2024年のクラウド企業100(Cloud 100)が発表!SaaSトレンド
Bessemer Venture Partners「The Cloud 100 Benchmarks Report 2024」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今年で第9回を迎えるBVP、Salesforce Ventures、フォーブスの共催で行っているCloud 100の結果が発表されました。Cloud 100はグローバルのB2Bソフトウェアのトレンドを理解する上では参考になるので、おすすめです。2024年のハイライトは以下の通りです。
- 2024年のCloud 100企業の評価額合計は$820B(約12兆円)と昨年対比∔25%増
2023年は前年比で減少しましたが、今年の増加はSaaS・AI市場が成長回帰したことを示しています。要因としては、未上場期間の長期化の一方で、ARR $100M越えまでの平均期間が短縮され、かつてない速さで成長していることによります。 - 最も評価額が高いカテゴリーはAI、次いでFintech
今回初めてCloud 100入りした企業19社の内、7社がAIでトップ。次いでFintechが4社です。代表的なところでは、CoreWeave(29位)、amp(37位)、Brex(42位)、Lambda(84位)、Abridge(100位)が上げられます。 - ARR $100M達成までの平均期間は短縮されており、トップクラスのクラウド企業の成長スピードは加速
2016年のARR $100M達成までの平均期間は10年だったのに対し、 2024年平均は7.8年にまで短くなっています。特にAI企業の平均はさらに短く、6.3年。 平均の見込み売上成長率でみても、2023年は∔55%だったのに対して、∔70%と驚異的な回復を見せています。 - 一方で、Cloud 100企業のARRマルチプルは23倍と2021年から下落が継続
評価額は回復傾向、成長も加速である一方で、マルチプルは、下落が続いています。この要因は、低調なIPOマーケットや上場企業のマルチプルの下落です。つまり、クラウド系スタートアップは、厳しいマクロ環境からまだ完全にまだ抜け出したわけではありません。
エンタープライズSaaSの資本市場のいまと2024年10大予測
SAPPHIRE「Assessing the State of the SaaS Capital Markets and Our Predictions for 2024」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Sapphire Venturesが1月に発表した、2023年の資本市場でのSaaSの評価状況に基づいた2024年の予測が上半期が終わってどれだけ合っていたか?を自己評価した記事。こちらは、上記のCloud 100と違い、マーケット全体の現在地を教えてくれます。ここ最近、OneStreamのIPOやMicrosoftの成長加速、AWSの成長回復など、SaaSの復調を期待する見解が増えてきています。実際のところはどうなのでしょうか?
- 予測1. VC投資は徐々に復調する (評価:判断には時期尚早)
2024年上半期の調達総額では昨年対比-2%とまだ復調とは言えない - 予測2. ダウン・フラットラウンドが増加する (評価:予想通り)
シリーズB以降の資金調達ラウンドでは、全体の41%に増加し、2010年以来2番目に高い水準になっている。 - 予測3. 生成AIへの投資は好調が続くが選別が進む (評価:予想通り)
生成AIへのVC投資額は23年上半期比で∔31%増加した。但し、注目度の高い企業の再編は起こっており、今年後半には投資活動が冷え込む可能性はある。 - 予測4. ユニコーン増殖のピークが過ぎた (評価:予想通り)
2024年上半期は25社と、2023年通期(23社)より多いペース。ただ2021-2022年の年間150-250社ペースからは落ち着いている。 - 予測5. 上場SaaSのマルチプルは上昇する (評価:間違い)
2024年6月は4.7倍で、2023年12月時点の5.6倍より下がっている。 - 予測6. 売上成長率は改善する (評価:間違い)
2024年のソフトウェア売上成長率の中央値はわずか13%と予測されており、2023年よりさらに下がっている。 - 予測7. ”何が何でも成長”から”効率的な成長”へ (評価:予想通り)
売上高マルチプルとRule of 40の相関係数は、売上成長率単体よりも高い状態が続いている。 - 予測8.小~中規模のM&A案件数が増加する(評価:予想通り)
2024年上半期のエンタープライズソフトウェア分野のM&A案件総額は$121BとYoY+21%増加した。 - 予測9. スタートアップ間のM&Aは強者が統合していく (評価:予想通り)
公表されているエンタープライズソフトウェア分野のM&A案件の内、44%はスタートアップ間で過去最高。 - 予測10. ソフトウェアIPOが再興するが、2025年で本格化 (評価:判断には時期尚早)
Rubrik、OneStreamのIPOなどKlaviyo1件しかなかった2023年よりは多いが、本格化するのは2024年後半から2025年になる。
Shopify、Toast、monday.comが好調な背景
Saastr「Shopify and Toast and Monday Are On Fire: There’s No “Downturn” in B2B2C」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStrの記事より、B2B2B(Salesforce は成長率が 1 桁に落ちる予測)の多くが現在も苦戦している中で、B2B2C(テクノロジー以外をメイン顧客にしている企業) が好機を迎えていることについて解説された記事。最終消費者の需要が依然として高いという点は日本と大きく異なる点だが、ShopifyやToastなど、Fintechなどのサブスクリプション以外の収益源を確保していることや、monday.comのように顧客ポートフォリオが分散化していることは安定した業績を確保するための重要なポイントだと言える。
- ShopifyはARR は 82 億ドルで年度成長率21%からさらに加速。
- コロナ禍後に一時減速したものeコマース全体が市場シェアを拡大しShopify は急回復。ARRが80 億ドルを超え前四半期は 21% の成長を遂げ、今後はより成長が加速することが見込まれている。これは、100 億ドル近くのARR規模を考えると印象的です。
- ToastはARR15億ドルで年度成長率29%
- 外食コストがインフレ率を上回っているため、外食産業は依然厳しいがToastは好業績を維持している
- EBITDA は非常に堅調(FY EBITDA $295M)GAAP ベースでは黒字。
- monday.comは ARR が 8.8億ドルで 34% 成長
- monday.comの主な顧客基盤はテクノロジー業界以外。同社の成長は堅調に推移していますが、テクノロジー業界への販売が多い競合プレーヤー (Asanaなど) は大幅な減速が見られている。
バーティカル
- Anduril Industries - 大型ドローンから有人機まで、さまざまな空中の脅威を迎撃するために設計された自律型のジェットエンジン搭載ドローン等を開発する、防衛テックスタートアップ。シリーズFで$1.48Bを調達。評価額は$14B。投資家はFounders Fund、Sands Capitalなど(Crunchbase News)
- FLYR - 航空・旅行業界向けに収益を改善し、コストを削減し、予約システムを近代化するAIネイティブなSaaS。$295Mを調達。投資家はWestCap、BlackRockなど(Yahoo! Finance)
- Gloo - 教会などの宗教団体向けにデジタルコミュニティ形成などを支援するSaaS。戦略的なグロースラウンドで$110Mを調達。(FinSMEs)
- Seeq - エネルギー、化学、製薬などの製造業向けの高度なアナリティクス、AI、モニタリングSaaS。シリーズDで$50Mを調達。投資家はSixth Street Growth、Insight Partnersなど(SaaS News)
- Rewest - マネージド・サービス・プロバイダー(MSP)向け自動化SaaS。$45Mを調達。投資家はSipphire Ventures、Meritech Capitalなど(FinSMEs)
- Cents - コインランドリー、クリーニング店などの衣料品ケアビジネス向けにPOS、オンライン注文、決済端末、マーケティングツールなどを統合したオールインワンSaaS+ハードウェア。シリーズBで$40Mを調達。投資家はCamber Creek、Bessemer Venture Partnersなど(SaaS News)
- Datch - 製造業、エネルギーなどの現場ワーカー向けのAI×SaaS。シリーズAで$15Mを調達。投資家はThird Prime、Blackhornなど(Yahoo! Finance)
エンタープライズ
- Placer.ai - 小売、イベント、不動産、金融サービス業界など向け、位置情報データに基づくマーケットリサーチAI。評価額$1.5Bで$75Mを調達(TechCrunch)
- Level AI - LLMネイティブな顧客体験(CX)インテリジェンスおよびカスタマーサービス自動化AI×SaaS。シリーズCで$39.4Mを調達。投資家はAdams Street Partners、Battery Venturesなど(SaaS News)
- Prorata.ai - 大手メディアおよび音楽企業とライセンス契約を結び、クリエイターはクレジットと報酬を得ることができ、消費者は属性付きの正確な回答を提供できる生成AI×SaaS。シリーズAで$25Mを調達。投資家はMayfield、Revolution Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Levitate - 様々なコミュニケーションツールを単一のプラットフォームに統合する、AIアシスタント×SaaS。シリーズDで$15Mを調達。投資家はHarbert Growth Partners、Northwestern Mutual Future Venturesなど(Fintech Global)
データ・AI・システム管理
- Contextual AI - AIモデルのパフォーマンスを向上させるAI。シリーズAで$80Mを調達。投資家はGreycroft、Bain Capital Venturesなど(Reuters)
- Mechanical Orchard - 元Pivotal CEOが設立した、「AI強化」ツールとクラウドインスタンスを使用して、老朽化したアプリやサービスを最新にアップデートするSaaS。シリーズBで$50Mを調達。投資家はGVなど(TechCrunch)
- Knime - モジュール式で拡張性が高く、オープンなデータ処理プラットフォーム。シリーズで$30Mを調達。投資家はInvus(TechCrunch)
- Neon - オープンソースのリレーショナルデータベース「Postgres」を商用化したSaaS。シリーズで$25Mを調達。投資家はM12、General Catalystなど(Silicon Angle)
サイバーセキュリティ
- Abnormal Security - 人間の行動を理解するために機械学習とAIを活用することで、電子メールや接続されたアプリケーション全体で攻撃を阻止するAI×SaaS。シリーズDで$250Mを調達。評価額は$5.1B。投資家はWellington Management、Greylockなど(Crunchbase News)
- Protect AI - AIやMLシステムを独自のセキュリティ・リスクから保護するSaaS。シリーズBで$60Mを調達。投資家はEvolution Equity Partners、01 Advisorsなど(Fintech Global)
- Aurascape AI - AI時代のサイバーセキュリティSaaS。シードで$12.8Mを調達。投資家はMayfield Fund、StepStone Groupなど(Yahoo! Finance)
フィンテック
- Bilt Rewards - 消費者に家賃や日々の買い物でリワードを提供し、顧客エンゲージメントを高めるFintech×SaaS 。評価額$3.25Bで$200Mを調達。投資家はOntario Teachers’ Pension Plan、Vanderbilt University Endowmentなど(TechCrunch)
- CloudPay - 企業向けに給与計算と(オンデマンド給与支払い含む)決済を提供するFintech×SaaS。シリーズで$120Mを調達。投資家はBlue Owl Capital、Rho Capital Partnersなど(TechCrunch)
その他
- Moonshot - 「中国LLMの5大虎」の1社に選ばれる独自LLM開発スタートアップ。評価額$3.3Bで$300M超を調達。投資家はTencent、Garong Capital,など(Yahoo! Finance)
- Black Forest Labs - ドイツ発のテキストから画像を生成するAI。シードで$31Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz、General Catalystなど(Andreessen Horowitz)
- Hedra - スピードとコントロールに優れた動画生成AI。シードで$10Mを調達。投資家はIndex Ventures、A16Z Speedrunなど(Forbes)
- 二ーリー - モビリティSaaS「Park Direct(パークダイレクト)」を運営。シリーズBで総額45.7億円を調達。JPインベストメントをリード投資家とし、Keyrock Capital Management、SBIインベストメント等の追加出資に加え、新規投資家として日本政策投資銀行、全国保証イノベーションファンド(Spiral Capital)、サカイ引越センターも参加(PR Times)
- ペイトナー - 受け取りから振込まで自動化する請求書受領サービス、融資や借入が難しいフリーランスの資金繰り改善をサポートする請求書先払いサービスを提供。約12億円を調達。投資家はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、ニッセイキャピタル、Angel Bridge、Spiral Innovation Partners、W、インキュベイトファンド(PR Times)
- A1A - 自動車業界において調達コスト最適化するSaaSを提供。総額4億円を調達。投資家は、豊田通商、ALL STAR SAAS FUND、長瀬産業(PR Times)
- knewit - 荷主向けサプライチェーン DX ツール「ニューイット」の開発・提供。プレシリーズAラウンドにて資金調達を実施。投資家はKUSABI、Central Japan Seed Fund、Adlib Tech Ventures(PR Times)