カルチャーの力:スタートアップが高成長する上でカルチャーが重要な理由
INSIGHT PARTNERS「The power of culture: Why getting it right is vital for high-growth companies」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ALL STAR SAAS FUNDにおいても、高成長スタートアップの背景には、目にはみえにくい、優れた組織文化(カルチャー)が原動力になっていることを感じることが多いです。カルチャーは、スタートアップのイノベーション創出力、失敗からの回復力、持続的な成功を生み出す基本的な原動力だと思います。この記事では、アメリカのPE・VC Insight Partnersが、高成長におけるカルチャーの重要性や、組織が拡大、他地域への展開、M&A、CEOの交代などの変化した際の注意点について解説しています。
- 信頼できるカルチャーを確立することは、スケールの基盤を整えるだけでなく、次のような効果も期待できます。
- 従業員のエンゲージメントを高め、定着率を向上する
- 優秀な人材を惹きつける強力な磁石となる
- 創造性、革新性、効率性を高める
- コミュニケーションとコラボレーションを強化する
- 組織の適応能力、回復能力、柔軟性を高める
- 状況別にカルチャーを進化させるために注意すべきポイントは以下の通りです。
- 組織の人数が急激に増えたとき
- 部署やチームで形成されるサブカルチャーに注意する
- 定期的に企業の価値観がどの程度守られているか・改善すべきかの監査を行う
- 新しい地域に進出したとき
- 新オフィスと本社をつなぐリエゾン役にカルチャーの調和の役割を与える
- 言語など地域の違いに留意して、継続的な教育リソースを提供する
- M&Aをしたとき
- カルチャーのデューデリジェンスを実施する
- カルチャーチャンピオンを特定し、従業員の声に対して行動する専門チームを作る
- 代表が交代したとき
- 退任するリーダーに敬意を払い、組織のために貢献してくれたことに感謝する
- リーダーシップの移行期間中の混乱を最小限に抑えるための安定化策を実施する
- 労働環境を変えるとき
- 頻繁にコミュニケーションをとることを意識する
- リモートで働く人よりもオフィスに物理的に存在する人を優先する対面バイアスに注意する
- 社会や経済などの外部要因が会社に影響を及ぼしたとき
- 管理職を対象に、困難な状況下でチームを効果的に管理し、士気を維持する方法について研修を行う
- カウンセリング・サービスやウェルネス・プログラムの利用など、精神的・感情的な幸福を支援する取り組みを優先する
- 組織の人数が急激に増えたとき
NVIDIA社長のリーダーシップ
StripeのYoutube「A conversation with NVIDIA’s Jensen Huang」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
NVIDIAのCEO、Jensen Huang氏が先日Stripeのイベントでインタビューを受けました。以下はそのディスカッションから僕のお気に入りの引用です。
- 情熱と苦労
「人はよく情熱を幸せと結びつけます。でもそこには何かが欠けていると思います。何も間違ってはいませんが、何かが欠けています。というのも、偉大なものを作りたいとき、それは簡単ではありません。簡単でないことをしているとき、必ずしもそれを楽しんでいるわけではありません。私は自分の仕事の毎日を愛しているわけではありません。毎日が私に喜びをもたらすわけではありません。そして、喜びが良い日の定義である必要もありません。私は毎日幸せではありません。でも、私は毎秒この会社を愛しています。」(06:08) - 才能の開発
「私はあなたが偉大さにたどり着くために厳しく鍛えます。なぜなら私はあなたを信じているからです。本当にチームを信じているコーチは、彼らを偉大さに厳しく追い込むことが多いです。そして、多くの場合、彼らは非常に近いところにいます。諦めないでください。」(17:17) - リーダーシップ
「私は、私が扱っている情報が、たった一人や二人だけが聞くべきものであるとは信じていません。これが会社の課題であり、私が解決しようとしている問題であり、私たちが進もうとしている方向です。全員が聞くべきです。」(12:05) - クラフトの重要性
「良いものはオペレーション・エクセレンスによって作られます。しかし、オペレーション・エクセレンスだけでは非凡なものを作ることはできません。というのも、あなたの仕事の大部分やあなたが作るプロダクト、あなたが作り上げた会社、あなたが育てた組織、これらには愛情深いケアが必要であり、それを言葉で表現することすらできないのです。」(01:00:43)
ソフトウェア業界の株式市場のセンチメント
Clouded Judgement「Clouded Judgement 5.31.24 - Software Sentiment Crumbles」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AltimeterCapitalのJamin Ball氏のメルマガより引用させていただきます。上場マーケットでソフトウェア銘柄がどのような市況となっているかというトレンドを抑えることは、未上場のSaaS企業において、IRやファイナンスの観点で非常に重要です。特にAI機能をどのように急速な売上向上ドライバーとしてエクイティストーリーに描いていくか、そしてPMFをいかに強固なものにし、成長を加速するかなど参考になる部分が非常に多いです。
- ソフトウェア業界の市況感は現時点でかなり深刻な状況。第1Qの収益の伸びが低く、特に第2Qもコンセンサスを下回る業績見通しを出す企業が多い状況です。一方で通年の見通しは低くなく、場合によっては回復を見込んでいるという状況で、その点もマーケットに混乱を与えている要因です。
- 今年の苦戦の背景は4つに整理ができます
- 顧客側でのソフトウェアの購買意欲が鈍化
バンドル化・プラットフォーム志向が進み、ソフトウェア支出に対しての急激な変化は見られず、むしろ通常の予算増加に沿ったより緩やかな支出になっていく可能性が高い。ネットリテンションが100%を切っている企業も少なくない。 - AI 収益が実現していない
投資家にとって、AI機能実装による売上向上の予測を確信を持ちきれておらず、期待に織り込むことができていない。(未上場でもIR含め、どれくらいの収益インパクトをもたらしうるかというコミュニケーションが必要) - AI 投資サイクルが加速
AI開発者に対してのケイパビリティを拡大するため、少なくない予算を投下し、利益率を低下させる要因につながっている - マクロ(金利)
年初は、複数の利下げを予想していたが、今年中に利下げが行われるかどうかは明らかではなく、実態として10 年国債が年初 3.9% から今日 4.6% 強に上昇していることも評価の低下につながっています。
- 顧客側でのソフトウェアの購買意欲が鈍化
- 株価推移の例として、大手SaaS企業であるWorkday / Salesforce はどちらも決算発表後に 15% 以上下落し、決算発表後の数日間にさらに下落を続けています。
- SaaS企業の成長が鈍化すると、収益倍率(PSR)を主要な評価基準として使用することがさらに正当化されなくなります。つまりソフトウェア企業は成長モードを抜けると利益創出ができるという前提で高い評価をされいることの理解が必要です。評価方法がPSRから利益ベースでの評価基準 (FCF または PE) に移行します。
- ソフトウェア業界の強みは、成長を抑えながらも収益性を高めることがである。そして全体的に確実にFCFの改善が見られることはこのセクターのレジリエンスの高さを示している。一方で、問題点は成長が大幅に鈍化し、FCFがそれに追随していない企業がまだ多く存在することです。
AIファースト
- xAI - イーロン・マスク氏が設立した生成AIスタートアップ。シリーズBで$6Bを調達。評価額はプレマネーベースで$18B。投資家はValor Equity Partners、Andreessen Horowitz、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- Aisles - 小売事業者の購買体験を改善する特化型AI。すでに年間$15M以上の純利益を創出。シリーズAで$30Mを調達。投資家は非公開(Analytics Insight)
- Maven AGI - エンタープライズ企業向けに、高度にパーソナライズされた効率的な顧客体験を提供するカスタマーサポート特化生成AI。シリーズで$28Mを調達。投資家はM13、Lux Capital他、OpenAI、Google、HubSpotなどの著名な経営幹部も個人投資家として参加(VentureBeat)
フィンテック
- Solutions by Text - 10年以上も自己資金のみで成長し続けてきた、請求書の支払いやローンの申し込みなどをテキストメッセージで行うFintech×SaaS。デット含めて総額$110Mを調達。投資家はEdison Partners、StepStone Groupなど(TechCrunch)
- FintechOS - ルーマニア発の金融商品(預金、住宅ローン、保険など)特化のフィンテック化を支援するFintech x SaaS。シリーズB+で$60Mを調達。投資家はMolten Ventures、BlackRockなど(TechCrunch)
- Authentic - SaaS事業者やフランチャイズビジネス事業者が、自社のSMB顧客に対して、手頃な保険商品を提供可能にする組み込み型保険SaaS。シリーズAで$11Mを調達。投資家はFirstMark Capital、Slow Venturesなど(citybiz)
エンタープライズ
- Transcend - データプライバシーやAIガバナンスに関する12ものプロダクトを提供する包括的なデータプライバシーSaaS。シリーズBで$40Mを調達。投資家はStepStone Group、Accel、Index Venturesなど(Fintech Global)
- Maxa- ERPやビジネスシステムからインサイト獲得を自動化する、Snowflakeネイティブアプリ。シリーズAで$21Mを調達。投資家はFramework Venture Partners、Snowflake Venturesなど(The SaaS News)
- Supervizor - 財務チーム特化の品質保証(QA)SaaS。$22Mを調達。投資家はOrange Ventures、Wille Financeなど(Fintech Global)
バーティカル
- TraceAir- 建設業者向け、土地開発と住宅建設のワークフロー予測分析SaaS。シリーズBで$25Mを調達。投資家はPeakSpan Capital、Flashpoint Venture Capitalなど(PR Newswire)
- Shorelight - 米国内外の一流教育機関で、留学生の成功を促進する在籍・成績管理SaaS。CIBC Innovation Bankingからデットで$30Mを調達。(Yahoo! Finance)