"SaaS PR集中講座2023"へようこそ!
この集中講座では、PRや広報に関する概論にはじまり、具体的なスキルアップを通じて、みなさんのビジネスの成長を後押しする情報をお届けします。
本講座をガイドしてくれるのは、ALL STAR SAAS FUNDの広報メンターであり、広報のエキスパートである日比谷尚武さんです。Sansan株式会社の広報部門とマーケティング部門の立ち上げを手掛けた経験を活かし、現在は自身が創業したkipplesの代表として、スタートアップから自治体まで、幅広く広報とコミュニケーションを支援しています。
2021年にはじまった「SaaS PR集中講座」は、多くのPR担当者から「これが知りたかった!」という声をいただきました。その成果を基にした2023年版では、より深く広範な内容を提供し、PRの疑問や課題に応えていきます。
日比谷さんには「SaaS企業の広報が持つべき知識」をテーマに、全5回のパートに分けて講演いただきました。「概論編」「広報戦略編」「広報マネジメント編」「広報実務編(前編・後編)」で、一つひとつのテーマを深掘りします。
第3回となる「広報マネジメント編」では、広報・PR活動を継続的に強くしていくフェーズに入ったチームにとって必要なマネジメントがテーマ。年間スケジュールをもとにストーリーを描くプランニング力、戦略から実行へ移す力、効果を最大化させる体制づくりなど、取り組むことはさまざまあります。そして、この職種にとって「永遠のテーマ」とも言われる広報・PRの評価についても触れていきます。
(※この記事は、2023年4月12日(水)に開催した、「SaaS PR集中講座2023」第3回『効果を生む強力な広報・PRチームを作る』より抜粋・再構成しています)
【第3回講義のポイント】
●広報は無料でできるが、投資すればもっと上手くいく
●広報に向いている人材の資質をチェック
●広報が最大限機能するために、経営層ができること
●広報の評価は数値化できる。ただ、プロセス評価もしっかりと
第1回の講義内容はコチラ
第2回の講義内容はコチラ
広報マネジメントにおける6つの要点
今日は、広報部門のマネジメントにおける「6つの要点」をお伝えする予定です。基本的には、全てがゴールからの逆算で繋がっていくようにお話しできればと思っています。
それでは、広報のマネジメント手法について概要から説明していきましょう。マネジメントと言ってもさまざまな要素で構成されていますが、今回は「広報マネジメント」を6つのセクションに分けてみました。
【ポイント1】ゴールとミッションの定義
【ポイント2】予算の考え方
【ポイント3】組織体制の作り方/会議体の設定
【ポイント4】広報計画
【ポイント5】評価方法
【ポイント6】人材育成/スキルアップ
これらのテーマについて語ることで、経営者のみなさんが広報に対して抱く疑問や質問にお答えすることができるでしょう。というのも、「広報について気になる点」を問うアンケートを経営者の方々に実施した結果、この6点が頻出したトピックだったのです。
それでは、「ゴールとミッションの定義」からはじめていきましょう。ここは第1回の講義で話した内容と重複するので、第1回の記事もご覧ください(※第1回の記事はこちら)。広報の目標は、広報部門だけで決めるものではありません。言い換えれば、営業部やマーケティング部と同様に、企業全体の目標に沿って設定されるべきです。
例えば、今年度の売上目標が設定されていれば、営業部は受注数を、マーケティング部はリード獲得を、人事部はそれを実現するための採用人数を、それぞれの目標として追っていきます。そこで広報部門が何をするべきかと問われれば、各部門の活動を支えるアクションを担うことが多くなります。全社目標や各部門のOKRを踏まえた上で、広報部門が何をすべきかを決めていきます。
それを可能にするためにも、各部門が抱える目標や課題を理解し、広報としていかなるサポートができるか、どのように役割を分担できるか、という視点が求められます。ですから、広報の役割は単に情報を発信するだけではないことも強調しておきます。広報は組織の中心に位置しながら、広範なステークホルダー、情報を繋いでくれるメディア、そして社内の人々に至るまで、全てが守備範囲といって構いません。
広報が社内の情報を外部メディア、オウンドメディア、SNSを通じて社会に発信すること「だけ」に目がいってしまいがちですが、そうではありません。世の中で何が起きているか、ステークホルダーが何を考えているか、メディアがどのような情報を追っているかという外部情報の収集、さらには集めた情報を社内に適切に伝えるという“情報参謀”のような機能も担えます。社内で起きている出来事を適切に捉えて外部に発信できるようにストックする「社内広報」の部分も守備範囲です。
他の部門を支える役割を果たすためには、基礎活動としての情報収集や整理が必要になります。これらは他部門と連動しない機能として考え、目標に組み込むべきでしょう。
広報の業務効率化と効果の最大化には、予算が欠かせない
第2のポイントである「予算の考え方」ですが、広報の活動にはありがちな誤解があります。「広報は無料でできる、予算は必要ない」と言われたりもするのですが、いやいや、実際には広報活動にはしっかりと費用が発生します。
例えば、記者会見や勉強会の開催には、会場費や招待者への手配、出席者へのプレゼンテーション資料の準備など、さまざまなコストが発生します。また、企業が「リモートワークをしているビジネスマンの数」などを自社調べの資料として発表する場合にも、調査やデザインには費用がかかります。
さらに、コンテンツ作成やツールの運用として、プレスリリースは広報担当者が書くケースもあれば、制作量が多かったり時間がなかったりする場合に外部のライターへ依頼することもあります。オウンドメディアの運用、会社の説明資料(ファクトブック)の作成、SNSの運用も同様に外部パートナーと組むことがあります。
有償サービスであるプレスリリース配信サイトの利用料をはじめ、メディアクリッピングサービス、記事データベースなどの効率化ツールの使用にも、当然費用がかかります。外部から広報コンサルタントを招くケースもありますね。マーケと重複する部分もありますが、いわゆるペイドメディアに出稿する記事広告の掲載、イベントやブースへの出展なども、広報の費用として考えることができます。
情報収集のための費用も忘れてはなりません。業界紙の定期購読、オンラインの有料記事の閲覧、有償の外部講座や勉強会への参加、情報収集に関する書籍・資料の購入など、これら全てには費用が発生します。
これら全てが必ず必要というわけではなく、無償で行なえるものもありますが、業務効率を考慮すると、ある程度の予算を投じることが望ましいでしょう。具体的な金額や相場についてはここでは公開しませんが、それぞれの企業の状況によって必要な予算は変わってきます。一概には語れませんが、基本的には「ボトムアップ」、または「費用からの逆算」という考え方で予算を算出できます。
「ボトムアップ」は、まず戦略を立て、その上で必要な施策やスケジュールを設定し、必要な費用を積み上げていく方法。「費用からの逆算」は、会社が使える余剰資金や、製品の販促や採用強化といった目的に割り当てられる予算から逆算して、施策を考える方法です。この場合、全体のバジェットは固定されており、その範囲内でできることを優先度に応じて実施していく形になります。
スタートアップの場合は、特に予算やリソースが限られているので、その中で最大の成果を出すための施策を考えなくてはなりません。ド派手な施策を思いつくかもしれませんし、他社の例を見て模倣したくなるかもしれません。ただ、リソースが限られていることを念頭に置きつつ、最も効果的な施策を慎重に考えることが求められます。
また、広報の施策は定量的な成果が見つけにくいのも特徴的です。マーケティングの場合、リード獲得単価から逆算して予算を設定したり、特定の受注を得るためにかけられる金額といった概算が可能ですが、広報の場合はそうはいきません。投入した予算が成果に結びつく施策なのか、お金を払うに値するのか、といった点をシビアに見極める必要があります。
広報に向いている人材とは?重視すべき「広報の資質」
第3のポイントとして「広報組織の体制の構築」について、体制を形作る要素は大きく分けて3点あります。
- 組織内で円滑に情報収集できる体制の築き方
- 広報を推進する人選と役割
- 外部パートナーの選定と会議体の設定
まずは「広報をどの部門に配置すべきか」という問いがよく聞かれます。社長直属に置く、人事などと同様に管理部門へ置く、事業部門やマーケティング部門に置くといった例が多いでしょうか。配置先はケースバイケースで、どこでも構いません。広報に何を求めるか、どの部門と協調して欲しいか、という観点から決めれば良いと思います。
社員数が10人から15人ほどの小規模な時期には、広報として一人を社長直属に据え、採用強化時には人事部門の下に、製品を積極的に売り出すときにはマーケティング部門の下に付ける、といった柔軟性をもたせるケースもあります。広報の役割が広がり、広報のミッションや役割に応じて、人数も含めて体制を臨機応変に変えていきましょう。
「どんな人を広報にアサインすると良いか」ともよく聞かれます。私の見解では、求められる能力は主に3つあります。
- 社内の事情に通じていること。経営者の意向やビジョン、各部門の状況や課題、発信する情報のネタを把握している。
- 市場動向や競合の動き、業界トレンド、メディアの関心事、関連する時事ネタを把握し、自社に関連付けられること。
- 広報の実務スキルがあること。
優先度としては、1、2、3の順だと考えます。どうしてもノウハウや専門知識に焦点が当てられがちですが、まずは社内事情に詳しく、カルチャーフィットが高い人材でなければ成り立たない職務だと思っています。
広報の実務スキルについては、後から学べば十分に補えますし、場合によっては外部のパートナーに委託することも可能です。しかし、社内事情に精通してタイムリーに情報を取得したり、機微がわかったりすることは、外部のパートナーでは難しいことが多いのです。逆に言えば、スモールフェーズで外部パートナーと協力する場合は、社内の事情へ簡単にアクセスできるようにしたり、それを理解して行動に移せたりするようにすることが大事ですね。
組織体制の構築では採用も欠かせません。「人材をどこで探すべきか」という点については、他の一般的な職種と同じです。一般公募でもいいし、エージェントを介してもいいし、リファラルや社内での人事異動も選択肢に入れられます。
ただ、個人的な意見としては、リファラルや社内での人事異動が可能ならば、そちらの方がよりベターな選択だと考えます。広報の場合、スキルセットがブラックボックスであったり、職務評価が難しいことがあり、エージェントやメディアを通じた採用だけでは、どうしてもミスマッチが生じやすいと思っています。
採用で確認すべき事項としては、自社の事情をどれだけ理解しているか、そして学びたいという意欲があるかを見極めることです。例えば、「自社の製品発表があった場合に、どんなリリースを書くか、どんな広報計画を作るか」といったワークサンプルテストを行なってみる手もあります。社内に広報スキルを持つ人材がいない場合は、セカンドオピニオンとして外部の専門家に評価を依頼してもいいでしょう。
外部パートナーの選定には、経営陣の広報への理解がカギ
第3のポイントの続きで「外部パートナーの選択と、会議体の設定」についてさらに触れておきましょう。
広報に関わるコンサルタントやPR会社は、規模も得意領域もさまざまで、広報初心者や業界に詳しくない人からすると選択が難しいかもしれません。最初に考えていただきたいのは「広報業務のどの部分を任せるのか」です。一切の業務を任せるのか、社内で部門を立ち上げる際の支援を求めるのか、特定の業務だけを依頼するのか、といったことですね。
スポットで支援を頼むにしても、調査や戦略策定、メディアリーチ、危機管理、炎上対策といったように依頼できるポイントはさまざまです。広報業務の範囲と、事業との紐づけについて、経営陣が理解していなければなりません。
コンサルタントやPR会社の選択においては、規模や得意領域により各社の強みが異なります。大きな規模の会社であれば、対応できる業界や人材層が厚く、スポーツから医療、スタートアップ、グローバル対応といったオールラウンダー型といえます。一方で「医療系の広報に特化している」といった特定の領域に強い会社もあります。コストやスタイルもさまざまなので、外部に頼みたい場合は、異なるタイプのパートナーから見積もりを取ったり、一度話を聞いてみたりすることをおすすめします。自社との相性もありますからね。
外部パートナーが決まったら、会議体を設定しましょう。広報実務を円滑に進めるためには、定例会議をきちんと設計するのがおすすめです。広報業務の守備範囲が広がり、複数のプロジェクトや部門とのやり取り、人員やパートナーの増加に伴うほど、情報共有は難しくなります。目の前の作業に追われて大局観を忘れてしまったり、後から見ればもっとできたようなことを後悔することもあるでしょう。そのため、現状の把握と中長期的な判断のために、定期的に振り返る機会を設ける意味でも、定例会議は使えるのです。
広報実務はときに泥臭く、守備範囲が広く、多くの細かな作業の積み重ねであり、現場は目先のことに追われがちです。そのため、業務設計や効率化を図ってあげることも必要です。最近では、多くの作業がデジタルツールで簡素化できるようになり、PR会社が提供するPR業務全般を一元管理できるプラットフォームもあります。
最初のうちは、Google スプレッドシートやkintone、Salesforce、GoogleWorkPlaceなどのツールでカスタマイズを行なうことも可能です。このようなツールを活用して雑多な作業の効率化を図ることも、定期的に振り返って取り組んでいくといいでしょう。
広報計画は中長期視点からのプロットで決めていく
第4のポイント「広報計画」では、広報実務の中でも大切な部分ですが、実際に経験したことがある人は意外と少ないかもしれません。多くの人が見様見真似ではじめて、どのように進めて良いのかを学ぶところからスタートします。
ポイントとしては、広報だけでなく会社としてのイベントや業界全体の視点で予定を見越してプロットすることです。例えば、四半期ごとに区切って、世の中や業界でどのような出来事が起こりそうか、あるいは競合が明らかであれば、その動きも予測しておきましょう。
会社のイベントというものは、事業のローンチ、自社開催のイベント、人員計画、製品ローンチの予定、他部門の施策といった社内の出来事です。これに加えて、業界の法改正や大規模展示会、予測できる世の中の流れも含めて、わかる限りプロットしていくと、広報や会社全体として、社会に対してどのようなコミュニケーションを取るべきかを逆算しやすくなります。
例えば、第2四半期で新サービスの発表がある場合、既存顧客には先行して提供するためのコミュニケーションを取らなければならないでしょう。また、販売パートナーにも事前にレクチャーやトレーニングが必要になりますし、追加のパートナーを募集する必要も出てくるかもしれません。
大型のイベントが予定されているときにはリソースが足りなくなる可能性があるため、外部パートナーを検討することもあります。すぐにパートナーを加えても立ち上がらないと思えば、サービス発表から半年間はまずは同行してもらう、といった具体的な戦略を立てることもあります。
さらに、長期的に見て重要だけれども、緊急性は低いといったタスクもあります。例えば、定期的に調査リリースを出したり、メディアを集めて半年に一度勉強会を開催したりすることなどです。これらの活動は、日々の作業に忙殺されると見落としがちですが、計画の初期段階でこれらを盛り込み、忘れずに準備を進めましょう。
また、計画は四半期ごとに状況が変わるため、日々更新し、会議の中で変更に対する対策を考えることが必要です。このような計画があると、社内の他部門との調整や説明がスムーズになり、重要なタスクが急に発生したときの優先順位付けもしやすくなります。
永遠の課題である「広報の評価」はどのように数値化するか
第5のポイントである「評価方法」ですが……広報の評価は永遠の課題と言われています。関係者で集まって議論しても、なかなか答えが定まらないんですよね。
理由としては、広報の成果や役割が企業のフェーズや状況によって変わるからです。メディアで何回掲載されたか、SNSでどれだけバズったか、といったアウトプットは大切ですが、それらの結果が、目指すべきアウトカム(※結果や成果)に繋がっているかが問題です。
現状では、評価方法としては、数字で表すことができる指標を用いる取り組みが行なわれてきました。メディアへのリーチ数、取材を受けた件数、ウェブサイトへの流入や問い合わせ数、売上や株価への影響、検索ランキングの変動、特定のキーワードからのウェブサイトへの流入、一般消費者に対する認知度の上昇など、さまざまな指標があります。これらはあくまで指標の一つであり、広報活動の全てを反映しているわけではありません。
広報の評価方法として、営業やマーケのように、プロセスでしっかり切って、中間指標を目標とすることもできます。広報の業務プロセスを「分解」すると、結果的に業務の解像度が上がり、結果、各プロセスごと評価することも可能になるのです。露出数だけが、広報の評価ではない、ということは強くお伝えしておきたいところではありますね。
さて話を戻して。広報活動の評価に関しては、メディア露出の分析も大切になってきます。これも露出がどれだけあったのかという「結果だけ」を見るのではなく、その露出一つひとつについて、さまざまな角度から分析して評価しなくてはなりません。
例えば、露出があったメディアがターゲットとしたい相手に適切にマッチしているか、自分たちの意図するタイミングで露出できているか、記事の内容が自社の中身を理解して書かれているのか、自分たちが主役となっているのか、記事の調子がポジティブかネガティブか、記事のボリュームはどの程度か……といった要素を見て、それぞれに点数をつけるという方法もあります。「これらの要素を各3点満点で評価し、合計18点満点とする」と決めるのもいいですね。高得点を取った露出ならば質の高い露出と評価できますから。
こういった積み重ねで、漠然とした露出への評価ではなく、より積み上げ式での評価が可能になってきます。業界が盛り上がっていて記事に載ることは多いが、主役ではなく脇役としてしか自社が出てこない場合は、自分たちが主体となるような露出をどうすればいいかが考えられます。記事は増えても技術や自社の主張を正確に理解して書かれていないと感じるならば、取材の事前レクチャー会を実施して、社長自ら語ってもらい、理解を深めてもらうなどの対策を考えるべきです。
また、デジタルマーケティングを行なっている方からすれば、ウェブのアクセス解析やSNSの状況分析は広報の評価にも繋がると言えます。サイトへの指名検索数、SNS上での自社サービスやカテゴリーに対する話題の増加、サイトへの流入数などを評価に生かすこともできるでしょう。昔はデジタルマーケティングと広報の連携はあまり見られませんでしたが、最近ではその重要性が認識されて、両者が協力するケースも増えていますね。
人材育成では先行事例から有用な学びを得よう
最後に、「人材育成/スキルアップ」について説明します。よく受ける質問は「スキルの育成」や「経営マインドや事業理解の高まり」についてです。
経営や事業を理解するためには、経営者が投資家向けにする説明を聞いてみると良いでしょう。あるいは、広報が新卒採用や中途採用の事業説明をしっかりと理解し、自分自身でも説明できるようにするやり方もあります。
現場を理解するためには、インサイドセールスや営業の現場を体験したり、CS(カスタマーサポート)の現場に立ってみたりすることが有効です。もし、提携先や販売パートナーがいる場合は、それらの方々と意見交換したり、打ち合わせに参加したりして、なるべく現場を直接見て、理解を深めていく機会を意図的に持っていくといいでしょう。
スキルの育成については、昨今では情報が増えているので詳しくは触れませんが、3つのポイントについて簡単にご紹介します。
1つ目は、ニュースを読むことです。メディアや世の中で何が話題になっていて、どのように取り上げられているのかを理解し、自社がどのように扱われるかを常にシミュレートすることが大切です。
2つ目は、ベンチマークとなる会社の動向を学ぶこと。例えば、私がSansanにいたときはOracleやサイボウズ、Salesforceの動きを参考にしていました。同様の業界で先行している会社や、コミュニケーションが上手な会社から学ぶことは有効です。
事業としては競合ではないけれども、同じ人たちにアプローチしたいと思っている先行事例を学ぶのもいいです。私がSansanでビジネスパーソン向けのアプリとして「Eight」を出そうとしたときに、日経電子版の会員数が非常に伸びていたので、同社の事例をよく観察していましたね。
3つ目はコミュニティ活動です。業界団体や広報勉強会など、広報の人たちが集まる場に参加することで、情報交換ができたり、先輩たちと悩みを共有できたりするのでおすすめです。昨今はオンライン開催もありますから、レベル感や業界が合うところなら積極的に顔を出してみてもいいでしょう。
今回の講義で、広報マネジメントの要点は大まかにでもお伝えできたのではないかと思います。繰り返しになりますが、広報に何を期待するのか、広報機能に求めるものは何かを明確にした上で、どのように動かすべきか、どのようなリソースを提供するべきかを考えることが肝心です。
スタートアップの場合、目標が変わりやすい場合もありますが、ブログを書いたり、プレスリリースを書いたりというところからはじめて、その中で目標を設定し、プロセスを設計するという発想で進めていくと良いのではないかと思います。