【経験者が語るSaaSスタートアップ転職での気づき #1】
”LabTech(研究×Technology)”を掲げ、理系学生に特化したダイレクトリクルーティングサービス「LabBase」や産学連携プラットフォーム「LabBase X」を開発・提供している株式会社POL。
今回は、新卒入社したNTTドコモから、まだ社員10数名だったPOLに転職。営業責任者を経て、現在は人事責任者として同社の人事全般を統括している薮大毅(やぶ ひろき)さんにお話を伺いました。
大企業からスタートアップへの転職を実際に体験した、経験者ならではのリアルで赤裸々なエピソードやアドバイスは、同様の環境で頑張る皆さんにとって気付きとなるヒントがたくさん詰まっているはずです。
1. イメージだけで転職を決めない
そのチャレンジ精神は、本物か?
「もっとチャレンジングな環境に飛び込みたい」
大企業からスタートアップへの転職を検討している方の多くが、そのように考えているんじゃないかと思います。
でも正直言って、それだけの理由で転職を決めるのはおすすめできません。
というのも、そのチャレンジ精神が本当にその人自身のものか分からないからです。本来は安定志向であるにもかかわらず、現在の環境があまりにも保守的すぎるため、その反動でそう思っているだけの可能性もあります。
たしかにスタートアップには、新しいこと、革新的なことを歓迎する風土があります。でもその一方で、想像以上に不安定で動きの激しい世界です。転職ひとつとっても、大企業のように万全の受け入れ態勢が整っているなんてことは、ほぼありません。大企業とのあまりのギャップに、すぐに折れてしまう人もいます。
ちなみに私はPOLに新規営業として入りましたが、そのことを知らされたのは入社直前でした。しかも、私は新規営業の経験が皆無だったんです(笑)。 でも、それでもPOLでチャレンジしたいという想いは揺らぎませんでした。おそらく私の場合は、過去に自分の生き方を決定づけられた強烈な原体験があったからだと思います。
理由と根拠を深掘りしてほしい
大学時代、東日本大震災のボランティア活動に参加していたんですが、そこで出会った人たちに衝撃を受けたんです。皆さん、社会に対して「こうしていきたい!」という強い想いを抱き、実践されていた。
そんな姿を目の当たりにして、「自分も同じように生きていきたい」と思うようになったんです。
そこから自分の生き方を見つめ直し、学生団体で人材系の事業立ち上げなどに関わっていくうちに、自分が本当にやりたいことは「社会をつくっている一人ひとりの可能性を最大化すること」なのだと確信するようになりました。
そしてそれを実現できそうな場所が、POLだったんです。
なので、転職を考えている方にも、ぜひ一度〈自分がチャレンジしたい理由や根拠〉を深掘りする機会をもってほしいですね。必ずしもスタートアップが最適解ではないかもしれませんから。
2. 俯瞰的な視点をもつ
私がPOLに入社してから、とくに意識していることが2つあります。その1つが、常に俯瞰的な視点をもつこと。
もう少し具体化すると、『自分の役割を決めないこと』と『シビアに取捨選択すること』に分けられます。
自分の役割を決めない
大企業の多くは縦割り型の組織ですし、部署ごとにきっちり役割が決められています。仕事で自分がコントロールできる範囲は狭いし、課題があっても横断的に働きかけることは難しい。
対してスタートアップ、とくにPOLのような50名にも満たないフェーズの企業ですと、部署なんて関係なく、社員全員で事業や会社の成長を考えていくスタイルです。当然、課題だらけですから、「自分は営業だから」とか「経理だから」とか、役割や立場に固執していては立ち行きません。
担当外のことであっても、そこに問題があるならばサポートするのが当然です。私も営業時代、法務や契約書まわりの整備に取り組んでいましたから。
スタートアップというのは、どうしても攻めに重点を置く分、こうした守りの面は後手に回ってしまいがちなんです。そこに気付くことができたのは、大手出身者だからこそかもしれませんね。
シビアに取捨選択する
スタートアップというのは、外からは順調に見えていても、実情は課題で溢れかえっています。
だから、その中で本質的なものだけを優先的に解決していかなければ、人手や時間がいくらあっても足りません。
同様に、中長期的な視点で、今やるべきこと、やるべきでないことをシビアに取捨選択することも必要です。といっても、これがなかなか難しい。正直、自分もまだまだです。
実は、営業から人事に移った当初、採用に組織強化にブランディングに…と、あれもこれも手を出そうとして、うまくいかないことがあったんです。その経験を活かし、今は思い切った意思決定をして、かなりドラスティックな変革を試みているところです。
意思決定って大変だし、怖さもあります。とはいえ、そのスピードと精度を高めるには経験を重ねるしかありません。大企業だとよほどの役職でないかぎり機会さえ与えてもらえないので、そういう意味では本当にありがたいと思っていますね。
3. 愚直にやり抜く
『失敗=学び』がスタートアップ精神
もう1つ意識している点が、「愚直に決めたことをやり抜く」ということです。ここに、かしこさや綺麗さは必要ないと思っています。
POLで働きはじめてから身に沁みて感じていることなのですが、スタートアップは、決して ”イケイケ” でも ”キラキラした世界” でもありません。スタイルよりも結果。やり抜いて結果がわからなければ意思決定の成否も分かりませんし、何より事業が前に進みません。
誤解をおそれずに言うと、失敗に終わっても良いと思っています。重要なのは、きちんと振り返りの機会を設けて、要因を検証できているかどうか。大企業と違い、『失敗=学び』がスタートアップの精神ですから。
実際に私も失敗を学びに変えながら、何とか前に進んでいるという実感があります。
食らいついたら離れない執着心
お話したとおり、私は未経験の新規営業でPOLに入社しました。
当然、大企業のような丁寧な研修もマニュアルもありませんでした。初日から早速テレアポをはじめましたが、会社名を伝えても誰も知らない。
そんな状況でしたが、だからこそ、学びを得るためにやるべきことは、率先してやり抜こうと決心したんです。
どんな小さな目標も必ず数字化して、食らいついたら離れないくらいの執着心で取り組みました。それこそ、止まったら死んでしまう回遊魚のように(笑)。
くわしい数字は公表できませんが、その結果、営業配属から人事に移動するまでにMRRベースで倍増の成長を遂げることができました。その後マネージャーを任されましたが、相当数字にたいする執着の強い部署に育てられた実感もありますね。
おわりに
今回は、大手企業からSaaSスタートアップへの転職経験者ということで、本音でお話しさせていただきました。ほんの少しでも、これからスタートアップに挑戦したい方の参考になれば嬉しく思います。
「LabBase」も「LabBase X」も、お陰様でたくさんのお客様に導入いただき、喜んでいただいていますが、POLはまだまだこれからの会社です。現在人事としては、もっと組織の「器」を大きくしていきたいと考えています。
POLには若く、真面目な社員がたくさんいます。そんな社員たちを、豊富な経験と人間的魅力でぐいぐい引っ張っていってくれるような仲間と出会えるとうれしいです。
薮 大毅(やぶ・ひろき)
1994年生まれ。東京大学経済学部卒。NTTドコモにて新規事業の立ち上げに携わったのち、2019年1月、株式会社POLへジョイン。理系学生に特化したダイレクトリクルーティングサービス「LabBase」の営業責任者を経て、現在は人事責任者。趣味は写真撮影。