本稿は、元PayPal COO、元Yammer 創業者兼CEOで、現Craft Ventures創業者David Sacks氏によるブログより許可を得て翻訳し、見出しを追加したものです。
スタートアップはスピードが命。けれど、組織が一定の規模を超えてくるとオペレーションは煩雑になり、スピードを維持する難易度が上がってきます。そこで、David Sacksの実践が参考になります。
彼がPayPalでもYammerでも用いた経営哲学「ケイデンス」は、マーケティング、ファイナンス、セールス、プロダクトが連携しあい、最大限のオペレーションでアウトプットを出せるように目標と報告の”ケイデンス(=リズム)”を作る仕組み。
このリズムによって、マネジメントの工数を減らせるのと同時に、それぞれのオペレーションで目標を達成しやすくなります。特に組織が急拡大しているSaaSスタートアップ経営者にとっては、大きなヒントになることでしょう。
スタートアップ組織の“混乱”は「ケイデンス」で解決できる
現実を直視しよう。ほとんどのスタートアップ企業はお粗末な有様だ。
おそらくプロダクトマーケットフィットの基本的なレベルを達成した後に、最も蔓延している問題は、急速な成長の結果として生じる「組織の混乱」の管理にある。資金を調達して、チームを急速に拡大させる「シリーズA〜C」にいるスタートアップにとっての慢性的な課題だ。
この期間、スタートアップの「成長痛」は、創業者と取締役会がともに「僕たちにはCOOが必要だ!」と叫ぶほど、最高潮に達する。
スタートアップのどの潜在的な問題とも同じように、完璧な雇用でその問題を解決することは可能だが、より直接的なルートは、単に自分自身で解決することだ。そして、その方法はスタートアップを事業の「ケイデンス」に乗せることである。
ケイデンスとは、私がPayPalのCOO(いわゆる「PayPalマフィア」創業時代)として最初に学んだ経営哲学であり、その後、Microsoftが2012年に12億ドルで買収したYammerの創業者/CEOとしてSaaSに導入したものだ。今日に至るまで、YammerはSaaSスタートアップの中で最も早くユニコーンからイグジットした企業であり、その成功の多くはケイデンスのおかげでもある。なにせ、4年間で従業員数は500人近く、年間売上5600万ドルにまで拡大できたのだから。
ケイデンスは、従業員を50人から500人に拡大する際に、最も必要とされる。スタートアップの運営方法に重要な変化が必要とされるときといえる。
それまでは、全社員が(物理的にも仮想的にも)一つの部屋に収まり、他の社員が何に取り組んでいるかを全員が把握しており、創業者は何を作って何をすべきかを簡単に指示して回ることができただろう。
しかし、従業員が50人前後になると、このアプローチではスケールしなくなる。そこで、組織図を営業、マーケティング、カスタマーサポート、その他の機能のサイロに分割し、開発プロセスを指導するためにプロダクトマネージャーを採用する。
これらの新たな階層は、組織に「区画化」と「断絶の感覚」をもたらす。一方で、役職の一部ではリーダーシップの欠如により、混乱が生じる。断絶と無秩序はカオスを意味する。皮肉なことに、スタートアップの業績が良ければ良いほどカオスが発生する。これは、成長では解決できない数少ないスタートアップの問題の一つであり、さらに実際の原因は成長そのものなのだ。
なぜ、ケイデンスは必要か?前提となる「4つの洞察」
ケイデンスは、SaaSスタートアップの主要な職務を同期し、チームが足並みを揃えて連携するように設計されている。ケイデンスはカオスに秩序をもたらし、混乱した状況を軍隊に変える。
断絶された領域をまとめて、何が起きているのか、何に取り組むべきなのかを全員が理解できるようにする。不規則な発売日や販売目標を、出荷や販売の具体的なマイルストーンに置き換える。これらのマイルストーンを四半期ごとに達成することで、会社の成績とその文化に大きな複合効果をもたらす。
では、ケイデンスとは何か? これは、いくつかのシンプルな洞察に基づいている。
- まず、SaaSスタートアップの主要機能であるセールス、ファイナンス、プロダクト、マーケティングは、すべて四半期ごとのサイクルで運営されるのがベストである。
- しかし、4つの機能のサイクルは異なる。セールスとファイナンス、プロダクトとマーケティングは別のカレンダーで進行する。私はこれらをセールス・ファイナンスシステム、プロダクト・マーケティングシステムと呼ぶ。
- これらの2つのカレンダーを1つにまとめれば、会社を集約的に運営するケイデンスができあがる。
- これらのシステムにおける重要なマイルストーンやイベントは、組織の上位構造のようなものである全社的コミュニケーションやコラボレーションの機会を生み出す。
ケイデンスは、すべてのスタートアップ企業が利用できるシンプルなアプローチだが、実際に利用している企業はほとんど存在しない。
以下に、それぞれの職務を説明し、それらがどのように適合するかを説明していこう。
SaaS型スタートアップにおける重要な2つのシステムは、「セールス・ファイナンスシステム」と「プロダクト・マーケティングシステム」である。これらを同期させることで、業務のケイデンスが生まれる。
「セールス・ファイナンスシステム」は、どのように成り立つか
まず、セールスとファイナンスは、カレンダーが最初に連携する機能だ。
セールスカレンダー
すべてがその場しのぎである初期のスタートアップにとって、四半期ごとの書面化された営業計画への移行で、セールスチームの士気は瞬く間に向上する。一方で、ノルマやテリトリーが絶え間なく変更されると、セールスチームの士気は低下する。
予測可能な四半期ごとのサイクルでチームを動かすことで、シュートを決めるための「ゴールポスト」の位置が変わることはないという自信が生まれる。
では、なぜ四半期ごとが適切なテンポなのだろうか?
年間ノルマは、スタートアップ企業のパフォーマンスを判断するには遅すぎ、中途での調整が難しい。対照的に、月次売上高は変動が激しく、個々の営業担当者に月次ノルマを課すことはできない。スタートアップが非常に迅速で予測可能なセールスサイクルを持っていない限り、四半期単位のノルマが最適である。
セールスが四半期計画に基づくようになったら、セールスリーダーは四半期内に一連のマイルストーンを作成できる。すべての四半期は、セールスキックオフ(SKO)から始まる。このキックオフで、セールスチームは新しいノルマ、コミッションプラン、テリトリーを受け取る。最も効果的なセールス担当者から学んだことやベストプラクティスは、グループ全体で共有される。
プロダクトマネージャーは、製品の最新履歴やロードマップを発表する(SaaSスタートアップ企業は現在のバージョンの製品だけでなく、継続的なサブスクリプションを販売しているため、すべてのセールス担当者がロードマップとビジョンを売り込めるようにすることが重要だ)。SKOにプロダクトマネージャーが関与するのは、職務横断的なコラボレーションのための重要な機会でもある。
四半期の2ヶ月目は、パイプラインの点検が中心となる。セールスリーダーは、チームが目標達成に向けて軌道に乗っているかどうかを確認し、案件のクロージング方法を担当者にアドバイスし、調整を行う。
マーケティングとプロダクトのチームは、製品に関するニュース配信、認知度を高めるために何かしらの賞を獲得するといった活動を通じて、見込み客を暖め、案件を優位に進められるようにする。3ヶ月目には、セールスチームは、クロージングや数字の達成に取り組む必要がある。
ファイナンスカレンダー(会計年度)
どの企業でも会計年度で運営されているファイナンスカレンダーは、報告上の理由からセールスカレンダーと同期させる必要がある。
四半期に会計帳簿を閉じるときは、四半期のセールス活動における完全な数字を反映しなければならず、不完全であってはならない。営業計画が会計年度の四半期に一致していれば、経営陣と取締役会は「会社で何が起こっているか」について、はるかに良く把握できるようになる。
決算期には2つの選択肢がある。最も標準的なのは12月31日決算だ。しかし、多くの営業主導型の企業は、クリスマスから新年にかけての期間の締めくくりを避けるために、1月31日の年末を選ぶ。常に、多くの取引が締結間際まで来ており、みんなが休暇に入っているときに数字を達成するために奔走するのは惨めなことだ。
賢い顧客は、年末に割引を要求することも知っている。ベンダーは、担当者がこの時期にノルマを達成するためのプレッシャーを受けていない場合、その影響を強く受ける。
これらの理由に当てはまる場合は、1月31日決算をお勧めする。営業四半期が1月、4月、7月、10月で終了する形だ。同様に、営業のキックオフは2月、5月、8月、11月となる。
取締役会
データが新しいうちに売上高の結果を取締役会がレビューできるように、取締役会の会議はセールスファイナンスカレンダーと連携させるべきだ。取締役会は、前四半期の終了後2~3週間後に開催するのが理想的だ。つまり、1月31日の会計年度の場合、取締役会は2月、5月、8月、11月に開催される。この間、ファイナンスチームはこれらの会議の準備に追われることになる。SaaSのカレンダーには、より多くの要素が組み込まれている。
「プロダクト・マーケティングシステム」は、どのように成り立つか
セールスとファイナンスが一つのカレンダーで一緒に仕事をするように、プロダクトとマーケティングも同一のカレンダーで仕事をしよう。
プロダクトカレンダー
ソフトウェア開発をスケールアップするために、スタートアップは複数の独立した開発チームを作り、並行して作業する。それぞれの主なプロダクト分野や戦略的な優先事項にはプロダクトマネージャーが割り当てられもする。
理想的には、プロダクトマネージャーが分散した方法で独自の製品ロードマップを所有し、管理することが望ましい。しかし、全体的なプロダクトロードマップは、正式なプロダクトマネージャーと設計レビュープロセスの一環として、四半期ごとに優先順位を付け直してリソースを確保すべきである。
このレビューによって、開発に入るプロジェクトが一度の四半期以内に出荷できるようにしなければならない。たとえば、Yammerではプロジェクトには2~10人のエンジニアが2~10週間割り当てられるというルールがあった。
ジェフ・ベゾスの ピザ2枚ルールに似ているが、絶対的に大きな戦略的優先順位のプロジェクトには、10週間で10人のエンジニアが割り当てられることも意味していた。そして、時間内に製品を出荷できない場合は、よりMVP的なものに縮小する必要があった。
この要件により、リリース日の信頼性が向上し、新製品に過剰投資する前にユーザーからのフィードバックを得ることができる。
プロダクトマネジメントの良い例えは、瓶に岩、小石、砂を入れることだ。岩は新製品、小石は機能、砂は小さな修正である。
瓶の中に最も多くのものを入れたいならば、最初に岩を入れ、次に小石を入れ、そして砂を入れる。砂が先だと、なぜか岩を入れるスペースが足りなくなってしまう。
プロダクトマネジメントとはそのようなものだ。つまり、一定量のリソースでシステムに詰め込める量を最大化する、その計画こそが重要なのだ。四半期のケイデンスごとに岩を計画することで、実際のロードマップでもより多くのことが成せるようになる。
さて、急速に規模を拡大しているスタートアップ企業が効果的なプロダクトマネジメントをしていない場合、いずれかの事態が起こる。
ひとつは、ただの砂を出荷するだけになってしまうこと。彼らはバグやユーザビリティの問題に磨きをかけ、修正するのだが、その一方で屋台骨になるような機能や新製品、メジャーリリースを出荷することはない。
もう一つは、出荷したとしても、予定を大幅にオーバーしてしまうこと。1四半期かかるとされていた製品が、数四半期後も開発中になっていることもある。数四半期かかるとされていたものが数年遅れたら、会社は麻痺してしまう。
これは、製品の範囲が正しく定められないことで起こる。四半期ごとの規律は、製品の範囲を正しく定めつつ、砂だけではなく岩という大きなことを行えることを保証する。
プロダクトマネージャーの計画は四半期または季節ごとのリリースを中心に進めていくべきだ。もっとも、これはコード管理の理由からコードを毎週あるいは毎日出荷することができないことを意味しない。
マーケティングカレンダー
四半期ごとに大きな製品リリースがあることがわかったので、それを中心にマーケティングを計画できる。
これこそが、プロダクトとマーケティングが同じカレンダーで進む理由だ。スタートアップはプロダクト主導型であり、会社が発表するニュースのほとんどは新製品のリリースを反映してもいる。
四半期ごとのテンポはマーケティングに効果的だ。ニュースは52週間にわたって少しつづリリースするよりも、4つの大きな「落雷」に集約すると説得力がある。落雷は、ライブの製品デモ、顧客、資金調達、市場シェア、メトリクス、その他のマイルストーンに関するニュースを組み合わせたものである。
ローンチイベントを利用して世界の注目を集めることは、イーロン・マスク、スティーブ・ジョブズ、マーク・ベニオフの成功の基礎となっているシンプルなトリックだ。
イベントベースのマーケティングが、この業界の歴史の中で最も成功した創業者やCEOに効果的なのであれば、なぜあなたはやっていない? プレスリリースを出すだけでは、雑音にかき消されてしまう。
ローンチイベントを利用して世界の注目を集めることは、イーロン・マスク、スティーブ・ジョブズ、マーク・ベニオフの成功の基礎となっているシンプルなトリックである。イベントベースのマーケティングが、この業界の歴史の中で最も成功した創業者やCEOに効果的なのであれば、なぜあなたはそれをやっていないのだろうか?
ローンチイベントはケイデンスの重要なパーツだ
ローンチイベントはケイデンスにとって重要であり、外部的にマーケティング価値を発揮するだけではない。一般向けのローンチを行うために日付と期限を設定することは、内部的にも大きなメリットがある。
テスラのチームは、イーロンが「Model 3」を発表するためにステージに上がることを知っていれば、その期限を守らなければならない。Dreamforceのマーク・ベニオフも同じだ。新製品を発表するためにCEOをステージに立たせることは、社内のチームのモチベーションを大きく高める。
日付が設定され、招待状が送られ、世界が待っていれば、目標を達成する以外の選択肢はない。
また、ローンチイベントは企業のリーダーに、優先順位を別の方法で考えることを強いる。新製品を発表し、なぜそれが重要なのかを説明するためにステージに立たなければならないことを知っているからだ。スタートアップのリーダーは、顧客にとって何が重要なのかを何ヶ月も前から考えなければならなくなる。
これにより、プロダクトマーケティングシステムは、顧客中心という意味では「セールス・ファイナンスシステム」と近いものになる。あなたが売っているものを買わない限り、セールスは機能しない。
得られる市場のフィードバックも良い原動力になる。同様に、プロダクトカレンダーを計画しながら顧客の反応を考えることは、会社にとって有益な思考の練習になる。
スタートアップには、年に1回のユーザーカンファレンス、3回の小規模なウェビナー、または都市部でのイベントをお勧めする。イベントは大規模である必要はない。
重要なのは、規律を強制し、自らの取り組みが重要だと確認することである。Covid-19の時代では、バーチャルイベントやウェビナーであっても構わない。最も重要なのは、オーディエンスを持つことだ。
私が創業者からよく受ける反対意見として、「自分たちのイベントには誰も来てくれないと思う」と伝えられることがある。たしかに私も、Yammerで「YamJam」と呼ぶ年次ユーザーカンファレンスを最初に開催したときは恐れていた。
しかし、スタートアップ2年目にしても、ホテルの宴会場を埋め尽くすほどの顧客、見込み客、業界関係者が集まってくれた。もし、あなたがシリーズAまたはシリーズBを調達するのに十分なプロダクトマーケットフィットを持ち、従業員を50人から500人にスケールさせている場合、あなたはファンベースを持っている。
このコミュニティはエンゲージできる。最初は小規模で構わない。最初のイベントでは数十人しかいないかもしれないが、それは成長していく。Dreamforceを見てほしい。小規模なものとして始まったDreamforceは、今では最大のテックカンファレンスとなっている。
シリーズAまたはシリーズBを調達するのに十分なプロダクトマーケットフィットを持ち、従業員を50人から500人にスケールさせている場合、あなたはファンベースを持っている。このコミュニティはエンゲージすることができる。最初は小規模でさくても構わない。最初のイベントでは数十人しかいないかもしれないが、それは成長していく。
さぁ、システムを連携させ、ケイデンスの幕開けだ!
システムの連携
さて、いよいよ2つのシステムを連携する時が来た。2つのカレンダーを一緒にする際には、ピークを相殺することが重要だ。セールス・ファイナンスシステムは四半期決算で締めくくり、プロダクト・マーケティングシステムはローンチイベントを中心に展開する。
これらの重要なイベントの間隔を約半四半期づつ空けておくと、全員が怒髪天を衝くようなことは避けられる。。セールス部門が四半期の締めくくりをしようとしているときに、製品のデモを変更するべきではない。
同様に、四半期の途中で落雷が発生した場合、ポジティブなニュースはリードを促進し、取引を進めるのに役立つ。
ケイデンスのステップ・バイ・ステップ
ピークを相殺してカレンダーを連携することで、会社のための単一の運営ケイデンスが作られる。その方法は以下の通りだ。
- あなたの会計年度を12月31日か1月31日に決定する。これで会計年度の四半期が決まる。
- 会計年度の四半期に営業計画を連携させる。これで、四半期のクロージング、SKO、取締役会の時期が決まる。
- 各決算期の中間(第二月)にマーケティングイベントをスケジュールする。
- それらのイベントの締切日に間に合うプロダクトサイクルを計画する。
このシンプルなシステムは、会社の中で起こっているすべて物事に対する上位構造を作り出す。
そして、四半期の各月は、独自の性格とテーマを帯びる。例えば、このように。
1ヶ月目:「計画」
1ヶ月目は計画立案に費やされるものだ。まずセールス・キックオフから始まる。Sales Opsチームは、新しい営業計画、テリトリー、ノルマを配布する。プロダクトマネージャーはSKOにも出席する。
一方、ファイナンスチームは前四半期の決算を締める。エグゼクティブ・チームは、取締役会の準備をする。取締役会は月の半ば、または月末に開催される。その取締役会で議論された戦略的洞察は、すぐに会社へフィードバックされる。プロダクトロードマップがレビューされ、次の四半期のリリースに向けて優先順位が付け直される。
2ヶ月目:「ローンチ」
2ヶ月目は、6週目か7週目に行われる大きなローンチイベントの準備で占められているく。基調講演が作成され、マーケティング資料が完成する。
リリースのQ&Aとテストが始まり、いくつかの機能はすでに顧客とのクローズドベータに入っている。一方、プロダクトマネージャーは、テストをしていないときは、次の四半期に向けて準備を進める。
イベント終了後、会社としての報告会を行う。「ローンチはどうだったか?顧客は何と言ったか?」といった学びは吸収する。ローンチを可能にした素晴らしい仕事をしてくれた社員を表彰する良い機会でもある。
3ヶ月目:「クローズ」
3ヶ月目は実行期間だ。セールス担当者は、取引を完了し、ノルマの達成に焦点を当てる。うまくいけば、ローンチイベントでは、彼らが取引を有利に進めるのに使える肯定的なニュースがあったはずだ。
一方、エンジニアは次のリリースのコーディングに集中する。2ヶ月目は、エンジニアがバグ修正をしている間に、プロダクトマネージャーがこのリリースの計画を最終決定したことを思い出してほしい。
この時期は、チームがコードを作成して取引を完了させるため、気が散ることは最小限に抑えるべきだ。四半期が終了すると、次のSKO、四半期決算、取締役会などのサイクルが新たに始まる。
全社会議
四半期内の大きなマイルストーンを知ることで、全社会議の計画が立てやすくなる。例えば……
- 四半期決算後、会社と一緒に販売実績を確認する。
- 取締役会の後、戦略を検討する。
- 大規模なローンチイベントの前に、新しいリリースをプレビューする。
- ローンチイベントの後、それがどのように行われたか、何が学ばれたか、そしてプロダクトロードマップがどこへ向かっているかについて報告する。
それぞれの大きなイベントでは、全員が最新の情報を共有し、同期し続けるために全社会議の機会を設けていこう。
おさらい
SaaS企業の4つの主要機能(セールス、ファイナンス、プロダクト、マーケティング)は四半期ごとのカレンダーにまとめられている。人間には季節性があるため、これは自然な仕組みである。
セールス・ファイナンスシステムは四半期ごとの決算を主なイベントの中心としている。プロダクト・マーケティングシステムは、ローンチイベントを中心としている。これらのカレンダーを同期させることで、会社の運営ケイデンスが一本化される。
ケイデンスで運営することの複合効果は巨大である。あなたは年間4つの四半期で素晴らしい売上高を達成できる。ほとんどの大企業は、1つでもあればラッキーだ。ケイデンスを毎年、毎四半期に実行すれば、SaaS企業は混沌としたスタートアップから無敵の軍隊へと成長していくだろう。
(原文:The Cadence - Bottom Up by David Sacks | 著者:David Sacks)
David Sacks(デビッド・サックス)氏は、シリコンバレーを代表するアーリーステージファンドの一つであるCraft Venturesの共同創設者であり、これまでの主な投資ポートフォリオは、Facebook、Tesla、SpaceX、Palantir、Affirm、Airbnb、Slack、Birdなど。Paypalの最初のプロダクトリーダー兼COOとしてテック業界でキャリアをスタートし、月の決済額を0ドルから5億ドルにまで成長させ、eBayによる15億ドルの買収へとつなげた。その後、世界中から家系図を集めるGeni.comを設立。同社は3年後にMyHeritageに買収されることとなる。 さらにその後、コラボレーションとコミュニケーションのための安全な社内向けソリューションとしてYammerを設立し、後にMicrosoftが12億ドルで買収。続いて、ZenefitsのCOOおよび暫定CEO を務め、Craftの創設に至る。