「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!
データから見る2024年のエンタープライズAIの現状
MENLO VENTURES「2024: The State of Generative AI in the Enterprise」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカトップVCの1社Menlo Venturesが、企業内のIT導入の意思決定者600人へのサーベイの結果から、企業の生成AI活用の現状をまとめたレポート。
- 企業のAI投資の状況は?
- AI投資額が2023年の23億ドルから2024年には138億ドルに急増
- 意思決定者の72%がAIの更なる普及を予想
- 資金の60%がイノベーション予算から、40%が公休的な予算から支出
- 企業での主な活用事例トップ5は?
- コードコパイロットが51%の採用率でトップ
- サポートチャットボットが31%で続く
- 次いで、企業内検索/検索機能28%、データ抽出27%、AI議事録24%の採用率
- AIインフラとモデルの選定状況は?
- 企業は通常3つ以上の基盤モデルを使用
- クローズドソースソリューションが81%のシェアで優位
- OpenAIのシェアが50%から34%に低下
- 一方でAnthropicのシェアが12%から24%に倍増
- 部門別でのAI支出状況は?
- 技術部門が主導しており、IT(22%)、プロダクト/エンジニアリング(19%)、データサイエンス(8%)
- 顧客対応部門とバックオフィス部門で残りを分配
- すべての部門でAI投資が見られる
- 業界別の導入状況は?
- ヘルスケアが5億ドルの企業支出でトップ
- 法務が3.5億ドルで続く
- 金融サービスとメディア/エンターテインメントがそれぞれ1億ドル
- 業界特有のソリューションへの注力が増加
- 現状のAI実装パターンは?
- RAG(検索拡張生成)が51%の採用率で主流
- 本番環境のモデルのうち、ファインチューニングを使用しているのは9%のみ
- エージェントアーキテクチャが台頭し、12%の実装で採用
- 自社開発と外部調達がほぼ同率(自社開発47%、外部調達53%)
- 企業のAI活用の主な課題と今後の見通しは?
- 実装コスト(26%)とデータプライバシー(21%)が主要な課題
- 人材不足が深刻化し、給与が2-3倍のプレミアムに
- 今後、既存企業の多くは、AIネイティブな新興企業による破壊的イノベーションの影響に直面する状況になる見通し
バーティカルエージェントの未来
Y CombinatorのYoutube「Vertical AI Agents Could Be 10X Bigger Than SaaS」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Y Combinatorのパートナーであるガリー・タン、ジャレッド・フリードマン、ハージ・タガー、ダイアナ・フーによる、バーティカルAIエージェントの新たなトレンドとその可能性についての議論です。このトレンドは、かつてのSaaS革命のように、数千億ドル規模の企業価値を生み出す可能性を秘めています。以下が要点となります。
- SaaSからバーティカルAIエージェントへの進化
従来型ソフトウェアからSaaSへの移行は、2004年のXML HTTPリクエストによって実現され、Webブラウザでリッチなインターネットアプリケーションが可能になりました。同様に、LLMは新しいコンピューティングパラダイムを表し、企業内の entire チームや機能をAIエージェントで置き換えることを可能にしています。この進化は急速で、単純なテキスト生成から高度なバーティカルAIソリューションへと、わずか2年で進展しました。 - 市場規模と機会
YCのパートナーたちは、300以上のバーティカルAIエージェントのユニコーン企業が出現し、3,000億ドル以上の価値を持つ企業が生まれる可能性があると予測しています。過去20年間、ベンチャーキャピタルの投資額の40%以上がSaaS企業に向けられ、300以上のユニコーン企業を生み出しました。バーティカルAIエージェントは、ソフトウェアコストと人件費の大部分を置き換えることができるため、さらに大きな市場となる可能性があります。 - 販売戦略と実装
バーティカルAIの成功には、自動化される可能性のあるチームではなく、より上位の経営幹部への販売が必要です。自動化される可能性のあるチームに直接販売することは抵抗を生むため、避けるべきです。このアプローチはトップダウンで行われ、多くの場合、実装にはCEOの承認が必要となります。 - 基盤モデルにおける競争
OpenAIの初期の優位性から、Claudeなど複数の競争力のあるプレイヤーを含む状況へと進化し、より豊かな市場エコシステムが形成され、消費者の選択肢と起業家の機会が広がっています。この競争が技術革新と改善を促進しています。 - AIアプリケーションの進化
2023年初期のAIアプリケーションは、シンプルなテキスト生成やコピー編集に焦点を当てていました。現在では、医療請求、政府契約入札、カスタマーサポートなどの複雑なタスクを処理できる高度なAIエージェントを構築する企業が現れ、急速な能力の進化を示しています。 - 企業構造への影響
AIエージェントは、従来の企業スケーリングモデルを大きく変える可能性があります。企業の成長に伴って数百から数千人の従業員を雇用する代わりに、AI自動化によってリーンな組織を維持できるかもしれません。将来のユニコーン企業は、わずか10人の従業員で運営される可能性があるとの予測もあります。 - バーティカル特化
バーティカルAIの成功には、特定の業界や機能に関する深い専門知識と集中が必要です。汎用的なソリューションは、特定のビジネスニーズに合わせた高度に専門化されたバーティカルソリューションと比較して、成功の可能性が低くなります。 - 市場参入戦略
最大の機会は、自動化できる退屈で反復的な管理業務を見つけることにあります。起業家は、特定の業界における直接的な経験や人脈を活用して、これらの機会を見出すべきです。 - カスタマーサポートの進化
多くの企業がAIカスタマーサポートを提供していると主張していますが、ほとんどがシンプルなゼロショットLLMプロンプティングを提供しているに過ぎません。カスタマーサポートチームの真の置き換えには、複雑なワークフローを処理する高度なソフトウェアが必要で、これは重要な市場機会を示しています。 - 音声AIアプリケーション
音声AIは急速に進歩し、自動化された回収コールやカスタマーサービスなどのアプリケーションを可能にしています。Salientのような企業は、銀行やFintechサービスにおいて音声AIソリューションを成功裏に展開しています。 - 統合における課題
従来のSaaSソリューションとは異なり、バーティカルAIエージェントはソフトウェア機能と人的ワークフローの両方を処理する必要があり、より複雑ですが、潜在的により価値が高くなる可能性があります。 - コスト構造の変化
バーティカルAIエージェントを採用する企業は、ソフトウェア費用と人件費の大部分を置き換えることで、運用コストの劇的な削減を実現できる可能性があります。 - 市場のタイミング
YCのパートナーたちは、バーティカルAIの発展は「第一イニング」の段階にあり、統合の可能性が生じる前に、専門化とバーティカル特化型ソリューションに massive な機会があると示唆しています。
高い解約率(Churn)の状況で何をすべきか?
SaaStr「What To Do In a High Churn Environment」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStrのブログより、基本的に、月次解約率が3%を超えてしまうとリカーリング性のある収益とはみなすことが難しい。一方で高い解約率の状況の中でどのような打ち手が考えられるかについて解説されています。
- この解約率に適応する
非常に高い解約率はVSB/SMB市場で生き残ることができるが、CACは非常に低くなければユニットエコノミクスが成立しない。そのためにはブランディングを構築し、継続的にリード数を増やす必要がある。 - 段階的な削減を目指す
製品をより良くし、同じ価格帯でより機能を追加し、サポートやカスタマーサクセスを向上させることで、20%-30%改善させることができる。 多くの SaaS 企業は、オンボーディング中に有料顧客の 10% ~ 20% を失うため、オンボーディングの改善も効果的。 - アップマーケットを目指す
エンタープライズに近い領域でGTMし始めるとすぐに、解約率を下げます。これには、製品を進化させたり、さまざまな機能を構築したりすることも必要で、強いコミットメントが求められる。 - マルチプロダクト化
特にMid-SMBマーケットにおいて、これが究極の答えとなり、段階的な改善と組み合わされます。HubSpotは、最初にマーケティングオートメーションをリリースし、後にCRMを追加することで、マルチ製品になるまで、実際には100%のNRRに到達しなかった。
[海外]
エンタープライズ
- Odoo - ベルギー発の中小企業向けのビジネスアプリの統合スイート。評価額€5Bで€500Mを調達。投資家はCapitalG、Sequoia Capitalなど(Tech.eu)
- Kong- APIファーストを支援しAI活用を支援するクラウドAPI SaaS。シリーズEで$175Mを調達。投資家はTiger Global、Baldertonなど(FinSMEs)
- Spectro Cloud - 難しいKubernetesの管理をオンプレミス、マルチクラウド、エッジの各環境で動作するSaaS。シリーズCで$75Mを調達。投資家はGoldman Sachsなど(TechCrunch)
- Lightning AI - AIアプリケーションやシステムを構築するためのコラボレーション開発SaaS。$50Mを調達。投資家はCisco Investments、JPMorganなど(Silicon Angle)
- Roboflow - エンタープライズ向けの汎用ビジョンAI。シリーズBで$40Mを調達。投資家はGV、Craft Venturesなど(Yahoo! Finance)
- SuperAnnotate - ローカルソースとクラウドからデータを接続し、データプロジェクトを共同で作成、モデルのパフォーマンスを比較点デプロイすることができるAI×SaaS。シリーズBで$36Mを調達。投資家はSocium Ventures、NVIDIAなど(TechCrunch)
- Selector AI - 複雑なネットワーク、インフラ、アプリケーションの可視化を可能にするAIOps SaaS。シリーズBで$33Mを調達。投資家は、など(BusinessWire)
- Lightyear - 1000社以上のネットワーク・プロバイダーと連携し、企業のネットワーク調達の相見積もり・在庫管理・請求書払いを支援するSaaS。シリーズBで$31Mを調達。投資家はAltos Ventures、Ridge Venturesなど(TechCrunch)
- Conduktor - 「不良データ」が下流のアプリケーションを汚染するのを防ぐデータマネジメントSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はRTP Global、Accelなど(TechCrunch)
- Minu - 従業員の経済的、身体的、精神的ウェルネスを改善するためのウェルネスSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はQED、Endeavor Catalystなど(Fintech Global)
- Distyl - 企業がAI投資の効果を最大化できるように、OpenAIの技術をシームレスに統合することを可能にするSaaS。シリーズAで$20Mを調達。投資家はLightspeed Venture Partners、Khosla Venturesなど(Yahoo! Finance)
バーティカル
- Lighthouse - 旅行・ホスピタリティー業界向け商業インテリジェンスSaaS。シリーズCで$370Mを調達。投資家はKKR、Eight Roads Venturesなど(BusinessWire)
- Federato - 保険会社がリスクをよりよく理解・対応することを支援するAI。$40Mを調達。投資家はEmergence Capital、Pear VCなど(TechCrunch)
- Magma Math - 幼稚園から高校までの教師が時間を節約しながら、優れた数学教育を行えることを支援するSaaS。シリーズAで$40Mを調達。投資家はFive Elms Capitalなど(Yahoo! Finance)
- EarthOptics - 農家向けに土壌の化学的、物理的、生物学的特性に関する実用的なインサイトを提供するSaaS。シリーズで$24Mを調達。投資家はConti Ventures、The Production Boardなど(FinSMEs)
- Snap Mobile - 教育機関の寄付集めオペレーションのオール・イン・ワンSaaS。グロースラウンドで$23Mを調達。投資家はRunway Growth Capital(Fintech Global)
- Apaleo - ホテルチェーンなどの商業施設向けマルチプロパティ・マネジメントSaaS。グロースラウンドで€20Mを調達。投資家はPSG Equity、FOMCAP IVなど(Yahoo! Finance)
- Revv - 自動車修理業向けに複雑な修理手順をシンプル化し、修理工場の収益性改善を支援するSaaS。$20Mを調達。投資家はLeft Lane Capital、Soma Capitalなど(Yahoo! Finance)
- BrightAI - センサーを使って企業が物理的資産を監視することを支援するAI。シードで$15Mを調達。投資家はUpfront Venturesなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- Cyera - AIファーストのデータセキュリティSaaS。シリーズDで$300Mを調達。評価額は$3Bで、7か月前のシリーズCの2倍超。投資家はAccel、Sappphire Venturesなど(Crunchbase News)
- Prompt Security - 生成AIならではのサイバー脅威から企業を守るSaaS。シリーズAで$18Mを調達。投資家はJump Capital、Hetz Venturesなど(CTech)
- Twine - ID管理業務を学習、理解し、負担を軽減するサイバーセキュリティ特化AIエージェント。シードで$12Mを調達。投資家はTen Eleven Ventures、Dell Technologies Capitalなど(Yahoo! Finance)
フィンテック
- Goodstack - NPOが寄附集めをするために、APIを通じた認証や決済を提供するFintech×SaaS。シリーズAで$28Mを調達。投資家はGeneral Catalyst、Morpheus Venturesなど(Tech.eu)
フィンテック
- Medeloop - 医療研究プロセス特化の自立型AIエージェント。シリーズAで$15.5Mを調達。投資家はInovia Capital、Icon Venturesなど(Global Newswire)
その他
- Flipturn - 電気自動車の充電器と車両管理SaaS。シリーズAで$11Mを調達。投資家はCRV、Accelなど(Flipturn)
[国内]
- UPSIDER - 法人カード「UPSIDER」、請求書カード払いサービス「支払い.com」などを提供。シリーズDラウンドにてエクイティ55億円、累積デット調達99億円を含む、総額154億円の資金調達を実施。グローバル・ブレインおよびテンセントが共同リード投資家(PR Times)
- LIGHTz - 「汎知化」技術を活用したナレッジ共有プラットフォームの開発、並びにスペシャリスト思考の「技術伝承AI」の提供と実務適用支援。プレシリーズBラウンドでの8.9億円の資金調達を実施。本ラウンドはオルガノ、東京貿易ホールディングス、商工組合中央金庫、事業会社2社と金融機関1行が参加。(PR Times)
- NEL - 自社ECや会員アプリなどデジタル上での体験から、店内行動の把握やデジタルサイネージなど店舗上での体験を一気通貫でサポート。シリーズBで合計6.5億円の資金調達を実施。投資家は三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、オリックス・キャピタル、ベクトルなど国内の投資家 計7社(PR Times)
- MUSVI - ソニーグループ株式会社での20年にわたる技術開発に基づき、圧倒的な臨場感と遅延感のなさで対面同等のリアリティを実現した遠隔コミュニケーションのシステムを提供。シリーズAファーストクローズで資金調達を実施。累計資金調達額は6.1億円。投資家はスパークス・アセット・マネジメント(PR Times)
- Pathfinder - MaaS社会の実現に不可欠な最適配置アルゴリズムを開発・運用。本政策金融公庫、商工中金、足利銀行からデット計1億円調達をし、プレシリーズAでの追加資金調達を完了。(PR Times)