Miroはどうやって2兆円SaaS企業になったのか?
FOUNDATION「How Miro Turned the Whiteboard into a $17.5 Billion Valuation 」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
2022年1月にデジタルホワイトボードSaaSのMiroは、$17.5B(約2兆3,600億円)の評価額をつけて資金調達しました。これにより、Miroは「世界で最も評価される未上場企業20社」の1社になりました。Miroの快進撃は、コロナを契機としたリモートとのハイブリッドワークが引き金になりました。しかしInVisionやMuralなど、多数の競合がいる市場で、なぜMiroが最も評価されているのでしょうか?本記事では、プロダクトとマーケティング観点でMiroが優れた3つのポイントを解説しています。日本からグローバルSaaSブランドを創る上で、参考になると思います。
ポイント1. 多様なユースケースに対応するSaaS連携と有機的なテンプレート生成
MiroはさまざまなSaaS評価サイトでNo.1の評価を受けています。Miroのように幅広い職種・ユースケースに対応するためには、それに合ったSaaSとの連携がシームレスな体験を生むには必要不可欠です。それと同時に、ユースケース毎にユーザーが作成したテンプレートがトラフィックを生むサイクルがMiroの成長と高いユーザー評価につながっています。
ポイント2. ワークカルチャーやブランドの再構築
Miroの強さは、強力なブランドからくるダイレクトトラフィックの強さです。しかし2018年頃のMiroは、あまり市場で強いブランドではありませんでした。CMO曰く、「ブランドの背景にある説得力のあるストーリーも、ユーザーの感情的なつながりを生むエトス(信頼)も、Miroがなぜ存在しているかを説明する強い理由(Why)もありませんでした。」そこで、MiroはGoogleの有名な「デザインスプリント」を独自にアレンジして、カルチャーもそれに合わせて再構築しました。
ポイント3. 自社サイトをグローバル・コミュニティハブに革新
Miroは、Miroverseというテンプレページを持っています。ただMiroverseはただのテンプレ集ではなく、実態はコミュニティです。ユーザー主導で、何百万人もの人々が自分の仕事でより成功するためにコミュニケーションをし、テンプレートを共有し合う場になっています。
不況下で偉大なビジネスを創るための予測とシナリオ分析 by Sequoia Capital
Sequoia Capital「Forecasting & Scenario Planning」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米トップVC Sequoia Capitalによる、不況下で “偉大なビジネス-Great Business” を創るためにスタートアップ経営者がやるべき財務予測とシナリオ分析の方法論を解説した記事です。ここでいう偉大なビジネスとは、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)を生むビジネスです。不況モードの時はスタートアップも「FCF創出までの道筋」示す必要があります。そのために「”現状の制約条件”を踏まえて、いかに偉大なビジネスを創るか?」を考えるためのステップを解説しています。
- 現状の課題:引き潮の不況では、夢より現実、成長より利益、脂肪の蓄積より筋肉作りが求められて、FCFへの明確な道筋がないスタートアップは投資家がつきません
- 解決策:現状の制約条件に基づいて、中長期でのFCF創出への道筋を軌道修正する
- 売上計画の軌道修正:売上=顧客の支出。現在の顧客の支払い熱量(Desire to Pay)と支払能力(Ability to Pay)の変化、過去/現在の関連企業のベンチマークを把握し、計画を見直す
- コスト計画の軌道修正:コスト=人件費。基本路線は、S&M(脂肪)を削り、R&D(筋肉)に投資する。個人または組織単位で、将来のポテンシャル×現状のパフォーマンスで評価を行う
- 利益の軌道修正:36ヶ月のランウェイがあるかが1つの分かれ目。売上とコストの削減率でランウェイのセンシティビティ分析を行い、日々の経営の舵取りの材料にする
SaaS企業のFCF (フリーキャッシュフロー)はどれほど重要なのか?
Clouded Judgement「Clouded Judgement 6.24.22」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
この6ヶ月で株式市場が「何が何でも成長!」から「FCFを見せろ!」という価値観へと変化しました。SaaSが過去10年間でどのように進化を遂げたのか、そしてFCFがどれほど重要なのかについて、Altimeter CapitalのJamin Ballが解説していたので、その内容の一部を要約して紹介します。
- 10年前、マーケットの大半は、SaaSビジネスが黒字化することには懐疑的だった。
- しかしSaaS業界では、「SaaSは、S字カーブの初期の(収益のない)成長が、成熟期の(かなり遅めの成長ではあるものの)収益を生む」と考えられており、実際2015〜2016年にかけて、この考えを実証する例が多くではじめ、結果、SaaSのマルチプル倍率は軒並み急上昇した。
- 過去18ヶ月の間に起こったことは「市場の怠慢」であり、全てのSaaS企業が最終的に利益を上げ、20〜30%の成長を維持するという前提だった。本来であれば、どのSaaSが利益を出すことができるのか、もっと見極めるべきだった。
- 一方、ここ最近では、市場は(ネガティブに)オーバーリアクション気味だと思っている。SaaSの考え方は今も同じで「早期に成長をして、後に利益を生み出す」だ。今、FCFがなくても、将来それを生み出せるSaaS企業はたくさん存在するだろう。
- 重要なのは「"魅力的な売上成長"を維持しつつ、黒字化できるSaaSを見つける」こと。究極の目標を挙げればこうなるだろう:
売上・・・$1B(約1,350億円)以上
売上成長・・・+20~30%以上
FCFマージン・・・+20~30%以上 - 実際、この究極の目標を実現したSaaS企業も多く存在する:
CrowdStrike(YoY+60%, FCF 30%+)
Datadog(YoY+80%, FCF 30%+)
Snowflake(YoY +80%, FCF 20%+)
Zscaler(YoY +60%, FCF 20%+)
Zoominfo(YoY 同+60%, FCF 20%+)
エンタープライズにプロダクトを使い続けてもらうための打ち手8選
SaaStr「Big Companies Don’t Churn. They Quit You.」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStrの記事を引用。エンタープライズ開拓を担っている方々やその分野にご興味のある方々におすすめの記事になります。
ストレッチなNet Negative Churnを設定する
- ここでの“Net Negative Churn”は、ARRベースで既存のお客さまからの新規獲得収益率を表す
Net Negative Churn = {(獲得したARR) - (チャーンしたARR)}/ (前年のARR)
(参考)エンタープライズであれば前年対比+120%で目標を設定。あるエンタープライズのお客さまの前年ARRが1億円の場合、年の終わりにはARR1.2億円を実現しているイメージ
Go Liveの60日後にCEOレベルとチェックインの時間を設ける
- 高い売上をもたらすお客さまの内、上位20%(もしくはそれ以上)に対してやることがおすすめ。60日以内にチャーンする可能性があるので、それを防ぐことにも役立つ
お客さま企業のステークホルダーを“全て”洗い出し、それぞれをきちんと知っておく
- 特にエンタープライズだと、導入時にカウンターパートだった方が異動している可能性もあり、新しく担当になった方は他のベンダーを好んで利用を切り替える可能性もある
- できるだけパーソナルな部分も理解できているくらい、関係者のことを知り尽くしておくこと
「プロダクトはエンタープライズの他の部門にすんなり普及しない」という認識を持つ
- エンタープライズの中で特定の部門に導入されたとしても、組織構造上それぞれの部門はサイロ化されている可能性が高く、お客さま側で他部門に勧め普及するような動きは起こりづらい
- 導入に前向きになっていただけそうなステークホルダーと繋がっておき、プロダクトの紹介をしておくこと
契約後すぐに、各社で発生しそうなリスクを可視化する。そして、それらの状況を毎月アップデートする
- 契約したお客さまの中には、購入したがバリューがフィットしていなかったり、サポートが期待値を満たしていなかったり、あくまで実験という位置付けで使っていたりする可能性がある
- いつチャーンが発生してもおかしくないという認識のもと、各社の状況を把握しておくこと
直接お客さまと会う(もしくは、テレビ電話で会話をする)機会を設ける
- 特に重要なお客さまには、直接お会いすることがおすすめ(四半期のオンサイトCSミーティングや、年2回のCEO/幹部レベルの打ち合わせ等を通して)
- プロダクト導入や開発のロードマップに対するレビューなど、実際にお客さまの声を聞くこと
月次で失注案件を分析する打ち合わせをクロスファンクションで実施する
- 大型案件の失注などがなぜ起こったのか、部門横断で分析する。それぞれの部門におけるお客さまの理解度が上がり、部門間の連帯感も生まれる
お客さまのプロダクト利用率を上げる
- お客さまのジョブに対して毎日のペースで利用されるプロダクトに対して、予算を削ろうとする判断をするのは難しい。NPSが圧倒的に高くROIが一定出ていたとしても、ほとんどプロダクトが使われていない場合、お客さま側では今後予算をつけないという判断に至る可能性があるので注意する
欧州のSMB向けPOS・決済SaaSの巨人 SumUp、€590M(約842億円)調達
英・ロンドン創業のSumUpは、中小の飲食店や小売店向けに、POS端末および統合型電子決済、請求書発行を提供するSaaSスタートアップ。世界35ヵ国400万社以上にSaaSを提供している。先日南米・ペルーへの進出を果たした。今後、プロダクトの更なる拡張とグローバル展開、買収に積極的に投資する。Bain Capital Tech Opportunitiesがリード。バリュエーションは€8B(約1.1兆円)。
欧州のAll-in-one HR管理SaaS Personio、シリーズEで$200M(約270億円)調達
独・ミュンヘン発のPersonioは、中小企業向けに採用、給与計算、人材管理、育成、ワークフローの自動化などを一気通貫で提供する欧州を代表するHR SaaSユニコーン。SMB向けにWorkdayとServiceNowを掛け合わせた存在。現在6,000社、50万人以上がPersonioを利用している。CEO曰く、前回10月から売上は2倍の一方、バリュエーションは30%しか増加していない。本シリーズEは、Greenoaksがリード。バリュエーションは$8.5B(約1.1兆円)。
セールス・オートメーションSaaSの新星 LeadSquared、シリーズCで$153M(約207億円)調達
インド発のLeadSquaredは、営業が関わる全ての顧客接点(コールセンター、店頭販売、デジタルチャネル)の対応・情報収集を効率化するSaaS。Amazon Payなど2,000社以上が顧客になっている。最近ではセールスパフォーマンス分析や申請処理などの自動化を強化している。今回の調達でインドとアメリカでの成長投資を倍増させ、アジアと欧州での展開を開始する。本シリーズCは、WestBridge Capitalがリード。バリュエーションは$1B(約1,350億円)で、ユニコーン入りを果たした。
米CRM大手Zendeskをプライベート・エクイティが$10.2B(約1.4兆円)で買収へ
Zendeskは、ここ数ヶ月苦境に立たされている。アクティビスト投資家であるJana Partnersからの$17Bでの買収オファーに対し、経営陣は自社にもっと企業価値があると断った。そこでSurveyMonkeyの親会社であるMomentiveを買収しようとしたが、投資家から断られた。この劇的なドラマは、ペルミラとHellman & FiedmanのPE連合による買収で幕を閉じた。
企業のデータ管理を支援するSaaS Ataccama、$150M(約203億円)調達
2007年創業のAtaccamaは、データガバナンス、データカタログ、データ品質、データ管理など企業のデータ周りのSaaSを提供するスタートアップ。Ataccamaは、データ統合システムインテグレーター大手のAdastra社からスピンオフした会社。本ラウンドは、Bain Capital Tech Opportunitiesがリード。バリュエーションは$550M(約743億円)。
医療診断画像AI×SaaS Aidoc、シリーズDで$110M(約148億円)調達
AIdocは、医療用画像を解析し、医療従事者の高度な意思決定支援するAI×SaaSスタートアップ。AIdocの「AI Care Platform」は、15ものFDA(米食品医薬品局)承認を得ており、同分野で最も包括的なソリューションになっている。本ラウンドは、TCVとAICが共同リード。
精密部品製造を支援するSaaS CloudNC、シリーズBで$45M(約61億円)調達
英・ロンドン創業のCloudNCは、工場が自律的に精密部品を製造することを支援するSaaSを提供するスタートアップ。本シリーズBは、AutoDeskがリードし、CAD/CAMソフトウェアとの統合を強化する。その他、欧州トップVC Atomicoや航空宇宙大手 ロッキード・マーティンも参加。
法務担当の業務効率化を支援するLegalForce、シリーズDで約137億円を調達
契約審査プラットフォーム「LegalForce」、AI契約管理システム「LegalForceキャビネ」を提供。「LegalForce」は2,000社を超える企業・法律事務所が有償契約で利用。また、「LegalForceキャビネ」は450社以上の企業が導入している。SoftBank Vision Fund 2をリード投資家として、Sequoia China、Goldman Sachs、WiLなどを引受先とした第三者割当増資を実施。調達資金は採用、開発、営業の強化に充てられる。
EC/D2C支援のSUPER STUDIO、約44億円を調達
D2C支援事業やECプラットフォーム「ecforce」を提供。現在掲げている「次世代EC構想」では、2023年夏までにノーコードでEC事業者が総合的なデータと施策管理ができる状態を実現を目指す。31VENTURES、ALL STAR SAAS FUND、きらぼしキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資により調達。調達資金は、「次世代EC構想」の実現、三井不動産との協業によるEC/D2Cブランドのオフライン事業拡大の検証、エンジニアやセールスをはじめとした全職種で人材採用を強化に充てられる。
EC・D2C向けプラットフォームを提供するACROVE、シリーズAで総額5億円超を調達
BIツール「ACROVE FORCE」を利用し、提携先ブランドおよび買収等で獲得した自社ブランドの成長をサポート。提携ブランド事業では、家電・食品・化粧品などの国内メーカー向けにAmazon・楽天等のECモール成長支援サービスを支援。導入後の平均売上成長率は300%超を実現し、80以上のクライアントのブランドの成長を支えている。ニッセイ・キャピタルがリード。調達資金は「ACROVE FORCE」の開発強化、デジタルブランドのM&A、採用活動に充てられる。
BtoB受発注システムを提供するCO-NECT、3.7億円を調達
FAXや電話で行われてきた受発注業務をデジタルに置き換えるシステムを提供。製造業及び卸売業を中心に、1,485社に導入されている。有料契約継続利用率は99%以上。CO-NECT内での流通総額は累計100億円を突破。GMO VenturePartners、ぐるなび、Headline Asia等からの第三者割当増資と、りそな銀行、日本政策金融公庫からの融資にて調達。今回の調達は、受発注システムとしての拡張や他システム連携の推進に充てられる。
バックオフィス向けクラウドサービスを提供するJinjer、シリーズAエクステンションラウンドにて調達
人事労務・勤怠管理・給与計算・ワークフロー・経費精算・電子契約・Web会議など、バックオフィス業務の効率化を支援するクラウドサービスを提供。のべ登録社数15,000社が導入。リンクアンドモチベーションから調達。