■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

今すぐはじめるAI経営革命:競合に差をつけるAI組織変革プレイブック
Bessemer Venture Partners「The AI upskilling guide for executives」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
経営陣の約90%がAIが収益成長を促進できると考えているものの、実際に会社のワークフローに完全統合され実質的な成果を生んでいるのは僅か1%という現実があります。AI導入の成功は技術そのものよりも人々の採用にかかっており、高いAI採用率を持つ企業はROI期待値を満たす可能性が大幅に高いとされています。この記事では<yellow-highlight-half-bold>AI経営革命を起こす上でのステップや組織文化、リーダーシップとして重要なポイント<yellow-highlight-half-bold>を解説しています。
AI組織変革の4つのステップ
第1段階:リーダー自身の教育
- 経営陣が率先してAIツールを試用し、組織全体への導入を信頼性を持って主導する
- 継続的な学習コミットメントが必要(技術は日々進歩するため)
第2段階:明確なビジネス目標の設定
- AIは高コストであり、各投資のROIは明確でなければならない
- 会社の戦略と密接に連携した、具体的で測定可能な目標設定
- "最先端であること"のためのAI導入は逆効果
第3段階:従業員の参画と信頼構築
- 「高信頼」企業の従業員は、低信頼企業の従業員と比べてAIツールを使うことに2倍以上快適さを感じる
- 透明性のあるコミュニケーション、早期からの情報共有
- 従業員からのフィードバック機会の積極的創出
第4段階:スキルギャップの特定と解決
- 従業員の約半数がより正式な訓練を求めているが、20%は最小限のサポートしか受けていない
- 役割別にカスタマイズされた訓練プログラムの実施
- 一律的なアプローチではなく、職種・業務に特化した学習パス
組織文化とリーダーシップ
- CEOがAIアップスキリングを明確な優先事項にした企業は、短期間で同業他社より先行できる
- 失敗や学習プロセスを率直に共有するリーダーシップが信頼構築につながる
- 取締役会レベルでのガバナンス体制構築が不可欠
AI時代の営業組織再編:SDR削減で競争優位を築く企業の新常識
Saastr「The Great SDR Downsizing: 36% of B2B Companies Cut Sales Development Teams in 2025」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
◾️SDR大規模削減の衝撃的な現実
B2B企業の36%が過去12か月でSDR/BDRチームの人員を削減し、これは営業職種の中で最も高い削減率となっています。他職種と比較すると、セールスエンジニア14%減、アカウントエグゼクティブ25%減、プロフェッショナルサービス17%減であり、SDRの削減が突出しています。さらに、SDR人員を増加させた企業はわずか19%で、全営業職種の中で最も低い成長率を記録しました。
◾️SDR削減の3つの主要因
- AI活用による効率化
AIツールにより少ない人数で同等以上のアウトバウンド活動が可能になりました。プロスペクティング、メール配信、リード判定の自動化が急速に進展しています。 - 質重視への戦略転換
大量アプローチから、より質の高い限定的なコンタクトへと戦略が転換。データ精度向上と標的を絞ったキャンペーンへの投資に集中しています。 - 経済的圧迫
SDR職は資金繰り改善時に最初の削減対象となりやすく、AEやカスタマーサクセス職より売上創出から遠いと認識されています。
◾️生き残る企業の戦略的優位性
SDRチームを増員した19%の企業は、競合他社がSDR能力を削減する市場において大きな競争優位性を創出している可能性があります。これらの企業は以下の特徴を持つと推測されます:
- SDRを置き換えるのではなく、AI補強型SDRに投資
- 積極的な市場拡大を要求するプロダクトマーケットフィット(PMF)を発見
- 従来のSDR業務とカスタマーサクセス・マーケティング機能を組み合わせたハイブリッド職種を構築
◾️セールスエンジニアの台頭
セールスエンジニアは最も削減率が低く14%に留まり、17%の企業が実際に増員しています。これは、複雑化するB2Bソフトウェア市場においてテクニカルセリングの重要性が高まっていることを示しています。

Susan Li氏のMeta戦略「19歳のアナリストからFortune 100企業のCFOへ」
StripeのYouTube「A Cheeky Pint with Meta CFO Susan Li」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
2022年よりMetaのCFOを務めるSusan Li氏が、19歳でモルガン・スタンレーに入社後、Fortune 100企業で最年少CFOとなるまでのキャリアを語りました。このインタビューでは、<yellow-highlight-half-bold>Metaの財務戦略、AI投資、リーダーシップ文化、そして株式市場の課題を乗り越えるための洞察<yellow-highlight-half-bold>が語られています。以下に主なポイントをまとめます。
◾️エネルギッシュなメンターシップから学ぶ卓越性
モルガン・スタンレーでMichael Grimes氏の下で働いた経験を通じて、Susan Li氏は無限の好奇心と徹底したプロ意識の重要性を学びました。Michael Grimes氏は、ハイテク企業から子育て、大学の営業プログラムに至るまで、あらゆる分野に強い見解を持ち、その圧倒的なエネルギーと知識の幅広さで、優れたリーダーがいかにチームを鼓舞するかを体現していました。このメンターシップの在り方は、キャリアの早い段階で卓越した人物に触れることが、リーダーシップの開発と仕事の基準作りに長期的な影響を与えることを示しています。
◾️競争優位としての社内後継者育成
Metaには、才能を早期に見出し育成することで、持続可能なリーダーシップのパイプラインを築く文化があります。リー氏が金融部門の一担当者から17年かけてCFOに昇進したキャリアは、企業が長期的な後継者育成計画を通じて、いかに優秀な人材を維持・育成できるかを物語っています。2009年から2014年までCFOとして同社のIPOを主導したDavid Ebersman氏が、早い段階でSusan Li氏のCFOとしての可能性を見出し、戦略的なキャリア指導を行ったことは、経営幹部が部下に自信を持たせ、将来のリーダーへの道筋を示すことができる好例です。
◾️フィードバックが支える長期的なキャリア
Susan Li氏は、Metaでの17年間のキャリアの秘訣を「フィードバックを上手に受け入れる能力」だと語ります。急速に変化する企業で長期的に成功するためには、これが最も重要なスキルだと強調しています。彼女がデータベースのリソースを過剰消費したとして「SQLパワーユーザー」会議に呼び出された経験は、建設的なフィードバックが予期しないところからもたらされることがあり、それを真摯に受け止めることでパフォーマンス向上につながることを示すエピソードです。
◾️Mark Zuckerberg氏のリーダーシップの進化
Susan Li氏は17年以上にわたり、Mark Zuckerberg氏が優れたパブリックスピーカーとなり、世界トップクラスのフィードバック提供者へと進化していく姿を目の当たりにしてきました。彼のフィードバックスタイルは、率直さと相手への敬意を両立させており、嫌味や冗長な説明を一切交えずに、要点を極めて明確に伝えます。この進化は、創業者が自身の核となる価値観やビジョンを保ちながら、いかにして重要なリーダーシップスキルを身につけることができるかを示しています。
◾️測定困難な領域におけるリソース配分
Metaのリソース配分は、測定可能なROIが見込める投資(中核の広告事業など)と、実験的な性格の強い先行投資(リアリティ・ラボなど)を明確に区別しています。後者のようなROIが測定困難な投資については、発想を転換し、「その事業が投資を正当化するには、将来どれほどの価値を持つ必要があるか」をまず算出し、その目標設定が現実的かどうかを評価します。このフレームワークにより、財務規律を保ちながら大規模なイノベーション投資を可能にしています。
◾️イノベーション投資におけるポートフォリオ・アプローチ
Susan Li氏は、Metaのイノベーション戦略がポートフォリオ・アプローチに基づいている点を強調します。これは、いくつかの取り組みは失敗に終わるものの、成功した一部の投資が全体の投資価値を十分に上回るという考え方です。そのためには、計画段階で成功の確信度が高くないという理由だけで投資案を却下するのではなく、長期的な視点で判断することが不可欠です。なぜなら、そうした短期的な判断が、歴史的に会社の成長を牽引してきた重要なイノベーションの機会を逃すことにつながるからです。
◾️市場のタイミングと回復戦略
2022年10月、Metaの時価総額は2300億ドル(2025年予測純利益の3倍)という極端な低水準まで下落しました。これはAppleのプライバシーポリシー変更(ATT)と、コロナ禍後のeコマース需要反動という複合的な課題が原因でした。Susan Li氏の経験は、外部要因によって企業価値が本来の実力から一時的に乖離することがあり、そうした状況からの回復には事業効率の改善と徹底したコスト管理が有効であることを示しています。
◾️フリーキャッシュフロー対EBITDAの重視
Susan Li氏が、Mark Zuckerberg氏から贈られた「EBITDAハット」ではなく、「フリーキャッシュフローハット」をチームに配布するようになったエピソードは、資本集約的なビジネスにおいて、どの財務指標を重視すべきかという重要な視点を示しています。AIインフラへの巨額投資に伴い、減価償却費(EBITDAでは除外されるコスト)の重要性が増したため、Metaは真の経済的パフォーマンスと資本配分の効率性を評価する上で、フリーキャッシュフローをより適切な指標として位置づけるようになりました。◾️危機下の投資家対応2022年10月の投資家との対話で、質問の代わりに厳しいフィードバックだけを突きつけられた経験は、上場企業のリーダーがいかに困難な市場環境を乗り切るべきかを示しています。ある投資家からの「なぜ今あなたの会社の株を買う必要があるのですか?あなたの未来への投資が実を結ぶまで待ってからでは遅いのですか?」という問いかけは、Metaがイノベーションの過渡期において、株主に対して短期的な価値をいかに提供していくかを再考するきっかけとなりました。
◾️プラットフォームリスクと収益の多様化
AppleのATTプライバシー変更やコロナ禍後のeコマース需要反動といった出来事は、特定のプラットフォームへの依存や外部環境の変化が、いかに大きな収益の逆風となり得るかを浮き彫りにしました。こうした変化に適応しながら、中核である広告事業の有効性を維持し続けたMetaの対応力は、イノベーションへの投資と並行して、事業の根幹を支える強靭性がいかに重要であるかを示しています。

OTE設計のポイント
Only CFO’s Newsletter「Creating a Sales Commission Plan」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
日本のSaaSでも「セールス担当者のインセンティブプランをどのように設計するべきか」というのが論点になることが増えてきました。今回はOnly CFOの記事より、<yellow-highlight-half-bold>販売コミッションのプランニングのポイント<yellow-highlight-half-bold>についての解説記事をご紹介します。
◾️コミッションプラン設計の目的
- 売上を向上させるという単純なものではなく、<yellow-highlight-half-bold>成功した結果を達成し、強力な生涯ユニットエコノミクスを生み出す顧客を獲得すること<yellow-highlight-half-bold>。
- 成長スピードが速いと年間のキャッシュ支出も大幅に増加する。すべての顧客獲得コストが返済されて初めて、ソフトウェア企業は実際にキャッシュ フロー マシンとなる。
- フェーズによっては、「優秀な営業担当者の人材獲得」「新しい業界/セグメントへのエントリー」「Fortune 500企業の獲得を増やす」「新製品のクロスセル」などもある。
◾️OTE(Pay Mixの設定)とノルマについて
- すべての担当者がノルマを達成することは望ましくありませんが (基準が十分に高くない)、ほとんどの担当者がノルマを達成できないことは望ましくありません (士気に悪影響を及ぼし、担当者の減少を引き起こします)。
- 基本的に適正なOTE比率はセールス年収の5倍と言うのが歴史的な経験則としてあるが、ベンチマークは各企業のコンテキストによって大きく異なるので当てはめすぎるのは注意が必要。
他にもランプアップやキャップをつけるべきかなど各論も多く紹介されており、CFOやCEOに参考になる記事です。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Thinking Machines Lab - 元OpenAI CTOのMira Muratiが設立したAIスタートアップ。シードで$2Bを調達。評価額は$10B。投資家はAndreessen Horowitz、Conviction Partnersなど(TechCrunch)
- Decagon - カスタマーサービス向けAIエージェントプラットフォーム。シリーズCで$131Mを調達。評価額は$1.5B。投資家はAccel、Andreessen Horowitz、Bain Capital Venturesなど(Reuters)
- Centific - モデルトレーニングから大規模な実世界のAIアプリケーションへと移行する企業に対して、成功に必要な技術的洗練性、ガバナンスフレームワーク、専門家による監視を提供。シリーズAで$60Mを調達。投資家はGranite Asiaなど(Yahoo! Finance)
- Metaview - 採用面接をAIで分析するリクルーティングプラットフォーム。シリーズBで$35Mを調達。投資家はGV、Plural、Vertex Venturesなど(Fortune)
- Kognitos - 暗黙知やシステム知識を文書化され自動化されたプロセスに変換し、ビジネスオペレーションを自動化するAI。シリーズBで$25Mを調達。投資家はProsperity7 Ventures、Khosla Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Synthflow - 企業がカスタマイズされたホワイトラベルの音声AIカスタマーサービスエージェント。シリーズAで$20Mを調達。投資家はAccel、Atlantic Labs、Singularなど(TechCrunch)
- DataBahn - データコストを削減し、データエンジニアリングを自動化し、企業が大規模なAIに備えるためのAIエージェント。シリーズAで$17Mを調達。投資家はForgepoint Capital、S3 Ventures、GTM Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Clarify - 営業担当者が手作業でやり取りを記録する代わりに、電子メール、カレンダー、通話データに接続し、AIを使って会議を要約し、現場の最新情報を提案し、パイプラインを追跡し、顧客との電話の準備をするCRM。シリーズAで$15Mを調達。投資家はUSVP、Gradientなど(GeekWire)
- Qualytics - 自動化された異常検知、インテリジェントなルール生成、コード不要のワークフローによって、チームがデータ品質をプロアクティブに管理するデータ品質AIプラットフォーム。シリーズAで$10Mを調達。投資家はBMW i Ventures、Conductive Ventures、The Hill Fundなど(Yahoo! Finance)
フィンテック
- Conquest Planning - ファイナンシャル・アドバイザー、銀行、証券会社、証券会社、保険会社、年金プロバイダーがパーソナライズされたアドバイス提供を支援するAIプラットフォーム。シリーズBで$80Mを調達。投資家はGoldman Sachs、Canapi Ventures、BDC Capitalなど(Business Wire)
- Clearspeed - 保険会社、金融機関などが不正行為や内部脅威などのリスクを評価し、運用コストを削減し、顧客体験を向上させる音声ベースリスク評価プラットフォーム。シリーズDで$60Mを調達。投資家はAlign Private Capital、IronGate Capital Advisors、Bravo Victor Venture Capitalなど(Business Wire)
- ZestyAI - 損害保険業界向けリスクアナリティクスAIプラットフォーム。CIBCイノベーションバンキングから$15Mの与信枠を獲得(FinSMEs)
- SuperDial - 請求会社から保険会社へのアウトバウンドコールに対応する電話自動化AIエージェント。SignalFire、Slow Venturesなどから$15Mを調達(FinSMEs)
ヘルスケア
- Abridge - 医師と患者の会話に特化したAI議事録プラットフォーム。シリーズEで$300Mを調達。評価額は$5.3B。投資家はAndreessen Horowitz、Khosla Ventures、IVPなど(MobiHealthNews)
- Arine - AIを活用した最先端の投薬最適化プラットフォーム。シリーズCで$30Mを調達。投資家はTown Hall Venturesなど(PR Newswire)
- Jaan Health - 医療関係者の臨床的・財政的ニーズを解決する初の独自AIケアコパイロット。Level Structured Capitalから$25Mを調達(Yahoo! Finance)
バーティカル
- PhysicsX - 航空宇宙・防衛・自動車向けAI駆動エンジニアリングソフトウェア。シリーズBで$135Mを調達。評価額は約$1B。投資家はAtomico、Temasek、Siemensなど(Globe Newswire)
- GoKwik - 大企業から中小企業までD2Cショップの立ち上げを支援するSaaS。$13Mを調達。投資家はRTP Global、Z47、PeakXV Partnersなど(TechCrunch)
リーガルテック
- Harvey - 法務専門家向けのAIアシスタント。シリーズEで$300Mを調達。評価額は$5B。投資家はKleiner Perkins、Coatue、Sequoiaなど(Fortune)
その他
- Wispr Flow - 104言語のディクテーションをサポートしているAI音声入力アプリ。シリーズAで$30Mを調達。投資家はMenlo Ventures、NEA、8VCなど(TechCrunch)
- Eventual - マルチモーダルデータに特化したAIインフラ。シリーズAで$20Mを調達。投資家はFelicis、M12 Ventures、Citiなど(FinSMEs)
[国内]
- Diggle - 経営資源の戦略的な投資判断を支える経営管理プラットフォームを開発・提供。シリーズBで17.5億円を調達。投資家はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、Salesforce Ventures、DNX Ventures、Archetype Ventures、あおぞら企業投資(zak II)
- Sasuke Financial Lab - デジタル保険代理店「コのほけん!」の運営、またデジタル技術の活用が急速に進む保険業界向けにDX・マーケティング支援事業を展開。Brand New Retail Initiative Fundおよび借り入れにより約12億円を調達(PR Times)
- Miletos - 「AIとデータ」を中心にしたモダンプロセスを実現するAIプロダクトを提供。シリーズAと借入で総額9.8億円を調達。投資家は弥生、インフキュリオン、みずほキャピタル(PR Times)
- Wunderbar - AI×広告データを活用したIPマーケティングプラットフォームを提供。シリーズAで総額約5億円を調達。投資家はNOW、ディープコア、博報堂DYベンチャーズ、SBI新生企業投資、i-nest capital、コロプラネクスト、GENDA Capital(PR Times)
- OPERe - 患者スマートフォンを活用し、ペイシェントジャーニーに伴走する形で動画やメッセージで医療者の説明業務および情報収集業務を支援するシステムを提供。プレシリーズAで総額4億円を調達。投資家はジャフコ、DNX Ventures、Vertex Ventures Japan(PR Times)
- amoibe - AI時代の法人向けエンジニア育成サービス。シードラウンドで総額1億円を調達。投資家はジェネシア・ベンチャーズ、ANOBAKA(PR Times)