8億円を調達し、累計調達額は10億円超。共同リードはJAFCOとArchetype Ventures、参加はCoreline Ventures(PR TIMES) - Yoom
AIエージェントと人が協働する業務自動化プラットフォーム「Yoom」を展開。初の外部調達で7億円を調達。投資家はDUAL BRIDGE CAPITAL、みずほキャピタル、静岡キャピタルなど(PR TIMES) - IPDefine
特許の価値分析と活用・収益化を支援し、企業の休眠特許買取を手がける。いちごアセットマネジメントから5億円の出資を受ける(PR TIMES) - エイトノット
船舶に後付け可能な自律航行システムを開発する海事テック企業。シリーズAのファーストクローズで4.5億円を調達。共同リードは伊藤忠テクノロジーベンチャーズとニッセイ・キャピタル、参加はQBキャピタルなど(PR TIMES) - kikitori
農産物流通のデジタル化を推進するクラウドサービス「nimaru」を展開。シリーズAで3億円を調達し、累計調達額は約7億円。リードはグロービス・キャピタル・パートナーズ、参加はアグリビジネス投資育成(PR TIMES) - AIONA
製造業の設計業務を自動化・支援するAIエージェント「REVY(レビー)」を開発。過去の技術文書や図面から判断材料をそろえ、品質機能展開、流用設計の選定、FMEA・DRBFM、検図などを横断的に支援。J-KISS型新株予約権と銀行融資により総額1.4億円を調達。ON&BOARDがリード。投資家はON&BOARD、GxPartners、クレストスキルパートナーズなど(PR TIMES) - 9lione(クリオネ)
医療機関の院内残薬を流通させる医薬品流通改善DXプラットフォーム「9lione」を展開。シリーズAで1.2億円を調達し、デットファイナンスを含む累計調達額は4.4億円。リードは横浜キャピタル(PR TIMES) - QueryLift
ChatGPTやGeminiなど生成AI上での企業・商品の言及や引用を分析するGEOプラットフォームを展開。シードで1億円を調達。投資家はJAFCO、Z Venture Capital(PR TIMES)



