■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

AI時代でもMoatを持つSaaS企業の本質的価値
Finbarr Taylor氏のX「In Defense of SaaS」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Finbarr Taylor氏による論考で、AI開発ツールの台頭でSaaS企業の価値がゼロになるという市場のSaaSpocalypse論を批判的に分析しています。日本の起業家にとって、<yellow-highlight-half-bold>AI時代における「真の競争優位性」と「防御可能なビジネスモデルの本質」を理解する上で極めて重要な視点を提供します<yellow-highlight-half-bold>。記事の要約は以下の通りです。
- 市場の過剰反応とロジックの破綻
Microsoft、Oracle、Salesforceなど主要SaaS企業の株価が暴落し、ソフトウェアセクターETFは28%下落、2,850億ドルの時価総額が蒸発しました。市場は「AIがすべてを変える」から「ゆえにソフトウェアは無価値」と結論づけていますが、これは論理の飛躍です。AIツールを真剣に使うべきという主張の核心は、まさに有料サブスクリプションのSaaS製品を使うことだからです。 - UIのクローンとビジネスのクローンは別物
週末でSalesforceやRedditのようなUIを構築できても、1日1億人のユーザーを獲得する方法、10年かけて完成させた推薦アルゴリズム、モデレーターエコシステム、コミュニティ文化、API統合、広告主との関係、ブランド安全性のインフラは複製できません。SaaSの価値は見た目ではなく、組織内での機能にあります。 - 5つの真のMoat
- ネットワーク効果(Slack、GitHub上のユーザーが価値を増幅)
- スイッチングコスト(ServiceNow実装は12-18ヶ月、Workday移行は数年プロジェクト)
- データモート(何年もの独自データは複製不可)
- ブランドと信頼(CISOは5万人企業に「1時間前に登録されたtotallylegitsecurity.ai」ではなくCrowdStrikeを選ぶ)
- 規制・コンプライアンス基盤(SOC 2、HIPAA、FedRAMP、GDPR等)
- 機能競争からの教訓
Base44社がSalesforceの年間35万ドルのライセンスをキャンセルして代替品を構築した事例は話題になりましたが、実はSalesforceは10年間、より安価で現代的なCRM(HubSpot、Pipedrive、Close)の脅威にさらされ続けながらも勝ち続けています。理由は、CRM切り替えが営業組織全体の再トレーニング、パイプラインデータの移行、全統合の再構築を意味するからです。難しいのは代替品の構築ではなく、移行を生き延びることです。 - AIは対称的な武器
競合が週末であなたの機能をクローンできるなら、あなたも彼らの次の機能を週末でクローンできます。AIは攻撃者を選択的に有利にするのではなく、むしろ既存ユーザーベース、配信網、データ、ブランドを持つ既存企業をより有利にします。彼らはAI搭載機能を一夜にして数百万ユーザーに展開できますが、週末プロジェクトのスタートアップは全顧客をゼロから獲得する必要があります。 - スタートアップの機会も健在
ソフトウェア構築の障壁は下がりましたが、優れたアイデアを持つ障壁、十分にサービスされていない市場を理解する障壁、壊れたワークフローを特定し真に優れたアプローチを設計する障壁は全く下がっていません。既存企業は既存のインターフェース、ワークフロー、メンタルモデルに依存する数百万のユーザーを持つため、大幅な変更はできません。これがイノベーターのジレンマであり、AIツールはこれを解決しません。 - エージェント時代の誤解
AIエージェントがソフトウェアを選択する未来では、エージェントは信頼性、稼働時間履歴、セキュリティ認証、統合の広さ、データ移行の複雑さ、ベンダーの安定性、スイッチングコストを含む総所有コストを評価します。つまり、人間よりも合理的なAIエージェントは、先週火曜日に設立された企業に惑わされず、5年間の稼働記録、SOC 2 Type IIレポート、G2の4,000件のレビューを見て既存の信頼できる企業をより選好します。
AI時代の「Build vs Buy」論争:短期の過大評価と長期の過小評価
Clouded Judgement「Clouded Judgement 2.13.26 - Build vs Buy」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Altimeter CapitalのJamin Ball氏による論考で、<yellow-highlight-half-bold>AIがソフトウェア業界に与える影響について「Build vs Buy(自社開発 vs 購入)」の視点から分析<yellow-highlight-half-bold>しています。日本の起業家にとって、AIによる市場のコモディティ化リスクと、真に破壊的な変化がどこで起きるのかを理解する上で重要な洞察を提供します。記事の要約は以下の通りです。
- 短期過大評価と長期過小評価の同時発生
ソフトウェアセクターは引き続き下落していますが、Ball氏は「AIの影響を短期的には過大評価し、長期的には過小評価している」と指摘します。「誰もが自分でソフトウェアをvibe-codingする」という理由でソフトウェアが死ぬという論理には全く同意できません。これは単に「Build vs Buy」論争の新たな反復に過ぎないのです。 - 歴史的なBuild vs Buy選択の6つの理由
企業が歴史的に内製を選ばなかった理由は以下の6つ。- 総所有コストメンテナンス、インフラ、サポート、アップグレード、機会費用が「無料」に見える内製ソフトを上回る)
- 市場投入速度ベンダーは既に本番環境対応済み、内製は四半期から年単位)
- コア差別化への集中エンジニアリング時間は希少、コモディティ化されたインフラやアプリの再構築ではなくユニークな価値創造に使うべき)
- 継続的メンテナンスと技術的負債
- 規模の経済と機能開発速度ベンダーは数千顧客にR&Dコストを分散し継続的に改善を出荷
- 信頼性・セキュリティ・コンプライアンスの専門性
- 真のリスクは内製ではなく市場の氾濫
Vibe-codingは内製の歴史的課題の一部を解消しますが、多くは残ります。しかし、本当のリスクは別のところにあります。ソフトウェア作成コストがゼロに向かうことで、誰かが内製CRM代替品をvibe-codingすることではなく、10社がゼロから新しいCRMを構築し、新しいエンドユーザー(人間ではなくエージェント)向けに設計され、AI時代のビジネスモデル(シート課金ではなく消費量・使用量ベース)で展開され、突然市場が供給過剰となりレガシー領域がコモディティ化すること。これこそが真の脅威なのです。 - エンジニアリング制約の消失がもたらす影響
クラウド以前は、サーバーラックをどれだけ早く立ち上げられるかが制約でした。クラウド時代にそれはコモディティ化され、エンジニアリングリソース(どれだけ早くソフトウェアを開発できるか)が制約要因になりました。AIにより、その制約(エンジニアリング速度)が消失しつつあります。世界はソフトウェアで溢れかえろうとしています。 - 金融市場は決算より先にディスカウントする:新聞業界の教訓
市場は通常、収益に影響が出る前に(破壊が数字に現れる前に)、大きな破壊の可能性に直面する株式を割り引きます。2002年から始まる新聞業界の株価と収益のインデックスを見ると、市場の投票マシンはインターネットからの破壊を予見し、すぐに新聞株のディスカウントを開始しました。2002年から2009年まで株価は直線的に下落しましたが、同期間の収益予想は実際には約5年間成長していました。株価下落中も収益は成長していたのです。収益が本当に破壊され始めたのは2007年で、その後崖から落ちるように収益が急落しました。短期的な四半期決算に安心しすぎてはいけないということです。

これからのSaaSは利益をどのように生み出すか
99% Derisible「Creating margins after SaaS」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
『SaaS is Dead』つまりAIの台頭により、従来のSaaSビジネスモデルの前提に疑義が生じている状況です。これまでのSaaS株の高いマルチプルが許容されていた背景には、「限界コストゼロ」「価値の持続性の高さ」「高いスイッチングコスト」という3つの柱がありましたが、これらがAIによって侵食されていることを示しています。<yellow-highlight-half-bold>しかしSaaSは完全に消滅するというのは行き過ぎた主張であり、企業は依然としてSaaSを必要とします。「今後の成功の鍵を握るもの」についてヒントを与えてくれる内容となっています。<yellow-highlight-half-bold>
- SaaSの3つの前提が崩壊
従来のSaaS企業の利益は「限界費用ゼロ」「一時的でない価値」「高い切り替えコスト」に依存していたが、AIによって脅威にさらされている。AI活用による限界費用の拡大、新ツールの急速な進化で価値減衰は加速し、ソフトウェアの差別化が弱まり複製・切り替えが容易になる。結果として、純粋なアプリケーションソフトウェア事業は高い事業成長が難しくなる状況が要素として存在する。
- ソフトウェアベンダーが生き残る理由
一方でTAMがゼロにならない根拠は、各企業が競争する際に、全てを自作したりベンダーを頻繁に切り替えたりしないという点にある。ベストプラクティスをアウトソーシングし、差別化されていないコストセンター維持を避けたいという強い動機がある。あらゆる意思決定は資本配分の問題であり、企業は最も差別化された収益を生む分野にリソースを集中するものである。これがAnthropicやOpenAIがSlackを自作しない理由であり、専門サービスが消えない理由になっている。
- スイッチングコストこそが鍵
一時性や複製可能性ではなく、切り替えコストが価格決定力とマージンの真の原動力となる。顧客離れなしにコストを大幅に上回る価格設定ができれば価格決定力があると見なされる。切り替えコストの源泉(たとえば、ブランド、ネットワーク効果、ユースケース)は問わない。「ソフトウェアはビジネスツールであり、ビジネスモデルではない」という認識が重要である。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Databricks - データ&AIプラットフォーム。シリーズLで$5B以上を調達(加えてデットで$2B)。評価額は$134B。投資家はInsight Partners、Fidelity、JPMorgan、Goldman Sachsなど(Databricks)
- Runway - AI動画生成スタートアップ。シリーズEで$315Mを調達。評価額は$5.3B。投資家はGeneral Atlantic、Nvidia、Adobe Ventures、AMD Venturesなど(TechCrunch)
- Simile - 人間の行動予測AIモデルを開発。企業の収益報告や顧客購買行動の予測などに活用。シリーズAで$100Mを調達。評価額は$300M。投資家はIndex Ventures、Bain Capital Ventures、A*など(Silicon ANGLE)
- Naboo - オフサイト、セミナーなどのイベント予約・管理するためのAI搭載イベント企画プラットフォーム。シリーズBで$70Mを調達。投資家はLightspeed、Notion Capital、ISAIなど(FinSMEs)
- Monaco - シード・アーリー企業向けにCRM、リード発掘、自動化営業を提供するAIネイティブのセールスプラットフォーム。合計$35Mを調達(シード$10M + シリーズA $25M)。投資家はFounders Fund、Human Capital、Patrick & John Collisonなど(TechCrunch)
- Brandlight - AIによるブランド・オンライン可視性プラットフォーム。シリーズAで$30Mを調達。投資家はPelion Venture Partners、Cardumen Capital、G20 Venturesなど(CTech)
- Newo - 中小企業向け音声AIレセプショニストプラットフォーム。シリーズAで$25Mを調達。投資家はVeeam創業者Ratmir Timashev、Aloniq、Constructorなど(Globe Newswire)
- Complyance - AIネイティブのエンタープライズGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)プラットフォームで、手作業を70%削減。シリーズAで$20Mを調達。投資家はGV(Google Ventures)、Speedinvest、Everywhere Venturesなど(TechCrunch)
- Winn AI - リアルタイムでセールスコールをAIがガイドし、CRM自動連携により営業生産性を向上。シリーズAで$18Mを調達。投資家はInsight Partners、Mangusta Capital、S Capitalなど(Business Wire)
サイバーセキュリティ
- Vega - AI-NativeセキュリティアナリティクスメッシュでSIEMの代替となり、データを一元化せずに脅威検知・対応を実現。シリーズBで$120Mを調達。評価額は$700M。投資家はAccel、Cyberstarts、Redpoint Venturesなど(TechCrunch)
- Opaque - エンタープライズ向けConfidential AIプラットフォームで、暗号化されたデータ上でAIワークフローを実行。シリーズBで$24Mを調達。評価額は$300M。投資家はWalden Catalyst、Intel Capital、Race Capitalなど(PR Newswire)
- GitGuardian - コードセキュリティとNon-Human Identity(NHI)管理のプラットフォームで、AIエージェントのクレデンシャル管理にも対応。シリーズCで$50Mを調達。投資家はInsight Partners、Quadrille Capital、Baldertonなど(Insight Partners)
- Reco - AI時代に特化した専用設計のAI SaaSセキュリティプラットフォーム。シリーズBで$30Mを調達。投資家はZeev Ventures、Insight Partners、Workday Venturesなど(CTech)
- Opaque - 機密データを安全に処理するConfidential AIプラットフォーム。暗号化証明によりデータプライバシーとモデル整合性を保証。シリーズBで$24Mを調達。評価額は$300M。投資家はWalden Catalyst、Intel Capital、Race Capitalなど(PR Newswire)
- Lema AI - エンタープライズサプライチェーンセキュリティ。シリーズAで$24M(シード含む)を調達。投資家はTeam8、F2 Venture Capital、Salesforce Venturesなど(CTech)
バーティカル
- Didero - 製造業向け調達業務を自動化するAIエージェントプラットフォーム。ERPシステム上でサプライヤーコミュニケーションや発注追跡を自動実行。シリーズAで$30Mを調達。投資家はChemistry、Headline、M12など(TechCrunch)
- Integrate - 政府・防衛産業向けの機密プロジェクト管理プラットフォーム。シアトル拠点。シリーズAで$17Mを調達。投資家はFPV Ventures、Fuse VC、Rsquared VCなど(TechCrunch)
- Meridian - AIエージェント型のスプレッドシートIDEで、金融モデリングを数時間から数分に短縮。シードで$17Mを調達。評価額は$100M。投資家はa16z、General Partnership、QED Investorsなど(TechCrunch)
ハードウェア×AI
- Apptronik - ヒューマノイドロボット「Apollo」を開発し、製造・物流業界向けに展開。シリーズAで$520Mを調達。評価額は$5.3B。投資家はB Capital、Googleなど(CNBC)
- Gather AI - 倉庫カメラ・ドローン向けAIプラットフォーム。シリーズBで$40Mを調達。投資家はSmith Point Capital、Bain Capital Ventures、XRC Venturesなど(TechCrunch)
ヘルスケア
- Garner - 医療ナビゲーションプラットフォームで、320M人以上の医療記録データを活用し最適な医師を推奨。シリーズDで$118Mを調達。評価額は$1.35B。投資家はKleiner Perkins、Redpoint、Kaiser Permanente Venturesなど(Fierce Healthcare)
- Take2 - 医療機関向けAIエージェントプラットフォームで、採用業務を自動化。24時間対応のAI面接官を提供し、採用プロセス全体を効率化。シリーズAで$14Mを調達。投資家はHuman Capital、Bertelsmann Healthcare Investments、Reach Capitalなど(PR Newswire)
フィンテック
- Bretton AI - 金融犯罪対策向けAIプラットフォーム(旧Greenlite AI)で、KYC・AML・制裁調査を自動化。シリーズBで$75Mを調達。投資家はSapphire Ventures、Greylock、Thomson Reuters Venturesなど(Business Wire)
- Uptiq - 金融機関向けのAIエージェントプラットフォームで、融資・資産管理ワークフローを自動化。シリーズBで$25Mを調達。投資家はCurql、Silverton Partners、645 Venturesなど(FinSMEs)
ソフトウェア開発支援
- Entire - 元GitHub CEO Thomas Dohmkeが創業したAIコーディングスタートアップ。$60Mを調達。評価額は$300M。投資家はFelicis、Madrona、M12など(TechCrunch)
[国内]
- クオリィ - ソニーグループの医療ロボット研究技術を継承し、マイクロサージャリー(顕微鏡下の外科手術)支援ロボットを開発。シリーズAで18億円を調達。投資家はファストトラックイニシアティブ、MedVenture Partners、ソニーグループなど(PR Times)
- InsightX - ファッション・アパレル向けに展開する「シェルフ型レコメンド」技術を基盤とし、オンワード、パル、ルミネ、アーバンリサーチなど10社以上が導入。シリーズAで8億円を調達(2nd closeで2億円追加、総額8億円)。投資家は楽天キャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、DNX Venturesなど(PR Times)
- InfiniMind - 長尺映像の深層理解に特化した大規模映像基盤モデル(LVM)「DeepFrame」を開発。シードで9億円を調達。投資家はUTEC(リード)、CX2、Headline ASIA Venturesなど(PR Times)



