セールスフォースは、いかに300万人を超える「コミュニティ」を作ったのか?
Community.Inc「Community Growth at: Salesforce - Community Inc.」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSの本格的な始まりは、いわずもがなセールスフォースです。現在ではマルチクラウドの巨大企業として、顧客数15万社以上、年間売上300億ドル(約4.4兆円)以上、従業員数は約8万人にも成長しました。セールスフォースの成長を語る上で、欠かせないのは、「Trailblazers」と呼ばれる300万人を超えるコミュニティの存在です。このコミュニティは、広範なプログラムで顧客をサポートし、事業を拡大し、持続可能かつ競合が真似することができない差別化要因にもなっています。この記事では、セールスフォースの「Trailblazerコミュニティ」がいかに産まれ、顧客とセールスフォース自体にどのような価値を生み出しているか解説しています。
- セールスフォースの初期の成長を支えた「ゲリラマーケティング」
当時のCRM業界は、オンプレベースのSiebel社が独占する市場でした。創業者マーク・ベニオフ氏は、「SaaS」の概念でSiebelに対抗するために、競合のカンファレンス会場の外で役者を雇って、”No Software”を標榜したゲリラキャンペーンを展開しました。この活動は批判も受けましたが、創業4年でARR $100M越え、毎年2倍以上の成長を牽引しました。 - コミュニティ作りは地味なスタート
セールスフォースのコミュニティの起源は、Salesforceプラットフォームの開発者向けに行なう「DeveloperForce」です。最初は予算も無く、「セールスフォースの管理者を集めて、彼らのスキルやプロダクトに関する経験を共有できる場」を作ることをサイドプロジェクトとしていました。ここで注意した点は、「顧客の声に深く耳を傾け、顧客同士で質問に答えてもらう」という非常に具体的なことでした。体験向上の”種作り”のために、セールスフォース社内の各専門家に協力を仰ぎ、参加者の質問に答えてもらうよう依頼しました。この顧客の声に傾けることが重要なスタートでした。 - オンラインコミュニティとプロダクトの拡大
セールスフォースは、当時からQ+AとIdeaExchangeというオンラインコミュニティを持っていました。当初は開発向けでしたが、顧客向けに方向性をリセットしました。2013年には、コミュニティプロダクト「-Community Cloud-」もリリースし、ビジネス向けSNS「Chatter」も追加して、メンバー同士がコミュニケーションをできるようになりました。ここからコミュニティ人数は急激に成長し、毎月4万人の新規メンバーが加わるようになりました。 - コミュニティはビジネス価値と結びつけた時が成功
コミュニティの効果を測定するために、コミュニティに参加した顧客と参加しなかった顧客について、パイプライン、ACV(年間契約額)、プロダクトアドプション、離脱の4つの主要なROI指標を調べました。結果、この相関関係は非常に強く、コミュニティとの関わりを深めることは、より良いビジネス成果を意味することを確認しました。 - コミュニティが成長をドライブ
セールスフォースの現在に至るまでの成長において、コミュニティは以下のようなインパクトを作ってきました。その一部を以下で紹介します:
・ランド&エキスパンド - コミュニティ参加者はアドプション率が+33%高い
・マルチクラウドの採用 - コミュニティ参加者の93%は新プロダクトの発見に利用している
・グローバルないしは新地域への展開加速
・サポートコストの削減 -月$2M(約3億円)のサポートコスト削減につながっている
・顧客フィードバックと顧客との共創
・コミュニティ参加者の平均支出額は2倍以上
Palo Alto Networksが構想する大胆な未来
Strategy of Security「The Audacious Future of Palo Alto Networks」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ITセキュリティ領域で時価総額、売上ともに上位に位置するPalo Alto Networksの目指すビジョンや戦略についてまとめられている記事をご紹介します。自社で提供する複数のプロダクトを統合したプラットフォーム戦略や、クライアントの経営戦略レベルにまで入り込む価値提供の手法は、SaaSスタートアップ(特にセキュリティ領域)が長期的に目指す方向性の参考になります。
- プラットフォーム化戦略
複雑化されたサイバーセキュリティプロダクト群を統合させ、より優れたセキュリティの成果と価値をクライアントに提供することを目指す「プラットフォーム化」に注力しています。 - リアルタイム性の追求とAIの活用
脅威が発生したときに、その脅威を分析・対応することで、リスクを軽減していきます。データを収集、分析し、リアルタイムの脅威緩和のためにAIを活用するプロアクティブなアプローチを推進していくことを目指します。 - クラウドセキュリティとアプリケーションセキュリティの融合
「Cloud-Native Application Protection Platform(CNAPP)」に投資していきます。CNAPPとは、クラウドネイティブのアプリケーションの開発から本番稼動までの全ライフサイクルの保護要件に対応することです。 - 「プロダクト販売社」から「ソリューション提供者」への進化
複数の既存プロダクトを持つ同社は、クライアントのニーズにあわせたアウトカムを設計できます。最高のプロフェッショナルサービス企業(コンサル会社など)が、クライアントの戦略面に合わせてベンダー選定などの支援するように、同社もクライアントの状況に合わせたデリバリーを実施していきます。
2024年のSaaSはどうなるのか? by Craft Ventures & SaaStr
SaaStr「Streaming Live From SaaStr Annual 2023 Stage A Masters」の動画一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先の動画をご覧ください。
9月6日〜8日で開催されたSaaStr Annual 2023で、Craft Ventures David Sacksと、SaaStr Jason Lemkinが、今のSaaS業界の投資環境などについてディスカッションをした時の主なポイントを紹介します。
- 新規で投資検討する企業の80%は、AIと絡んだスタートアップが多い。今年はシードの投資実行が多く、シリーズAは2件ほどになる。
- AIの機会やトレンドは、主に3つあるとみている。
一つ目は、「AI インフラ」(大手が有利な分野で、スタートアップが出てきても最終的に大手が買収するとみている)
二つ目は、「Co-Pilot」(マーケターやコピーライター向けのCo-Pilotが多く出てきていて、最近では医者や弁護士向けのCo-Pilotも出ている)
三つ目は、「非AI SaaSのAI活用」(NotionやCanvaなど、元々AIが含まれてなかったSaaSがA.Iを取り入れる) - AIスタートアップへの投資が多く行なわれているが、最後にどうなっていくかが分かるのは、もっと先になるとみている。
- 2021年11月が、ファイナンシャルマーケットではSaaSのピークだった。ここ数ヶ月でボトムに当たったとみている。上場SaaSの評価や売上も回復傾向を見せている。
- Gross Margin(粗利)に対する注目が、より上がってきている。80%未満だと比較的マルチプルもつかないし、ビジネスモデルに対して悲観的にみられる。
- Monday.comなど、しっかり利益を出しながら成長しているSaaS企業がどんどん増えている。
- 今までは、「LTV/CAC」や「CAC Payback」などが見られていたが、今の時代スタートアップにとって「Burn Multiple」の指標は大事な指標になる。最初は高くても良いが、ゼロに向かっていくトレンドを見せる必要がある。
- スタートアップのチャンスは、今でも変わらない。ファイナンシャルが良くても悪くてもスタートアップが生まれるチャンスは常にある。
ICPを特定する方法〜How to identify your ideal customer profile〜
Lenny's Newsletter「How to identify your ideal customer profile (ICP)」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
元AirbnbのProduct LeadのLenny Rachitskyによるブログ。B2B SaaSがPMFを目指す中で、そして効率良いGTMを行なうためにも、「ICP(Ideal Customer Profile)」の概念は非常に重要です。このブログでは、ICPを設定することがなぜ重要なのか、そして急成長を実現した企業はどのような粒度感で設定できて否かを具体的にわかりやすく示してくれています。
EC事業者にスイート型でソフトウェアを提供するShop Circle、シリーズAで$120M(約175億円)を調達
Shop Circleは、ECブランド向けに主要なソフトウェアをワンストップで提供するSaaSスタートアップ。AIでパーソナライズされたインサイトを活用し、ブランド企業の技術スタックを最適化・コストを削減し、コンバージョンを増加させることを目指しています。広範囲なスイートの統合・強化により、前年比で360%と大幅な成長を実現しています。世界中ですでに10万を超えるECブランドにSaaSを提供しています。今回ラウンドの投資家は、645 Ventures、3VC(共同リード)、QED Investors、NfXなど。
エンタープライズ向けコンプライアンス対応SaaS Certa、 シリーズBで$35M(約50億円)を調達
Certaはエンタープライズ企業がベンダー、パートナー、顧客など、すべてのサードパーティーとデータを共有し、コンプライアンスとリスクに関する企業のルールやポリシーを内部化できるプラットフォームを提供するSaaSスタートアップ。創業者はウォートン校卒業後にマッキンゼーに10年間在籍した後に、企業がサードパーティーと仕事をする際に直面するコンプライアンス対応課題に着目して、Certaを創業しました。コンプライアンス違反により、企業は1件当たり平均400万ドル(約6億円)の損失につながるとのことです。今回ラウンドは、Fin CapitalとVertex Venturesが共同でリードしてます。
消費財ブランド企業のプロダクトデータ分析SaaS Harmonya、 シリーズAで$20M(約30億円)を調達
テクノロジー企業同様に、小売や消費財メーカーも、自社の製品や消費者に関する多くのデータを蓄積しています。Harmonyaは、これらの小売や消費財企業に対して、AIを活用して、商品データの充実、分類、インサイトを提供しています。独自のLLMを使用して、静的な属性リストを作成し、それを商品にマッチングさせるのではなく、データソース自体からタイトル、説明、成分、消費者レビューなどから商品属性を自動生成します。現在、世界の消費財企業トップ10社中4社が利用しています。本ラウンドの投資家は、Bright Pixel Capital、Team8など。
スイス発のハイブリッドワークプレイズ管理SaaS deskbird、 シリーズAで$13M(約19億円)を調達
deskbirdのプラットフォームは、企業がハイブリッド・ワークモデルを管理することを可能にし、従業員がオンデマンドでデスク、会議室、その他のワークスペースを予約することを支援しています。また同社では、AIを活用して、ワークスペースの利用状況、従業員の嗜好、生産性に関するインサイトを提供しています。今回、シリーズAで、ALSTIN Capital、AVP、session.vcなどから資金調達を行い、欧州全域および米国を含む他の地域での市場プレゼンス拡大を目指しています。
SaaSメトリックス特化データ分析SaaS SaaSGrid、 シードで$3.3M(約5億円)を調達
SaaSGridは、SaaS企業向けに特別に構築された初のダッシュボード・ツールで、ユーザーは他のデータソースを接続するだけで、SaaSで追跡すべきメトリクスを表示する完璧なリアルタイム・チャートを得ることができます。SaaSビジネスは、どのメトリクスが最も重要であるかは広く知られているにもかかわらず、最適なソリューションが存在しません。本ラウンドは、David Sacks氏率いるCraft Venturesがリードしました。
■資金調達
ITデバイスとSaaSの統合管理クラウドを提供するジョーシス、シリーズBで135億円調達
情報システム部門のオペレーション業務を自動化し、業務コスト削減とセキュリティレベル向上を支えるITデバイス & SaaS統合管理クラウド「ジョーシス」を提供しています。昨年9月のシリーズAラウンド以来、収益は10倍成長、現在では300社以上の企業が利用しています。また、北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)やAPAC(シンガポール、オーストラリア、インド、韓国、東南アジア各国)で事業を開始し、各国のお客様へのSaaSやデバイス管理システムを提供するとともに、国を跨いでのITデバイス・SaaSアプリの管理オペレーションを最適化するサービスを提供していきます。本ラウンドには、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズをリードインベスターとする、全18社が参画しています。
LLMの社会実装を加速するSpiral.ai、8億円調達
Spiral.aiは、巨大言語モデルソフトウェアを開発しています。楽しいコミュニケーションを実現するAI開発プラットフォーム「AIキャラクター」、GPTをベースとしたカスタマイズ可能な言語モデルプラットフォーム「Spiral.Bot」、独自LLMの開発と提供「Spiral.LLM」の3つのサービスを提供しており、LLM活用のユースケースを増やしています。今回の調達は、5月に行われたシードラウンド(1.5億円調達)に続くものです。本ラウンドには、グローバル・ブレイン、Spiral Capital、インキュベイトファンド他複数のベンチャーキャピタルファンド、並びに個人投資家が参画しています
計画最適化ソリューションを提供するALGO ARTIS、総額約6.9億円調達
生産や配船といった複雑な運用計画に特化した計画最適化ソリューション「Optium」を開発、提供しています。熟練の技術者に依存していたアナログな運用計画を、独自のAI(アルゴリズム)により自動で最適化することで、年間数千万円から数億円レベルでの収益改善、GHG排出量の削減、属人化の解消を実現しています。主に製造業やエネルギー業界、鉄道・バスなどの社会基盤を支えるインフラ業界など様々な産業において導入プロジェクトが進行しています。本ラウンドは、UTECやみやこキャピタル、ココナラスキルパートナーズ、Sony Innovation Fundなどによる第三者割当増資と商工組合中央金庫や日本政策金融公庫によるデットファイナンスによって実施されています。
セールステック事業へ参入するペイミー、4億円調達
ペイミーは、生成AIネイティブの営業支援サービス「セールススクラムAI」を新たに開発します。生成AIの技術を活用し、公開情報や過去のデータ(行動データや購買履歴など)を分析し、顧客の状態やニーズに関する洞察を踏まえたアウトプットを生成します。具体的な例として、営業文章の作成や仮説の立案、新人教育への活用を想定しています。現在ベータ版を開発しており、先行登録希望者を募集中です。本ラウンドは、World Innovation Labを引受先とした第三者割当増資により調達しています。
ノーコード予測AIを提供するトレイエッティング、シリーズBエクステンションで約2.5億円調達
ノーコード予測AI「UMWELT(ウムベルト)」、作業員のシフトをワンクリックで作成できるAI「HRBEST(ハーベスト)」を開発、提供しています。製造業や飲食業、旅行業、物流業、不動産など、複数の業界で利用されており、例えば飲食店の運営に関わる企業では、製品需要や材料などの必要在庫の予測を実現しています。また、レンタル事業者や製造業の企業では、在庫稼働率の上昇や余剰在庫の削減に向けた取り組みをUMWELTを通して行なっています。本ラウンドは、豊田合成をはじめとする既存株主を引受先として、第三者割当増資により調達しています。
防災DXサービスを提供するプライムバリュー、約1.3億円調達
自治体と企業が共通で利用するWeb要請サービス「B-order」を開発、提供しています。災害時に「被災した自治」と「支援を行う企業や団体」との間で行われる支援要請を効率的に行い、コミュニケーションを円滑に進めるためのサービスです。いまだに電話やFAXを主流とするコミュニケーションやそれによる情報共有の遅さなどが課題としてあり、デジタル化を進めるべく、サービスを提供しています。8月末時点で90の自治体が利用しています。本ラウンドは、CAC CAPITAL、スパークルを引受先とする第三者割当増資により調達しています。
ラストワンマイル物流の最適化を目指すエニキャリ、資金調達を実施
エニキャリは、デリバリー注文受付サイトの構築や配達管理システムの提供、自転車を中心とする配送代行など、IT×自転車配送サービスで、クイックデリバリーラストワンマイル物流を総合的に支援する会社です。くら寿司や松屋フーズホールディングスなど小売業やEC事業者、不動産デベロッパーなどを中心にサービスを提供しています。今回の調達資金を活用し、福岡を中心とする九州全域や京都をはじめ、対応エリアを拡大していく予定です。本ラウンドは、SMBCベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資により調達しています。
■IPO / M&A
オムロン、医療データを扱うJMDCにTOB
JMDCは、医療統計データサービスの提供を行っている企業です。今回オムロンは、JMDCの普通株式を公開買付け(TOB)により取得することを決定しました。買付代金は最大で855億円を見込んでいます。子会社化後も、JMDCの東証プライム上場は維持される予定です。
- マイクロソフトが自社製品「Copilot」による著作権侵害問題、法的責任を負うと発表(Microsoft)
- 米TIMES誌が「AI分野で世界で最も影響のある100人」を発表(TIMES)
- IBM、watsonx.governanceの技術プレビューおよび新しい基盤モデルとwatsonx.dataへの生成AIの組込みに関する計画を発表(時事通信)
- OpenAIがChatGPTにCanvaのプラグインを発表(Decrypt)
- AI開発はOpen AIが先頭、2位集団でGoogleやMetaと競う「もう1社」は(日経XTECH)
- 夏休みの宿題、3人に1人が「生成AI活用」(毎日新聞)
- Imbue - リーズ二ング(理由説明)に最適化されたAIエージェントを開発するAI研究所。旧社名 Generally Intelligence。シリーズBで$200Mを調達。評価額は$1B超。投資家はAstera Institute, Nvidia, Notion共同創業者 サイモン・ラストなど(TechCrunch)
- d-Matrix - AI特化のチップ開発スタートアップ。$110Mを調達。投資家はMicrosoftなど(Reuters)
- Inceptive - 元GoogleのAIエキスパートが創業した新薬やワクチン開発・設計に特化したAI開発スタートアップ。$100Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz, Nvidia(Financial Times)
- ThetaRay - AIアンチマネーロンダリング(資金洗浄)・プラットフォームを提供するスタートアップ。$57Mを調達。投資家は、JVP, OurCrowd, General Electric, Alibaba, PwC, SVB Financialなど(TechCrunch)
- Clara Analytics - 保険請求に特化したAIを開発するスタートアップ。シリーズCで$24Mを調達。投資家はSpring Lake Equity Partners, Aspen Capital Group, Oak HC/FTなど(Fintech Finance News)
- Noetik - 創薬発見を支援するAIスタートアップ。シードで$14Mを調達。投資家はDCVC, Zetta Venture Partnersなど(FINSMES)
- Mindtrip - 生成AIネイティブな旅程作成/トラベルブッキング・スタートアップ。$7Mを調達。投資家はCostanoa Ventures(FINSMES)
- Enzai - AIソフトウェア開発者が法規制に対応することを支援するスタートアップ。シードで$4Mを調達。投資家はCavalry Ventures, Seedcampなど(The SaaS News)