■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

AIエージェントの自立性を測る5つの基準と7つのレベル
Bessemer Venture Partners「Bessemer’s AI agent autonomy scale—a new way to understand use case maturity」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
「AIエージェント」という言葉が流行していますが、AIエージェントの自立性のレベルは、実際にはさまざま。このBessemer Venture Partnersの記事では、AIエージェントを評価する5つの基準と自立性を測る7つのレベルについて解説しています。
AIエージェントを評価する5つの基準
AIエージェントとは、「思考連鎖推論を実行し、シーケンス化されたワークフローに対して正確にアクションを起こすことができる、基盤モデルのソフトウェア・アプリケーション」を指し、以下の5つの基準によって定義されます。
- エージェントは、具体的なコンフィグレーションを持っており、基礎モデル、またはソフトウェアアプリケーションの形を取っている。
- エージェントは、知性や論理を示すことができる。計画、内省、学習、自己検討、記憶などのタスクに対して、思考の連鎖による推論ができる。
- エージェントは、アクションを実行できる。たとえば、AIが生成したコードを本番環境にデプロイしたり、電子メールの応答を作成して送信したりすることができる。
- エージェントは、動的、またはシーケンス化されたワークフローを形成することができる複雑なタスクでエージェンシーを発揮することができる。
- エージェントは、高い信頼性と明確に定義された権限(エンタイトルメント)のもとで確実に業務を遂行する。誰の代理として行動しているのかを明確に知っており、行動を起こすための対応する認証情報を持っている。
AIエージェントの7つのレベル
Bessemer Venture Partnersでは、自動運転車業界の手法にヒントを得て、ユースケースの成熟度を測るフレームワークを開発しました。
L0:エージェンシーがない
手動制御されるAIシステムは、エージェントではない。
L1:思考の連鎖による推論
コンテキストを推論し、自己レビューすることが可能になる。
L2:コパイロットとしての条件付き
関連情報を提供できるだけでなく、情報を正確に理解し環境を認識して行動を提案できるが、提案はマニュアルで確認する必要があり、行動の実行には人間の承認が必要である。
L3:タスクに対する高い自律性AI
信頼性を強く保証したうえで自律的にタスクを完了できるように、運用システムに対する権限と資格を持つ。
L4:仕事の実行
完全に自律化されたAI従業員は、環境を理解し、複雑で連続したワークフローをナビゲートすることで目標を設定し、達成することができる。
L5:エージェントチーム
コンテキストを共有し、共通の目標を達成するために協調してタスクを実行することで、相互作用やコラボレーションを成功させられる。
L6:エージェントチームを管理する
チーム内でうまくコラボレーションするだけでなく、他のAIをリクルートし、評価し、指示し、フィードバックを与え、必要であれば交代させることもできるようになる。

Uber創業者が語るリスクと未来の創造
Peter H. Diamandis氏のYouTube「Uber Founder on AI, Risk, and Building the Future w/ Travis Kalanick | EP #164」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Uberの共同創業者であり元CEOのTravis Kalanick氏が、2025年のAbundance Summitで起業家精神とイノベーションについて語りました。このインタビューは、彼がUberでなぜあれほど積極的な成長を続けることができたのか、その背景を理解するヒントになります。特に面白いと思った点を以下にまとめました。
- 起業家が成功するための基盤「自己認識」
Kalanick氏は、起業家は、自分の強みや情熱、本質をよく知ることが大切だと強調しています。彼はスポーツに例えてこう説明します。「もしバスケットボールが得意なら、テニスをやるべきではありません」。成功する起業家は、自分が得意なこと、つまり活躍できる分野を見極めるのです。これを理解していれば、自分に合ったビジネスチャンスが来たときに気づき、自分のやる気に合ったビジネスをはじめることができます。Kalanick氏にとって得意な分野とは、「現実世界をデジタル化すること」と「スピード感と規模をもってイノベーションを起こすこと」です。 - パーパスに対する3層のアプローチ
Kalanick氏によれば、ビジネスにおけるパーパス(目的)には、いくつかの段階があります。第一に、自分が得意な分野、つまり自身の「スポーツ」を見つけること。第二に、その中で、何が自分のやる気につながるのかを知ることです。Kalanick氏にとっては、それが「スピード感と規模をもってイノベーションを起こすこと」でした。第三に、誰のためにやるのか、その相手に情熱を持つことです。彼はこう強調します。「どんなビジネスでも、あなたは誰かのために働いています。その人たちのこと、そして自分の仕事が彼らにどう役立つのかについて、心から情熱を持つべきです」。この3つの段階が揃うことで、自分のやる気とビジネスの方向が合うようになります。 - 「価値ある未知の真実」を見つけることこそがイノベーション
Kalanick氏は、成功するイノベーションとは「価値はあるけれど、まだ誰も知らないこと」を見つけることだと言います。それは、役に立って価値もあるのに、まだあまり知られていない考え方や事実のことです。彼はこうも述べます。「もし、こうした『価値ある未知の真実』を見つける方法があれば、他の人が知らないことをたくさん知ることができます。そして、他の人が知らないことを知っていれば、他の人にはできないことができるようになります。」この知識の差が、他の人には真似できない変化を起こせる力になるのです。 - 変化を起こしながら信頼を築く
Kalanick氏は、これまでにない新しいことをするとき、反対が起きるのは自然なことで、時には役に立つことさえあると指摘します。「変化への反対は…それが本当に良い変化なのか、立ち止まって考えるための自然なブレーキのようなものです」と。彼の解決策は、変化に関わる人たちとの間に信頼関係を作ることです。彼はこう言います。「変化への反対に対処する一番良い方法の一つは、変化をお願いする相手や、一緒に変化を進める相手との間に、しっかりとした信頼関係を作ることです」。このやり方で、反対する人を味方に変え、結果的に変化を早めることができます。 - イノベーションとリスクの最適化
Kalanick氏は、イノベーションを計算式のように考えています。「イノベーション = 大きな’P’ ÷ 小さな’r’」。大きな’P’は進歩(Progress)、小さな’r’はリスク(Risk)です。リスクとは、時間やお金、評判など失う可能性のあるものです。目標は、リスクをできるだけ小さくしながら、成果を最大にすることです。リスクがゼロに近づけば、限りなくイノベーションを起こせるかもしれません。この考え方は、Kalanick氏がビジネスを進めるうえでの基本となっています。つまり、ただリスクを取るのではなく、大きな目標を目指しつつどう賢くリスクを減らすか、に注目しているのです。 - 不屈の精神を支える3段階の問い
Kalanick氏は、難しい問題に直面した際、続けるか止めるかを決めるために3つの質問を自分自身に問いかけます。第一に「まだ(これをやり遂げたいと)信じているか?」もし、もう信じられないなら、やめるべきです。第二に「自分はこれをするのに向いているか?」これには、自分の力や状況を、冷静に、正直に見つめる必要があります。第三に「このまま続けて、心や体を壊してしまわないか?」この考え方は、頑張り続けることと、現実を見ることのバランスを取るためのものです。起業には粘り強さも大事ですが、自分を犠牲にしてはいけない、ということです。 - コントロールと適応性のバランス
起業家は、物事をコントロールしたい気持ちと、どう向き合うかが大切です。Kalanick氏はこう言います。「誰も世の中を思い通りにはできません。ですから、世の中の流れを読んで、それに合ったものを作る必要があります。」しかし、ただ流れに任せるだけ(主体性をなくすこと)ではいけない、とも言っています。「世の中を良くしようと努力は続けるべきですが、すべてを支配しようとしてはいけません。」どうなるか分からない状況でも、やるべきことはしっかりやることが大切なのです。

偽のマルチプロダクト vs. 本物のマルチプロダクト
SaaStr「Fake Multi-Product vs. Real Multi-Product」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSスタートアップの非連続成長には、比較的早期からのマルチプロダクト戦略が重要だという認識が広がっています。B2Bビジネスでは顧客単価向上が基本戦略です。
特に、顧客数が数千社を超えるとコア顧客でのシェアが飽和し、成長維持には単価向上が不可欠となります。さらに、AIによる開発生産性の飛躍的向上により、この戦略的要請が初期段階の企業にも波及しています。
このような状況において、創業者が犯しがちな間違いは、機能と第二のコアプロダクトを混同することです。
追加機能・オプションは、顧客のACV(Annual Contract Value)を押し上げる可能性があり、これはスケールアップに重要です。しかし、それが真のマルチプロダクト戦略となるには、最終的にその第一のコアプロダクトと同等の市場規模を持ち、成長可能性があるかを適切に現状認識することが大切です。

SaaSのユニットエコノミクスの再考:AIエージェントがSaaSのプレイブックを書き換える
Crunchbase News「Rethinking Unit Economics: How AI Agents Are Rewriting The SaaS Playbook」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaS企業は長い間、LTV/CAC比率、CAC回収期間、収益維持率など、明確な指標で定義されてきました。これらの指標は今でも基本的なものですが、AIエージェントがマーケティング、サポート、製品ワークフローに組み込まれることで、これらの指標の背後にある前提が変化しはじめています。
- AIがもたらす4つの可能性
- AIエージェントが自動的にリード獲得・変換コストを下げることでCAC回収期間が短縮
- よりスマートなオンボーディングと個別化されたサポートで顧客維持率とLTVが向上
- 従来の3:1のLTV/CAC比率が5:1へ進化
- AIを活用したチームでは「Rule of 40」が50や60に向上
- AIが実際にビジネスに影響を与えているかを判断する5つの指標
- 実行の自律性:AIエージェントが営業やサポートなどのワークフローを独立して実行できるか
- 展開の広さ:AI活用が組織全体に広がっているか
- ビジネスへの影響:CAC、LTV、解約率などの主要指標がAIによって改善されているか
- 回収速度:AIによってもたらされる価値は、利益率の向上や生産性の上昇を通じて、数年ではなく数ヶ月以内に目に見える形で現れるか?
- システム学習:AIツールは使用状況やフィードバックに基づいて学習し、時間とともに賢くなっているか?
以上のことより、これからのSaaS企業の成功は、単に製品主導型や販売主導型ではなく、AIを効果的に活用できるかどうかにかかっているとも言えます。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Tailscale - ITチーム向けに企業特化の仮想プライベートネットワーク(VPN)。評価額$1.5BのシリーズCで$160Mを調達。投資家はAccel、CRVなど(Yahoo! Finance)
- Pennylane - SMB向けオールインワン会計プラットフォーム。評価額$2Bで$75Mを調達。投資家はSequoia Capital、Capital Gなど(CNBC)
- incident.io - ITインシデント管理と対応の迅速化を支援するオールインワンAI。評価額$500Mで$62Mを調達。投資家はIndex Ventures、Point Nine Capitalなど(TechCrunch)
- Tessell - AI主導の次世代マルチクラウドDBaaS(Database-as-a-Service)。シリーズBで$60Mを調達。投資家はWestBridge Capital、B37 Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Optilogic - サプライチェーンの変更を安全にテスト・実行できるサプライチェーン・デザイン・ソフトウェア。シリーズBで$40Mを調達。投資家はNewRoad Capital Partners、MK Capitalなど(FinSMEs)
- Artisan - AI SDRエージェント。シリーズAで$25Mを調達。投資家はGlade Brook Capital、YCなど(TechCrunch)
バーティカル
- Rescale - レーシングカーやコンピューター・チップの設計用エンジニアリング・ソフトウェア。シリーズDで$115Mを調達。投資家はApplied Ventures、Foxconnなど(Yahoo! Finance)
- Krea - コンテンツクリエーター向けに複数のGenAIモデルからツールを提供し、ワンストップでコンテンツ制作を支援するAI。Bain Capital Ventures、Andreessen Horowitzなどから$83Mを調達(TechCrunch)
- Blackbird Labs - レストラン向けのブロックチェーンベースのロイヤリティおよび決済SaaS。シリーズBで$50Mを調達。投資家はSpark Capital、Coinbase Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Bliss Aesthetics - 美容整形領域の患者と形成外科医をつなぐAIプラットフォーム。シードで$17.5Mを調達。投資家はShine Capital、Synchrony Venturesなど(Yahoo! Finance)
サイバーセキュリティ
- Anecdotes - サイバーセキュリティ分野における規制要件を満たすためのGRCプラットフォーム。シリーズB合計で$55Mを調達。投資家はDTCP、Glilotなど(CTech)
- Aurascape - AIアプリケーションネイティブなサイバーセキュリティAI。Mayfield、Menlo Venturesなどから$50Mを調達(Yahoo! Finance)
- groundcover - Datadogなどに変わる、eBPF主導のモダン・アーキテクチャ向けオブザバビリティSaaS。シリーズBで$35Mを調達。投資家はZeev Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Outtake - 高度な検索、リアルタイムの脅威分類、自動化された対応により、現代サイバーアタックから保護するAIエージェント。シリーズAで$16.5Mを調達。投資家はCRV、Nikesh Aurora氏など(FinSMEs)
ソフトウェア開発支援
- LiveKit - リアルタイムの音声と映像を送信できるアプリを構築するためのオープンソースソフトウェア。評価額$345MのシリーズBで$45Mを調達。投資家はAltimeter、Redpont Venturesなど(TechCrunch)
ハードウェア×AI
- Nuro - 配送ロボットや自動運転技術を提供。評価額$6BのシリーズEで$106Mを調達。投資家はT. Rowe Price、Tiger Globalなど(TechCrunch)
その他
- SandboxAQ - アルファベットからスピンアウトした量子AI。評価額$5.8BのシリーズEで$150Mを調達。投資家はGoogle、NVIDIAなど(Yahoo! Finance)
[国内]
- 電脳交通 - タクシー事業者の配車支援にとどまらず、経営課題に対応する総合的なサービスを提供。シリーズDにて三菱商事をリード投資家とし、計12社を引受先とした総額25億円の資金調達を実施(PR Times)
- Fact Base - 製造業向けソフトウェアの開発・販売。シリーズBで総額14.5億円を調達。投資家は三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、りそなキャピタルなど(PR Times)
- Quants - AI定性与信審査サービスを開発・提供。芙蓉総合リースと10億円の金銭消費貸借契約を締結(PR Times)
- Unito - 不動産デベロッパーの民泊ブランド立ち上げ支援システム「unito OS」などの開発・運営。シリーズDファーストクローズの資金調達を実施。投資家はアニマルスピリッツ、みずほキャピタル、AGキャピタル、個人投資家の田中渓氏(PR Times)
- アガサ - 治験/品質文書管理クラウドシステムを提供。ヘルスケア分野特化型グローバル投資会社のARCHIMED社から戦略的投資を獲得(PR Times)
- CareMaker - 訪問看護・介護のDXを推進。シリーズA 2ndクローズの資金調達を実施。投資家はサイバーエージェント・キャピタルとNOBUNAGAビレッジキャピタル(PR Times)