「今週のSaaS×AIニュース」ピックアップ!
*SaaS×AI Weeklyは、ALL STAR SAAS FUNDが毎週ピックアップした記事を日本語で要約し、一部メンバーからのコメントを入れてお届けしています。

AnthropicのS-1を読み解く:CFOが注目したNRR900%・FCF黒字化・集中リスク
「Anthropic’s S-1: Finance Takeaways」 by OnlyCFO on OnlyCFO’s Newsletter
Anthropicが公開した上場申請書類(S-1)の財務数値・会計処理・リスクを、CFOの視点で読み解いた記事です。従量課金とサブスクリプションの2種類の課金モデル、ラン・レート売上とNRRの定義、モデル開発費の計上方法は、最新のベンチマークになります。日本のAI・SaaS起業家が自社のKPI設計や財務指標の見方を考える際に、有益な内容です。
桁違いの成長とNRR900%の意味
AnthropicのS-1が公開され、筆者は約3週間後の上場を見込んでいます。上場時の評価額が1.5兆ドルでも2兆ドルでも、同社の成果は驚異的だと筆者は述べています。直近12ヶ月の売上が10万ドル以上の顧客数は急増しており、NRR(ネット売上維持率)は900%に達しています。
筆者は、900%は一般的な水準ではないとも指摘しています。一方で、Claudeを含むAI支出が急速にあらゆる企業で最大の費目になっています。顧客の売上成長が加速するかコストが下がっていれば問題ないものの、多くの顧客でそうなっているかはわからないと筆者は述べています。
グロスマージンの急改善と「R&D依存」という注意点
グロスマージンはかつてない速さで改善しており、売上1ドルあたりのコンピュート・インフラ費用は2025年Q1から2026年Q2にかけて81%減少しました。ただし、<yellow-highlight-half-bold>モデル開発費はCOGSではなくR&Dに計上されています。<yellow-highlight-half-bold>
また、直近6ヶ月にリリースしたモデルが直近四半期の売上の80%超を占めています。筆者は、R&Dの50%(任意の割合)をCOGSに含めて試算すると、2026年上期のグロスマージンは約55.5%になると示しています。一度作れば数年使える従来のソフトウェアとは単純比較できないとも述べています。
FCF黒字と従業員一人あたり売上660万ドル
2026年上期のフリーキャッシュフローは34億ドルで、営業キャッシュフロー39億ドルから設備投資4億8,200万ドルを差し引いた金額です。株式報酬(SBC)22億ドルを差し引いてもプラスを維持しています。調整後営業利益率も大幅なマイナスから短期間でプラスに転じました。従業員一人あたり売上は660万ドルで、前年の140万ドルから約4.7倍に増えています。
3つの集中リスク:競合・大口顧客・クラウド
年初来売上の5〜7%は、同社のポリシーに違反して製品を使う企業からのものだと開示されています。主に他社が自社モデルを改善するための「蒸留」目的の利用です。筆者が中間値の6%をQ3の推定ARRに当てはめると、約40億ドルのARRが現在または将来の競合から生じている計算になります。
また、2025年は上位2社で売上の24%を占めていましたが、2026年上期にはいずれも10%を下回りました。ただし、2026年Q3でも上位5社で売上の21%を占めています。さらに、売上の多くがAWS・Azure・Google Cloudの3大クラウド経由で発生しています。
AIプライシングとKPI定義のベンチマーク
売上は従量課金とサブスクリプションの2種類で構成されています。筆者は、AI製品では従量課金が主流だと述べています。
NRRの対象は、1年前の3ヶ月間に1ドル以上の売上があった顧客です(Claude ProとMaxの定額プランの契約者を除く)。算出は、直近3ヶ月間の売上を、1年前の3ヶ月間の売上で割ります。
ランレート売上は「直近28日間の従量課金額×13+月額サブスク料金の合計×12」と定義されています。筆者は、この定義を最近採用する企業がいくつかあると聞いています。
a16zが描くAI時代の「新しい創業者像」
「New Founder Archetypes in the AI Age」 by Andrew Chen on a16z
a16zでシード投資プログラム「Speedrun」を率いるAndrew Chen氏が、AIによって台頭するソロ・非エンジニア・ドメイン専門家・若者・クリエイターといった新しい創業者タイプの可能性と限界を、賛否両面から解説した記事です。
エンジニア採用難のなか、非エンジニア創業者が多い日本では、「自分のバックグラウンドが不利か有利か」を見直し、投資家への見せ方を考えるうえで示唆に富む内容です。
ソロ創業者はAIで100倍の生産性を得るが、チームも同じく100倍になる
これまでビジネス担当と技術担当、あるいはプロダクト・技術・GTMの複数人が必要だった仕事が、AIによって一人でこなせる可能性が出てきています。
一方でBen Horowitz氏は、シード段階で求められるv1プロダクトの水準そのものが上がるかもしれないと指摘しています。チーム全員が100倍になるなら、チームのほうが先に進めるかもしれません。
コードはAIで書けても、顧客との膨大な商談は誰かがこなす必要があるかもしれません。「コーディングはもともとスタートアップの主なボトルネックではなかったのでは」という問いでもあります。
非エンジニア創業者は「作れる」ようになったが、技術的判断の価値はむしろ高まる
金融やコンサル出身でビジネスへの情熱を持つ人材や、コード以外で日々創作しているクリエイティブ人材が、自らプロダクトを作れるようになりました。ただし、プロトタイプと信頼性の高いスケール可能なプロダクトの間には依然として大きな溝があります。
誰もが初期版を作れる時代だからこそ、技術的判断がより重要になるかもしれないと指摘しています。つまり、何を作るべきか、何が技術的に可能か、複雑化するなかでどう先行し続けるかという判断です。特に開発者向けツールなどの領域ではこの傾向が顕著です。
ドメイン専門家は課題を知る。外部者の視点が要ることもある
病院の医師や不動産仲介者、教師などは日々の課題を熟知しており、ソフトウェアで自ら解決策を作り、事業まで築けるのではないか、という見立てです。しかし、Airbnbを作ったのはホテル業界ではなく、Kalshiを作ったのは金融業界ではありませんでした。漸進的な改善ではなく業界の再発明には、外部者の視点が必要な場合があります。
若者とクリエイターは強みが明確、でも経営の壁が残る
若者はすでに、MinecraftのMODやRobloxのゲーム、Discordボットづくりを通じて、何千人もが使うものの作り方を身につけています。AIがあれば、さらに多くのものを、さらに速く作れます。ただし、友人に愛される製品と会社経営は別物で、採用・資金調達・マネジメント・マネタイズが必要です。
若い創業者は同世代を理解しているため、コンシューマー向けでは有利かもしれませんが、エンタープライズソフトウェアや医療など経験と人脈が効く領域では、その優位性ははるかに小さくなります。クリエイターは広告費をかけずに届けられる流通力を持ちますが、一時的な注目と持続的な成長エンジンは異なり、長期にわたり改善を続けるDNAがあるかが問われます。
投資家の「Yes/No」リストは時代で変わる
Google後はスタンフォードPhD、Facebook後は友人向けソーシャルアプリを作る中退者、Airbnb後はデザイン志向の創業者、Uber後はオペレーションに強い泥臭い創業者が好まれてきました。AIインフラの時代にはCS博士号取得者が再び注目されているかもしれません。
逆に、「No」リストとして「ソロ創業者はNG」「非エンジニアは避ける」「業界出身者がテックを作るのはNG」「夫婦創業」「歯科医やクリエイター、セレブ」などが存在してきましたが、AIのような技術革新はこれらを見直す機会だとしています。
創業者の型が機能する理由は、模倣・技術と流通・投資家の自己強化
①勝ち組の創業者の経歴に成功要因を見いだして、似た人材を探すという単純な理由がある
②各時代の技術と流通チャネルが特定の層を有利にする
例:.eduメールで拡散するソーシャルアプリには大学生が最適
③投資家が「この時代の創業者はこうあるべき」と合意すると、自己強化が働く
その型への投資は追加資金を集めやすくなり、うまくいっていない時期でも「不公平な」ラウンドが何度か組まれることがある
特にプリシード・シードでは、ラウンドが細かく分かれ、多くの投資家が「Yes」と言わなければ小口の資金が集まらないため、この影響が大きくなります。
問うべきは、どの前提が本質だったか
<yellow-highlight-half-bold>コーディングは容易になっても、営業・採用・判断力・粘り強さの重要性は変わらないかもしれません。<yellow-highlight-half-bold>ソロ創業者は10人分の仕事ができても、3人チームなら30人分の仕事ができるかもしれません。
一方で、5年前なら異質あるいは不利と見られた創業者像が、今は真の強みを持つ可能性があります。著者は、古いパターン認識を「ソロが良い」「専門家が良い」といった新しいパターン認識に置き換えることが誤りになると述べています。そして、技術がこれほど大きく変わるなら、成功する創業者像も変わるはずだと結論づけています。

AIラボは「お金を刷る機械」だった
「Introducing Benchmark Breakfast with Jack & Ev」 by Jack Altman and Everett Randle on YouTube
BenchmarkのパートナーであるJack Altman氏とEverett Randle氏の新番組「Benchmark Breakfast」の初回エピソードをピックしました。同社の5〜6時間に及ぶアジェンダなしの月曜パートナーミーティングを再現した番組です。
「AIラボは1ドルを90セントで売っているだけで、利益は出ない」というナラティブに対して、グロース投資の経験を持つRandle氏がAnthropicのS-1をどう読み解き、そこからAI市場の構造をどう見ているかがわかる内容です。
Anthropicはわずか6四半期で収益構造を証明した
Randle氏がS-1で最も重要だと挙げるのは、売上とコンピュート費用(推論と学習の合計)の四半期推移です。
2025年Q1は売上約4億ドルに対し、コンピュート費用は約9億ドルでした。2026年Q2には売上116億ドルに対してコンピュート費用56億ドルとなり、売上はコンピュートの2.1倍に達しています。同四半期のGAAP営業利益率は8%です。<yellow-highlight-half-bold>多くのテクノロジー企業が10年かけて証明するオペレーティングレバレッジを、Anthropicは6四半期で示した<yellow-highlight-half-bold>とRandle氏は語っています。
数字は強いが、IPO直後に評価されるとは限らない
Anthropicは前四半期比で、2026年Q2に145%、Q3に45%成長しました。それでも驚異的な成長ですが、CrowdStrikeやDatadogのように純増が安定して右肩上がりする企業に慣れた投資家は「ちょっと待て」と身構えます。
また、売上の約80%は従量課金です。SnowflakeやDatabricksのような複数年契約と比べて将来の見通しが立てにくく、この成長のブレが上場後の論点になるとRandle氏は指摘しています。
わずかでも賢いモデルが勝ち続けるのは、多くの仕事に上限がないから
Altman氏が意外だと語るのは、1世代前のモデルでも十分使えるのに、わずかでも最先端を握ったラボに勢いが集中し続けることです。Keith Rabois氏の整理を借りると、タスクには2種類あります。税務申告のように正しく終わればそれ以上の加点がない仕事は、いずれ飽和します。
一方で、コーディング、営業、創薬、ロボティクスのように上限のない仕事では、人は常により良いモデルを買います。Randle氏は、AIから個人が得られる価値は価格をはるかに上回り、少なくとも数千ドル、場合によっては数万ドルに達すると補足しています。
トークンの売り手は勝っている、買い手の生産性はまだ証明途中
トークンの売り手が好調なのは明らかだとAltman氏は語ります。ただし、トークンの買い手がすべてのケースで生産性を上げているとはまだ言えません。コードは1年前、大量に買われていながら生産性が出ていませんでしたが、今では明確に成果が出ています。
テック以外の一般企業がAIを買えば確実に良い事業になる、という段階にはまだ距離があります。消費側の普及が必要だと指摘しています。
コード生成はZoomと違い、エージェントは何本でも増やせる
Altman氏はコロナ禍のZoomを例に、需要を先食いした後に飽和が来る可能性を挙げました。これに対しRandle氏は、Zoomには明確な天井があるが、コーディングエージェントは常にもう1つ追加できると反論しています。
Opus 4.5以降に創業した投資先は、2019年とは「まったく違う」作り方でソフトウェアを開発しています。最近シード投資した創業者は、散歩中もスマホから数本のエージェントを走らせていました。経済全体がこの「ソフトウェアファクトリー」型に移行していく以上、コード生成は当面毎年2倍の成長を続けられるとRandle氏は見ています。
耐久性の見極めは難しくなった、だからトレンドに乗るか次を当てるか
2010年代後半には、クラウドとエンタープライズの事例が十分にあり、スイッチングコストや定着性をある程度判断できたとAltman氏は語ります。企業はWorkdayを何年も検討し、導入すれば使い続けました。
しかし今は、6ヶ月前に「死んだ」と言われたアプリケーションソフトウェアが「生きている」とされ、6ヶ月後にはまた逆転するかもしれません。そのため、投資は今のトレンドに乗るか、次のトレンドを当てるかのどちらかだとAltman氏は述べています。リターンが最も大きいのは、次を当てることだといいます。
候補として挙げるのは、ラボの優秀な人たちが「うまくいく」と言いながら、まだ実用には至っていないロボティクスとバイオです。
AI企業同士の循環的な支出は、Stripeと同じ道をたどる
健全なAI経済には、オハイオやニューヨーク、フロリダの銀行や医療システムのように、AIの外にある資金が流入する必要があるという見方があります。AI企業同士でトークンを売り買いするだけでは、AI経済全体にかかるレバレッジが高まり、うまくいかなければ全体が崩れるからです。
これに対し、Randle氏はStripeを例に反論しています。Stripeは旧来型企業ではなく、インターネットネイティブ企業のDoorDash、Shopify、Instacart、Lyft、Uberとともに成長し、その実績で旧来型企業を取り込みました。
トークンを大量に買ってソフトウェアファクトリーを作るAI企業こそが、将来の巨大企業になると語っています。
クローズドの論拠は、フロンティアラボが知能の「低コスト生産者」になれること
知能が代替可能な商品だとすれば、勝つのは同等の成果を最も安く届けられる「低コスト生産者」です。SpaceXは1kgを宇宙に運ぶコストが世界で最も低く、AWSは巨大な需要を集約して規模の経済を築きました。
Randle氏は、フロンティアラボも同じ構造を持つと語ります。非公開の最先端モデルを自社の推論基盤の効率化に使い、モデルと基盤を一体で設計し、最大の買い手としてコンピュートを最も安く調達しています。これが正しければ「オープンソースのほうが安い」という前提は必ずしも成り立たないと指摘しています。
オープンの論拠は、自社の知能を自社で持つこと
Altman氏は、ラボは学習コストを価格で回収する必要がある一方、Kimi K3のようなオープンモデルにはその負担がないと語ります。
ラボはバイオやロボティクスに向かっており、2世代前のモデルで基本タスクを安くするためにマージンを削る動機も薄いと指摘します。ただし、より大きいのは支配権の問題です。Alex Karp氏が言うように、企業は1社にすべてのデータを委ねるべきではありません。
Eli LillyのデータがすべてAnthropicにあり、そのAnthropicが「ちなみに、うちも近々薬を出します」と言い出したら穏やかではいられない、と例えています。Randle氏も、良質なトレースデータを持つ企業が小型のオープンモデルを徹底的にファインチューニングし、Kimi K3やSonnet並みの性能を格安で得ている例を挙げています。
オープンソースのシェアが5〜10%でも、1,000億ドル市場になる
Randle氏の試算では、年末時点で上位3〜4社の推論クラウドは、売上ランレートが約60億ドルで、OpenAIとAnthropicの合計約1,700億ドルの3%程度です。ハイパースケーラーを含めても、オープンソースの比率は5〜10%ほどと見ています。
それでも、ラボの合計売上が3〜4年で1兆ドルに達し、オープンソースが10%を取れば約1,000億ドルの市場になります。その多くはFireworks、Baseten、Modalの3社に集約されるとRandle氏は予想しています。
Altman氏が「ハッピーパス」と呼ぶのは、ラボが極めて重要でありながら60兆ドル企業にはならず、AIが役に立たないわけでもないという中間の着地です。
AIはフィードバックが安く取れる領域ほど速く進化する
Altman氏は、ソフトウェアがどれだけ速く作れるようになっても、世界を良くする効果には上限があると語ります。住宅、寿命、健康、食料、交通といった物理的なものこそが生活を変えるからです。
Randle氏の整理では、AIが最も速く進化するのは、信頼できるフィードバックを大量に安く得られる領域です。コードはユニットテストで正否がわかり、実験も無限にスケールできますが、ロボットは導入も保守も高価で、バイオの「ユニットテスト」は物理的な実験です。
MercorのBrendan Foody氏は、インターネットはLLMにとって「一度きりの補助金」だったと語っており、物理領域にはインターネットに匹敵するデータの蓄積がありません。
Randle氏はこの差を埋めるにはマンハッタン計画級の取り組みが必要だとしつつ、バイオの影響はほかのどの領域よりも大きくなると語っています。Randle氏は、自身の父親の経験も挙げています。父親は進行がんと診断されながら、過去10年の免疫療法で寛解し、10年以上の予後を得ました。

SaaS予算は消えていない。旧来型からエージェント型へ移っている
「SaaS Isn’t Dead. Old SaaS Is Dead: Sierra Adds $150M ARR in One Quarter While ServiceNow Drops 27% in a Day」 by Jason Lemkin on SaaStr
ServiceNowは好決算にもかかわらず、1日で株価が26.9%下落しました。同じ週にSierraは、1四半期で1.5億ドル超のARRを積み上げ、総ARRが4億ドルを突破しました。
この2社の対比から、BtoB予算が「旧来型SaaS」から「エージェント型SaaS」へ再配分されている構造を解説しています。AI時代にどこで戦い、どうプライシングするかを考える創業者に向けた記事です。
ServiceNowは「20%で固定される会社」と評価された
ServiceNowはサブスクリプション売上が前年比21%増、通期のFCFマージン見通しが36%と堅調でしたが、株価は急落しました。要因は、現在の受注残(cRPO)成長率の鈍化見通し(21%→18.5%)、営業利益率の低下(16.8%→9.4%、グロスマージンも77.3%→70.5%)、AI収益化の時期が来年に先送りされていることの3点です。市場は、AIが成長を加えるより速く利益率を削っていると判定しました。
Sierraは2.5年でARR 4億ドル。直近の倍増は5ヶ月
1億ドルから2億ドルまで6ヶ月、2億ドルから4億ドルまで5ヶ月で到達し、Q3単体の純増ARRは昨年1年分を上回りました。Fortune 50の半数近くが顧客で、売上400億ドル超の米国小売企業が初回ミーティングから27日でエージェントを稼働させた事例もあります。ServiceNowの四半期純増の約22%を創業2.5年のSierraが1四半期で積み上げた計算です。
新しい予算はなく、同じBtoB予算が再配分されている
Gartner予測では2026年のソフトウェア支出全体は15.1%増、うちエージェント型AIは141%増の2,019億ドルです。ソフトウェアとAIの予測は別のモデルなので概算ですが、全体の15.1%増からエージェント型の分を差し引くと、それ以外の伸びは約6%にとどまります。2027年には減少に転じる見通しです。
つまり、<yellow-highlight-half-bold>エージェント型は新規予算ではなく、既存のCX・IT・オペレーション予算を奪って成長<yellow-highlight-half-bold>しています。ServiceNowのAI目標(10億ドル→17億ドル)も同じ枠内の競争であり、問われるのはシェアです。
分かれ目はプライシング:Sierraは成果、ServiceNowは席数
Sierraはローン借り換えや保険金支払い、受注など成果に対して課金します。一方、ServiceNowは席数課金に消費量を重ねるハイブリッドモデルを維持し、顧客も成果型を求めていないと説明しています。席数課金は、顧客の効率化が進むとやがて席数が減る構造的な弱点を抱えます。ServiceNow自身も社内AIで年間10億ドル超の効率化を実現し、人員が微減しています。
著者は、AI以前の競合の2倍以上のディールサイズを示せないエージェント型企業には、もう投資しないと明言しています。予算が固定されている以上、勝つ側ははるかに大きなシェアを取る必要があるからです。
創業者が持ち帰るべき5つのポイント
①新規予算は来ない前提で、置き換える既存の予算項目を示す
②成果を測定できるなら成果でプライシングする
③成長率だけでなく純増収益額を追う
④稼働までの期間を短縮する
⑤AI搭載に伴うグロスマージンの低下を監視する
投資家は成長が加速するなら利益率の低下を許容し、成長が横ばいなら厳しく評価します。

AIに任せても「監督」は手元に残る──Molly Grahamが見直した「担当を手放す」助言
「The grief, loneliness, and burnout sweeping through the tech industry right now | Molly Graham」 by Lenny Rachitsky on Lenny’s Newsletter
Molly Graham氏は、元Google・Facebook・Quipのリーダーで、現在はTEDのWorkLifeを担っています。Lenny’s Podcastで、13年前に書いた「Give Away Your Legos」を見直しました。これは、自分が築いた担当領域(積み上げたレゴブロックのたとえ)を、会社の成長に合わせてほかの人に手渡すことが次の機会につながる、という助言です。
この助言は人への委任ではなお通用するとしつつ、AIに任せる場合は同じようには手放せず、人への委任と性質が異なると整理しています。何を委ね、何を人が持ち続けるかという線引きと、それを支える管理職の役割の重要性が浮かび上がる記事です。
AIに任せても、監督の負荷は自分に残る
人に担当を渡す場合は、責任ごと手放して頭の容量を空けられます。一方、<yellow-highlight-half-bold>AIに任せた仕事は最終成果物への責任と確認の手間が手元に残ります。<yellow-highlight-half-bold>Graham氏は、AIへの委任は人への委任と違って「監督の負荷」が残り続けると指摘しています。
AIは「怠け者のインターン」にたとえられ、文脈の共有、コーチング、レビューが前提とされます。誰もがAIを管理する立場になるなか、Graham氏は、管理できる人数は10〜12人が上限という自身の経験則を挙げています。AIエージェントを人数に数えた場合の負荷にも言及しています。
判断・信頼・「良い」の基準は人が持つ
Graham氏が人に残すものとして挙げるのは、判断、人同士の信頼、そして何が「良い」かの基準とビジョンです。AIが書いた戦略メモをそのまま全社に送るCEOは、思考の外注を許容するメッセージを組織に出すことになる、という例が示されました。
対談では、人が方向を示し、AIが下書きし、人がレビューする流れ(AI sandwich)も整理されています。トークン利用量の競い合いは「量」の生産性を測るだけで、前進を示す効率は測れないとされています。AI導入後にエンジニアリング領域で書き直しコードが約8倍に増えたという報告も引かれています。
不安と燃え尽きには、階層削減より上司の役割
Lenny氏のテック従業員サーベイでは、燃え尽きを感じる人が前年の44%から55%に増えました。一方で、約半数は「キャリアで最も幸せ」と回答し、AIで自分が増幅されたと感じる人ほど前向きだったとされています。
同調査では、仕事の幸福度に最も効くレバーは上司でした。Graham氏はこれを踏まえ、大企業で進む管理職階層の削減は長期的に裏目に出ると警告しています。変化に伴う感情を言葉にして認めることと、AIに何を任せ何を人が負うかの基準を示すことが、経営者・管理職の役割として挙げられています。
資金調達ニュース
[海外]
🛰️ ハードウェア×AI
- Re:Build
航空宇宙・防衛などの製造業向けに、製品設計からエンジニアリング、量産までを担う米国の製造プラットフォーム。21億ドルを調達。投資家はGeneral Catalyst、JPMorganChase Strategic Investment Group(いずれもリード)(TechCrunch) - Bedrock Robotics
既存の掘削機などの重機を後付けで自律化する建設現場向け自動運転システム。シリーズCで6億ドルを調達。評価額は41億ドル。投資家はCapitalG、Emergence Capital、Bessemer Venture Partnersなど(Yahoo! Finance) - Tractian
振動・超音波・電流・温度などをセンサーで自動計測するマルチモーダル監視と、大規模な産業資産データで学習した独自AIを組み合わせた、重厚長大産業向けPhysical AIプラットフォーム。シリーズDで1億3,000万ドルを調達。評価額は14億ドル。投資家はSapphire Ventures(リード)、M&G Catalyst(共同リード)、N47など(Tractian公式リリース) - Dulo
Sebastian Thrun率いる、ハードウェア設計向け基盤モデルの開発企業。Waymo、Google Brain、Stanford AI Lab出身者で構成。シードで1億3,000万ドルを調達。投資家はDST Global、Construct Capital、Lowercarbon Capitalなど(The Information) - Foundry Robotics
AI駆動の自律型組立工場。シリーズAで1億ドルを調達。投資家はMarlinspike Partners、Khosla Ventures、SE Venturesなど(Ventureburn) - Lumaril
既存の工場設備をAIで自律制御し生産性を高める産業オートノミー基盤。シリーズAで6,600万ドルを調達。評価額は4億ドル。投資家はElad Gil、Felicis、Koch Disruptive Technologiesなど(Fortune) - Opentrons
オープンなAIネイティブ型ラボ自動化ロボット。シリーズEで4,000万ドルを調達。投資家はヘルスケア特化のAvego(リード)、BroadOak Capital Partnersなど(BioSpace) - Machenta
シミュレーションデータのみで事前学習し、1回の実演で新しいタスクを習得するロボット向け基盤モデル。シードで4,000万ドルを調達。投資家はCreandum、Union Square Venturesなど(Tech Funding News) - Maxinsights
一人称視点の作業映像を収集するロボット学習データ基盤。シードで3,000万ドルを調達。投資家はPeak XV、Tola Capital、South Park Commonsなど(The Next Web) - Circuit Mind
AIによる回路基板の設計・検証プラットフォーム。シリーズAで1,850万ドルを調達。投資家はNorwest(リード)、Third Prime、Differentialなど(The Next Web)
🏢 エンタープライズ
- Serval
ServiceNow代替を掲げるAIエージェント型のエンタープライズサービス管理・自動化プラットフォーム。シリーズCで1億5,000万ドルを調達。リードはSequoia、昨年12月のシリーズB(7,500万ドル、評価額10億ドル)に続く連続リード。評価額は30億ドル。投資家はSequoia、新規参加のConviction、Headline、General Catalyst、Elad Gilなど(SiliconANGLE) - Hex Technologies
AIエージェント前提で再構築したデータ分析プラットフォーム「Hex 4.0」。シリーズDで1億ドルを調達。評価額は12億ドル。投資家はPeak XV Partners、137 Ventures、a16zなど(FinSMEs) - Avante
従業員の医療・福利厚生プログラムのベンダー評価、プラン資料の確認、期限管理をAIエージェントで支援する企業の福利厚生担当チーム向けプラットフォーム。シリーズAで3,000万ドルを調達。投資家はFrist Cressey Ventures(リード)、Sorenson Capital、Hearst Venturesなど(Yahoo! Finance) - Plato
AIの学習・評価に使う職場シミュレーション環境。シリーズAで1,600万ドルを調達。投資家はNava Ventures、Gradient Venturesなど(Fortune) - Archera
クラウド・AI支出の最適化と保険付きクラウドコミットメントのプラットフォーム。シリーズCで1,500万ドルを調達。投資家はPivot Investment Partnersなど(PR Newswire) - Simplismart
AIモデルを少ないGPUで効率運用できる推論インフラ。シリーズBで1,400万ドルを調達。評価額は1億ドル。投資家はDallas Venture Capital、NVIDIA、Accelなど(TechCrunch) - Rocker
企業の従業員向けAIアシスタント。1,285万ドルを調達。投資家はGreycroft、Anthropic、Menlo Venturesなど(Fortune)
🏥 ヘルスケア
- Pathos AI
数千のエージェントが臨床データ・ゲノム・生体試料・競合状況を分析し、臨床資産の成功確率を算出する独自モデル「Foundry」を持つ臨床段階のAI創薬企業。シリーズEで2億3,700万ドルを調達。評価額は30億ドル。投資家はBristol Myers Squibb(リード)、既存投資家も参加(Fierce Biotech) - BioGeometry
AIでゼロから医薬品を設計するモデル(GeoFlow、GeoCell)。シリーズA+でシリーズA累計1億ドル超を調達。投資家はChina Life Capital(リード)など(Ventureburn) - Vera Health
エビデンスを重視した臨床AI検索エンジン。シリーズAで2,850万ドルを調達。投資家はThreshold Ventures(リード)、Optum Ventures、Mantis VCなど(Tech.eu) - ClarityCare
事前承認など医療事務業務のAI自動化。シリーズAで1,650万ドルを調達。投資家はHeadline、Maverick Ventures、firstminute capitalなど(MedCity News)
🏗️ バーティカル
- Broccoli
電話対応・予約・顧客フォローを担う住宅サービス事業者向けAIエージェント。シリーズA・Bの合計で5,200万ドルを調達。投資家はKhosla Ventures、Y Combinator、Operator Partnersなど(Yahoo! Finance) - Coast
決済機能と業務データを組み合わせ、車両・ドライバー・案件・費目ごとに支出を可視化する、現場系・フリート事業者向けの法人カード/支出管理プラットフォーム。グロースエクイティで3,500万ドルを調達。投資家はThomvest Ventures(リード)、新規のIntuit Ventures、Small World Capitalなど(Ventureburn) - Nous
家計の定期支出を管理し、安い料金への交渉・サブスク解約・書類の自動入力などを消費者に代わって行うFCA登録済みのAIエージェント。1,700万ドルを調達。投資家はHeartcore Capital(リード)、シードから継続のMosaic Ventures、Chalfen Venturesなど(FinSMEs) - Dream
元Palantir幹部による、建築物の設計・エンジニアリングを自動化するAI世界モデル。AutoCADやRevitなどAEC向け既存ツールの置き換えを狙う。シードで1,700万ドルを調達。投資家はAndreessen Horowitz、SV Angel、XYZなど(TechCrunch) - TrashLab
CRM・配車・請求を一体化した廃棄物収集業者向けAIネイティブOS。グロースラウンドで1,200万ドルを調達。投資家はVentana、Bienville Capital、Harlem Capitalなど(Yahoo! Finance) - Loamy
生鮮食品サプライチェーン向けモバイルファーストERP。シードで600万ドルを調達。投資家はSupply Change Capital、Zeal Capital Partners、Slauson & Co.など(Runtime Wire)
🔒 サイバーセキュリティ
- Upwind
クラウド・AIセキュリティプラットフォーム。シリーズCで4億ドルを調達。評価額は38億ドル。投資家はBessemer Venture Partners、Canapi Ventures、Greylock Partnersなど(TechCrunch) - Infisical
AIエージェントや開発者、マシンのための機密情報・アクセス管理基盤。シリーズBで4,000万ドルを調達。評価額は6億ドル。投資家はElad Gil、Y Combinator、Gradient Venturesなど(Unite.AI) - Numeracle
企業の本人性確認と通信の信頼性を担保するソフトウェア。グロースラウンドで2,800万ドルを調達。投資家はEdison Partners(Fortune)
💳 フィンテック
- Collective
会社設立、記帳、請求書発行、給与計算、税務申告をAIで一括代行する、一人ビジネス向けの金融OS。シリーズBで4,000万ドルを調達。これとは別に、顧客獲得費用を賄うGeneral CatalystのCustomer Value Fund(エクイティではない)から6,000万ドルを確保し、合わせて計1億ドル。シリーズBの投資家はGeneral Catalyst、QED Investors、Gradient Ventures(共同リード)など(TNW) - Nevis
CRM、会議記録、資産計画、カストディ業務を統合し、AIエージェントが業務を自動処理するウェルスマネジメント向けAI OS。シリーズBで7,000万ドルを調達。投資家はEQT Ventures、Charles Schwab、QuantumLightなど(Global FinTech Series) - Hyphenate(旧Maximor)
既存のERPや銀行システム上で、債権管理・財務・総勘定元帳などを自律的に処理するCFO部門向けAIエージェント。シリーズAで4,500万ドルを調達。投資家はNexus Venture Partners、B Capital、Foundation Capitalなど(SiliconANGLE)
そのほか
- Flapping Airplanes
より少ないデータと計算資源でAIを学習させる手法を研究し、チップ性能の引き出しも狙うAI研究ラボ。自社技術を他社にライセンスしてAIコストを下げる計画。シリーズAで10億ドルを調達。評価額は60億ドル。投資家はIndex Ventures、Lux Capital(共同リード)、Sequoia Capitalなど(The Next Web) - General Compute
SambaNova、Cerebras、PositronなどNVIDIA以外の推論特化チップで構築するAI推論向けネオクラウド。シリーズAで1億ドルを調達。評価額は8億ドル。投資家はBlackbird Ventures、Abstract Ventures(共同リード)など(TechCrunch) - Wabi
Replika創業者Eugenia Kuydaによる、ユーザーの要望に応じてミニアプリを生成するパーソナルAIエージェント。5,500万ドルを調達。評価額は12億5,000万ドル。投資家はIVP(リード)、Andreessen Horowitz、Forerunnerなど(TechCrunch) - Nirva
装着者本人の声だけを聞き取るジュエリー型ペンダント。アプリが発話を解析し、性格・周囲の人・訪れた場所などに関するインサイトを生成。プレシリーズAで2,500万ドルを調達(累計3,300万ドル)。投資家はLightspeed Venture Partners、South Park Commonsなど(TechCrunch)
[国内]
- Tokyo Artisan Intelligence(TAI)東北大学発。鉄道・自治体向けのエッジAIソリューションと、自社開発のAI半導体チップ「Manta Ray」の2事業。シリーズC(ファーストクローズ)で、第三者割当増資とみずほ銀行の融資を合わせ12.7億円を調達。投資家は三井住友海上キャピタル(リード)、ワタキューホールディングス、東京計器・東京計器レールテクノなど(PR TIMES)



