最先端のAI技術を活用したSaaS型チャットポット『KARAKURI chatbot』で、企業のカスタマーサポート・コールセンター部門の課題解決をサポートするカラクリ株式会社。
今回は、同社でアカウントエグゼクティブを務める石原 光訓(いしはら みつのり)さんに、自社事業の魅力について伺いました。
一時は政治家を目指し、統一地方選挙に立候補した経歴も持つ石原さん。その視線はビジネスの枠を超えて、社会の未来へと向けられています。 (※写真は2020年1月撮影のものを使用しております)
統一地方選挙での挫折
きっかけは地方活性化プロジェクト
私がカラクリへの入社を決めた理由は、社会の最前線で新しい価値を生み出せる可能性を感じたからです。ITやテクノロジーはあくまで手段。本当に自分がやりたいこと、目指していることは「社会を良くすること」「世の中の課題を解決すること」なんです。
そんな風に広く社会に目を向けるきっかけになったのは、学生時代にかかわっていた高知県宿毛(すくも)市の地域活性化プロジェクトでした。
宿毛市は四国最南端の小さな町。もともと自分とは縁もゆかりもない土地でしたし、最初は軽い気持ちで参加したんですが、ワークショップを企画したり、地元の方々と交流を深めたりしていくうちに、「これから地方はどうやって生き抜いていけば良いのか」「そのために自分で出来ることはないか」と考えるようになりました。
大学院終了後、一旦は東京のITベンチャー企業に就職しました。そこで営業をメインに、大手企業のプロジェクトや経営企画など、新人にはもったいないくらいの経験を積ませてもらったんですが……。宿毛市への思い止み難く、思い切って移住して、地元の観光協会に転職しました。
死力を尽くした選挙活動
観光協会では現場責任者として、イベント開催や情報発信、ふるさと納税のプロモーションなど、観光促進のためのあらゆる活動に携わりました。
ただ、ある程度の実績は残せたものの、自分としてはあまり満足はできなかったんです。地方の課題は観光客誘致だけではありません。地域を本当の意味で強くするためには、福祉や教育といった、生活の基盤となる要素も変えていかなければならない。行政の予算に紐づけされた一般社団法人という組織にも限界を感じていました。
それで今度はさらに思い切って(笑)、政治から変えてやろうと決意したんです。2019年、統一地方選挙に、高知県県会議員候補として出馬しました。
結果は落選。選挙活動は死力を尽くしましたが、何から何まで初めてのうえ、無所属で最年少。いま考えると、我ながら無茶なことしたなって思います(苦笑)。正直、情熱だけで突っ走っていたようなものでしたから。
選挙が終わった直後は、燃え尽きて抜け殻状態でした。でも、そのときに果たせなかった「社会を良くしたい」という想いが、いまのカラクリでの仕事の原動力にもなっているように感じます。
お客様と一緒に世界をつくっていく
商談でセールスよりも意識していること
アカウントエグゼクティブの役割は基本的にセールスです。当然、目標数値もあります。ただ、私はそれほど営業活動に重きを置いていません。それよりも意識しているのは、顧客が目指している世界観をつかむこと、そしてその世界観を実現するために真摯に向き合っていくことです。
よく言われることですが、SaaSは契約してもらって終わりではありません。お客様の課題解決のために、アフターフォローはもちろん、製品への要望をヒアリングして機能を追加したり改善したりしていく必要があります。
でも、それだけでは不十分です。重要なのは、ただの解決策ではなく、顧客にとって最適な解決策を提供すること。極端なことを言うと、課題に対してカラクリのプロダクトがベストな解決策でなければ、他社のプロダクトをすすめても良いとさえ思っています。
ですから、商談もセールスの場ではなく、〈顧客にとって最適な意思決定に協力する場〉という風に捉えています。目的は、繰り返しになりますが、顧客が目指す世界観の実現に一歩でも近づくこと。そしてそれは私個人だけではなく、カラクリの会社の姿勢とも変わらないと考えています。
顧客にとってのExcellentを追求する
カラクリはKeep Excellentというバリュー(行動規範)を掲げています。簡単に言うと、どんな仕事も、BetterではなくBestでもなく、Excellentを追求するということです。
だからこそ、社内ミーティングでも、顧客の世界観から少しでもずれた提案をすれば厳しく指摘されますし、「お客様が達成すべき目標はそこじゃないだろう」という声が飛んできます。つまり、会社全体で顧客に真摯に向き合っている。そういう意味でも、自分に合ったとても良い環境だと思いますね。
顧客が目指す世界観を実現するということは、言い換えると顧客と一緒に世界をつくっていくということ。数字を追いかけるだけの仕事とは違って、ワクワクできるし楽しいですね。……でもこれって、スタートアップで働くうえで必要な心構えとも共通するかもしれませんね。与えられた環境よりも良い環境を自分でつくりだす、ということでもありますから。
とはいえ、正直に言って、まだまだやるべきことが山積みなのも事実です。『KARAKURI chatbot』にしても無条件に選ばれるだけの知名度はありませんし。自分ももっとクライアントに寄り添って、担当者ご本人も気づいていない課題を発見して解決に導けるようになりたいと思っています。
まずは100万人の働き方改革から
カラクリはチャットボット屋さんではない
ただ……、これはとても重要なことなんですが、カラクリはチャットボット屋さんではないんです。顧客とおなじようにカラクリにも目指す世界観があります。それが、「今までにないカラクリで世の中を豊かに」という企業ミッションです。
ここで言う豊かな世の中とは、世界中の誰もが、テクノロジーが産み出す価値を享受できる社会のこと。もう少し具体化すると、AIテクノロジーを駆使して、世の中の人が問題に直面して悩んでいる時間を圧倒的に短縮することで、心に余裕のある豊かな世の中をつくるということです。
『KARAKURI chatbot』は、そのミッション実現のための表現のひとつと言っていいかもしれません。とはいえ、もっとも重要な表現であることには変わりません。なぜなら私たちは、カスタマーサポートを変えていくことで社会も変えられると考えているからです。
カスタマサポートが変われば社会も変わる
コールセンターだけに限っても、現在、オペレーターとマネージャー層をあわせて約100万人の方々が働いているといわれています。単純計算すると日本人の100人に1人。じつは介護職や小・中・高校の教師よりも多いんです。
ただ一方で、離職率も高い。その要因がストレスです。なかでも大きいのが、同じ説明を何度も繰り返さなければならないこと。そしてその課題を一挙に解決できるのが『KARAKURI chatbot』です。ここでは詳しい説明は省きますが、簡単に言うと、ルーティンワークをAIに置き換えませんか?ということです。
そうすれば、より繊細かつ臨機応変な応対が求められる業務、売上や顧客ロイヤリティの向上に直結するような業務に人手を増やすこともできます。実際、クライアントからも「ユーザーに直接会いに行って話を聞けるようになった」「サイレントカスタマーの声を掘り起こしできるようになった」という声が寄せられています。このように、職場環境の改善と生産性の向上、つまり働き方改革にアプローチできるメリットもあります。
もうひとつ重要なのが、こうしたコールセンターの働き方改革は、ユーザーにとってもメリットがあるということです。なんといっても、待たされるストレスが減りますよね。
コールセンター・カスタマーサポート部門100万人の方々の働き方をアップデートできれば、その先にいる1億人のユーザーのサービス体験を高めることもできる。わからなくて困っている時間を減らすことができる。これがカラクリの、と同時に私のミッションです。先は長いけれど、一歩ずつ進んでいきたいと思っています。
おわりに
スタートアップへの転職に悩んでいる方へのアドバイスですか? ……個人的には、気軽に考えればいいんじゃないのって思っています(笑)。転職に失敗したからといって人生が終わるわけではありませんし。私も選挙に落選したときは途方に暮れましたけれど、いろんな仕事に関わっているうちに、世の中にはまだまだ自分の知らない仕事がたくさんあることを知りました。
待遇とか、周囲の目とか、やらない理由を挙げていくのは簡単です。でも、それでは一生何も変えることができません。それよりも、自分はどうありたいか、どういう風に仕事していると満足できるか、ということを考えて、現在の状況がそれとかけ離れているようであれば、目指す場所に飛び込んでみると良いんじゃないでしょうか。そんな風に思います。
石原 光訓(いしはら・みつのり)
東京大学大学院新領域創生科学研究科修了後、都内のITベンチャー企業にて、セールスを中心に大手企業のプロジェクトおよび経営企画に携わる。その後、高知県宿毛市に移住し、一般社団法人宿毛観光協会・専務理事として数々の観光開発プロジェクトを主導。2019年9月、カラクリ株式会社入社。現在はアカウントエグゼクティブを務める。 趣味は、箸拳、サウナ、街歩き。