AIによるSaaS 4.0「Service as a Software」への進化と15のユースケース
Ajit Mishra氏のMedium「SaaS 4.0 : Service as a Software. How Generative AI is Redefining The Future of ITES」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
この記事では、過去10年のSaaSの進化を紐解きながら、生成AIによるSaaS 4.0への進化と具体的なユースケースについて解説しています。SaaS 4.0のコアにある仮説は、AIを活用したサービスが従来のソフトウェア・アプリケーションや人間のサービス・エージェントに取って代わるというものです。 ここでは15のユースケースの事例を紹介しています。
- 税務申告と会計業務の自動化(例. TurboTax Live)
- 24時間365日対応のカスタマーサポート(例. Zendesk Answer Bot)
- 契約書作成/法的アドバイスの提供/案件管理の自動化(例. LegalZoom)
- 診断と治療の推奨のために医療データ分析(例. Watson Health)
- パーソナライズされた投資アドバイス(例. Personal Capital)
- 採用、入社、パフォーマンス管理の自動化(例. StafflinePro)
- IT課題を予測して解決・高いシステム稼働率維持(例.Dell APX AIOps)
- パーソナライズされた個別指導(例.Khan Academy)
- 質の高いコンテンツを生成・マーケティング戦略の最適化(例.Market Minder)
- 旅程計画自動化・パーソナライズされたレコメンド(例.Booking.com)
- 在庫レベル・物流を最適化(例.Blue Yonder Luminate Platform)
- 不動産管理業務を自動化・メンテナンス依頼の合理化(例.AppFolio)
- 保険金請求処理とカスタマーサポートを提供(例.Lemonade)
- ショッピング体験をパーソナライズ・在庫管理(例.Vue.ai)
- ビルや産業施設のエネルギー使用最適化(例.C3 AI Energy Management)
優れた戦略を立てるための5つの重要な質問
Lenny's PodcastのYoutube「5 essential questions to craft a winning strategy | Roger Martin (author, advisor, speaker)」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
戦略に関する世界的に有名な専門家であるロジャー・マーティンは、優れた戦略を立てる際に自問すべき重要な質問について語っています。以下がその要点です。
- 戦略を考え、実行することが難しい理由は、互いに関連し補強し合う一連の質問に答える必要があるからです。戦略には通常「何かを行わない」という決定が含まれます。リーダーやマネージャーにとって、「何かを削除」したり「行わないことを決める」ことはintimidating(威圧的)です。
- 戦略の主な機能は、最終的にお客様に私たちの望む行動をとらせるために、私たちがコントロールできることについて決定を下すことです。
- 優れた戦略を立てるために考えるべき5つの質問
- あなたの勝利への aspiration(大望)は何ですか? 何を達成しようとしていますか?
- どの領域(フィールド)で戦うつもりですか?
- そのフィールドで、どのように競合他社よりも優れていられますか? より高い価値か、より低いコストか、どちらですか?
- 勝つためには、どのような能力を整える必要がありますか?
- それを確実に実現するために、どのようなマネジメントシステムが必要ですか?
- あなたの競合他社にはできない、あるいはやろうとしない理由を答えられる必要があります。
- 自分が自分の会社が優れていると思っていても意味がありません。お客様が同じように感じているかが重要です。
Vertical SaaSにおける独自データの価値の評価
Vertical SaaSへの投資に強みを持つFractal Capitalのメールマガジンに掲載された特集記事「Decoding the Value of Proprietary Data in AI-Driven Vertical SaaS」より引用しています。※メールマガジン購読者限定のコンテンツです。
- 生成AIの発展は、ソフトウェアの構築と活用方法に大きな影響を与えているが、特にVertical SaaSは、本質的に「データモート」があるため、AIをより有効に活用できる領域と言える。
- データモートとは、競合他社が複製するのが難しい独自のデータを蓄積することで企業が獲得する戦略的優位性を指す。汎用的なAI モデルで理解が難しい、微妙な業界用語、ワークフロー、規制を理解できるため、より良い顧客体験のソフトウェアを提供できる。
- Vertical SaaSは、多くの業界に見られる複雑で非構造化されたデータを扱う際、以下のプロセスを実行する必要がある
- データを理解する
- データを解釈する
- 時間をかけて効果的に大規模言語モデル(LLM)を訓練するためにデータを活用する
- Vertical SaaSの未来は、さまざまなレベルのデータの組み合わせと、高度な解釈機能にある。深いドメイン専門知識とデータ分析用のフレームワークの開発に投資する企業は、隠れたインサイトを導くことができ、革新的な製品を生み出すのに有利な立場にある。
エンタープライズ
- Vanta -企業のセキュリティとコンプライアンス・プロセス自動化を支援するSaaS。シリーズCで$150Mを調達。評価額は$2.45B。投資家はSequoia Capital、Goldman Sachs Alternativesなど(TechCrunch)
- IntelePeer - 音声、メッセージング、ソーシャルメディアによる顧客サービスのやり取りを自動化するAI×SaaS。$140Mを調達。投資家はSavant Growth、VantagePoint Capital Partnersなど(Silicon Angle)
- Payt - 売掛金回収プロセスを自動化し、回収時間短縮、不良債権削減、効率的なコミュニケーションによる債務者体験の向上を実現するSaaS。€55を調達。投資家はPartech(tech.eu)
- Level AI - Amazon Alexaの対話型AIエンジニアが開発したカスタマーサービス業務を自動化するAI。シリーズCで$39.4Mを調達。投資家はAdam Street Partners、Cross Creekなど(TechCrunch)
- QA Wolf - アプリ開発のQAテスト自動化SaaS。シリーズBで$36Mを調達。投資家はScale Venture Partners、Inspired Capitalなど(TechCrunch)
- Archera - クラウド購買管理SaaS。シリーズBで$17Mを調達。投資家はHighSage Ventures、Ridge Venturesなど(PR Newswire)
- DocketAI - ZoomInfo出身者が設立した、技術的な質問に対して迅速に回答を得たり、提案依頼書(RFP)やその他の技術文書の作成を支援したりする「セールエンジニアAI」。シリーズAで$15Mを調達。投資家は、など(TechCrunch)
- Momentum - 通話録音、電子メール、Slackを通じて顧客情報を自動的に取得し、そのデータを実用的な洞察に変えて、チャーン予測や防止などを支援するSaaS。シリーズAで$13Mを調達。投資家はFirstMark Capital、Stage 2 Capitalなど(PR Newswire)
サイバーセキュリティ
- Chainguard - AIソフトウェアの急増の中で、オープンソース・ソフトウェアを安全な採用を支援するソフトウェアセキュリティSaaS。シリーズCで$140Mを調達。投資家はRedpoint Ventures、Lightspeed Venture Partnersなど(PR Newswire)
- Gcore - ルクセンブルグ発のエッジAI・クラウド・ネットワーク向けセキュリティSaaS。シリーズAで$60Mを調達。投資家はWargaming、Constructor Capitalなど(BusinessWire)
- Dazz - クラウド開発環境における脆弱性を解決し、リスクを防止するSaaS。シリーズで$50Mを調達。投資家はInsight Partners、Greylock Partnersなど(CTech)
- Linx Security - イスラエル8200部隊出身者が設立した、ID管理AIスタートアップ。$33Mを調達。投資家はIndex Ventures、Cyberstartsなど(TechCrunch)
- Lakera - リアルタイム生成AIセキュリティSaaS。シリーズAで$20Mを調達。投資家はAtomico、Citi Venturesなど(Yahoo! Finance)
- ZeroTier - セキュアなP2Pネットワークを展開・維持するためのネットワークセキュリティSaaS。シリーズAで$13.5Mを調達。投資家はBattery Ventures、Bonfire Venturesなど(TechCrunch)
リーガルテック
- Clio - 法律事務所のクライアント管理、ケースや文書の管理、支払いなどを一元化し、効率的な運営を支援するSaaS。シリーズFで$900Mを調達。評価額は$3B。投資家はNew Enterprise Associates、Goldman Sachs Asset Managementなど(TechCrunch)
- Harvey - OpenAIも出資する弁護士向けCopilot。シリーズCで$100Mを調達。評価額は$1.5B。投資家はGV、OpenAI、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
ヘルスケア
- Pearl - 歯科医が正確な診断を行い、患者に「セカンド・オピニオン」を提供するためのFDA認可を受けたAI。シリーズBで$58Mを調達。投資家はLeft Lane Capital、Craft Venturesなど(TechCrunch)
- Loyal - 医療システムを統合し、デジタル患者エンゲージメントに特化したSaaS。シリーズBで$33.5Mを調達。投資家はConcord Health Partnersなど(Yahoo! Finance)
その他
- Cohere - 元グーグル研究者が設立した生成AIスタートアップ。評価額$5.5Bで$500Mを調達。投資家はシスコ、富士通、AMDなど(TechCrunch)
- Synspective - 小型SAR衛星の開発・運用からSARデータの販売と解析ソリューションを提供。シリーズCで70億円を調達。投資家は日本グロースキャピタル投資法人、ジャフコ、みずほキャピタルなど(PR Times)
- オーティファイ - AIを活用したソフトウェアテスト自動化ツール「Autify」を提供。シリーズBで約20億円を調達。投資家はGlobis Capital Partners、LG Technology Ventures、WiL、Salesforce Ventures、Archetype Ventures、Uncorrelated Ventures(PR Times)
- DeepForest Technologies - 世界の森林保全と森林管理の効率化を目指し、ドローンなどのリモートセンシングデータからの森林解析技術を開発。シリーズAで総額2億円を調達。投資家は環境エネルギー投資、バイオ・サイト・キャピタル&SBI地域活性化支援、三菱UFJキャピタル、中信ベンチャーキャピタル、京信ソーシャルキャピタル(PR Times)
- モルゲンロット - 企業の計算リソースの可視化・管理・最適化の実現、計算力のシェアリングにより、最適な計算環境を提供。Cygames Capitalから資金調達を実施(PR Times)