リファラル採用を成功させる秘訣とは? スペシャリストが教えるメモリーパレス活用術
自社にリファラル採用の文化を根づかせるため、多くの人事担当者や経営者が試行錯誤を続けています。ですが、社内からリファラルの候補者があがってこなかったり、候補者にアプローチしても成果が出なかったりと、思うように文化醸成できず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、リファラル採用のSaaSプロダクトを展開する株式会社リフカム 代表取締役CEOの清水巧さんに、リファラル採用の重要なステップである「候補者のリストアップ方法」にフォーカスして解説いただきました。清水さんが紹介するのは、過去の記憶をさかのぼって優秀な人材をリストアップする、メモリーパレスというフレームワークの活用法。スペシャリストの語るノウハウをぜひご覧ください。
リファラル採用のよくある課題と押さえるべきポイント
まずはリファラル採用のよくある課題についてお話をさせてください。多くの企業は、リファラル採用において「①タレントを十分にリストアップできない」「②転職潜在層を振り向かせるまでに至らない」という課題を抱えています。
1つ目の「①タレントを充分にリストアップできない」という課題はなぜ起きてしまうのでしょうか。例えば、採用担当者から誰かを紹介するようリクエストされた場合、多くの社員は「自分の知り合いのなかで、優秀で転職を考えており、かつ口説けそうな人は誰か」を考えます。つまり、転職候補者を四象限に分けるとすれば、リファラル採用で挙がってくるのは下図の右上の層の方々です。
この方法では、前職の部下や自分と同等のスキルの方など「声をかけやすく、かつ優秀な転職顕在層」しか候補者として挙がってきません。前職で上司だった方や、転職意欲が不明な方を挙げるケースは少ないはずです。しかしリファラル採用を成功させるには、上図の左上に位置する転職潜在層の方々をいかにしてリストアップするかがポイントになります。
また、もう1つの課題である「②転職潜在層を振り向かせるまでに至らない」についても解説します。仮に転職潜在層の方にアプローチできたとしても、自社に興味を持ってもらうことは非常に大変です。候補者にアプローチを続けたとしても、転職を検討してくれるまでには数か月から数年単位の時間がかかることも珍しくはありません。優秀な方であるほど、転職していただくまでには時間がかかる可能性が高いです。
これらの課題をふまえて、リファラル採用において押さえていただきたいポイントが2つあります。1点目は「①転職潜在層へのリファラルを実施すること」です。この施策に取り組まなければ、リファラル候補者の数が増えないという課題はなかなか解決できません。
2点目は「②全体施策と部分施策を分けて実施すること」です。リファラル採用を実施する際に、すべての社員に対して同じように「紹介可能な人がいれば教えてください」とアナウンスする採用担当者も多いです。もちろん、この手法は非常に良いものですが、欠点もあります。いわゆる働きアリの法則のように、メンバーのなかに「誰かが紹介してくれるだろう」という気持ちが生まれ、コミットメントの低い人が出てきてしまうのです。
リファラル採用に重点的に協力してほしいメンバーを巻き込むには、一部のコアメンバーに向けた施策と、社内全体に向けた施策を分けて実施することが重要になります。そして前者の施策の1つが、今回ご紹介するメモリーパレスです。
リファラル採用を加速させる! メモリーパレス活用術
メモリーパレスは優秀な転職潜在層の方々をリストアップし、候補者の方々と多くの接点をつくるための施策です。
例えば「前職で優秀だった方を3人教えてください」「これまで一緒に仕事をしてきた営業のなかで最も尊敬する人を3人教えてください」などの質問を社員に投げかけ、答えてもらいます。質問設計を適切に行うことで、優秀なリファラル採用の候補者をリストアップしていくのがメモリーパレスの特徴です。
世界有数のベンチャーキャピタルであるSequoia Capitalが、出資先のスタートアップ企業に対して必ずこの施策に取り組むようにリクエストしているほど、効果の高い施策になります。
ここからは、どのような手順でメモリーパレスを進めていくかを解説します。まず、採用に携わるコアメンバーで形成されたプロジェクトチームを組成しましょう。チームの人数は、人事担当者を含めた7名前後で組成することをおすすめします。プロジェクトのキックオフを行い、メンバーに対して以下のような内容を説明していきます。
①なぜリファラル採用をやるのか
リファラル経由で入社した方の離職率が低いことや、エージェント経由の採用と比較して金銭的コストが抑えられることなど、なぜリファラル採用が優れているのかという詳細。
②なぜあなたなのか
プロジェクトチームのメンバーが採用におけるキーパーソンであることと、その理由。
③どうやるのか
前述の「①転職潜在層へのリファラルを実施すること」「②全体施策と部分施策を分けて実施すること」という軸でプロジェクトを進行すること。
④何をやるのか
転職潜在層のリストアップに役立つメモリーパレスという施策を実施したうえで、各種の採用戦略を設計していくこと。
キックオフを行った後は、ワークショップ形式でメモリーパレスに取り組んでいきます。まずはワークショップ準備編です。メモリーパレスを実施するには、質問内容を事前に用意しておく必要があります。当社では想定質問を準備するのに役立つGoogleスプレッドシートをご提供していますので、こちらをぜひご活用ください。
このスプレッドシートには「(社内には)中途入社の社員が多いですか?」「今までのリファラル社員はどのようなつながりでしたか?」などの条件分岐が用意されています。この内容を参照していただくことで、企業のパターンに応じた質問作成が可能です。ワークショップの運営者は、プロジェクトメンバー誰かひとりの協力をあおぎながら、どのような質問であれば自社とマッチしそうかを検討していきましょう。
想定質問をリストアップできたら、ワークショップを実施していきます。ワークショップでは、進行役が先ほどリストアップした質問をプロジェクトメンバーに共有しましょう。そして、プロジェクトメンバーはポストイットに名前や会社名、役職を書いていきます。4〜5問くらい質問すれば、参加者ひとりあたり12人〜15人ほどのタレントプールをリストアップできるはずです。
ポストイットへの記入が終わったら、進行役はプロジェクトメンバーに対してヒアリングしていきます。リストアップした方のどのようなスキルが優れているのか、その方との関係性や自社とのカルチャーマッチなどを、ざっくばらんに聞いてください。ここで大切なのは、採用する前提でヒアリングするのではなく、フラットに人となりを聞いていくこと。そして、書記係を置きワークショップの内容を記録してもらうことです。
つぎに上のような四象限の図を作成し、リストアップした方々が当てはまると思う位置に、プロジェクトメンバーはポストイットを貼り付けていきましょう。図の縦軸は自分たちが募集している職種で活躍しそうか、横軸は自社で楽しく働けそうかという観点です。
貼り付ける作業が終わったら、プロジェクトに参加している人事担当者や経営陣が書記の記録を見ながら、ポストイットの位置を調整していきます。なぜなら、そのタレントが活躍できるかどうかという感覚に、現場の社員と人事担当者や経営陣とのあいだで差異があるケースも考えられるためです。
メモリーパレスを実施した後は、リストアップされた候補者へのネクストアクションを決めます。「四象限のうち右上に位置する人たちに連絡する。スケジュールが合いそうなら会って話をしてみる」といったプロジェクトチームの方針を決め、初回連絡時にどのようなやりとりをするか、会った後はカジュアル面談をするのか、あるいは定期的にコンタクトし続けるかなど、とるべき行動をディスカッションします。
このような一連の流れが、メモリーパレスや転職候補者に対するワークフロー設計の説明になります。今回ご紹介した知見が、みなさまのリファラル採用の手助けになれば幸いです。