エンジニアの採用活動を加速させるためには、自社の開発環境やプロダクトの魅力を深く理解し、自らも開発に取り組むような「キーマン」となるエンジニアの協力が欠かせません。一方で、エンジニアが採用活動に直接携わることに関するノウハウや、その意義や必要性を知ることができるコンテンツは、まだまだ世に足りないようにも感じます。
そこで今回は、現役エンジニアでありながら、スカウトサイトなどを駆使して優秀なエンジニアの採用を急ピッチで実現している、hokanのエンジニアリングマネージャー・前島治樹さんを招き、採用活動で実践していることをお聞きしました。
保険業界のアップデートを目指し、「InsurTech(保険×テクノロジー)」の分野で保険代理店向けのSaaS開発を進めるhokan。業界理解が難しい領域ではありますが、前島さんが採用に携わり、わずか2ヶ月で内定受諾率60%超え、スカウトメールへの返信率も50%超えという、業界平均値を大きく上回る成果を出しているのは、なぜなのでしょうか。
前島さんは大学院を卒業後、日本初のERP導入を成功させたITコンサルティング企業に従事した後、CtoCサービスの開発エンジニアを経て、株式会社MUGENUPではシステム部長としてエンジニア採用や開発組織も経験しました。現在はhokanでエンジニア採用やマネジメントを務めています。
ALL STAR SAAS FUNDのTalent Partnerとして、投資先企業の人材採用支援などを手掛ける楠田司が、転職エージェント時代の経験も交えながら、hokanのエンジニア採用活動に迫ります。
内定承諾率は60%超え、2ヶ月で5人が内定承諾の成果
楠田:前島さんがhokanに加わられて、約9ヶ月経ちましたが(※インタビューは2022年6月)、現状の採用者数や内定受諾率はいかがですか。
前島:2021年の9月に参画して以降、採用媒体やエージェントさんとのコミュニケーションをとってきて、母集団形成をしていきました。10月、11月で8名に内定を出したうち、5名から承諾をいただけましたね。私が入る前まで開発組織の採用は、そもそも選考に乗らないケースが多かったと聞いています。
楠田:つまり、60%を超えていると。内定承諾率の業界平均値が20%〜30%といわれていますから、倍近くというのはすごいですね。
前島:もちろんご縁もあります。リファラル採用や、CTOの横塚を以前から知っていたといった理由もありますが、最終的に数多くある企業の中からhokanを選んでくださったことは本当に嬉しいです。
楠田:入社されたときのポジションは、どういう役回りを期待されていたのでしょうか?
前島:最初からエンジニアリングマネージャーでした。開発組織の拡充や、エンジニアリングマネージャーの採用が課題でした。P/LやB/Sを計算したうえで、事業成長と人材採用のタイミングを見定めることは、やはり避けて通れません。さらには、ただ採用すればよいわけではなく、より優秀な方にパフォーマンスを発揮してもらわないといけません。
特にSaaS企業でいえば、エンジニアがいないと機能開発が継続的に進みません。優秀な方が活躍できる持続的な開発体制こそが、事業の成長に最も貢献できると考えていますから、採用を担当することにはまったく抵抗はなかったです。むしろ、当時は僕にしかできない仕事だと思ったくらいです。
採用には、マーケティングとマネジメント能力が欠かせない
楠田:前島さんが入社されて、hokanのエンジニア採用が急激に進み始めた印象を受けました。入社以前のエンジニア組織の体制や状況は、どのような感じだったのですか?
前島:重要機能の開発などは進んでいましたが、リードエンジニアがすごく頑張って開発を続けている属人的な状況でした。もっともシード期やシリーズAなら、それでも正しいのだと僕も思います。ただ、事業を拡大するとなればリソースが足らなくなるのは当然で、個々の力で開発が進む状況から脱却する必要がありました。
採用に関しても片手間のままでした。採用媒体を開設してもしっかり運用できておらず、母集団形成やカジュアル面談でのアトラクトなどは体系的に進んでいなかったですね。
楠田:前職からのご経験も踏まえて、採用活動が機能していなかったのは、どういった問題点が大きかったと思いますか?
前島:前提としてリソースがないと採用活動は難しいものですが、一方で専任者がいれば採用がうまくいくわけでもありません。では、何が必要なのか。エンジニア採用に限らず採用全般に言えることですが、マーケティングとマネジメント能力がないと難しいと考えます。
エンジニアという職種において、転職市場で母集団を形成し、営業でたとえるならばリード獲得から受注まで導く流れを作らなくてはなりません。スカウトへの返信が来て、カジュアル面談を踏んで、選考に進んでもらうといったポイントごとに、何を語り、どうアトラクトしていくのか。それをマーケティング目線で考えられないと、採用はなかなか進まないはずです。
「エンジニア採用ジャーニーマップ」で戦略を整理
楠田:始動2ヶ月で内定受諾まで得たという成果を出すために、前島さんはどういった優先順位でアクションを起こしていったのでしょうか。
前島:やみくもに採用媒体を開いたり、代行業者にスカウトを送ってもらったりと、ただの「作業」になっていた活動を止めて、まずは「どういうエンジニアを採用したいか」というジョブディレクションを整理しました。
次に、エンジニアの母集団がいる媒体の「選択と集中」をしました。採用媒体はFindyさんがメイン。関心があることを伝え、マッチした相手にスカウトを送るという流れです。スカウトはA/Bテストを実施して、「どういった内容のメッセージなら返信率が高いか」を検証して、効果が出やすいものに集中させました。
マッチング率でいえば7%で、返信率は50%ほど。今月に限って言えば100%でしたね。
楠田:100%って、ありえるのですね(笑)。
前島:厳選していて何十通も送っているわけではないですから(笑)。
楠田:いやいや、それでもすばらしいです。先ほどは「マーケティングとマネジメント」が必要というお話がありました。ぜひ具体的な施策についても教えてください。
前島:まず、「チャネルごとにどういう人がいるのか」を簡易的なカスタマージャーニーマップに見立ててつくり、戦略を整理して施策を打ちました。

出典:hokan
「エンジニア採用ジャーニーマップ」と題して、大きくは3つの世界線を想定します。「hokanを知らない人」「hokanを知っている人」「はなれた世界線」です。そして、それぞれ認知、興味、情報収集、エントリーとパネル分けをします。
「hokanを知らない世界線」の人には、まず認知してもらわなくてはなりません。ホームページ、自社のリポジトリ、社内インタビュー記事はすでに設けられていたので使えます。エンジニアの母集団が多いFindyさんやGreenさんといった採用媒体を開くのも広報活動の一環となります。他にも、自社主催イベントも効果的ではあるのですが、当時のhokanではリソース不足から一旦保留。と、このように整理して施策を打っていきました。
「hokanを知っている世界線」の人にはそれらの前提を踏まえて、候補者は情報収集するものと考えました。幸いにも広報がいて、エンジニアのインタビュー記事はすでに作成され、SNS発信についても行なっていましたから、材料は揃いつつありました。ただ、採用には活用できていなかったので、それを候補者の情報収集のジャーニーと結びつけていきました。
大きな課題はカジュアル面談以降でした。実はカジュアル面談から選考に進むケースが少なかったのです。そこで面談で見せる資料を、エンジニアが興味を持つように作り直しました。
すぐに理解しにくい保険業界の全体像を捉え、そこでエンジニアが働くならば、どういった点に興味を惹かれるのかを再考しました。そして実際にカジュアル面談を何度か重ねて、自分が話しやすい流れに沿って作り直しました。
たとえば、データ量の多さ。広告業界のほうがデータ量という意味では大きいのですが、保険契約者の情報はよりプライベートであり、それらを保険代理店を横断して安全に集積していることがhokanの強みです。あるいは、開発組織がエンジニアのキャリアパスにも責任を持ってサポートしていること。そういった点を資料に組み込んでいきました。
採用の成功体験を積むと、ピープルマネジメントスキルも身につく
楠田:アトラクトのポイントを整理し、キャリアというキーワードをピックアップ......この2点に注力した理由はどこにあったのでしょうか?
前島:やはり、エンジニアとして転職活動をしている方々の不安は、「自分が携わるサービスがちゃんと伸びていくかどうか」です。要は、機能開発が止まってしまうことを最も恐れている。これは、スタートアップやベンチャーで挑戦してきたエンジニアの転職理由トップ3に入ると思います。
開発しているサービスの売り上げが止まった、成長が止まってやることがなくなった、半ば受託開発のようにお客さんの要望を返すだけになった、SIerから転職したはずなのに前職と同じような仕事ばかりになった……SIerのビジネスモデルはすばらしいと僕も思いますが、転職の動機は自らのキャリアを考えて環境を変えたかったことにあるでしょうから。
こういった不安を解消してあげることや環境があるかどうかが何より重要なのです。
保険業界の市場規模の大きさにはじまり、hokanがどういった戦略で保険代理店に向けSaaSを展開し、ITが狙える規模はどれくらいあるのか。「エンジニアとしてhokanに入ったらやることが途切れなさそう!」と理解してもらい、さらに「実際に途切れないですよ」といった説明をしていきました。
キャリアについては、特にエンジニアの市場が大きくなって、スタートアップやベンチャーが増えてきたからこその悩みではないでしょうか。これがスタートアップも少なく、伸びていく段階であれば、とりあえず開発していれば何となくやっていける実感があったかもしれません。
ただ、成熟したスタートアップも増え、上場企業も出てきたなかで、「自分がこれから、どこで何をすべきか」を悩まれる方が増えてきたのでしょう。実際に悩まれてきた先輩方を見てきて、より若手のエンジニアたちも、自分のキャリアを真剣に考えないといけないと感じ、先行きへの不安を抱えながら日々開発している。統計調査をしたわけではありませんが、そういった方が5年以上前と比べて肌感覚としても増えてきたと思います。
PdM、エンジニアリングマネージャー、プロジェクトマネージャーといったように、マネジメントスキルを身につけないと自分の市場価値も上がらない。そういった考え方を持つ方も増えてきた印象を受けています。
楠田:エンジニアが、エンジニア採用に携わるキャリア観点のメリットは、どういった点が挙げられるでしょうか?
前島:エンジニア採用はマーケティングとマネジメント能力がないと難しいという話に通じますが、必然的に1on1で相手の話をちゃんと聞くことができるようになってきます。採用の成功体験を積むと、ピープルマネジメントのスキルも身についていくんです。
候補者のような第三者に対してキャリアの不満や課題をヒアリングして、解決策を一緒に考えていくのは、コーチングにも通じる。それを社内のメンバーに対してのマネジメントで実施しようとしても、関係値が築かれている間では形骸化してしまいます。
僕自身もエンジニアとして選考に関わることによって、マネジメントもできるようになってきた実感があります。エンジニアとしての次なるキャリアが見えてくるメリットは大きいのではないでしょうか。
採用のスタート地点は、「転職モチベーション」のすり合わせ
楠田:ビジネスサイドの方々はまだまだエージェント転職がスタンダードな一方、エンジニアの方々はダイレクトに転職されるケースが8割から9割といわれます。だからこそ、キャリア相談に乗ってくれる機会が面接中にあるのは、満足度が上がりそうだと気づきました。
前島:それこそ転職の軸やキャリアビジョンから一緒に整理した方もいます。その上で「それならhokanで実現できる」といったように話をする。もちろん全員が内定承諾してくださるわけでもなく、自分のキャリアとは違うと感じられることもありますが、無駄ではないと思っています。僕との整理で道筋が明確になったのであれば、それはそれで出会えた価値はあるはずですから。
楠田:エンジニアのタイプでも、開発が好きな人もいれば、マネジメントを目指したい人もいて、事業にも興味を持つ観点はいろいろありますね。それらの人に寄り添い、タイプを把握するためによく聞く質問、気をつけているポイントはありますか?
前島:まず、転職意欲が高いか低いかで分かれます。低い場合でも「なぜ、他社の話を聞こうと思ったのか」という理由は必ずあるはずですから、その経緯は慎重に質問しながら聞いています。そこを基に深掘りして、感じている課題をお聞きしたうえで、「hokanならこんな風に課題へアプローチできますね」とクリアしていく。もちろん、そこまでの経験を提供できない可能性もありますから、そのときは正直にお話しします。
楠田:転職するモチベーションの源泉をしっかり確認していくと。
前島:採用のスタートは、そこのすり合せだと思っています。
hokanを熱量高く語れる味方なくして、スカウトメッセージの効果は高まらない
楠田:転職の軸を把握することもポイントですね。
前島:転職活動をはじめたきっかけが、そのまま仕事選びの軸になる人もいます。たとえば、「自分のプロダクトを通して社会貢献したい」という人がいれば、僕は気になります。社会貢献のかたちもさまざまですし、それを個人ではなく会社で、それも事業会社で、なぜやっていきたいと考えるのか。そこを学生時代まで遡って聞くこともあります。
あとは、hokanがどういったエンジニアの方を求めているのか、というコミュニケーションもとらなければなりません。どういった求人票であれば、採用媒体に登録しているエンジニアの方に刺さるのかは、その媒体運営者にしかわからないことも多いです。カスタマーサクセスの方とヒアリングを重ね、求人票を何回も作り直しました。
より刺さりそうな項目を強調するように、文章の位置や画像を変えるような細かいところは調整し続けます。「神は細部に宿る」といわれますが、媒体の特徴に合わせて伝えたいことをしっかり伝えるのが大事だと思っています。
僕らが活用しているFindyさんには、カスタマーサクセスとユーザーサクセスのチームがありますから、「hokanがどういう会社か」を自分と同じ熱量で説明できるようにプレゼンしました。
楠田:今おっしゃった観点は、スカウト返信率の高さにも通じているように感じます。
前島:そうですね。エージェントでも媒体運営者でも、どれだけhokanを自分と同じ熱量で説明いただけるかによって、返信率は変わってくると考えています。全体として、そこが十分でないと、どれほどスカウトメッセージを工夫しても返信率は上がらないでしょう。
ダイレクトエージェントでも同様で、候補者の方に熱量を持って説明していただけなかったら、僕らがいくら会いたいと要望しても、エージェント側から「他社のほうに関心を持ったようで」と言われてしまう(笑)。
こういった前提を踏まえた上でスカウトのメッセージはA/Bテストをして、返信率が高いものに絞っていきます。候補者のプロフィールを拝見し、その方の課題に仮説を立て、質問を投げかけながら「一緒に考えていきましょう」と想いをまとめていますね。
優秀なエンジニアに選ばれるために工夫していること
楠田:hokanからのアプローチについて様々お聞かせいただきましたが、一方で「優秀なエンジニアさんに選ばれる」というのも大事かと思います。hokanではどのように取り組まれていますか。
前島:優秀なエンジニアのモチベーションが下がる要因の一つに、不具合が多数発生することがあります。スクラムのタイムボックスのなかで開発したにもかかわらず、予期せぬバグや不具合が起きる。リリースのたびに次の日に障害が起こるかもしれず、実際に起きてしまった……ということが繰り返されると、モチベーションは大きく低下します。
そこでまずは品質を上げることに専念しました。テストフローを整備し、QAベンダーの方にもご協力いただき、インシデントスコアで計測。スコア30〜60ほど発生していたのが、現在は概ね5を下回っています。ここまで整備することで、アーキテクチャの負債の解消と、開発のスピードの向上に着手できます。
つまり、エンジニアのモチベーションを削ぐ要因を排除していくことを大事にしています。
楠田:既存のエンジニアにも意義を理解していただくことが欠かせないように感じました。
前島:そうですね。社内にいるエンジニアみんなが、自分たちの開発組織をどう認識しているのか、ブレストしながら話し合う「カルチャーワークショップ」を早期に設けました。「開発組織の良いところ」を付箋に書き出してグルーピングするものです。お互いの認識を合わせ、良いところの言語化が促されました。
これまでは1on1や飲み会の席くらいでしか話されてこなかった内容を、しっかりブレストする時間をとることで、開発組織としての共通認識をつくっていく。それによって、エンジニアに裁量があり、自由活発なhokanのカルチャーが見えてきました。先のことを読み、アーキテクチャを設計し、アジャイルに開発していくチームとして、難易度が高い保険業界の開発だからこその面白さを見出せる。それを明文化できたのも大きいですね。
楠田:実際にどういった変化が起こりましたか?
前島:コミュニケーション量が増えましたね。今も増え続けていて、最近は僕が関わるまでもなく、チームリーダーがワークショップを主催して、知らないところでアウトプットが出てきたり。あとは、僕は予定が合わなかったのですが、バーベキュー大会が行なわれていたり(笑)。より良いチームになってきたと感じています。
BtoBであっても“生活実感”とのつなぎ込みが興味を惹く
楠田:hokanさんは他のBtoB SaaSと同じか、それ以上に業界理解が転職者にとって難しい領域ではないかと思います。それが伝わるように、どのような工夫をされていますか?
前島:保険業界の細かな説明をしても難しいですよね。まずは、日本の市場規模でもトップ5に入るということをピックアップします。自動車業界が60兆円ある一方で、保険市場は約50兆円ありますから。それほどの規模感があることに興味を持ってくれる方は多いです。
その市場規模が大きい理由を説明するために、「生命保険は入っていますか?」という質問もしてみますね。加入していれば動機や理由を聞いて、そこから興味を深掘りしていく。加入していなくても、賃貸物件を契約していれば火災保険には必須で入りますよね。そのくらいに保険は流通がしっかりしている商材なんです。販路が再現性高く定型化されていて、誰も疑問に思わず保険にお金を払う。「そういった商品、他にありますか?」と(笑)。
事業として成り立っていて、投資家による資金が集まっている以上、人の生活に関わらないわけはない。それを認知してもらうことが、採用フェーズでは重要だと思っています。
楠田:前島さんがその重要性を理解されたのは、hokanさんに入られてからなのか、これまでのキャリアなのか。きっかけは?
前島:きっかけは、新卒入社した会社での経験です。生産管理や原価管理のソフトウェア導入について、OGやOB訪問など新卒向けの説明に時々関わっていました。ただ、そこでも「必要性をイメージしづらい」という反応が多かった。しかし、消費者のもとになるべく適性な価格で物を卸すためには、それらの管理が欠かせないというものがありました。
そんなときに極端な例ですが「たとえば、製薬会社の生産管理や原価管理が適切でなければ、あなたの手元に届くときの薬は1万円しますよ」と伝えると反応が変わるんです(笑)。BtoBソフトウェアの導入は、結局のところ、人々の生活に関わるという意識を持ってもらえるかどうかで、会社に対する興味も変わってくるのだとわかりました。
選考フローとは、キャリアの解像度を高める好機である
楠田:こうして前島さんとお話しすると、転職者は「hokanは良い会社だ」と感じるでしょうね。ぜひ、そんな方に入社してもらえるように、クロージングで心がけていることを教えてください。
前島:他社と迷われる方も当然いらっしゃいますから、「どんな点に迷っているのか」を正直に聞きます。その上で、他社とhokanを比べて、入社後に起きうるであろう業務について、一緒に解像度を高めながら考えていきます。
たとえば、他社がPdMでの内定、hokanがエンジニアとしての内定だとして、転職者はキャリアとしてPdMを経験すべきか迷っているとします。そこで、会社やプロダクトの規模などを比較したうえで、発生し得る仕事を比べながらも、hokanで将来的に担えるほうに魅力を感じれば、内定時の希望だけではない選択肢も出てくるはずです。
僕はいつも「2〜3年後をイメージしたときに、本当に自分がやりたいことができる会社に進んでください」と話しています。現在と未来を見て、最も自分がバリューを発揮できるのはどこか。そこをしっかり話し合いますね。
楠田:未来のキャリアまで一緒に描いて、足りない筋力は何なのかを整理するのですね。
前島:無理強いしてhokanに来てもらっても意味がないと思っているんです(笑)。あくまでも、人生の一部でも賭けてhokanに入ってもらうのであれば、パフォーマンスを発揮しながら成長してほしいし、市場価値を上げてほしい。そのためには候補者自身も解像度を上げないと、どちらを選んでも後悔してしまうはずです。
楠田:僕もキャリア面談をしていて、よく感じます。転職って、何もうまくいくことばかりではない。だからこそ3年後、5年後の解像度を上げて、今の自分が挑戦すべきことをクリアにすればするほど、人生にも絶対プラスになりそうです。
前島:まさに、それを願っていますね。キャリアは、中に入ってみないとわからないことも多いものですから、自分の目で確かめて、自分で判断していただきたい。僕はあくまでも解像度を上げるお手伝いをしたいですし、それこそが「選考フロー」なのではないか、といった姿勢で取り組んでいます。