偉大な起業家を”作る”ことはできるのか?
ALL-IN Podcast「#AIS: Pear VC’s Mar Hershenson on making successful founders」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先、または以下動画をご覧ください。
2022年ミダスリスト30位に選ばれたPear VC創業者 Mar HershensonによるALL-INサミットでの講演。彼女自身、米スタンフォード大学工学部で約10年教鞭をとり、過去3社を起業した連続起業家でもあります。これまでの自身の投資や起業の経験から、「偉大な起業家は作ることができるのか?」ということを解説しています。主な示唆は以下の通り。
- 偉大な起業家は作ることができる:起業家の42%は、子供の頃に何かしら自分でビジネスをする経験をしている。また、起業家の37%は連続起業家であり、トップユニコーンの59%は連続起業家により創業されている。つまり偉大な起業家は、作ることができると言える。
- 偉大な起業家を作り続ける仕組み(マシーン)としてのスタンフォード大学:ユニコーン起業家の10%はスタンフォード大学の卒業生。
- スタンフォードが起業家を作り続けられる要因は、仲間(Peers)と人脈(Network):スタンフォード大が起業家になるために優位な提供価値として、主に仲間、スキル、人脈、キャピタル、機会があるが、仲間と人脈が最も重要。この事実は、同じく起業家輩出をしてきたPaypalマフィアや南米・コロンビアのRappiマフィアでも見られる。
- 偉大な起業家になるための3つのアドバイス:
① ベストな仲間(Peers)に囲まれる環境を作る
② 大量に読書をする
③ コーチをつける
なぜSaaSは独占市場ではなく、寡占市場なのか?
SaaStr「Why Competition Is So Bitter in SaaS: Oligopolies and Dominant Strategy Equilibriums」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
他のテクノロジー分野と異なり、SaaSでは独占(Monopoly)が起こりにくいことがよく知られています。このSaaStrの記事では、SaaSが寡占化(Oligopoly)する理由について解説しています。
- SaaSの多くは、1社が市場シェアの大半を占める独占市場ではなく、複数のリーダー企業が市場シェアを占める寡占市場です。CRM業界でセールスフォースが世界シェアの4分の1にも満たないことからも分かると思います。これは他のテクノロジー領域と違い、SaaSは規模の経済やネットワーク効果が小さいことが大きな理由です。
- SaaSが「寡占化」する第一の理由は、高い開発コストと初期市場の小ささに起因します。 市場が成長期に入ると、SaaSプロダクトは成熟し、追いつくための開発コストが高くつきます。一方で市場は、初期段階では多くの新規参入プレイヤーを受け入れる程、大きくありません。そのため、最終的には2-3社の競合が生き残る余地があるだけで、他の残りは非常に小さい会社の寄せ集めになります。
- SaaSが「寡占化」する第二の理由は、競合同士の相互依存関係が無く、一定の規模を超えると、純粋なドミナント戦略が利き出すからです。SaaSでは、サムスン(アップルの最大ベンダー) vs. アップルにみられるような相互依存関係が無いため、一部のプレーヤーに利益が集中するような現象は起こりません。そのため、複数のプレーヤーが効率的にスケールし出すと、「ドミナント(支配的)戦略」状態になります。ドミナント戦略の状況下では、競合が何をしようとも、自社の最善の戦略は関係なくなります
- また重要な点として、エンタープライズSaaSでは、セールス、マーケティング、カスタマーサクセス、開発の面で、規模の経済が働かないことがよくあります。この点も、新規プレイヤーを排除する一方、SaaSにおいて1社が独占しにくい要因です。
Airtable グロース・エンジニアリングからの学び
DOPT「Win or Learn: Growth Engineering at Airtable」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSデカコーンであるAirtable社 グロース・エンジニアリング責任者 Wendy Lu氏へのインタビュー記事。Wendyさんは成長期だったPinterestのグロース・エンジニアリングをリードし、2020年からAirtableで初代Head of Growth Engineeringとしてゼロからチームを立ち上げた人物です。彼女へのインタビューからの主な示唆は以下の通りです。
- コアプロダクトチームがプロダクトに新しいパワーを組み込むことに注力する一方、グロースチームはユーザーが既存のプロダクトから最大の価値を見出すことに注力します。積極的なコミュニケーションと構造化によって、チーム間の衝突を避け、互いの専門知識から価値を最大限引き出すことに注力します。
- グロースエンジニアの仕事内容は、ビジネスやプロダクトに特化したものから、技術的なシステムやインフラに特化したものまで多岐に渡ります。
- Airtableではユーザーファネルごとにグロースチームを組織し、グロースプラットフォームにフォーカスしたサポートチームを置いています。これにより、チームはより多くのゴールを狙い、学習率を高め、ビジネスの目標を達成することが容易になります。
- SaaSプロダクトの実験は、完了までに数週間から数ヶ月かかることがあります。そのため、変更をまとめて行ったり、実験の代わりにユーザーリサーチを活用することで小さな変更を加えたりすることで、検知することができる効果を産みだします。
- 全てのプロジェクトは、学びがあり、前進するために利用する限り、失敗ではありません。リーダーは、うまくいかなかったことからの学びをチームに認識させ、この組織カルチャーを積極的に作る必要があります。
進出して分かった日本とアメリカのSaaSプロダクトニーズの違い
高田優哉氏「進出して分かった日本とアメリカのSaaSプロダクトニーズの違い」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米国における事業展開を開始されたコミューン株式会社 CEO 高田さんによる、日本とアメリカのSaaS市場の違いや特徴などが非常に解像度高く整理されているnoteになります。グローバルでも圧倒的なSaaS企業を日本から輩出できるサポートをしていきたいと思っている私にとっても非常に参考になりました。
以下、高田さんのnoteよりポイントを引用させていただきてます。
- 海外のマーケットサイズは日本の10−20倍。かつ競合環境は激しい。例として、日本はプロ野球で、グローバルはメジャーリーグみたいなイメージ。
- 日本で勝つ野球の仕方とメジャーで勝つ野球の仕方が違うのと同様に、日本で売上を上げていくプロダクトの作り方とグローバルで売上を上げていくプロダクトの作り方は違う。
- プロダクトは、狭すぎるくらい狭いニーズを掘って掘って掘りまくることが大事。浅く広くの日本とは真逆のアプローチ。
- SaaSエコシステムの大きな違い。海外は、すでにSaaSが多く使われていておりかつ、ユーザー企業側にエンジニアがいるので、インテグレーション能力が重要。
- 時差や人件費などの市場構造の違いから、如何にセルフサービスさせるか?(自社のビジネスチーム工数をかけないか?)を重視したプロダクト開発が大事
企業の報酬設計を支援するSaaS Pave、シリーズCで$100M(約135億円)調達
2019年創業のPaveは、人事システム、ATS(採用管理システム)、資本政策表のデータを統合し、企業が従業員の報酬のプランニングをするために、ベンチマークを設定するのを支援するSaaSを提供するスタートアップ。リモートワーク、労働力の地理的な分散化、労働市場の獲得競争が激化する現代では、報酬は従業員と雇用者である企業、双方にとって最重要事項です。顧客は2,500社を超える。今回の資金調達で、モルガン・スタンレー社の報酬データ事業Option Impactを買収し、欧州での展開を加速させる。本ラウンドは、Index Venturesがリード。Andreessen Horowitz, YC Continuity Fundなども参加。バリュエーションは$1.6B(約2,160億円)で、ユニコーンの仲間入りを果たした。
仮想通貨特化の統合インフラSaaS Prime Trust、シリーズBで$100M(約135億円)調達
2016年創業のPrime Trustは、暗号通貨のカストディ(管理・保管)を金融機関などが行う上で必要な機能をAPI経由で提供するSaaSスタートアップ。Prime Trustのサービス群は、コンプライアンスとレールで構成される「オンボーディング」、取引や保管などの機能を含む「マネタイズ」、IRAや取引関連商品を含む「流動性確保」の3つの主要スタックで構成されている。同社は、仮想通貨取引所、ウォレットアプリ、RIA、銀行など、約700社にSaaSを提供している。本ラウンドは、FIS、Fin Capitalなどから調達。
企業と顧客のコミュニケーション・ハブSaaS Front、シリーズDで$62M(約84億円)調達
Frontは、企業が顧客との強固な関係を築くためのコミュニケーション・ハブを提供するSaaSスタートアップ。既存の顧客接点は、メールとカスタマーサポートソフトウェアに依存してる一方、ワークフロー、分析などで非効率的であり、Frontはこの課題を解決しています。世界100ヵ国に8,000社以上が顧客。Frontの成長は、共同創業者兼CEOのMathilde Collinをはじめ、経営陣の80%が女性、管理職の50%が女性という、女性が中心の経営チームであることも一因としています。カウフマン財団によると、女性が経営するテック企業は、男性が経営する場合に比べて、資本効率が高く、ROIが35%高い。本ラウンドは、Salesforce VenturesとBattery Venturesがリード。現在の厳しい資金調達環境においても、バリュエーションは前回の2倍以上の$1.7B(約2,300億円)。
社内人材の最適配置を支援するSaaS Gloat、シリーズDで$90M(約122億円)調達
Gloatは、従業員の独自のスキルや関心分野に基づいて、パーソナライズされたキャリアパスの選択肢をAIが提案し、社内の人材活用を支援するSaaSを提供するスタートアップ。LinkedInなど、外部の採用ツールは数多くありますが、社内の移動性については、ユニークで微妙な課題があり、その課題を解決している。本ラウンドは、Generation Investment Managementがリード。
Shopify特化SMSマーケティングSaaS PostScript、シリーズCで$65M(約88億円)調達
PostScriptは、Shopifyを利用するブランド企業が、SMSを通じて顧客にパーソナライズされたマーケティングを支援するSaaSスタートアップ。同社の利用顧客は、平均して25倍のROIを実現している。現在までに顧客数は3,500社を超える。本ラウンドは、Twitter社の前CEOとCOOが創業したVC 01 Advisorsがリード。
複雑化する納税プロセスを支援するSaaS April、シリーズAで$30M(約41億円)調達
Aprilは、銀行や金融アプリと統合することで、米国の複雑な税制申告を切り抜けることを支援をするSaaSスタートアップ。ユーザーは、給与明細、銀行明細、住宅ローン、前年の確定申告書などの財務アプリを連携し、過去1年間の重要な税務イベント(別の州への引越しなど)をAprilに伝える。AprilのAIがレビュー後、数字を計算し、提出書類を自動作成してくれます。本ラウンドは、Fintech分野のトップVC QED Investorsなどから調達。
介護事業者向けall-in-one SaaS Birdie、シリーズBで$30M(約41億円)調達
イギリス発のBirdieは、介護士が患者管理や業務管理をスマホなどで簡単に管理し、被介護者の家族にリアルタイムで情報提供を支援するSaaSスタートアップ。現在、約700社の介護事業者に提供している。前回の調達から3倍の成長。本ラウンドは、Sofinaがリード。
食品産業のDXを推進するGoals、シリーズAで15.5億円調達
外食産業の業務改善サービス「HANZO」シリーズを開発。飲食店向けに食材の発注や、仕込み量の提案、売上予測などの機能を提供。今回の調達資金は、HANZOシリーズのプロダクト開発、及び人材採用に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は下記の通り。
- 既存投資家:ALL STAR SAAS FUND、インフォマート
- 新規投資家:Angel Bridge、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル、新生企業投資(新生銀行グループ)、あおぞら企業投資(あおぞら銀行グループ)、商工組合中央金庫
ビジネスAPIプラットフォーム「Plain」を提供するROUTE06、シリーズAで15億円を調達
エンタープライズ企業を中心に、プロダクトマネージャーやエンジニア、デザイナー等が在籍するプロフェッショナルチームによる「Plain」の導入支援や、デジタルプラットフォーム事業立ち上げに必要なサービスを提供。そごう・西武や三菱マテリアルをはじめとする大手企業のデジタル事業立ち上げやグロース支援の実績あり。今回の調達資金は、Plainの開発、リモートファーストな体制の構築や人材育成、社内インフラの拡充及び業務効率化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は下記の通り。
- ALL STAR SAAS FUND、ジャフコ、デライト・ベンチャーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル
データ分析×ヘルスケアでソリューションを提供するテックドクター、シリーズAで5億円調達
医療データ解析SaaS『SelfBase』とメンタルヘルスソリューション『SelfDoc.』を提供。『SelfBase』は国立の研究機関やアカデミア、大手製薬企業等での研究開発や治験等において利用されている。今回の調達資金は、データサイエンティストとエンジニアの採用、及び不調検知と予測のアルゴリズム研究開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は下記の通り。
- ジャフコ、日本ベンチャーキャピタル、三井住友海上キャピタル、みずほキャピタル、ジェネシア・ベンチャーズ
CXMツールを提供するKiZUKAI、シリーズAで4.35億円調達
顧客体験を管理し収益につなげる施策運用を実現するツールを提供。顧客体験を管理に必要な指標のモニタリング、顧客ステージの可視化、データ分析機能などを提供し、シームレスな顧客体験の管理が可能。今回の調達資金は、『KiZUKAI』の開発や、採用及び組織づくりに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は下記の通り。
- 大和企業投資(大和証券グループ)、STRIVE、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル
財産管理クラウドを運営するトリニティ・テクノロジー、シリーズAエクステンションラウンドで9,000万円調達
財産管理クラウド「スマート家族信託」を提供。信託したお金や資産をアプリで管理することが可能で、データ連携などにより家族信託の運用の手間を効率化する。今回の調達資金は、採用・組織体制の強化、及びプロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は下記の通り。
- SBIインベストメント、FFGベンチャービジネスパートナーズ(ふくおかフィナンシャルグループ)、常陽キャピタルパートナーズ(常陽銀行グループ)