■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

いまはAIバブルなのか?
Only CFO’s Newsletter「Are we in an AI-driven bubble?」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Only CFO's Newsletterによる、現在のAI市場のバブル可能性を詳細分析した記事。バブルの兆候と反論の両方を客観的に解説しています。日本の起業家にとっても、資金調達戦略や事業計画の見直しに重要な示唆を提供します。記事の要約は以下の通りです。
- バブルの典型的な兆候が現れている
豊富な流動性とAIという新しいストーリーが組み合わさり、2021年のような高い評価額での資金調達が復活しています。プライベート市場では多くの企業が大量のキャッシュを消費している状況です。 - 金融商品の複雑化が投機を促進
予測市場、24時間取引、短期オプション、50倍レバレッジなど、より多くの人々が投機に参加できる金融商品が次々と登場しています。これらは過去のバブル時に見られた典型的なパターンです。 - レバレッジと信用取引の急増
マージン債務は前年比29.2%増加し、2021年11月以来の最高水準に達しています。個人投資家の信用取引拡大は市場リスクを高めています。 - AI関連の相互依存構造
ベンダーファイナンシング、容量前払い、相互契約などにより、資金が循環して需要があるように見せかけている可能性があります。これは実際の需要なのか疑問視されています。 - 極端な市場集中リスク
MAG7などの上位10社がS&P500の30-40%を占める異常な集中状態です。これらの企業の動向が市場全体に与える影響は非常に大きくなっています。 - バブルではない根拠も存在
現在のMAG7のPER28倍は、ドットコムバブル時の82倍と比較して健全です。実際のキャッシュフローがある収益主導の上昇であり、FRBの利下げ局面でもあります。 - 起業家への戦略的示唆
株式が過大評価されている場合は現金より株式を活用し、可能な時に資金調達を行い、効率性と収益性向上のプランBを常に準備しておくことが重要です。

AI時代に対応するため、Airtableはいかにして組織再編を行ったか
Lenny's Podcast「How we restructured Airtable's entire org for AI | Howie Liu (co-founder and CEO)」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Airtableの共同創業者兼CEOであるHowie Liu氏が『創業10年を超える企業をAI時代に適応させる』という、まさに企業の存続をかけた変革についてLenny’s Podcastで語りました。抜本的な組織再編、変化するCEOの役割、そしてプロダクトチームに求められる新たなスキルについて、重要なポイントを解説します。
- CEOが実働者(ICEO)になる
AI時代において、単なる管理者としての従来のCEOの役割は時代遅れになりつつあります。効果的な「最高のテイストメーカー」であるためには、CEOは再び現場の実働者に戻り、プロダクトの細部に深く関与し、テクノロジーを自ら試し、時にはコードを書くことさえ求められます。このような実践的なアプローチは、急速に進化するソリューションの全体像を真に理解し、本物の洞察力をもってプロダクトを導くために不可欠であり、チームを遠くから管理するスタイルからの転換を意味します。 - AIネイティブのアプローチで会社を再創造する
AIは非常に根本的なパラダイムシフトをもたらしており、すべてのソフトウェア企業はまるで「再創業」するかのように行動しなければなりません。そのためには、ゼロベースでアプローチし、「もし今日、同じミッションを達成するために会社をゼロから始めるとしたら、完全にAIネイティブなアプローチでどのように実現するか?」という重要な問いを自問する必要があります。企業は、自社の既存資産がこの新しい世界で真の強みとなるかを正直に評価し、そうでなければ、より機敏なAIネイティブのスタートアップに凌駕されるリスクを負うことになります。 - 組織設計:ファスト&スロー思考
Airtableは、異なる実行モードを管理するために、プロダクト組織全体を2つの異なるグループに再編しました。「ファスト思考」のAIプラットフォームチームはスピードを重視し、毎週のように驚くような新しいAI機能をリリースすることを目的としています。一方、「スロー思考」のチームは、コアインフラやスケーラビリティといった、より熟慮が必要な意図的かつ長期的な取り組みに集中します。この二元的な構造により、同社はAIスタートアップのスピードで革新を進めると同時に、エンタープライズ規模の成長に必要な堅牢な基盤を構築することが可能になっています。 - CEOが一番のパワーユーザーになる
AIによる変革を主導するためには、CEOが自社のAIツールを最も積極的かつ要求の厳しいユーザーでなければなりません。Howie Liu氏は、意図的にAirtable AIの推論コストにおいて最も「高額な」ユーザーとなり、価値の高い問題に積極的にAIを適用することの重要性を示しました。これは、AIへの深い実践的な関与が単に奨励されるだけでなく、組織の全員にとって不可欠であるという強力なメッセージを発信します。 - 資料よりもプロトタイプを
AI時代において、プロダクトの価値はそのインタラクションにあり、それはPRD(プロダクト要求仕様書)やスライド資料のような静的なドキュメントでは捉えることができません。そのため、開発プロセスは、文書化された仕様よりも、機能的でインタラクティブなプロトタイプを優先する方向にシフトしています。これにより、チームはAI機能の具体的な「感触」を掴み、「理想的なシナリオ」以外の現実的なシナリオでテストし、直接的な体験に基づいてはるかに迅速にイテレーションを行うことができます。 - 多分野にわたるスキルを持つチームメンバーの台頭
プロダクト、エンジニアリング、デザインといった従来の縦割りされた役割は崩壊しつつあります。これからの時代で活躍するためには、個人がこれら3つの分野すべてにおいて基礎的な能力を身につける必要があります。最も価値のある貢献をするのは、プロトタイプを作成できるデザイナー、優れたプロダクト感覚を持つエンジニア、そして技術に精通したプロダクトマネージャーといったハイブリッドな人材です。AIツールは、個人がこれらの従来の境界を越えて活動することを容易にし、この傾向を加速させています。 - 既存資産がもたらす「アンフェア・アドバンテージ」
既存企業にとって、その資産は正しく活用されれば強力な「アンフェア・アドバンテージ(不公平な競争優位性)」となり得ます。Airtableが持つ既存のノーコードコンポーネントのライブラリは、同社のAIエージェントにとって信頼性が高く表現力豊かな構成要素として機能します。これにより、AIはすべての要素をゼロからコードで生成する場合よりも、信頼性と安全性の高い複雑なアプリケーションを構築でき、新しいコード生成系のスタートアップに対して防御的なMOAT(堀)を築くことができます。 - サイドプロジェクトを通じた継続的な学習
AI分野の最新動向に追いつくためには、継続的な実践学習が不可欠です。これを実現する効果的な方法は、新しいAIツールを現実の文脈で活用する、小規模で楽しい個人プロジェクトを立ち上げることです。この実践は、単に情報を受け取るだけの学習を超え、新しいモデルやプロダクトの形態が持つ能力と限界について、深く直感的な感覚を養うことができます。そして、そこから得られた洞察は、本業にも応用することが可能です。 - 「ファウンダーモード」の必要性
経営幹部を雇用して縦割り組織を管理させるという、企業規模拡大における従来の常識は、プロダクトの革新にとって有害となる可能性があります。AI時代に求められる大胆で全体的な飛躍を遂げるためには、CEOは「ファウンダーモード」を維持しなければなりません。これは、プロダクトの細部に深く関与し続け、組織の境界を越えた統合的な施策を推進することを意味し、企業が部分的な最適化の罠に陥るのを防ぎます。 - スキル習得を飛躍的に加速させるAI
AI時代は、歴史上、新しく複雑なスキルを最も習得しやすい時代です。AIツールは、24時間365日対応してくれる、無限の忍耐力を持つ専門家の家庭教師のように機能し、コーディングやデザイン、その他の技術分野を習得するための参入障壁を劇的に引き下げます。この利用しやすさは、すべての個人がより多才で分野横断的な能力を身につけることを可能にし、「ユニコーン」と称されるようなハイブリッドな従業員という理想像を、成長意欲のある者なら誰でも達成可能な目標に変えます。

取締役会をより良くするための「3+3フィードバック」
SaaStr「How To Immediately Have Much Better Board Meetings: Get “3+3 Feedback”」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
取締役会や株主定例の場をさらに良くするためのアイデアとしてSaaStrの記事を紹介します。記事のポイントは以下です。
- 「3+3フィードバック」フレームワーク
- 会議後に各投資家/参加者から「Top 3 Things That Are Going Well」と「Top 3 Things I’m Worried or Concerned About」を簡潔にフィードバックしてもらうことです。会議の場では表明されない率直な評価が集まり、経営陣は認識のギャップを発見することに繋がります。
- 取締役会には、常に「パフォーマンス的な要素」が伴います。投資家は、グループミーティングでネガティブな印象を与えないように懸念を表明したり、深入りする質問で議題を逸らしたくないと考えがちです。
- この方法により、真摯なフィードバックを得るためのプライベートなチャネルを作り出すことで、早期の課題発見にもつながります。
- このフレームワークが合致するタイミング
- 急速な変化の時期には、取締役会のメンバーは、進化するビジネスモデル、市場ポジション、あるいは業務上の課題への対応に苦慮することがあります。3+3形式を採用することで、取締役会メンバーがこれらの変化をどのように処理しているかを把握しやすくなります。
- 重大な課題に直面しているとき、取締役会は緊張感を帯び、率直な意見が控えられることがあります。3+3フィードバックは非公開であるため、繊細な状況においてもより率直な意見を述べる機会が生まれます。
.png)
AI導入で成果を出す企業の共通点『収益より業務指標を見よ』
Crunchbase News「AI Revenue Is Not Value — And ‘95% Failure’ Misses The Real Story」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
AI関連企業の収益は急成長していますが、その一方で「導入の95%が失敗している」という調査結果もあります。Autonomize AIのCEO、Ganesh Padmanabhan氏は、「収益=価値」ではないと警鐘を鳴らし、AI活用の本質を問い直します。
- 収益と価値は別物
企業がAIに対して支払う金額(収益)は、必ずしも業務改善や成果を意味しません。多くのAI導入は、実際の業務フローに組み込まれておらず、見せかけの効率化にとどまっています。ベンダーが収益を上げる一方で、顧客は統合コストやコンプライアンスリスクを抱える構造になっているのです。 - 「95%の失敗」は技術の限界ではない
AI導入の失敗は、技術力不足ではなく「間違ったスタート地点」に原因があります。多くの企業は、業務課題ではなくモデルから始めてしまい、以下のような問題を抱えています:成功指標が定義されていない業務フローにAIが統合されていないガバナンス(説明責任・監査性)が欠如しているつまり、AIが機能しないのではなく、「間違った問題」に「間違った方法」で取り組んでいるのです。 - AIの価値を測るべき指標とは?
Padmanabhan氏は、AIの価値は以下のような具体的な業務指標に現れると述べています
・単位業務あたりのコスト
・意思決定までの時間
・初回通過率
・エラー・例外率
・担当者あたりの処理量
・コンプライアンス成果(監査例外、罰則回避)
・医療分野では、患者体験や覆却率など
これらの指標が改善されて初めて、AIは「価値を生んでいる」と言えるのです。 - 成功する企業の共通点
成功している企業は、以下のようなアプローチを取っています。
・モデルではなく「価値の源泉」からスタート
・業務システムにAIエージェントを直接組み込む
・スコープを厳密に制限し、すべてを計測
・人間の関与を前提に設計
・成果ベースの価格設定
・拡張は、インフラと指標が安定してから - 医療現場での実例
ある保険会社では、AIエージェントが看護師の業務支援を行い、レビュー時間が35分から15分に短縮。別の医療機関では、AIによるチャート要約により監査の初回通過率が向上。重要なのは「話すAI」ではなく、「信頼できる判断を早く下せるAI」なのです。 - まとめ
AI導入の成功は、収益や話題性ではなく、業務の「コスト・スピード・品質・コンプライアンス」にどれだけ貢献できるかで測るべきです。もしそれが示せないなら、それはAI戦略ではなく、ただのプレスリリースに過ぎません。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- AppZen - CFOや管理者が手作業の50%以上を置き換える、エンタープライズ向けAIネイティブなファイナンスAIエージェント・プラットフォーム。$180Mを調達。投資家はRiverwood Capital、Lightspeed Venture Partners、Coatueなど(Yahoo Finance)
- Distyl AI - エンタープライズ企業のAI統合を専門とするAIコンサルティングファーム。シリーズBで$175Mを調達。評価額は$1.8B。投資家はKhosla Ventures、Lightspeed Venture Partners、DST Globalなど(SiliconANGLE)
- Signal AI - イギリス発のリスク・レピュテーション・インテリジェンスプラットフォーム。$165Mを調達。投資家はBattery Ventures、Highland Europe、Mercuriなど(StatupHub.ai)
- Valence - 全従業員にコーチングを提供するAIコーチプラットフォーム。シリーズBで$50Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、Anthropic、Abridge(PR Newswire)
- Obot AI - MCPゲートウェイやMCPエージェントフレームワークなどのオープンソースプロジェクトを開発するエンタープライズAI統合プラットフォーム。シードで$35Mを調達。投資家はMayfield Fund、Nexus Venture Partners、Mosaic Venturesなど(SiliconANGLE)
- Beroe - AIツールや膨大で信頼性の高いデータのユニークな組み合わせにより、よりスマート、より速く、より良い調達の意思決定を行うプラットフォーム。$34Mを調達。投資家はRelativity Resilience Fund、Mukul Agrawal、Alchemy Long Term Ventures Fund(PR Newswire)
- Mimica - 従業員のワークフローを記録し、そのデータを詳細なプロセス・マップに自動的に変換するAIエージェント。シリーズBで$26.2Mを調達。投資家はPaladin Capital Group、Khosla Ventures、LGVPなど(StartupHub.ai)
フィンテック
- Fnality - 分散型台帳技術に支えられたグローバルな決済ネットワーク。シリーズCで$136M(£99.7M)を調達。投資家はWisdomTree、Bank of America、Citiなど(Fintech Global)
- Cardless - クレジット・ジャーニー全般をカバーするAPIとコンポーネントを提供するクレジットカード発行プラットフォーム。シリーズCで$60Mを調達。投資家はSpark Capital、Activant Capital、Industry Venturesなど(Business Wire)
- WeTravel - 複数日のグループ旅行ビジネスのために構築されたオールインワンのオペレーティングシステム。シリーズCで$92Mを調達。投資家はSapphire Ventures、Left Lane Capital、Base10など(FinSMEs)
ソフトウェア開発支援
- Factory - AIエージェント「Droids」を活用したソフトウェア開発プラットフォーム。シリーズBで$50Mを調達。評価額は$300M。投資家はNEA、Sequoia Capital、NVIDIA(Yahoo! Finance)
- Greptile - 監視を依頼されたGitHubリポジトリを常に分析し、新しいアップデートがあるたびにコードをチェックするAIコード・レビュー・エージェント。シリーズAで$25Mを調達。投資家はBenchmark、Y Combinator、Initialized Capitalなど(SiliconANGLE)
- Rocket.new - インド発のAIバイブコーディングプラットフォーム。シードで$15Mを調達。投資家はSalesforce Ventures、Accel、Together Fundなど(TechCrunch)
バーティカル
- Inspiren - AIを活用した高齢者ケア施設向けの統合ソフトウェアプラットフォーム。シリーズBで$100Mを調達。投資家はInsight Partners、Avenir、Primary Venture Partners(Yahoo! Finance)
- Circuit & Chisel - インテリジェント・エージェント間の取引を改善するインフラを構築するエージェンティックコマースプラットフォーム。シードで$19.2Mを調達。投資家はPrimary Venture Partners、ParaFi Capital、Stripeなど(FinSMEs)
リーガルテック
- Filevine - 電子メール、テキスト、文書やビデオとトランスクリプト、電話記録、メモ、タスク、監査記録、インテーク・ノート、カレンダーを統合し、法務チームにリアルタイムで上京を判断する法律業務向けAIオペレーティングシステム。2ラウンドで$400Mを調達。投資家はInsight Partners、Accel、Halo Fundなど(TechBuzzNews)
ハードウェア×AI
- Auterion - ドローン業界のマイクロソフトを目指す軍用ドローン向けソフトウェアプラットフォーム。シリーズBで$130Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、Lakestar、Mosaic Venturesなど(orrick)
ヘルスケア
- Manas AI - 世界トップクラスの生物医学の専門知識と次世代AIの能力を融合させた創薬・開発AIプラットフォーム。シードエクステンションで$26Mを調達。投資家はThe General Partnership、Wisdom Ventures、Blitzscaling Venturesなど(BusinessWire)
サイバーセキュリティ
- Prelude Security - ランタイムメモリープロテクションに重きを置いた次世代エンドポイントセキュリティプラットフォーム。$16Mを調達。投資家はBrightmind Partners、Sequoia Capital、Insight Partners(Yahoo! Finance)
[国内]
- Zen Intelligence - 建設現場の無人化を実現するPhysical AIソリューション「zenshot」。シリーズAラウンドで15億円を調達。投資家はZ Venture Capital、Angel Bridge、Rice Capitalなど(PR Times)
- Leafea - 全国10万店舗以上で割引利用できるとともに、メッセージ付きギフトを受け取れる福利厚生サービス。シリーズAで3.6億円を調達。投資家はXTech Ventures、きらぼしキャピタルなど(PR Times)
- FormX - 経理・ IR 担当者向けのディスクロージャー・プラットフォーム。シードで1.3億円を調達。投資家はジェネシアベンチャーズ、千葉道場ファンドなど(The BRIDGE)
- スカイファーム - 商業施設に特化したモバイルオーダーシステム「NEW PORT」。資金調達を実施。投資家はTAKANAWA GATEWAY地球益投資事業有限責任組合、KDDI Open Innovation Fund Vなど(PR Times)
- Matilda Books - 組織内のスキル可視化と育成を一体で実現するSaaS。QXLVから資金調達を実施(PR Times)