アメリカのSaaS・AIスタートアップの資金調達のいま
Redpoint Ventures「Market Overview: March 2024」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカのソフトウェア企業の上場・未上場マーケットの現状分析を行ったRedpoint Venturesによる分析レポート。
上場企業は、成長と株価の回復が見えはじめている一方、未上場スタートアップにおいては、ソフトウェアバブル後の調整(ダウンラウンドによる資金調達、会社の清算)が一定2023年に進んだことが読み取れます。
また、この資料では、AI系と非AI系SaaS企業による調達・成長率の違いを比較しています。主なインサイトは以下の通りです。
- ソフトウェア企業のネット・ニューARR成長率を見ると、2023年Q1に底を打ち、2023Q4にはプラス成長に回帰している
- 2024年現在のソフトウェアセールスのノルマ達成率(41%)は、2022Q4(23%)、2023Q4(29%)より回復基調にある
- 2024年現在のダウンラウンドでの資金調達ラウンドの割合は、15%と過去5年の中では増加傾向にある
- $10M以上調達を実施したスタートアップの倒産件数は、2022年47件に対して、2023年は122件と3倍弱に増加した
- 高成長している上場SaaS企業のマルチプルは、2024年現在では15.6xと過去2年より高い水準に回復している
- AI系SaaSスタートアップのシリーズB・C時は、非AI系SaaSに比べて、ARR成長率2.5倍、マルチプル3倍、調達額1.7倍になっている
セコイア主催の「AI Ascent」からのTakeaway
Sequoia CapitalのYoutube一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
先週、セコイアキャピタルがAIに特化したイベントを主催しました。Open AIやAnthropicなどから著名なゲストを招き、さまざまなセッションが展開されました。以下が、その主な学びです。
- Agent型AIワークフローへの注目が高まっています。これは、AIにお題を出して、計画立案や使用ツールの選定などの過程をAIが自ら考え、実行に移す形式です。さらに、そのプランニング方法に対して人間がフィードバックを行い、最適化を図ることが可能です。例えば、Devin.aiは、Agent型AIワークフローを採用して最近注目を集めている事例の一つです。
- Multi-Agentの活用も重要なトピックです。複数のAIエージェントがそれぞれ特定の役割を担い、目標達成のために協力し合う形式です。例えば、あるAIエージェントがコードを書き、別のAIエージェントがそのコードの指摘やバグ探しを行う役割を持ち、共同でプロジェクトを進めます。
- 生成AIスタートアップは、推定で4500億円の総売り上げを達成しました。これは、SaaS業界の立ち上がりよりもはるかに速いペースです。
- 生成AIのアプリ開発では、開発の初期段階での正確性を最優先し、コストの最適化はその後に考えることが鉄則です。
データ活用でマルチプロダクト戦略を推進するエクスパンションモデル
SmartHRの岡田さんのnote「データ活用でマルチプロダクト戦略を推進するエクスパンションモデル」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
人事・労務管理システムから始まったSmartHRはマルチプロダクト戦略のもと、タレマネなど様々な領域のプロダクトをローンチし急成長を実現しています。その基盤にあるのが「データベース構築」です。今回はデータ活用とマルチプロダクト戦略、それにまつわる組織連携について解説されたSmartHRの岡田さんのnoteをご紹介します。
データベースを保有することの優位性
- 従業員データが全てのプロダクトで分断することなく繋がっているため、従業員マスタの変更さえすれば良い。情報書き換えによる工数やミスが発生しません。プロダクトのUIや問い合わせ先も統一されるため、学習コストも下げられる。
エキスパンションの機会を高める2つの要素
- プロダクトやブランドに対するロイヤルティ
- アップセルやクロスセル対象となるプロダクトの追加ニーズ
「顧客内でプロダクト活用が定着していれば、顧客と継続的なタッチポイントが持てるのでエクスパンションの機会は自ずと増える」は真であるが、一方で、プロダクトの認知や関心もクロスセルには非常に重要なポイント。
AIファースト
- Celestial AI - コンピュートとメモリーの分離し、AI処理をより高速で、エネルギー効率高く実施するプラットフォーム。シリーズCで$175Mを調達。投資家はUSIT、AMD Venturesなど(Crunchbase News)
- HeyGen - ビデオ生成AI。評価額$440Mで$60Mを調達。投資家はBenchmarkなど(The Information)
- Hume AI - 人間の感情を理解するAI。シリーズBで$50Mを調達。投資家はEQT Ventures、Union Square Venturesなど(Business wire)
- Fireworks AI - シリーズAで$25Mを調達。投資家はBenchmark、Sequoia Capital、Snowflake元CEO Frank Slootmanなど(TechCrunch)
- Gather AI - ドローンとAIを駆使した倉庫内の在庫状況把握ソリューション。シリーズAエクステンションで$17Mを調達。投資家はBain Capital Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Nominal -中堅企業や複数の事業体を持つ企業のためのERPシステムと財務管理システムのギャップを埋める生成AI。シードで$9.2Mを調達。投資家はBling Capitalなど(FinSMEs)
バーティカル
- Coast - 運送会社が燃料費や輸送費の支払いと管理を行うSaaS。$92Mを調達。投資家はAccel、Insight Partnersなど(Fintech Futures)
- Global Screening Services - 英ロンドン発の金融機関向け制裁義務履行を支援する規制コンプライアンスSaaS。$47Mを調達。投資家はCommonwealth Bank of Australia、Cynosure Groupなど(TechCrunch)
- PipeDreams - 元Nextdoor幹部が設立した、ServiceTitanに競合する配管工事業など向けのバーティカルSaaS。シリーズAで$25.5Mを調達。投資家はCanvas Ventures、Pluralなど(TechCrunch)
- Tennr -医療機関のファックスを使ったマニュアル文書管理を自動化するAI 。シリーズAで$18Mを調達。投資家はAndreessen Horowitzなど(Forbes)
- TurbineOne - 政府機関の機械学習ソリューション。シリーズAで$15Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、The General Partnershipなど(Yahoo! Finance)
- Dema - EC事業者向けの予測分析SaaS。シードで€7Mを調達。投資家はJ12 Venturesなど(FinSMEs)
サイバーセキュリティ
- Cyera - イスラエル発のクラウドデータセキュリティSaaS。シリーズCで、評価額$1.5Bで約$300Mを調達活動を実施中。投資家はCoatueらの見込み(TechCrunch)
- Coro - SMB向けのサイバーセキュリティSaaS。シリーズDで、評価額$750Mで$100Mを調達。投資家はOne Peak、Balderton Capitalなど(TechCrunch)
- Zafran - 企業の脆弱性データと組織のセキュリティ管理策を同時に管理するSaaS。$30M以上を調達。投資家はSequoia Capital、Cyberstartsなど(FinSMEs)
- Finite State - ソフトウェアサプライチェーン管理SaaS。グロースラウンドで$20Mを調達。投資家はEnergy Impact Partnersなど(Fintech Global)
- Sevco Security - 企業のオンライン上のIT資産へのサイバー攻撃管理(CAASM)SaaS。シリーズで$17Mを調達。投資家はSYN Ventures、Accompoliceなど(FinSMEs)
エンタープライズ
- Observe - データオブザバビリティ(データ可観測化)SaaS。シリーズBで$115Mを調達。投資家はSutter Hill Ventures、Snowflakeなど(TechCrunch)
- AiDash - 衛生データとAIを活用して、エンタープライズが気候変動に柔軟に意思決定するためのインフラSaaS。シリーズCエクステンションで$50Mを調達。投資家はClimate Ventures、Duke Energyなど(Yahoo! Finance)
- Viam - IoT/ロボットなどの産業用機械のオープンソース型開発SaaS。シリーズBで$45Mを調達。投資家はUnion Square Ventures、Battery Venturesなど(TechCrunch)
- Fieldguide - コンプライアンス管理や監査対応管理のためのSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はBessemer Venture Partnersなど(The SaaS News)
- Skyflow - AI時代のデータプライバシーSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はKhosla Venturesなど(TechCrunch)
フィンテック
- FundGuard - AIを活用したマルチアセットクラスの投資管理を支援するSaaS。シリーズCで$100Mを調達。投資家はKey1 Capital、Euclidean Capitalなど(FinSMEs)
- ZayZoon - 中小企業向けアーンド・ウエージ・アクセス(EWA)SaaS。 シリーズBエクステンションで$15Mを調達。投資家はViola Fintechなど(FinSMEs)
- Cloudbase - クラウドセキュリティプラットフォーム。シリーズAセカンドクローズを完了、総額12.5億円。投資家は三井住友銀行、サーバーワークス、デライト・ベンチャーズ(PRTimes)
- LIGHTz - 製造業向けナレッジ共有プラットフォーム。シリーズAで8.6億円の資金調達を完了。投資家は豊田通商、Fiducia、東北大学ベンチャーパートナーズ、いわぎん事業創造キャピタル、筑波総研、常陽キャピタルパートナーズ、FVC Tohoku、NOBUNAGAキャピタルビレッジ、佐銀キャピタル&コンサルティング、その他、事業会社1社(PRTimes)
- Tensor Energy - 再生可能エネルギー発電事業の統合管理プラットフォーム。プレシリーズAで4.5億円調達。投資家はデライト・ベンチャーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、DNX Ventures、FFGベンチャービジネスパートナーズ、Plug and Play Japan(PRTimes)
- for Crafts - 食品産業向けDXソリューション。シードラウンドを実施。投資家は、サイバーエージェント・キャピタル、デジタルHD創業者 鉢嶺登氏(PRTimes)
- Figurout - 企業価値マネジメントSaaS。資金調達ならびに資本業務提携をアバントグループと実施。(PRTimes)
- Linc - グローバル人材採用管理プラットフォーム。資金調達を実施。投資家はZ Venture Capital。(PRTimes)
- FRINGE - 宿泊施設管理アプリ。資金調達を実施。投資家はHeadline Asia(PRTimes)