■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

偉大なリーダーの5つのメンタルモデル
The Good BossのMedium「5 Mental Models That Will Take Your Leadership from Good to Great」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
偉大なリーダーはチーム管理や意思決定だけでなく、不確実性やプレッシャーに対処しながらチームの成長をサポートすることが非常に重要です。効果的な思考パターンが良い(Good)リーダーと偉大な(Great)リーダーの違いを生む、5つのメンタルモデルについての解説記事。
- 第一原理思考(First Principles Thinking)
第一原理思考とは、複雑な問題を基本要素に分解し、前提に疑問を持ち、基本的な真実に焦点を当てることで革新的な解決策を見つけるアプローチです。Elon Muskのロケット開発へのアプローチが有名な例です。 - 逆算思考(Inversion)
逆算思考は、成功だけに焦点を当てるのではなく「どのような失敗をする可能性があるか?」と逆算して考えることでリーダーが潜在的な落とし穴を特定し、事前に対応策を立てることができます。 - 地図は領土ではない思考(The Map is Not the Territory)
このメンタルモデルは、戦略(地図)は現実の近似値であり、現実(領土)そのものではありません。状況の変化に応じて調整が必要であることをリーダーは忘れてはいけません。戦略実行の70%は、適応力の欠如による失敗です。 - オッカムのカミソリ思考(Occam’s Razor)
リーダーは決断を複雑にしすぎる傾向があります。 オッカムのカミソリとは、最も単純な説明や解決策が正しいことが多いという考え方です。 不要な複雑さを断ち切り、最も単純なアプローチや解決策に集中するようリーダーに促すものです。 意思決定プロセスを単純化した企業は、競合他社を上回る可能性が12%高いというBain&Companyの調査結果もあります。 - パレートの法則(Pareto Principle)
努力のすべてが成果として報われるわけではなく、ごく一部だけが、成果の大部分をもたらします。パレートの原理とは、成果の80%は20%の努力から生まれるという考えです。ハーバード・ビジネス・スクールの調査によると、時間管理はリーダーにとって最重要課題の1つであり、その多くが価値のない仕事に全体の41%を費やしている調査結果もあります。
AIの未来を作る米AIスタートアップ経営幹部からの6つの学び
INSIGHT PARTNERS「6 lessons from top execs as they build the future of AI」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカのVCであるInsight Partnersが、業界をリードする投資先企業の経営幹部とのセッションから得た、大規模なAIビジネス構築のための重要な洞察をまとめた記事の要点です。これらの洞察は一見当たり前に思えるかもしれませんが、実際に優れたAIビジネスを構築する上で非常に重要な基盤となります。
- 明確なビジョンと測定可能な目標設定
成功するAIビジネスは、明確なビジョンを掲げ、その達成度を継続的かつ意図的に測定します。 - 独自データによる差別化
独自のデータセットを活用してAIをパーソナライズすることが競争優位性の源泉となります。汎用AIを超える価値を生み出す鍵です。 - セキュリティの壁を乗り越える手法
機密コンピューティング技術と強固なガバナンスフレームワークの実装により、AIの安全性とデータ保護の課題を解決できます。 - 生産性向上のバランス
決定論的アプローチとルールベースのシステムを組み合わせてエラーを削減しつつ、AIを活用して人間の能力を拡張することで真の生産性向上が実現します。 - スケーラビリティを考慮した設計
初期段階からスケーラビリティを考慮したAIプロダクト開発が、長期的な差別化につながります。後付けの最適化では遅すぎることが多いです。 - 部門横断的なAI活用
AIを組織全体で横断的に導入することで、企業内のサイロ化を解消し、より柔軟でダイナミックなタスク処理が可能になります。

Vertical SaaSが60%の導入率に達し、AIスタートアップは従来のSaaSより35%速く500万ドルのARRを達成
Stripe「Stripe’s 2024 annual letter」を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
北米決済大手のStripeがアニュアルレポートを公開しました。このレポートにはデジタル経済の主要トレンドに関する情報が含まれており、特に以下のポイントが興味深いと思いました。
- AI企業の驚異的な成長速度
Stripeのデータによると、トップ100のAI企業は24ヶ月で500万ドルのARRを達成しているのに対し、従来のSaaS企業は37ヶ月かかっており、AIスタートアップが約35%速く成長しています。具体例では、Cursorはわずか3年で1億ドルのARRを達成し、Lovableはたった3ヶ月で1,700万ドルのARR、Boltに至ってはわずか2ヶ月で2,000万ドルのARRを達成しています。 - Vertical SaaSの普及状況
米国では現在、中小企業の60%がVertical SaaSを活用しています。Vertical SaaSのグローバル普及も加速中。オーストラリアの中小企業では25%以上、英国では20%、シンガポールでは14%、フランスでは8%、ドイツでは5%と、各国で着実に浸透しています。 - Vertical SaaS企業によるAI活用例
Vertical SaaS企業はAIをいち早く自社プロダクトに取り入れています。例えばJobber Copilotはデータ分析からマーケティングキャンペーンの準備、顧客対応の自動化まで実現し、Practice Betterは医療従事者の診療記録の効率化と患者ケアの質向上をサポートしています。

Klaviyoから学ぶ4つのマーケティングの原則
Tomasz Tunguz Venture Capitalist at Theory「Four Marketing Principles That Redefine Markets from Klaviyo's Former CMO」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
PMF達成後、事業成長を加速させるためには何が必要なのか今週はTheory Ventureの記事よりKlaviyoの元CMOのインタビューを紹介します。マーケティングというよりも本質的にスタートアップが事業成長をするために重要な要素が簡潔に整理されています。
- 何かをやる前に、とにかくICPを定義する
- スタートアップにとって最も基本的な決定は、理想のお客様のプロファイル (ICP) を決定すること。ターゲットとする顧客が明確でなければ、GTMの取り組みの効果は出ない。
- 「Klaviyoのサービスは単なるメール配信サービスではなく、成長レバーとしてのEメールをセールスしていた」つまり、提案として「メールからの収益を40%増やすお手伝いをします」と言うことができた。それは、ICPの課題を本質的に理解していたから。
- スタートアップにとって「最も重要なこと」は焦点を絞ることであり、「多くのことにまたがろうとすること」は「スタートアップの成功を阻む最大の要因」となる。
- 業界の常識に対抗するポジショニングを取る
- 初期段階のスタートアップには市場の現状認識に抗うポジショニングが重要。これは、競合他社を直接攻撃することではなく、顧客の課題認識への挑戦。
- Klaviyo は、電子メールツールではなく、収益を高められるメールサービスという提案をしていた。「3rd party Cookie の廃止」という文脈でディマンドに緊急性を持たせることができた。
- GTMとプロダクト戦略は、ICPとTAM拡大の方向性と常にアラインすべき
- GTM戦略の要諦は、常にICPの需要や購買プロセスから検討するべきであり、その逆ではない。
- コンバージョン率が2~4%のPLGでは、150億円以上のARRを達成するには、数百万人の潜在的ユーザーが必要。顧客数が少ない市場では、各リードは非常に貴重であり、営業担当者が管理する必要がある。
- Dropboxは、当初はPLGだったが、顧客の反応が向上するに従って、SLGでの顧客獲得が増加した。
- 不安ではなくブランドで信頼性を構築する
- 恐怖心を顧客に想起させることは短期的な行動を促す一方で、ブランドに対する否定的な連想を生み出す。最も成功している企業は、前向きな結果と意欲的な価値観を中心にマーケティングを構築する。
これら 4 つの原則 (ICPを絞る、市場の常識と反するポジショニング、GTMとプロダクトとのアライン、ポジティブなブランド構築) は、スタートアップが市場シェアを獲得するのに役立つだけでなく、市場を完全に再定義します。
■ 資金調達ニュース
[海外]
バーティカル
- Shop Circle - EC事業者向けにAIを活用した商品発掘、主にコマース、アップセル、レビュー管理、在庫管理などのアプリ構築を支援するSaaS。シリーズBで$60Mを調達。投資家はNextalia Ventures、Endeavor Catalystなど(TechCrunch)
- Taktile - フィンテック企業の高度な財務的な判断を支援するAI。シリーズBで$54Mを調達。投資家は、など(TechCrunch)
- Sparta Commodities - オイル・ガスなどのコモディティ取引プラットフォーム。シリーズBで$42Mを調達。投資家はOne Peak、Singularなど(EU Startups)
- Unique - スイス発の銀行、保険、PEなどの金融サービス向けAIエージェント。シリーズAで$30Mを調達。投資家はCommerz Ventures、DN Capitalなど(TechCrunch)
- Bridgetown Research - デューデリジェンスに必要なデータ収集や調査作業を自動化できるAIエージェント。シリーズAで$19Mを調達。投資家はAccel、Lightspeedなど(TechCrunch)
- HouseWhisper - 不動産プロフェッショナル特化のワークフロー自動化AI。シードで$10Mを調達。投資家はPSL Venturesなど(FinSMEs)
エンタープライズ
- NinjaOne - 従業員のデバイス利用体験の向上と管理に特化したIT管理SaaS。評価額$5BのシリーズCで$500Mを調達。投資家はICONIQ Growth、Capital Gなど(Yahoo! Finance)
- Auditoria.AI - CFOや財務チームの財務業務を自動化するAIエージェント。シリーズBで$38Mを調達。投資家はInnovius Capital、Dell Technologies Capitalなど(Fintech Global)
- Regie.ai - セールス・イネーブルメントAI。シリーズBで$30Mを調達。投資家はScale Venture Partners、Foundation Capitalなど(TechCrunch)
- Perfect - 採用担当者が求人広告を作成/掲載先の決定をし、送られてきた回答を選別するためのAI Copilot。シードで$23Mを調達。投資家はHanaco Ventures、Joule Venturesなど(TechCrunch)
- Workhelix - 自動化AIの状況を把握・監視するAIイネーブルド・サービスを提供。シリーズAで$15Mを調達。投資家はAIX Ventures、Accenture Venturesなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- Mimic - ランサムウェア攻撃に対するサイバーセキュリティSaaS。シリーズAで$50Mを調達。投資家はGV、Menlo Venturesなど(PR Newswire)
- RADSecurity - AI 関連の新たな脅威からクラウドインフラを保護するサイバーセキュリティSaaS。シリーズAで$14Mを調達。投資家はCheyenne Ventures、Forgepoint Capitalなど(Fintech Global)
- Archipelo - AIソフトウェア開発向けの開発者セキュリティ姿勢管理(DevSPM)SaaS。などから$12Mを調達(TechCrunch)
フィンテック
- Metronome - OpenAI、Anthropic、Databricksなどが利用するソフトウェアとAIにおける利用ベース課金管理SaaS。シリーズCで$50Mを調達。投資家はNEA、Andreessen Horowitzなど(Yahoo! Finance)
- Venn - カナダ発のオール・イン・ワン財務・支出管理Fintech×SaaS。シリーズAで$15Mを調達。投資家はLeft Lane Capitalなど(Yahoo! Finance)
ヘルスケア
- Camber - 医療提供者が請求処理を合理化し、より迅速かつ正確に医療費支払いを受けられるFintech x SaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz、K Venturesなど(Yahoo! Finance)
ソフトウェア開発支援
- Lovable - スウェーデン発のAIフルスタックエンジニア。プレシリーズAで$15Mを調達。投資家はCreadomなど(TechCrunch)
リーガルテック
- Patlytics - 企業、知財専門家、法律事務所が特許の発見、分析、比較、出願から訴訟までのワークフローを効率化するためのAI。シリーズAで$14Mを調達。投資家はNext47、Gradient Venturesなど(TechCrunch)
その他
- Anthropic - AIチャットボット「Claude」を提供。評価額$61.5BでLightspeed Venture Partners、General Catalystなどから$3.5Bの調達を実施中(TechCrunch)
- Fluidstack - 仏マクロン大統領が発表したAIインフラにも活用したAI向けクラウドコンピューティングサービス。シリーズAで$100M~200Mの調達を実施中(Yahoo! Finance)
- Genspark - 元Baidu幹部が設立したAI検索エンジン。評価額$530MのシリーズAで$100Mを調達。投資家はLanchi Ventures、BlueRun Ventures Chinaなど(Yahoo! Finance)
[国内]
- ロジレス - EC自動出荷システム「LOGILESS」を提供。シリーズBで8.6億円を調達。投資家はMonoful Venture Partners、東芝テック、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、鈴与、コマースメディアなど(PR Times)
- NutmegLabs - 旅行・レジャーにおける観光事業者向けのタビナカDXプラットフォーム「Nutmeg(ナツメグ)」を提供。プレシリーズBで約5億円を調達。投資家はCarbide Ventures、Rice Capital、Coral Capital、ALL STAR SAAS FUNDなど(PR Times)
- shizai - 包装資材トランザクション事業+発注調達ソフトウェア(SaaS)の複数事業を提供。シリーズB 1st closeで4.2億円を調達。Monoful Venture Partners、日本郵政キャピタルと資本提携(PR Times)
- CareFran - 介護業界向けに生成AIをはじめとするデジタル技術を活用したケアプラン作成業務や問診・調整業務のソリューションを提供。ユナイテッドから資金調達(PR Times)