「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!
世代を超えたAIファースト企業を創るカギとなるデータソースとデータMoat
Bessemer Venture Partners「Six imperatives for AI-first companies」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
現在のAIを中心とする企業では、「OpenAI」や「Perplexity」のようなホリゾンタルなアプリ開発を行うスタートアップが主流です。しかし、今やAIと大規模言語モデルの進化により、ヘルスケア、ライフサイエンス、リーガルなど、これまで解決が難しかった複雑な業界の課題にも、テクノロジーが浸透しつつあります。こうした複雑な業種や業界では、特化型のプラットフォーマーがより大きなインパクトを与える可能性を秘めているのです。
では、業種・業界に特化したプラットフォーマーが成功するためには、どのような『データ戦略』が求められるのでしょうか?本記事では、持続可能なAIファースト企業が採用するデータ戦略について、BVPの見解を解説しています。ここでは、この中で特に重要な6つのデータソースと、データの競争優位性・Moatを保つための5つのポイントについて要約します。
- AIファースト企業が活用する6つのデータソース
- パブリックデータ:自由にアクセスでき、一般公開されているデータ
- 顧客生成データ:ユーザーがプロダクトやサービスと、インタラクションして作成したデータ
- デザイナーデータ:特定のAIタスクのためにカスタマイズされた、一般にはなかなか入手できないカスタムデータ
- 合成データ:シミュレーションや統計モデルによって生成された、実データを模倣した人工的なデータ
- アノテーションデータ:メタデータまたはラベル付けでコンテキストを追加されたデータ
- 人間によるフィードバックデータ:強化学習モデルで使用される、人間のフィードバックから得られたデータ
- データの競争優位性・Moatを保つための5つのポイント
- スケーラビリティ:大規模なモデルトレーニングに十分なデータアセットを蓄積することが可能か?
- 継続性:データセットは時間の経過とともに再サンプリングが可能か?
- 簡便性:データにどれだけ簡単にアクセスできるか?
- 適合性: データは与えられたモデルやタスクに関連、または適しているか?
- 多様性:データは将来起こりうる現実世界のシナリオを適切に反映しているか?
SaaSにおけるセールスとリーダーシップの未来
SaaStr「Generative AI’s Act o1」の動画の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
このエピソードでは、ZoominfoのCEOであるHenry Schuck氏とSaaStrのCEOであるJason Lemkin氏が、「SaaS業界におけるセールス、リーダーシップ、プロダクト開発の進化する状況」について議論しています。ここで興味深かったのは、AIの影響、強力なマネジメントチームの構築の重要性、ビジネスをスケールするための戦略が強調されている点です。以下に主なハイライトになります。
- AIがセールスチームに与える影響
セールスやカスタマーサポートにおけるタスクを自動化するために、AIがますます利用されています。AIは、大規模なチームの必要性を減少させる可能性がありますが、その統合はまだポストセールスの役割ほど進んでいません。しかし、リーダーが透明性と効率性を向上させる機会は提供できているでしょう。 - 強力なマネジメントチームの構築
創業者にとって重要な課題は、有能なマネジメントチームを組織することです。「高パフォーマンスのチームを採用して維持していく能力」は、ビジネスをスケールするためには不可欠。会社が成長するにつれて、創業者は複数回チームを再構築する準備が必要でしょう。 - マルチプロダクト戦略の重要性
スタートアップの成長フェーズの初期段階で、「マルチプロダクト戦略」を採用することが奨励されます。このアプローチは収益源を多様化し、単一プロダクト企業としてのリスクを軽減します。 - 採用とチーム開発
効果的な採用は、企業の成功に不可欠です。創業者は他の優れた人材を引き寄せる “Aプレイヤー” を採用することに焦点を当てるべきです。また、既存のチームメンバーを育成することも重要であり、特にリソースが限られているブートストラップ企業では不可欠となります。 - セールスチーム拡大の課題
企業が成長するにつれて、セールスモメンタムを維持することが課題となってきます。リーダーは、常にチームのパフォーマンスを評価し、成長を続けるために必要な変化を起こす準備が必要です。 - セールスにおけるプロダクト専門知識の役割
セールスチームは、顧客と効果的に関与するために自社プロダクトについて深い理解を持つ必要があります。この専門知識は信頼を築き、顧客関係を強化します。 - 生産性向上におけるAIの役割
GitHubのCopilotなどのAIツールは、ソフトウェア開発において大幅な生産性向上を示しています。同様の進展がセールスにも期待されており、AIはプロセスを合理化し効率性を向上させます。 - 投資家期待への対応
創業者は、採用決定について投資家から圧力を受けることがあります。創業者は自分の直感を信じ、時には適切な人材を採用するために反論する姿勢を持つことも重要です。 - 内部昇進の重要性
内部昇進は、士気維持とトップタレント保持に有益です。また、チームメンバーが会社のカルチャーや目標に精通していることも保証できます。 - 顧客インサイト獲得におけるAI活用
AIは、顧客行動や嗜好について貴重なインサイトを提供し、高潜在顧客アカウントを優先し、それに応じたセールス戦略を立てることが可能になります。 - セールスリーダーシップの進化
AIがセールスプロセスにより統合されるにつれて、リーダーは日々の業務管理よりも「戦略的意思決定」に集中する必要が出てきます。 - 市場動態の理解
企業は、新しいセグメントへの参入によって「市場プレゼンス拡大」への意欲を持つべきです。最初は、ディール損失も伴うかもしれません。でも、この戦略は時間とともに全体的な市場シェア増加につながります。 - プロダクトデモンストレーションの価値
プロダクト能力を効果的にデモンストレーションすることは、ディール成立には不可欠です。セールスチームは自社プロダクトがどのように顧客問題を解決するかについて熟知しているべきです。 - 効率と成長のバランス
経済的困難時には、企業はコア市場に集中しつつ将来の拡大計画も立てていく必要があります。このバランスによって短期的安定性が確保されながら長期的成功への道筋が整えられます。 - ビジョナリーリーダーの採用
成功した企業には、しばしば未来への明確なビジョンを語れるリーダーがいます。これらリーダーは、自信と革新性推進力となり組織内でイノベーションを促進します。
[海外]
エンタープライズ
- Decagon - データの取得、アクションの実行、会話のレビューなど、顧客とのやり取りを最初から最後まで管理する、カスタマーサポートAIエージェント。シリーズBで$65Mを調達。投資家はBain Capital Ventures、Accelなど(Yahoo! Finance)
- Galileo - 2024年に売上834%で急成長している、エンタープライズの利用する生成AIの評価・監視を支援するSaaS。シリーズBで$45Mを調達。投資家はScale Venture Partners、Premji Investなど(Yahoo! Finance)
- Neuron7.ai - 「Mistral」のようなオープンソースの言語モデルを使用して、複雑なカスタマーサービス業務の自動化を支援するAI。シリーズBで$44Mを調達。投資家は元Salesforce.com co-CEO Keith Block氏が設立したVC Smith Point Capital、Nexus Venture Partnersなど(TechCrunch)
- Port - 企業のDevOps需要の高まりを背景に急成長する、企業内の開発者向けポータルサイト構築支援SaaS。シリーズBで$35Mを調達。投資家はAccel、Bessemer Venture Parntersなど(CTech)
- Everstage - 企業内の営業パフォーマンスや販売手数料の管理を自動化するSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はEight Roads Ventures、Elevation Capitalなど(Silicon Angle)
- Numeric - 経理チームの月次決算作業を数日短縮できる、会計自動化AI。シリーズAで$28Mを調達。投資家はMenlo Ventures、IVPなど(TechCrunch)
- Monogoto - IoTデバイスのネットワーク接続をオンデマンドで対応するConnectivity as a Service。シリーズAで$27Mを調達。投資家はToyota Ventures、Samsung Nextなど(TechCrunch)
- Capacity - 生成AIを使用してチケット、電子メール、電話対応などのサポート業務自動化プラットフォーム。シリーズDで$26Mを調達。投資家はTVC Capital、Toloka.vcなど(FinSMEs)
- Omnea - 企業のソフトウェア・ハードウェアの購買ワークフローを自動化するSaaS。シリーズAで$20Mを調達。投資家はAccel、Point Nine Capitalなど(TechCrunch)
- Autone - AIを活用した在庫管理・最適化プラットフォーム。シリーズAで$17Mを調達。投資家はGeneral Catalyst、YCなど(The SaaS News)
- Agency - すべての顧客コミュニケーションと顧客データを一元管理し、スケジュール管理、フォローアップ、議事録作成、オンボーディングを支援するカスタマーサクセスAI×SaaS。シードで$12Mを調達。投資家はSequoia Capital、HubSpot Venturesなど(FinSMEs)
バーティカル
- Vanilla - 資産運用アドバイザー業特化のクライアントの資産設計・文書作成を支援するSaaS 。シリーズBで$35Mを調達。投資家はInsight Partners、Venrockなど(WealthManagement.com)
- Agtonomy - 農業や土地管理業務特化のAI自動化SaaS。シリーズAで$32.8Mを調達。投資家はAutotech Ventures、Rethink Foodなど(Yahoo! Finance)
ヘルスケア
- Suki - 医者と患者のためのAIアシスタント。シリーズDで$70Mを調達。投資家はHedosophia、Venrockなど(Reuters)
サイバーセキュリティ
- DeNexus - 製造業の特性に合わせた、エンドツーエンドのサイバーリスク管理。シリーズAで$17.5Mを調達。投資家はPunja Global Ventures、AXA XLなど(Fintech Global)
フィンテック
- Tebi - Adyen創業者/元CTOが設立した、モバイルファーストの予約、在庫管理、QR注文、貴重、POS統合、決済を提供するFintech×SaaS。ユーザーの財務データを一元管理。シリーズAで€20Mを調達。投資家はIndex Venturesなど(Fintech Futures)
その他
- CoreWeave - NVIDIAも出資するGPUレンタルAIスタートアップ。JP Morgan、Goldman Sachsなどから$650Mの融資枠を獲得(CNBC)
- Gladia - どんな音声ファイルでも高い精度と短い納期でテキストに変換できる、フランス発の音声認識・音声テキスト化モデルのAPI。シリーズAで$16Mを調達。投資家はXAngeなど(TechCrunch)
- Dottxt - AI が既存のソフトウェア エンジニアリングのワークフローに適合しない課題を解決する構造化生成ソリューション。プレシードとシードで$11.9Mを調達。投資家はEQT Ventures、Elaiaなど (TechCrunch)
M&A
- Silver LakeとGICが米上場SaaS企業Zuoraを$1.7Bで買収し、非公開化(Reuters)
- 米上場SaaS企業 Amplitudeがアプリユーザーのエンゲージメント向上AIを提供するCommand AIを買収。買収金額は$45M超(TechCrunch)
- 決済Fintech×SaaS大手Stripeが、ステーブルコインでグローバル決済取引を簡素化するFintech企業Bridgeを$1Bで買収する交渉を実施(Silicon Angle)