■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

CFOがCTOと連携して開発生産性を向上させる4つの方法
Battery Ventures「4 Ways Software CFOs Can Partner with CTOs to Unlock Engineering Productivity」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
ソフトウェア企業のCFOにとって、R&Dは最大の費用項目の一つですが、セールスやマーケティングと違ってエンジニアリングの生産性は測定されないことが多く、ビジネスレバーというより、ブラックボックスとして扱われています。CFOがデータ、資本効率、長期計画に関してより広い権限を持つようになる中で、特にエンジニアリングの生産性は責任範囲として非常に重要です。この記事では、開発生産性を測る上での4つのステップや主な指標について紹介しています。
- 共通言語と共有コミットメントから始める
パイプラインの速度やCAC回収期間の分析は簡単ですが、エンジニアリングにおける同等の指標は何でしょうか?答えは会社の製品成熟度、開発モデル、チーム構造によって異なります。目標は普遍的なダッシュボードではなく、財務部門とエンジニアリング部門が共同で開発し、トレンドベースの追跡と継続的な改善に基づく進化するフレームワークです。 - 一貫したコミュニケーションリズムを構築する
CFOがエンジニアリングの生産性を理解することは、マイクロマネジメントではなく可視性に関するものです。月次またはクオーターごとの定期的な打ち合わせがギャップを埋めるのに役立ちます。CFOは、ビジネスが受け入れる準備のあるトレードオフ(市場投入までの時間 vs 技術的負債など)を明確にし、CTOは追加投資が速度を加速させるか品質を向上させる余地を説明します。 - 時間とともに進化する指標を選ぶ
エンジニアリングの生産性は多次元的であり、それをすべて捉える単一の指標はありません。完璧なKPIを探す代わりに、スループット、速度、品質、チームの健全性に関する方向性の洞察を提供する少数の指標を選びましょう。 - スプレッドシートから始めて段階的に拡大する
最初からプロセスを過剰に設計しないでください。この新しいコラボレーションの初期段階では、共有スプレッドシートや軽量なダッシュボードが信頼と可視性の構築に大いに役立ちます。目標は一晩で完全なレポートスイートを立ち上げることではなく、定期的なペースで指標を一緒に見直し、議論する習慣を確立することです。
- 重要なポイント:「なぜ」について合意する
エンジニアリングは現代のソフトウェアビジネスにおいて、最大かつ最も複雑で最も理解されていないコストセンターの一つです。目標、言語、指標について早期に整合するCFOとCTOは、投資とインパクトの両方を最適化するためにはるかに良い位置にいます。これはマージンを改善するだけでなく、競争力を維持し、お客さまにより早く価値を提供し、R&Dを戦略的優位性として位置づけることです。財務とエンジニアリングが協力すると、結果はより良い測定だけでなく、より良いビジネスになります。
複雑性が増す国際貿易分野でのAIエージェントの可能性
QED INVESTORS「The Agentic Future of Global Trade: AI-Powered Resilience in an Era of Uncertainty」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
トランプ政権による関税政策は、国際貿易における不確実性を高めています。企業にとっては地政学的な緊張によって調達戦略を再構築し、為替変動も頭痛の種になっています。しかし複雑さがあれば、チャンスにもなります。グローバルな貿易・商取引においてAIエージェントの市場機会が生まれています。こちらのQED Investorsによる記事では国際貿易分野での6つの主要なAIアプリケーションの可能性を提唱しています。
- 通関ブローカーAI
- 現状の課題:関税の変更は利益と損失の分かれ目になります。人間の通関ブローカーは何千ページもの関税コードを効果的に解釈するのに苦労しています。
- 解決策:過去のデータから学び、コンプライアンスリスクを予測することで、製品分類を自動化し、コンプライアンスを確保し、リアルタイムでコストを最適化するAIプラットフォーム。
- 自律的調達エージェント
- 現状の課題:単一供給源のサプライチェーンは脆弱です。消費財企業の80%が現在サプライヤーを多様化し、64%がサプライチェーンを地域化しています。
- 解決策:グローバルなサプライチェーンネットワークを継続的に監視し、早期警告信号(港の遅延、価格高騰、労働争議)を検出し、問題が拡大する前に事前に調達をシフトするAIシステム。
- AIによる為替ヘッジと支払い
- 現状の課題:通貨変動は一夜にして利益を消し去ることがありますが、ほとんどの企業は手動の後ろ向きヘッジ戦略を使用しています。
- 解決策:通貨の動きを予測し、ヘッジ決定を自動化し、コストを最小限に抑え、運転資本効率を向上させるために支払いのタイミングとルーティングを最適化するAIプラットフォーム。
- インテリジェントな貿易文書処理
- 現状の課題:貿易金融は主に手作業と紙ベースのままです。文書のエラーは高額な遅延や罰金につながります。
- 解決策:貿易文書をデジタル化、検証し、規制データベースとクロスチェックし、問題を引き起こす前に不適合を警告するAIシステム。
- 予測サプライチェーン分析
- 現状の課題:従来のサプライチェーンは、ボトルネックが発生した後に反応します。
- 解決策:リアルタイムの出荷データ、地政学的情報、その他の信号を集約して問題が発生する前に予測し、企業が事前に出荷をルート変更したり、代替サプライヤーを確保したりできるようにするAIモデル。
- AI駆動の価格・需要最適化
- 現状の課題:静的な価格設定と需要モデルは変動する市場で苦戦します。
- 解決策:リアルタイムの需要データ、競合他社の動き、マクロ経済要因に基づいて戦略を動的に調整し、需要が急増した際に利益を最大化し、需要が軟化した際に取引量を維持するのを助けるエージェント型価格プラットフォーム。

AIエージェントは新たなSaaSとなるかーSierra社 Brett Taylor氏
Sequoia CapitalのYouTube「How AI is Reinventing Software Business Models ft. Bret Taylor of Sierra」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
本動画では、Sierra社共同創業者であり、元Facebook CTO/Salesforce共同CEOのBrett Taylor氏が、AIがソフトウェア業界に与えるビジネスモデルの変革について語っています。エンタープライズソフトウェアの進化、AIエージェント、そして新たなプライシングモデルなど、以下に主なポイントをまとめました。
- AIにおける三層の市場構造
Taylor氏は、AIエコシステムには基盤モデル、ツール/インフラ、応用AIという3つの市場が生まれつつあると指摘します。資本集約的な基盤モデルは少数の巨⼤企業に収斂し、ツール/インフラ企業は「ゴールドラッシュのつるはし」として成長の余地があります。
最大の好機は、業界・機能特化のエージェントを開発する応用AI企業にあるとし、これらは実質的に次世代のSaaSとなり得ると述べています。 - 成果ベースのプライシングモデル
Sierra社は、AIエージェントが問題を自律的に解決した場合のみ料金が発生し、人手に任された場合は無料となる「成果ベース課金」を採用。永続ライセンス → サブスクリプション → 成果課金という進化の延長線上にあり、ソフトウェアベンダーとお客さまの関係を根底から覆すモデルです。
既存企業には難題ですが、新興企業には大きなチャンスがあると強調します。 - AIが既存企業に与える影響
AIは既存企業のコスト構造を劇的に変えます。たとえば数万人規模のコンタクトセンターを持つ企業は、AI導入で数億ドルのコストを削減し、その分を成長投資や値下げに振り向けられます。インターネット時代にウォルマートが生き残り、ブロックバスターが淘汰された構図を想起させる変化です。 - 効果的なエンタープライズセールス
成功の鍵は、お客さまの言葉で語り共感を示すこと。優れた営業はまず質問し、課題を聞き出したうえでテクノロジーの価値を的確に結びつけます。
機能アピールより、徹底したお客さま理解が重要だと述べています。 - Vertical VS. Horizontal AIアプリケーション
Taylor氏は、汎用プラットフォームより業界特化のVerticalアプリケーションを推奨。通信・銀行・保険など固有ニーズを満たす方が、社内開発や既存代替への抵抗を乗り越えやすく、成功確率が高いと指摘します。まず一社を成功させ、その事例を横展開することが肝要です。 - コスト削減分の再投資
先進企業は、AIで生じたコスト削減分を利益率向上より成長投資に回す傾向があります。効率化でコストが下がるほど新たな活用法が生まれ需要が伸びる、というテクノロジー史の再現です。 - エージェントモデルへの転換
企業は従来のツールではなく、特定業務を遂行するAIエージェントを購入し始めています。エージェントは一般的な生産性向上ではなく「成果」を売るため、数分の一のコストで高い価値を提供し、市場規模を大幅に拡大できる可能性があります。 - 価値提案の変化:生産性から成果へ
AIエージェントは、従来ソフトウェアが謳ってきた「生産性向上」ではなく、直接的なビジネス成果を提供できます。たとえば、法律事務において漠然とした効率化ではなく具体的な法務サービスを販売できるようになり、はるかに大きな市場を開拓できると説明します。 - 技術的思考からビジネス的思考への移行
Taylor氏は技術者からビジネスリーダーへと転身し、Sierra社を創業しました。技術力だけでなく、営業・戦略・ビジネス洞察を磨くことで、より大きな影響力と達成感を得られるという経験を示しています。技術畑の創業者も、広範なビジネス視点を養うことが長期的成功につながると強調します。

チャーンによる真のコスト
OnlyCFO's Newsletter「The True Cost of Churn」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
ソフトウェアビジネスの強さは継続率によって支えられており、解約率をいかに低減していくかが経営において重要な課題となります。特にAIスタートアップの場合、試験的な導入が増える傾向にあるため、解約(チャーン)への対策がより一層求められます。
一方でチャーンに関する誤解の一つに、新規契約を増やすことで解約を「補える」と考えることがあります。しかし実際には、顧客が解約すると1年間の収益を失うだけでなく、将来的に見込めるはずだった数年分の利益も失うことになります。そのため、単に販売数を増やすことでチャーンの影響を埋め合わせることは、現実的には非常に難しいのです。
この記事では、具体的な前提条件をもとに解約がもたらす真のコストについて理解を深めることができます。
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スタートアップ投資の10年:メガラウンド、グローバル展開、そしてAIがもたらした変革
Crunchbase News「Decade Of Disruption: How Megarounds, Global Expansion And AI Doubled VC Investment In 10 Years」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
この記事では、過去10年間でスタートアップ投資が倍増し、年間約3,000億ドルに達したことが示されています。特に以下の3つの要因がこの成長を牽引しました。
- グローバルな拡大
2016年以降、米国外への投資が拡大し、一時は米国以外のスタートアップへの投資額が過半数を占めました。しかし近年は、OpenAIやAnthropicなどAI関連企業への巨額投資により、米国が再び主導する形となり、2024年の投資額の56%を占めました。 - メガラウンドの台頭
1億ドル以上の大型投資案件が急増し、2024年には総投資額の50%以上を占めました。特にAI関連企業への資金調達がこの傾向を後押ししています。 - AI関連企業への投資急増
2024年のAI関連企業への投資額は1,000億ドルを超え、全世界の投資の約3分の1を占めました。AI投資は今後10〜20年にわたり、ヘルスケア、製造業、ロボット工学、ソフトウェアなど多岐にわたる分野に影響を与えると予測されています。
また、2021年の異常な投資急増の要因や、過去10年間におけるナスダック指数の成長との関連性にも触れられています。特にAIの発展による市場拡大が、ソフトウェア産業やベンチャー投資のさらなる成長を促す可能性が高いと示唆されています。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Parloa - ドイツ発のカスタマーエクスペリエンスに特化したAIエージェントプラットフォーム。評価額$1BのシリーズCで$120Mを調達。投資家はDurable Capital Partners、Altimeter Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Astronomer - Apache Airflowを採用したデータ・オーケストレーション・プラットフォーム。シリーズDで$93Mを調達。投資家はBain Capital Ventures、Salesforce Venturesなど(Venture Beat)
- Windfall Data - GTMチームのための予測・機械学習モデリングAIソリューション。シリーズBで$65Mを調達。投資家はMorgan Stanley Expansion Capitalなど(FinSMEs)
- Gruve.ai - 測定可能なビジネスインパクトに焦点をあてた次世代AIソリューション。シード・シリーズA合計で$37.5Mを調達。投資家はMayfield、Cisco Investmentsなど(TechCrunch)
- Relevance AI - 企業がAIエージェントのチームを構築できるようにするためのAIエージェント。シリーズBで$24Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、King River Capitalなど(TechCrunch)
- WisdomAI - 構造化データ、非構造化データ、「ダーティ」データ(誤字やエラーが除去されていないデータ)を使ってビジネスインサイトを提供できるデータ分析AI。シードで$23Mを調達。投資家はCoatue、Madronaなど(TechCrunch)
- Kintsugi - 中小企業が税金の計算や申告を自動化できるAI。Vertexがリード投資家として$18Mを調達(TechCrunch)
- StackAI - エンタープライズ企業が簡単にカスタムAIエージェントを構築できるプラットフォーム。シリーズAで$16Mを調達。投資家はLobby VC、Y Combinatorなど(FinSMEs)
- RightRev - 売上会計の深い専門知識と最新のソフトウェアアーキテクチャを兼ね備えた、複雑な収益シナリオを管理できるAIソリューション。シリーズAで$13Mを調達。投資家はCheyenne Ventures、Innovius Capitalなど(Yahoo! Finance)
バーティカル
- HubSync - 税務・会計のプロフェッショナル向けのオールインワン自動化ソリューション。Thoma Bravoから$100Mを調達(Yahoo! Finance)
- TSOLife - 高齢者向け施設の入居者データを収集・活用して入居者のエンゲージメント強化・業務改善を支援するAI。シリーズBで$43Mを調達。投資家はPeakSpan Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Infinite Uptime - インド発の独自のセンサー、ソフトウェア分析、AIベースの診断を使用して、工場向けの予知保全ソリューション。Avataar Ventures、StepStone Groupなどから$35Mを調達(TechCrunch)
- Recraft - ブランド企業の品質基準に準拠した生成AIデザインプラットフォーム。シリーズBで$30Mを調達。投資家はAccel、Madrona Venturesなど(Yahoo! Finance)
- StackOne - SaaS・AI企業向けに、複雑なエンタープライズ向け連携を迅速に実行できるソリューション。シリーズAで$20Mを調達。投資家はGV、Workday Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Fastino - 低コストのゲーム用GPU向けに小規模なモデル群でAIモデルを訓練するソリューション。シードで$17.5Mを調達。投資家はKhosla Venturesなど(TechCrunch)
ソフトウェア開発支援
- Anysphere - AIコーディング「Cursor」を提供。評価額$9Bで$900Mを調達。投資家はThrive Capital、Andreessen Horowitzなど(TechCrunch)
- Statsig - 専用の機能フラグ付けからプロダクト分析、A/Bテストツールなどデータドリブンなプロダクト開発を支援するSaaS。評価額$1.1BのシリーズCで$100Mを調達。投資家はICONIQ Growth、Sequoia Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Unblocked - 開発者のコードベース理解を支援するAI。シリーズAで$20Mを調達。投資家はB Capital、Radical Venturesなど(TechCrunch)
- Sett - ゲーム開発者のマーケティングのためのAIエージェント。シリーズAで$15Mを調達。投資家はBessemer Venture Partnersなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- OX Security - AIと人間が生成したコードの両方のリスクをモデル化するアプリケーション・セキュリティSaaS。シリーズBで$60Mを調達。投資家はDTCP、IBM Venturesなど(TechCrunch)
- Doppel - AIを活用したソーシャル・エンジニアリング防御プラットフォーム。評価額$205MのシリーズBで$35Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、9Yards Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Jericho Security - フィッシング攻撃やAIを利用したディープフェイクなどのサイバー脅威から組織を守るために従業員のサイバーセキュリティ訓練に特化したAI。シリーズAで$15Mを調達。投資家はEra Fund、Lux Capitalなど(Fintech Global)
ヘルスケア
- Inductive Bio - 低分子創薬ディスカバリーのためのAIモデル。シリーズAで$25Mを調達。投資家はObvious Ventures、a16zなど(Yahoo! Finance)
- Carta Healthcare - 臨床データ抽出を合理化し、臨床医が患者ケアの改善に利用できる分析AI。シリーズB-1で$18.25Mを調達。投資家はUPMC Enterprisesなど(PR Newswire)
その他
- Toloka - オランダ発のAIワークロードに最適化されたパブリッククラウド。Bezos Expeditions、Nebiusなどから$72Mを調達(Silicon ANGLE)
M&A
- Windsurf - OpenAIが人工知能によるコーディング支援ツールWindsurfを$3Bで買収することで合意(Reuters)
[国内]
- メドメイン - デジタル病理支援AI搭載クラウドシステム「PidPort」を提供。One Capital、Niremia Collective、Plug and Playから4.7億円の資金調達を実施(PR Times)
- Carpenstreet - デジタル創作を最も効果的にサポートする素材プラットフォーム「エイコン(ACON)」と、編集ツール「エイブラー(ABLUR)」を運営。TSインベストメント、ゼットベンチャーキャピタルから、シリーズA2(ブリッジ)の資金調達を実施(PR Times)
M&A
- CloudBrains - SmartHRは、2025年4月25日に業務委託・フリーランス管理クラウド「Lansmart」を提供するCloudBrainsの発行する全株式を取得・グループ会社化(PR Times)