■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

AIスタートアップの「セカンド・ムーバー・アドバンテッジ」
Clouded Judgement「Clouded Judgement 9.5.25 - Second Mover Advantage」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Altimeter Capitalの投資家Jamin Ball氏による記事で、AIスタートアップ市場で先行者(ファースト・ムーバー)ではなく「2番手」企業が持つ戦略的優位性について解説しています。日本の起業家にとって、先行者を追い抜く具体的な戦略と参入タイミングを知ることで、AI分野での競争優位性を構築できます。記事の要約は以下の通りです。
- ファーストムーバーのジレンマ
Google、Facebook、Databricksなど成功企業の多くは実は2番手として市場参入した企業です。AI分野では技術進歩が急速すぎるため、早すぎる参入は脆弱な基盤に縛られるリスクがあります。 - 失敗から学ぶ機会
先行者が未定義の標準や不確実な顧客ニーズに苦戦する中、2番手は何が機能するかを観察し、無駄な試行錯誤を避けて明確なロードマップで迅速にプロダクトを出荷できます。 - 価格戦略の優位性
先行者は競合が少ない状況で高価格を設定しがちですが、2番手は優れた技術とより安価な価格で参入でき、先行者の高コスト構造に対して柔軟な対応が可能です。 - 市場の成熟度活用先行者が市場啓発に苦労する間、2番手は既に問題を理解し予算を確保した顧客層に対して、より良い製品や価格モデルで訴求できます。
- 技術キャッチアップの高速化
オープンソースモデル、API、強力な開発ツールにより、従来は数年かかっていた機能追随が大幅に短縮され、先行者の優位性は以前より浅くなっています。 - エコシステムとタイミング
先行者は往々にして早すぎる参入をしがちですが、2番手は採用カーブが加速し、インフラが成熟したベストタイミングで市場に参入できます。 - 収益性こそが真の競争優位
現在のAIフロンティア企業の最大の課題は大幅な赤字構造であり、持続可能で収益性のあるビジネスモデルを革新できる企業が圧倒的な優位性を獲得することになります。
AI起業家が聞くべき「厳選AIポッドキャスト11選」
Zapier「The best AI podcasts in 2025」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Zapierが選定した、AIスタートアップから企業のAI導入まで、目的別に最適なポッドキャストを11カテゴリーに分けてご紹介。日本の起業家にとって、海外の最新AI動向や実践的なビジネス戦略を効率的に学べる貴重な情報源となります。こちらで紹介されているポッドキャストは以下の通りです。
- Agents of Scale - Zapier CEO Wade Foster氏が主催するGrammarly、Airtable、Replitなどの経営陣とのC-suite対談で、大企業でのAI変革の実体験を深掘り、現場のリアルなインサイトを提供
- How I AI - Claire Vo氏(ChatPRD創設者)が主催。YouTubeチャンネルと連動し、実際の画面共有でAIツールの使い方を実演。プログラミング経験なしでもAIプロトタイプ構築が学べる実践的コンテンツ
- AI for Humans -Kevin Pereira氏とGavin Purcell氏が主催。週次のAIニュース、モデルリリース、研究発表を楽しく分かりやすく解説。技術的背景がなくても理解できるアプローチが特徴
- The Artificial Intelligence Show - Paul Roetzer氏とMike Kaput氏(Marketing AI Institute)が主催。マーケティングAI応用、ビジネス実装、戦略的洞察を、PhD レベルの技術知識なしで解説
- Y Combinator Startup Podcast - Garry Tan氏とYCパートナーが主催。AIがスタートアップエコシステムに与える影響、技術的ブレークスルー、投資機会を経験豊富な投資家視点で分析
- At The Edge - Lareina Yee氏(McKinsey)が主催。エージェント型AI、CEO向けAIリーダーシップ、グローバル企業のAI変革事例をMcKinseyの研究に基づいて解説
- AI & I - Dan Shipper氏(Every共同創設者)が主催。AIを活用したメディア企業運営の実体験から、クリエイター経済、知識労働者への影響を深く考察
- The AI for Sales Podcast - Chad Burmeister氏(セールステック専門家)が主催。営業チームのAI活用、リード管理、パイプライン自動化、会話型AIアシスタント導入の具体策を解説
- The Next Wave - Matt Wolfe氏(「AIツールの専門家」)とNathan Lands氏(創設者・投資家)が主催。PerplexityのCEOなど業界リーダーとの対談
- Pivot - Kara Swisher氏(ベテランテックジャーナリスト)とScott Galloway氏(NYU教授)が主催。BigTech競争、AI規制、社会への影響など、AIの広範な意味合いを鋭く分析
- Lenny's Podcast - Lenny Rachitsky氏(プロダクト専門家)が主催。AI機能の製品統合、成長戦略、IntercomのようなAI-first企業への変革事例を製品・成長の視点で解説

SaaSのS&Mにおける費用対効果は減少
Sammy Abdullah氏のMedium「SaaS S&M Spend Is Not Working」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
SaaS企業のS&M投資効率が著しく低下しています。2024年にはS&M支出1ドルあたりの新規収益が0.36ドルとなり、IPO時の0.65ドルと比較し、約35%も効率が悪化。<yellow-highlight-half-bold>この背景にあるのはコロナ後の調整、SaaS市場の飽和、企業の予算引き締めによる購買プロセスの複雑化と長期化、Appleのプライバシー変更などによるマーケティング環境の悪化、そしてAI投資へのリソース配分シフトなどが挙げられます。<yellow-highlight-half-bold>一方で、国内市場においてもS&M費用の適正化については一考の余地がありそうです。
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「ハイプなし」でAIユニコーンを築く──DataSnipper創業者Petersの静かな革命
Crunchbase News「How We Built A Unicorn Without Chasing Hype Cycles」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
AIスタートアップの世界では、華々しい資金調達や派手なプロモーションが注目を集めがちです。しかし、そうした“ハイプ”とは一線を画し、着実に実力で評価を高めている企業があります。その代表例が、監査業務を効率化するAIツール「DataSnipper」を開発したオランダ発のスタートアップです。
◾実務に根ざしたプロダクト開発
創業者のPeters氏は、AIの可能性を信じながらも、過剰な期待や誇張された未来像には慎重な姿勢を貫いています。彼の哲学はシンプルで、「現場で本当に使えるプロダクトをつくること」。DataSnipperは、監査業務における煩雑なドキュメント確認や証憑突合といった作業を、AIによって自動化・効率化するツールです。すでに世界中の会計事務所や企業で導入が進んでおり、ユーザーからの高い評価を背景に、同社はユニコーン企業への道を着実に歩んでいます。
◾️VC資金よりも顧客の信頼を重視
多くのスタートアップが大型の資金調達を目指す中、DataSnipperは「プロダクト主導の成長」を選択。VCからの資金に頼るのではなく、顧客からのフィードバックをもとに改善を重ね、自然な形でユーザー基盤を拡大しています。この姿勢は、AI業界における“静かな革命”とも言えるでしょう。Peters氏は「本当に価値あるAIは、現場で黙々と働いている」と語り、派手さよりも実用性を重視する姿勢を貫いています。
◾️今後の展望──監査から業務全体へ
DataSnipperは今後、監査業務にとどまらず、より広範な業務領域への展開を視野に入れています。AIによる業務支援が“当たり前”になる未来に向けて、同社は着実に歩みを進めており、Peters氏の「ハイプなし」のアプローチが、AIスタートアップの新たなスタンダードになる可能性も秘めています。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Databricks - 企業向けAI戦略を加速するためのデータ分析・AIプラットフォーム。シリーズKで$1000Mを調達。評価額は$100B+。投資家はAndreessen Horowitz、Insight Partners、MGXなど(TechCrunch)
- DataCrunch - フィンランドのAI計算に特化したクラウドインフラ。シリーズAで$64.6M(€55M相当)を調達。投資家はbyFounders、Skaala、Varmaなど(Data Center Dynamics)
- Motion - 「AIエージェント向けのMicrosoft Office」と呼ばれるAIエージェント。シリーズCで$38Mを調達。評価額は$550M。投資家はScale Venture Partners、HOF Capital、468 Capitalなど(TechCrunch)
- Fyxer.ai - 企業向けAIアシスタントソリューションを提供。シリーズBで$30Mを調達。投資家はMadrona、Lakestar Capitalなど(Shifted)
- Isotopes.AI - 財務アプリ、ERP、CRM、クラウドストレージなど、データが保存されているあらゆる場所からデータを収集し、回答を提供したり、複雑な計画文書を作成するAIエージェント。データ分析業務を自動化するAIソリューションを提供。シードラウンドで$20Mを調達。投資家はNTTVCなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- Koi - 企業のデバイス保護とサイバー攻撃対策を提供するエンドポイントセキュリティ。シリーズAで$38Mを調達。投資家はBattery Ventures、Team8、Picture Capitalなど(CTech)
- Red Access - エージェントレス型のブラウザ・SaaS・企業アプリ向けセキュリティプラットフォーム。シリーズAで$17Mを調達。投資家はNorwest Venture Partners、Ten Eleven Ventures、SentinelOne's S Venturesなど(CTech)
- Adaptive Security - ディープフェイクとフィッシング攻撃に特化したサイバーセキュリティシリーズAエクステンションで$12Mを調達。投資家はOpenAI Startup Fundなど(Silicon ANGLE)
ソフトウェア開発支援
- Cognition - 自律的にソフトウェア開発タスクを実行するAIコーディングエージェント「Devin」を開発。$400Mを調達。評価額は$10.2B。投資家はFounders Fund、Lux Capital、8VCなど(TechCrunch)
- Replit - 自然言語でソフトウェア開発を可能にするAIエージェント。シリーズCで$250Mを調達。評価額は$3B。投資家はPrysm Capital、Google AI Futures Fund、Amex Venturesなど(TechCrunch)
バーティカル
- CuspAI - 創薬・材料科学向けのAIモデル開発。シリーズAで$100M+を調達。投資家はNEA、Temasekなど(Yahoo! Finance)
- Pest Share - 害虫駆除業界向けの業務管理SaaS。シリーズAで$28Mを調達。投資家はIntegrity Growth Partners、MetaProp、Capital Elevenなど(PR Newswire)
フィンテック
- Rainforest - 企業向け決済インフラを提供する組み込み決済プロバイダー。シリーズBで$29Mを調達。投資家はMatrix Partners、Infinity Venturesなど(Yahoo! Finance)
その他
- Mistral AI - 大規模言語モデルを開発し、OpenAIの欧州版とも呼ばれるフランスのAI基盤スタートアップ。シリーズCで$2Bを調達。評価額は$13.8B。投資家はASML、DST Global、Andreessen Horowitzなど(TechCrunch)
- Perplexity - AI検索スタートアップ。従来の検索エンジンとは異なる対話型AI検索体験を提供。シリーズで$200Mを調達。評価額は$20B(TechCrunch)
- ElevenLabs - AI音声技術スタートアップ。音声合成とAI音声生成技術を提供。テンダーオファーで$100Mを調達。評価額は$6.6B。投資家はSequoia Capital、Iconiq Growthなど(bloomberg)
- Interaction - 消費者向けAIネイティブ・パーソナルエージェント。AIインタラクション技術の研究開発を行う。シードラウンドで$15Mを調達。評価額は$100M。投資家はGeneral Catalyst、Village Global、Earlybird VCなど(LinkedIn)
- Higgsfield.ai - 映像解析・処理のための動画推論エンジン。シリーズAで$50Mを調達。投資家はGFT Ventures、BroadLight Capital、NextEquity Partnersなど(PR Newswire)
[国内]
- ROMS - 物流・製造業向け小型自動倉庫「Nano-Stream」を中心とした省スペース・短納期・高拡張性の自動化システムを提供。シリーズで13億円を調達。投資家はDNX Ventures、UTEC、Monoful Venture Partnersなど(PR TIMES)
- イチロウ - 介護保険では対応できない多様なニーズに応じた柔軟なオーダーメイド介護サービスを提供。シリーズBで11.3億円を調達。投資家はファストトラックイニシアティブ、Aflac Ventures Japan、MPower Partners Fundなど(PR TIMES)
- サイバーコマンド株式会社 - AI×セキュリティ領域のソリューションを開発・提供。シリーズAで3.5億円を調達。投資家はサン電子、PKSHA Technology、フーバー・インベストメントなど(PR TIMES)
- VUILD - デジタル建築技術。設計から施工までをデジタル化し、建設業界の職人不足・コスト高騰の解決。シリーズで2.3億円を調達。投資家はカイカイキキ(村上隆氏)、リバネスキャピタル、和建設など(PR TIMES)
- Bizibl Technologies - ウェビナー運用の一元化と自動化により、リード獲得から商談化まで支援するウェビナーマーケティングSaaS「Bizibl」を提供。2億円を調達。投資家は栖峰投資ワークス、Adlib Tech Ventures、きらぼしコンサルティングなど(PR TIMES)
- リスポ - EC向け積立決済SaaS「Respo」を提供。プレシリーズAで2億円を調達。投資家は農林中金キャピタル、グローバル・ブレイン、かんぽNEXTパートナーズなど(PR TIMES)
- 株式会社straya - 警備業界向けDXプラットフォーム「KUMOCAN」を提供。シードラウンドで累計1億円を調達。投資家はDNX Ventures、DG Daiwa Venturesなど(PR TIMES)
- CrestLab - アニメ制作工程の効率化と品質向上を両立するAIソリューションを開発。シードラウンドで資金調達を実施。NTTドコモ社内起業制度からスピンアウト(PR TIMES)