"SaaS PR集中講座2023"へようこそ!
この集中講座では、PRや広報に関する概論にはじまり、具体的なスキルアップを通じて、みなさんのビジネスの成長を後押しする情報をお届けします。
本講座をガイドしてくれるのは、ALL STAR SAAS FUNDの広報メンターであり、広報のエキスパートである日比谷尚武さんです。Sansan株式会社の広報部門とマーケティング部門の立ち上げを手掛けた経験を活かし、現在は自身が創業したkipplesの代表として、スタートアップから自治体まで、幅広く広報とコミュニケーションを支援しています。
2021年にはじまった「SaaS PR集中講座」は、多くのPR担当者から「これが知りたかった!」という声をいただきました。その成果を基にした2023年版では、より深く広範な内容を提供し、PRの疑問や課題に応えていきます。
日比谷さんには「SaaS企業の広報が持つべき知識」をテーマに、全5回のパートに分けて講演いただきました。「概論編」「広報戦略編」「広報マネジメント編」「広報実務編(前編・後編)」で、一つひとつのテーマを深掘りします。
第4回となる「広報実務編(前編)」は、いよいよ広報・PRプロジェクトを動かす。そんな時のためにも、部門間の連携体制を整え、一つひとつの履歴をしっかり残すためのツールを作り、メンテナンスを続け、メディアの皆さんや広報・PR仲間との関係を築く......日々の仕事は山ほどあります。
では、どのように優先順位を決めて進めていくべきでしょうか。広報・PRの「日々の仕事」に焦点を当てる「広報実務編」の前編では、主にメディア関係者との関係構築や、自社のサービスやメッセージを伝えるプレスリリースなど、情報発信に関して解説します。
【第4回講義のポイント】
・メディアリレーションの基本のキ
・メディアアプローチ、4つのポイント
・プレスリリースを磨き込み、そして出してからが勝負
・取材対応のすべて
(※この記事は、2023年4月19日(水)に開催した、「SaaS PR集中講座2023」第4回『広報・PR実務:HOWを学ぶ 01』より抜粋・再構成しています)
第1回の講義はコチラ
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メディアリレーションの基本フロー
まずはメディアリレーションについて話していきましょう。
私たち広報が発信したいメッセージを、ターゲットに直接届けるための媒体、それがメディアです。新聞、雑誌、ウェブメディアなど、さまざまなメディアがあって、それぞれに読者がいます。例えば、自社サービスのお客さま候補となる中小企業の方々にメッセージを届けたいと思ったら、まず中小企業の方々がどのメディアを読んでいるのかを調査し、それをメディアにうまく取り上げてもらうためにアプローチをします。
アプローチと言っても、ただ、メディア関係者に「記事を書いてください」と頼むだけで済む話ではありません。メディアには独自の方針や目標があります。ウェブメディアならPV、新聞や雑誌なら部数といった数字的なノルマの他にも、記者それぞれの好み、編集権を握る人のルールなど、多くの制約があるなかで、掲載されるネタは選別されていきます。だからこそ、自分たちのメッセージだけを伝えるのではなく、それがどのようにメディアのニーズに合致するかを考え、語ることが大切なのです。
私はこの広報活動を、新規営業の開拓に近いと思っています。見込み客がいない状態からはじまり、最終的には商品を購入してもらい、さらに口コミまで広めてもらうまでのプロセス。これは、どのメディアにアプローチすべきかわからない状態からはじまり、リスト作成、ターゲット選定、コンタクト、取材の設定、露出の実現までの広報の流れとよく似ています。
メディアにアプローチするときにも、一方的に面会を求めたり、記事を書いてもらうように直接頼んだりするだけではなく、相手がどのような記事に興味があるのか、どんな特集を組んでいるのかを考え、それをベースにコンタクトを取るべきです。例えば、「最近の特集や記事を見ましたが、私たちも似たようなことを行なっています。一度、お話しさせていただく機会を持てないでしょうか?」といったアプローチが有効です。
さらに、メディアにはそれぞれ特性があります。雑誌ならば、発刊のタイミングが月に1回や2回と決まっているため、ある期日までに話題を提供しなければならない、というスケジュールの制約があります。一方で、ウェブメディアは更新のタイミングが柔軟で、タイムリーに情報を提供できます。こうしたメディアの特性を掴んでおく必要があるでしょう。
営業におけるアップセルやクロスセルのように、一度記事を書いてもらった記者との関係を継続することも重要です。それは再度、記事を書いてもらうため、あるいは他の記者に紹介してもらうためにも有用だからです。広報活動は一度きりの取引ではなく、継続的な関係構築が求められるのです。

私たちが届けたいメッセージを持つターゲットを定め、ターゲットに適したメディアを探し、メディアの中で関連するトピックを担当している記者を特定して、適切な手段でコンタクトを取り、継続的に関係を構築していく。これらが基本的なフローとなります。
メディアにアプローチするための4つの基本
では、基本のフローがわかったところで、ここからはそれぞれをいかに良くできるかを考えていきます。
メディアとの接点作りについての悩みをよく聞きます。カフカの小説で『城』というシュールな作品があるのですが、その一部がメディアに通じるところがあって。ある町に迷い込んだ男が、「どうも城がこの町にあるらしい」とみんなが言うけども、誰にどう聞いてもたどり着き方がわからない、という不条理な小説です。広報に例えると、記者が町にいるのは見えているけれど、なかなかメディアという城へ近づくことができない、そんなイメージでしょうか。
具体的にはじめるべきこととしては、以下のような方法で記者との接触を図れるでしょう。
1. ターゲット選定:実際には、メディアのコンテンツをよく読むことからはじめるべきです。興味を持っているメディアやコーナー、記事のテーマなどを明確にし、その対象となる記者を特定します。
2. 連絡方法の選択:メディアの代表電話番号に直接電話をかける、SNSで連絡を取る、メールを送るなどの方法があります。近年では、記者がSNSで情報収集をしていることが多いため、そこから接触を図ることも有効です。
3. 記者クラブの活用:特定の産業や政策領域に関連する記者が集まる「記者クラブ」へ連絡を取り、その場で記者との接触を図ることも可能です。ただし、記者クラブへの飛び込みは基本的には許されていないため、事前に連絡を取るなどのマナーを守る必要があります。
4. PR会社の活用:PR会社はメディアとの関係構築を専門としており、契約したうえで、特定のメディアとの接点を作ってもらうことも可能です。
繰り返しになりますが、記者との関係構築は一度限りのものではなく、継続的に関係を深めることが欠かせません。記者にとって「ドンピシャなネタ」を提供するためにも、記者の興味やバックグラウンドを理解し、それに合わせた情報提供を行なうことが重要です。つまり、掲載に至る過程から逆算して考えることが大事なんです。
例えば、春の異動で、それまで自動車や製造業界の取材をしていた記者が、スタートアップやテクノロジー業界を新しく担当することになった。そういう人に出会ったら、まずはスタートアップ関連の情報や知識を丁寧に提供することで、記者自身の理解を助けつつ、相手を知っていくことで距離を縮めていくのもいいでしょう。
メディアに情報を提供する際には、基本的には単発のネタごとに、メッセージやメールを送ります。今後打ち出す自社の発表や、業界の特筆すべき動きといった内容を踏まえて、「ご興味あれば、よりお話しできます」といった連絡を取っていく。その派生バージョンとして、定期的なニュースレターを作ることも効果的です。メディアには一斉送信で対応することもあれば、少しずつ内容をアレンジすることもあったりと、各社工夫されていますね。

送り方にしても、封書にしてみたり、自社ならではのお土産を付けたり、変形封筒で送ったり。私の場合は、自社の情報だけでなく、業界の調査レポートや季節ネタを付記することもよくあります。試行錯誤のしがいがあるポイントといえます。
「メディアリスト」を作ることのメリット
メディアとの関係構築が増えてくると、それらを管理するのが難しくなるため、きちんとメディアリストを作成しておくといいでしょう。
新聞や雑誌といったメディア名、運営会社名、URLなどをスプレッドシートなどで管理し、それぞれ記者の名前や肩書き、担当コーナーや特集名などを入れていきましょう。また、優先度を付けるのもいいでしょう。優先度を付けることで、どのメディアに最も注力するべきかを決めることができます。

一見、メディアに優先順位をつけることは失礼に感じられるかもしれませんが、どのメディアが自社のメッセージを伝えるのに最も効果的なのかを考えないと、関係メディア数が増えるにしたがって対応できなくなってしまうのです。特に、メディアリストが数十件、数百件となれば、すべてのメディアへ均等にアプローチすることは難しいです。
また、社内で「1人広報」の場合ならリスト化せずともなんとかなるかもしれませんが、他のメンバーや外部パートナーと分担するとなれば、共有が必要になってきます。あらかじめ想定して、リストにしておくほうがおすすめです。
また、一人で広報を担当する場合は問題ないかもしれませんが、複数人で広報を担当する場合や、外部のパートナーと連携する場合は、メディアリストを共有することが重要です。そのためには、共有を前提とした形式でメディアリストを作成することが望ましいです。
営業の世界でよく見られるSFA(Sales Force Automation)のような管理手法を取り入れることも効果的です。具体的には、メディアとの接触や情報提供、取材の申し込み、取材の実施、記事の掲載など、メディアとの関係構築におけるプロセスを点数化して、進行状況を可視化するのです。特に立ち上げフェーズでは有効で、広報活動の指標に対する現在の状況が一目でわかり、次に何をすべきかが明確になります。
実際に、メディアへリーチしたときの私の経験を挙げてみます。以前にテレビ番組の『ワールド・ビジネス・サテライト』に出演した際は、後輩のベンチャー企業が取り上げられていたことで、まずは後輩に「どのように出演が決まったのか?」を早速聞きにいきました。出演に至る経緯を教えてくれて、さらには私のことも先方の担当者に紹介してくれたんです。
そこで、何度も自社のサービスについて担当者へプレゼンをしたのですが、なかなか響かない。ただ、ある時に「ITベンチャーが地方のオフィスに進出する」という話題が刺さりました。一度でもメディアに取り上げられると、ある種の信用関係も積み上がっているためか、その後も定期的に露出する機会が増え、自社ビジネスについても取り上げてもらえるようになったんです。

プレスリリースは配信だけでなく、関係作りまでが目標
それでは、プレスリリースの話に移りましょう。
元々、プレスリリースというのは、記者クラブや官公庁などに集まる記者たちにまとめて情報を伝えるために、自社のリリースを印刷したものを投函する、あるいはFAXを送るといった形で行なわれていたのです。ネタを提供する手段としてはそれしかありませんでした。しかし、現代になりインターネットが利用できるようになると、メディアだけでなくウェブ上のニュースサイトへもコピペや転載の形で情報がばらまかれるようになりました。
一方で、ネット上に流れているニュースリリースを見て記事を書こうとする記者もいるし、PV稼ぎや配信コンテンツを埋めるために、リリースを上手く取り込んでいるメディアもいることはいます。

ただ、ネット上にばら撒いたリリースが拡散されたからといって、それで成功したと思ってしまってはいけません。それはデフォルトで行なわれることで、メディアの記者にきちんとビジネスを理解してもらったり、次の取材につなげたりということまで考えなければ、意味がないとまで考えたほうがいいでしょう。リリースを配信するだけではなく、メディアとの関係性を作り上げるところまで目指すべきだと思います。
そうは言っても、プレスリリースが無意味であるわけではなく、必要なものです。よくAmazonの例が挙げられますが、新規事業をはじめるときに、プレスリリースを先に書くことで、事業計画がブレずに無駄がなくなるという考え方があります。ターゲットが誰で、メリットは何で、市場状況はどうで、目指すべきことは何で、製品は何か……といった要素をすべて考慮しないと、リリースは書けません。
そのため、リリースを書くことから逆算して、事業計画やプランがブレていないか、どうかを考えることが重要です。さらに、それを実施すると、社員や関係者の視点、目指すべきゴールが共有できてブレがないか、プランのロジックが破綻していないかといったことを確認することができると語っています。
プレスリリースの作成でも、特にみなさんが難しく感じているようなのがタイトルです。私がいつも伝えているポイントは、「タイトルに何を盛り込みたいのか」を明確にすることです。キーワードとしては、サービス名、社名、事業領域、サービスの可能性、効率化への貢献、新たな機能の追加、調達金額や調達源、調達資金の使途など、多岐にわたります。
そこから、今回のリリースで優先したいキーワード、今回の発信で誰にどのようにアピールしたいのかという視点から逆算し、その結果として優先度の高いキーワードを残して、それらを組み合わせることをおすすめします。複数の案を作り、最良の案を選ぶのも有効です。

「良いプレスリリース」の磨き込みはどうする?
プレスリリースのブラッシュアップには、デザイナーが行なうような「アイデアラッシュ」を実践することも効果的です。ロジカルな思考を持ちつつも、ありきたりにならないように、アイデアを広げていきましょう。
ALL STAR SAAS FUNDの投資先から、プレスリリースとして良い事例があったので紹介しましょう。hacomonoさんのプレスリリースは、いつもクリエイティブでありながらもターゲットにしっかりと刺さる内容になっていて、とても上手です。中身にはインフォグラフィックスを思わせるような形で事業の成長が示され、とても読みやすいです。
プレスリリースでありながら、メディアに情報を提供するという本来的な意義を超えて、一般の消費者がネット上で目にすることも考えて作られているように思います。まさに、hacomonoさんに限らず、全体的にそういった勝負になってきているともいえます。
これは私自身も好感を持っているアプローチで、特にスタートアップ企業にはオススメです。プレスリリースのあり方は賛否両論があるのですが、露出の機会が多くないスタートアップにとっては、一つひとつをしっかり作り込んでアピールすることが重要だからです。
では、「良いプレスリリース」って、どんなものでしょうか?答えは、対象となる記者や企業の方針によって変わります。ですが、リリースの形式にはさまざまなバリエーションがあることを理解しておきましょう。
他社のプレスリリースもインターネットでたくさん見られますから、どのようなトレンドと組み合わせているのか、どんなキーワードを使っているのか、画像の使い方はどうなのか、といった手法を学ぶための参考資料は多くあります。

そこからさらに進めて観察してほしいのは、リリースの結果、どのようなメディアに取り上げられているのかを追うことです。特に競合企業のリリースなどは分析すると良いでしょう。リリース作成は多くのステップが必要な作業です。チェックリストを作り、システム化することで、プレスリリースを書く際にも無駄のない設計ができると良いですね。

プレスリリースについては、記者へ個別にネタを持っていく、あるいはメールやFAXなどの一斉送信で流すなどの方法がありますが、記者発表会という方法もあります。記者の方々に集まってもらって発表する機会で、その際には「この日に対外的に発表するので、それまでは各社は報じないでください」といった取り決めを結びます。このことを「情報解禁日」とも言いますね。記者発表会は、人数が少ない場合はメディアレクやラウンドテーブルと呼ぶこともあります。
記者発表会は、どれくらいの人数を呼ぶか、どんな人を呼ぶか、何を提供するか、最近ではオンラインとのハイブリッドで行なうか、そのメリットデメリットは何か……といった決めるべきバリエーションがあります。ただ、基本的には会社などに集まってもらって一斉に発表するという考え方で良いかと思います。
記者発表会を開催するときには、20人から30人集めなければならないとか、そのためにテレアポをしまくらなければならないとかいった話をよく聞きますが、私は本末転倒だと思っています。本当に発表すべき内容で、それを取り扱ってもらうべきメディアがどこなのかを考え、適切な招待人数を選ぶべきでしょう。もしかしたら、ピッタリなのは3人しかいないかもしれませんが、その3人がすべて来てくれたら、それでいいのです。人数にとらわれすぎないことですね。
いざ、取材対応!はじまる前から掲載まで、広報の役回りはさまざま
次に、そういった経緯を経て、いよいよ記者から取材を申し込まれたときの対応についても踏まえておきましょう。基本的なステップは4つに分けていきます。取材前の状況把握、次に準備、本番、事後対応です。
まずは状況把握からです。「取材したい」と連絡が来たときには、まず相手のメディアを理解しましょう。どのようなメディアなのか、どのコーナーなのか、他にどんなコーナーがあるのか、どの記者なのか、過去にどのような記事を書いていたのかなどの理解からはじめます。また、相手から具体的な日程が決まってきたら、想定している質問やその意図などを事前に伺って把握しておくことも大切です。

というのも、初期のスタートアップは取材に応じることのネガティブな面が少ないと思いますが、市場が成熟してくると、業界自体の傾きといったネガティブな内容に触れることも出てきます。もちろん、ネガティブに書かれること自体は新しいものが理解されにくいからこそ、それを説明する機会をもらえるという意味では貴重です。いずれにせよ、相手の質問の意図を理解していないと、期待されている回答を返すことができません。
次に準備についてです。記者からの取材を受けるとき、広報が対応するのであれば問題ありませんが、社長や事業部の方、エンジニアが対応する場合は、その方々がインタビューに出るためにメディアとの調整を行なう必要があります。取材の目的を明確にする他にも、特に企業の代表や役員が対応する場合、必要な準備や注意事項がたくさんあります。

まず、取材の目的を踏まえて、公開して構わない情報と、発信を控えるべき情報を事前に決めておきましょう。記者からの質問にも、すべてをありのまま答えるのではなく、一部は回答を差し控える可能性も考慮すべきです。よく「ここだけの話」と、いわゆるオフレコ話をサービストークをしてしまうことがあります。メディアの性質にもよりますが、基本的に記者の前で言ったことは記事に掲載される可能性があると考えてください。

取材にあたっての服装や見た目も大切です。取材に合わせて写真撮影が行なわれることもよくあります。「ちゃんとスーツを着てきてね」とか、「あえてカジュアルなTシャツでいこう」とか決めておいたり、「髭は剃っておいてね」「ネクタイは何色にしようか」なんて具体的なアドバイスが必要なこともあります。撮影場所についても、会社のエントランスなのか、あえて現場の風景を出すためにクライアントの工場を借りようとか、そういった事前の調整もしておきましょう。特にテレビだと、背景に映ってはいけないものを置かないとか、撮影の画角を気にする人もいますから、細部にも気を配ります。
取材中に気をつけることとしては、上場企業や大企業だけでなく、スタートアップ企業でも数字やデータについての表し方です。取材時に必要な情報を即座に提供できるように準備するのはもちろんなのですが、非公開数字の情報管理が漏れがちです。だからこそ、事前に記者には「どんな質問を考えていますか?」と聞いておくこと。想定質問の提示に難色を示す記者もいるにはいるのですが、「あなたが求めている内容にきちんとお答えして、良い取材にするために事前準備をしたいのです。差し支えなければ教えてください」というスタンスで臨みましょう。お互いに良い仕事をしましょう、と事前に情報交換していくのです。
他にも取材中には、記者が話している際に参考資料を渡せるように、ファクトブックや営業資料を準備しておいたり、記者が発言の意図を掴みかねているようならサポートしたりと、さまざまな場面で広報による対応は発生します。専門用語をひたすら喋っていて、記者が困惑しているように見えたら、横から「補足なのですが、今の用語については……」など、調整役として適宜動き回ります。時と場合によっては、取材を一時止める判断をする選択肢も持っておきます。
取材が終了して、記事が掲載されるまでのプロセスについても広報が関与します。原稿の確認や掲載予定日の確認、追加情報の提供など、一連の流れを管理することが求められます。掲載や放映後にも内容を確認し、内容が事実と異なる場合や、意図しない切り取られ方をされた場合などには適切に対応しましょう。お客様が先に情報を見て、ネットやSNSで話題化してくれることもあるので、なるべくオンタイムでキャッチしたいところです。

また、記事が掲載されたことに感謝の意を記者に伝えることも重要ですが、その際には記者があくまで「読者のために記事を書いている」という点を理解して、適切な態度で接していきましょう。僕は「一緒に良い仕事ができて良かったね」という感じで、得られたフィードバックや感想を伝えるくらいのことはしても良いのではないかと思います。
業界を代表する「第一人者」になる作戦も
BtoBスタートアップの会社は、製品が世の中へ露出する機会が意外と少ないものです。清涼飲料水のような消費財や、一定で話題性のある自動車などと比べて、ビジネスパーソン向けの業務用DXツールやコンサルサービスは話題になりにくく、情報も流れにくいわけです。そこで取れる作戦が、製品名だけではなく業界全体、あるいは特定カテゴリーの第一人者として認識されることです。そのほうが製品の露出機会も増えますし、ビジネスチャンスも広がるんじゃないかなと。特にBtoB スタートアップのみなさんは、真剣に検討してみてください。
具体例は、マネーフォワードの瀧俊雄さんです。瀧さんは創業メンバーで、元々は野村證券にいたこともあって、元々の専門知識に加えて、マネーフォワードのブログを立ち上げて、そこで「フィンテック研究所」と名乗り、フィンテックについての情報を収集・発信してきたんです。そういう活動もあって、政府の有識者会議に呼ばれたり、フィンテックの検討会に参加したり、メディアに登壇したり、フィンテック協会のアドバイザーになったりして、今では「フィンテック=瀧さん」というイメージが固まっているんです。
広報観点から言うと、取材も来る、登壇や講演依頼も来る、むしろ対応に追われるほどですよね。いきなりここまでとは言わないけど、自社やスタッフが専門家、業界のリーダーとして認知されるようにすれば、広報活動もラクになると思うんです。
「この業界と言えば、この人、この会社だよね」という印象、それをどう積み上げていくかが大事です。そのためには、自社や自社の人々を業界のリーダーとして育てていくことが大切で、それが広報の一環とも言えるんじゃないでしょうか。自社のサービスリリースや他のイベントに影響されずに、自分たちでコントロールできる行動だから、意外と取り組みやすいんじゃないかなと僕は考えています。