■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

「アンチERPなERP」で業界を破壊せよ!Doss創業者が語る次世代ERPプラットフォーム戦略
Bessemer Venture Partners「Lessons from Doss on building an ‘anti-ERP ERP’ platform」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Bessemer Venture Partnersが、Doss共同創業者兼CEO Wiley Jones氏へのインタビューを通じて、<yellow-highlight-half-bold>従来のERPモデルを逆転させる「ソフトウェアがビジネスに合わせる」アプローチ<yellow-highlight-half-bold>を解説。日本のSaaS起業家にとって、ERPのレガシー企業に挑戦する際の戦略設計と差別化の重要な示唆を提供します。記事の要約は以下の通りです。
- 「ソフトの都合に合わせるな」という革命的発想
Dossは従来の「ビジネスをソフトに合わせる」ERP思想を逆転させ、「ソフトをビジネスオペレーションに合わせる」アプローチで中小製造業の非効率性を解決しています。創業者のWiley氏は中国工場でのロボット玩具製造体験から、ERPの構造的問題を発見しました。 - AIブランディングより結果重視の顧客アプローチ
DossはAIネイティブ企業でありながら、ウェブサイトに「AI」という文字を一切使用していません。オペレーションや財務担当者は技術的な流行語ではなく、実際の業務効率化と数万ドルのコスト削減効果に関心があるためです。 - PMO(人間味のある関係構築)による差別化
レガシーERP(SAP、Oracle等)は「顔の見えない巨人」として機能しますが、Dossは個人レベルでの人間関係を重視。PMO(Project Management Officer)という独自役職を設け、営業から導入後まで一貫した担当者が顧客をサポートします。 - ポイントソリューション→プラットフォーム展開
既存ERP環境への参入では、特定業務課題の解決(ポイントソリューション)で「装甲を貫通」し、その後プラットフォーム全体へ拡張する「Land and Expand」戦略を採用しています。 - 「凡庸さの中の卓越」哲学による10倍改善
オリンピック水泳選手の研究から着想を得た「量ではなく質的に異なるアプローチ」を実践。個別機能ではなく、根底にある抽象化レイヤーを構築することで、顧客の多様な要求に30分で対応可能な柔軟性を実現しています。 - 世代交代の追い風を最大活用
レガシーERPのサポート終了、従来システムに精通した世代の退職、生成AIの急速な進歩という「3つの追い風」が同時に発生している千載一遇のタイミングを捉えて市場参入しています。 - 魔法の瞬間を演出するデモ戦略
「十分に発達した技術は魔法と区別がつかない」というアーサー・C・クラークの言葉を引用し、顧客の既成概念を覆す「魔法的体験」の提供により、AI懐疑論を乗り越える顧客獲得手法を実践しています。
IPOは詐欺なのか?Figma の IPO "大成功" から学ぶエクイティファイナンスの真実
OnlyCFO's Newsletter「Is the IPO Process a Scam?」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
OnlyCFOの記者がFigmaの250% IPOポップを分析し、<yellow-highlight-half-bold>IPOプロセスで「Cash on the table-テーブルに残された資金」の議論について詳細解説<yellow-highlight-half-bold>。記事の要約は以下の通りです。
- IPO "大成功" の裏側
Figma は IPO 初日に 250% の株価上昇を記録しましたが、これは本当に「テーブルに資金を残した」ことを意味するのでしょうか。実際の損失額は一般的に言われているほど大きくありません。 - プライマリ vs セカンダリの重要性
Figma の IPO の約 3 分の 2 は既存株主による売却(セカンダリ)で、会社への直接的な資金調達(プライマリ)は 3 分の 1 程度でした。つまり「Cash on the table」の大部分は会社ではなく既存株主の潜在的利益です。 - 小さなフロートが生む価格変動
IPO 時の取引可能株式(フロート)はわずか 8% で、実質的な取引可能株式は 3% 以下でした。この供給制限が需要との組み合わせで急激な価格上昇を生み出しました。 - IPO プロセスの宣伝効果
ロードショーや投資銀行の顧客への営業活動により、IPO に対する需要が大幅に喚起されます。この宣伝効果により、DPO では得られない価格プレミアムが生まれる可能性があります。 - IPO 後の価格変動リスク
Figma 株は最高値から約 50% 下落しており、小さなフロートによる高いボラティリティが従業員にとって大きなストレス要因となっています。6 ヶ月のロックアップ期間中は何もできません。 - DPO との比較検討
DPOを選択していた場合、同様の価格上昇は起きなかった可能性が高く、現在の株価も低かったと予想されます。IPO プロセス自体が価格プレミアムの一因となっています。 - IPO は詐欺ではない
IPOプロセスは完璧ではなく最も効率的とも言えませんが、詐欺ではありません。適切な価格設定と市場メカニズムの理解により、スタートアップにとって有効な資金調達手段として機能しています。

Surge CEOが明かす『資金調達なしで売上10億ドル以上を達成した道のり』
20VC with Harry StebbingsのYouTube「Surge CEO & Co-Founder, Edwin Chen: Scaling to $1BN+ in Revenue with NO Funding」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
SurgeのCEO兼共同創業者であるEdwin Chen氏が、<yellow-highlight-half-bold>外部からの資金調達なしで10億ドル規模の収益を上げる企業を築き上げた道のり<yellow-highlight-half-bold>について20VCのポッドキャストで語りました。シリコンバレーの「コスト度外視の成長」という考え方とは一線を画し、効率性、データ品質、そして長期的なビジョンを徹底的に重視する姿勢が強調されています。以下が要点です。
- 90%の無駄な仕事の原則
GoogleやTwitterといった大手テック企業での経験から、従業員の大多数(約90%)が、企業の中核的な使命にとって重要でない問題に取り組んでいることがわかりました。企業は、ほんの一握りの従業員(10%の人員)で、10倍の速さを実現し、より優れたプロダクトを生み出すことが可能です。このリーンなアプローチにより、社内会議や過剰な面接といった本質的でない活動に費やす時間が削減され、結果として人材の密度が高まり、改善サイクルが加速します。 - お客さま中心 vs. 社内向けの優先順位
優先順位は、社内政治や昇進のために経営陣に良い印象を与えることではなく、最終的にお客さまに価値を提供できるかどうかで決定されるべきです。大企業では、多くの業務が社内組織を維持し、チームの拡大を正当化することを目的としており、その結果、優先順位が実際のプロダクト改善やお客様の満足度向上から乖離してしまいます。 - 採用時に「実行者」を見極める
候補者が「実行者」なのか「管理者」なのかは、面接での質問内容によって明確に見分けることができます。実行者はプロダクトに焦点を当て、その仕組みについて鋭い質問をしたり、改善のためのアイデアを提案したりします。対照的に、組織を拡大したいだけの管理者は、自分のチームの規模や役職、社内での地位向上にしか関心がありません。 - 1on1ミーティングをしない方針
定例の1on1ミーティングを完全に廃止するという、徹底したミーティング文化を実践しています。もしチームメンバーとの同期を保つために週次の定例会議が必要なのであれば、それは日々のコミュニケーションが崩壊している証拠だという考え方です。Slackなどのチャネルを通じた常時かつ円滑なコミュニケーションがあれば、専用の1on1は不要であり、重要かつ差し迫った目的のない会議は徹底的に排除されるべきです。 - 優秀な人材を増幅させるAI
AIは、その分野で最も優秀な人材にこそ、特に大きな恩恵をもたらします。AIは単に単純作業を自動化するだけでなく、複雑な業務から煩雑な部分を取り除くことで、アイデアは豊富でも実行時間に制約のあったトップパフォーマーが本来の創造的な仕事に集中できるよう支援します。これにより、彼らは自身の革新的なコンセプトをより多く実現できるようになり、平均的なパフォーマーとの差をさらに広げることになります。 - プロダクト原則への揺るぎないこだわり
何よりも品質を最優先するという、強固なプロダクト原則がすべての意思決定の指針となります。これにより、企業の長期的なビジョンと一致しないプロジェクトやお客様を断る自信が生まれます。目先の収益を追い求めるという、スタートアップが陥りがちな罠を回避し、プロダクトの価値が薄まったり、創業時の使命から逸脱したりするのを防ぎます。 - 時期尚早な採用への抵抗
採用は、成長のためではなく、真に重要なニーズを満たすために行われるべきです。急いで人を採用するために品質基準を下げるのは間違いであり、平凡な従業員は価値を生むどころか、組織の足かせとなることの方が多いのです。企業が採用しようとする仕事のほとんどは、見かけほど緊急でも重要でもなく、高い人材密度を維持することの方が、従業員数を増やすことよりも価値があります。
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【ハリウッド×AI】創造性の再発明か、アルゴリズムによる支配か?
Crunchbase News「AI In Hollywood: Reinventing Creativity Or Redrawing The Lines Of Power? 」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
NetflixがAI映像生成ツール「Runway」を導入したというニュースが、ハリウッドの制作現場に衝撃を与えています。数週間かかっていたVFX作業が、AIによって数日で完了する──この効率化は、単なる技術革新にとどまりません。それは、創造性の定義そのものを揺るがす可能性を秘めています。
◾️AIは「ツール」から「共創者」へ
これまでのAIは、あくまで人間の補助的な存在でした。しかし現在の生成AIは、映像の構成、編集、アニメーションまで自律的に提案・実行できるようになっています。つまり、アーティストとアルゴリズムの境界が曖昧になりつつあるのです。この変化は、制作工程の効率化だけでなく、「誰が創造者なのか?」という根本的な問いを突きつけます。
◾️VFX業界の空洞化と権力の集中
AIの導入によって、特にVFXアーティストや技術者の仕事は大きく変わります。手作業による細かな編集が不要になることで、若手や中堅層のキャリアパスが縮小される可能性も。結果として、制作現場の多様性が失われ、少数の企業に権力が集中するリスクが高まっています。
◾️それでも、AIは「語り手の民主化」を促すかもしれない
一方で、Runwayのようなツールは、予算の限られた個人クリエイターやインディー制作陣にとっては福音です。かつては数百人規模のチームが必要だった映像表現が、今や一人でも可能になりつつあります。これは、ハリウッドのゲートキーパー構造を崩し、新しい語り手が登場するきっかけになるかもしれません。
◾️コンテンツは「創造」から「最適化」へ?
NetflixやMetaのような巨大プラットフォームは、AIを使って視聴者の反応に合わせたコンテンツを高速で反復制作できるようになっています。これは、文化的リスクや大胆な表現を排除し、アルゴリズム主導の画一的な物語が量産される未来を意味するかもしれません。
◾️まとめ『私たちは何を創造と呼ぶのか?』
<yellow-highlight-half-bold>AIは、創造性を解放する力にもなり得るし、囲い込む力にもなり得ます。この技術革新の波の中で、私たちは「誰が物語を語るのか」「何が創造なのか」を改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。<yellow-highlight-half-bold>
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Blue J - 会話型のインターフェースと権威ある情報源の厳選されたライブラリを通じて、複雑な税務上の質問に対して、検証可能な分析と回答を迅速に提供する税務特化AI。シリーズDで$122Mを調達。投資家はOak HC/FT、Sapphire Ventures、Intrepid Growth Partnersなど(FinSMEs)
- Clay - OpenAI、Anthropic、CursorなどのAI企業を含め、世界中で10,000社以上に導入されている、AIセールス・マーケティング自動化プラットフォーム。シリーズCで$100Mを調達。評価額は$3.1B。投資家はCapitalG、Meritech Capital Partners、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- Employee Navigator - 全米の主要な保険会社、給与計算会社、第三者機関と統合された福利厚生・人事ソリューション。$100Mを調達。投資家はJMI Equity、Spectrum Equityなど(Yahoo! Finance)
- Capacity - 収益を伸ばし、コストを削減し、チャネル全体で顧客満足度を向上させるカスタマーサポートAIプラットフォーム。$92Mの投資を獲得。投資家はChicago Atlantic、TVC Capital、Toloka.vc(PR Newswire)
- Rillet - 高成長企業のCFOや経理チーム向けに開発されたAIネイティブなERP。シリーズBで$70Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz、ICONIQ、Sequoia Capitalなど(Crunchbase)
- Alaan - 中東をリードする支出管理AIプラットフォーム。シリーズAで$48Mを調達。投資家はPeak XV Partners、Y Combinator、468 Capitalなど(TechCrunch)
- Lyric - AIを活用したサプライチェーンの意思決定プラットフォーム。シリーズBで$43.5Mを調達。投資家はInsight Partners、Primary Venture Partners、Permanent Capital Venturesなど(FinSMEs)
- Lorikeet - 企業向けに顧客に対応するユニバーサルAIコンシェルジュ。シリーズAで$35Mを調達。投資家はQED Investors、Blackbird、Square Pegなど(FinSMEs)
- Kustomer - リアルタイムのデータと深いコンテキストでブランド企業と顧客にシームレスなエクスペリエンスを提供するCXプラットフォーム。シリーズBで$30Mを調達。投資家はNorwest、Battery Ventures、Redpoint Ventures(Yahoo! Finance)
- Pantomath - データ運用AIプラットフォーム。シリーズBで$30Mを調達。投資家はGeneral Catalyst、Sierra Ventures、Bowery Capitalなど(SiliconANGLE)
- Conversion - マーケティングオートメーションAI。シリーズAで$28Mを調達。投資家はAbstract Ventures、True Ventures、HOF Capitalなど(TechCrunch)
- Docyt - 複雑な会計ワークフローを比類のない精度で自動化することを目的とした次世代AIエンジン。プリシリーズBで$12Mを調達。投資家はPivot Investment Partnersなど(FinSMEs)
フィンテック
- Capitolis - 銀行が、規制資本を最適化するためFintech x AIプラットフォーム。$56Mの戦略的投資を獲得。投資家はBarclays、BNP Paribas、JPMorgan(CTech)
- Stavtar Solutions - オルタナティブ資産運用会社の複雑な財務ワークフローを自動化するために設計された、ビジネス支出管理・経費配分SaaS。シリーズAで$55Mを調達。投資家はElephant、Canapi Ventures、9Yards Capital(FinTech Global)
- Casap - 銀行、フィンテック企業向けの紛争・不正操作対応インテリジェント自動化AI。シリーズAで$25Mを調達。投資家はEmergence Capital、Lightspeed Venture Partners、Primary Venture Partners(BusinessWire)
- Tavily - 金融分野向けのリアルタイム不正検知AI。$25Mの資金調達(シリーズA $20M含む)。投資家はInsight Partners、Alpha Wave Global、Sequoia Capital(TechCrunch)
- OLarry - 複雑な財務状況を抱える富裕層、企業、信託、エステートのための、AIを活用した最新の税務アドバイザリーファーム。シリーズAで$10Mを調達。投資家はTTV Capital、Walkabout Ventures、Marin Sonoma Impact Venturesなど(Axios)
ハードウェア×AI
- SiMa.ai - エッジでインテリジェントなアプリケーションを実現するフィジカルAI。$85Mを調達。投資家はMaverick Capital、StepStone Groupなど(SiMa.ai)
- OpenMind - ヒューマノイド・ロボットのための分散型ソフトウェア・レイヤー。$20Mを調達。投資家はPantera Capital、Ribbit Capital、Coinbase Venturesなど(TechCrunch)
- FORT Robotics - 機械メーカーやユーザーに安全でセキュアな動的制御を提供する、世界初のロボティクス制御プラットフォーム。シリーズBで$18.9Mを追加調達。投資家はTiger Global、Prime Movers Lab、Mark Cuban(PR Newswire)
バーティカル
- D-Tools - システムインテグレーション企業向けに設計されたビジネス管理ソフトウェアソリューション。シリーズCで$12Mを調達。投資家はStellarIQ、Greybull Stewardshipなど(FinSMEs)
その他
- Decart - リアルタイムAI動画生成プラットフォーム。シリーズBで$100Mを調達。評価額は$3.1B。投資家はSequoia Capital、Benchmark、Zeev Ventures(Fortune)
- Fundamental Research Labs - 汎用的な消費者向けAIアシスタントやスプレッドシートベースのAIエージェントなど、異なる分野で複数のAIアプリケーションを開発。シリーズAで$33Mを調達。投資家はProsus Ventures、a16z、Patrick Collisonなど(TechCrunch)
IPO
- Figma - 2025年7月31日(木)にニューヨーク証券取引所で取引を開始し、当初予定されていた価格レンジ($30-32)を上回る1株$33でIPOを実施し、$19.3Bの企業価値を達成。IPOは40倍のオーバーサブスクライブとなり$1.2Bを調達(Yahoo! Finance)
[国内]
- TRUSTART - 不動産ビッグデータプラットフォーム「R.E.DATA」を提供し、独自収集の不動産情報で不動産関連業務のDX化を支援。シリーズCで13億円を調達。投資家はHIRAC FUND、大和企業投資株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社など(PR TIMES)
- AssetHub - AIを活用した3Dモデルの生成・編集ツールを開発し、ゲームを通じたIP創出を目指す。シードラウンドで3億円を調達。投資家はArchetype Ventures、Techstars、伊藤剛氏など(PR TIMES)
- KENCOPA - 建設業界に特化したAIエージェント「KENCOPA建設AIエージェント」を開発し、現場の省人化・効率化を実現。シードラウンドで2億円を調達。投資家はAngel Bridge、Archetype Ventures、有安伸宏氏など(PR TIMES)
- Qlay Technologies - AIによる人事業務効率化ソリューション「Qlay」を開発し、採用プロセスの自動化・最適化を実現。プレシードラウンドで約2億円を調達。投資家はニッセイ・キャピタル、ANOBAKA、East Venturesなど(PR TIMES)