Intercomに学ぶSaaSプライシングの重要性と方法論
Insights in Action「Abde Tambawala」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
IntercomでRevenue Operations & Analyticsチームを率いるAbde Tambawala氏へのインタビュー記事。同氏は、大手コンサルファーム Simon-Kucher & Partnersのパートナーとして、数多のプライシング戦略をリードし、その後、AtlassianでMonetization and Strategyチームをリードし、現在はIntercomのVP of Revenue Operations & Analyticsとして活躍するプライシングのプロ中のプロ。インタビューからの示唆は以下の通り。
- プライシングは、経営者にとって最も重要な経営判断:
価格設定はダイレクトの売上に直結することは当然。それ以外にも顧客との関係や市場でのポジショニングにも大きく影響する。
- プライシングは「価値の伝達」、「経済合理性」、「差別化」の3つに影響する:
価値の伝達:
価格設定は潜在顧客にプロダクトの価値を伝える、最初かつ最も重要な方法です。経済学では「価格を下げれば需要が増える」と教えますが、その考え方は捨てるべきです。プロダクトを知らない潜在顧客には、その価値をどう伝わるかは(購買の意思決定に)極めて重要です。
経済合理性:
価格の最適化は、売上と利益に多大なる影響を与えます。マッキンゼーの調査では、価格設定を1%改善すると、営業利益は10-12%増加することを明らかにしています。
差別化:
どの市場でもコストに対して敏感に反応します。そのため、プライシングモデルは競合他社との差別化に大きく貢献します。価格設定/パッケージングのユニークさは、顧客が受ける価値と合致する傾向があります。LyftやAirbnbのダイナミックプライシングは破壊的な戦略であることからも見て取れます。
- プライシングは顧客とSaaS企業の関係を強化する:
AtlassianのJIRAは、価格を上げることで(結果として)顧客との関係が強化された好例です。当時、ユーザーリサーチの結果、JIRAは顧客に大きな価値を生んでおり、顧客の支払い意志も高いことがわかりました。そこでAtlassianは、1)価格設定を利用量ベースへ、2)パッケージを廉価版とプレミアム版の2つに、3)ホスティングを顧客からAtlassianに移し、データストレージをクラウドに変更しました。重要なポイントは、「価格モデルと付加価値を一致させ、付加価値に見合わない値上げはしない」こと。
- プライシングは、非常に構造化されたフレームワークで、5つのステップで行うべき:
ステップ1.
過去データから、セグメント別の顧客ニーズを把握:プロダクトの活用パターン、ディスカウントの傾向、リテンションの動態などを分析する
ステップ2.
顧客と対話することで、新たなインサイトを獲得:アンケートなどの実験を通じて、定性・定量データを収集し、顧客や見込み客から学ぶ
ステップ3.
そのデータを使って、財務モデルを構築:シナリオ分析を行い、構築したモデルに従って最適な価格戦略を見出す
ステップ4.
価格改定の実行:価格変更を加えて、財務モデルの予測能力をテストする。ユーザー数が多い場合はA/Bテスト、サンプル数が少ない場合はBefore/Afterテストが効果的
ステップ5.
影響を評価し、繰り返す
スタートアップと証券会社の付き合い方
Openview Venture Partners「Investment Bank Overview: Working With An Advisor」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米VC Openview Venture PartnersのCorpDev責任者の方の記事。スタートアップがIPO(やM&A)でお世話になる証券会社の選定するプロセスや、実際の契約前から証券会社から最新のマーケット動向や投資家・買い手候補の紹介など、価値を引き出す方法など、全体像をつかむ上で役に立つ記事です。注記)直訳すると投資銀行ですが、日本では証券会社と言った方がわかりやすいので、証券会社と意訳してます。
過酷な市場環境で44億円の資金調達を実施したスタートアップが語る資金調達環境の実態
花岡 宏明氏「過酷な市場環境で44億円の資金調達を実施したスタートアップが語る資金調達環境の実態」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
株式会社SUPER STUDIO COOの花岡さんによる、今回の資金調達の裏側について赤裸々に書かれているのですが、このnoteで最も心に残ったのは、花岡さんの経営者としてのマインドセットの変化について述べられている箇所です。
“この半年で、僕は経営者として非常に磨かれたと感じている最も大きな点は、「市場規模」に対する感覚が激変したことです。”
会社の戦略を描く人間は、マーケットシェアを取っていけるかの前に、どのマーケットを取ろうとしていて、そのマーケットはどれだけの規模があるのかを真剣に考えなければなりません。
「儲かるから!」といって新たなビジネスに見境なく手を出すことは許されないフェーズに会社がきているということです。
企業が成長しラウンドを重ねるにつれて、求められる基準や確認するポイントも変化してきますが、経営者として情報やトレンドに踊らされず本質を追求する姿勢の重要性をこのnoteから学ぶことができます。
サイバー保険×SaaS界のリーダー Coalition、シリーズFで$250M(約340億円)調達
2017年米・カリフォルニア創業のCoalitionは、プロアクティブ型のサイバーセキュリティSaaSとサイバー保険を提供するリーダー企業。昨年9月のシリーズE時点で顧客数は、5万2,000社から16万社と1年弱で3倍以上に急増している。売上も2倍成長した。AIGやBeazleyなど競争は激しいが、テクノロジー×データ×保険の独自の強みが、同社をサイバー保険市場で強力なポジションを確固たるものにしている。本ラウンドはAllianz X、Valor Equity Partners、Kinetic Partnersから調達。本調達で、グローバルの金融サービス大手Allianzと戦略的な提携を発表している。バリュエーションは、$5B(約6,800億円)。
EC特化ロジスティックプラットフォーム Flexe、シリーズDで$119M(約162億円)調達
2013年創業のFlexeは、プログラム型ロジスティックプラットフォームは、大手小売などのEC、フルフィルメント、拡張性のある倉庫ソリューション、小売流通を統合型で支援しています。このようなテクノロジーは、不透明なマクロ環境、変化する消費者行動、サプライチェーンの停滞を乗り切るために、小売企業の生死を分ける、重要な課題解決を行っている。本ラウンドは、BlackRockやTiger Globalなどから調達。バリュエーションは、$1B越え(約1,400億円)。
中小病院の経営支援を行う統合型SaaS Tebra、$72M(約98億円)調達
Tebraは、独立した中小の医療機関が患者を集め、治療を提供し、支払いを受け、運営を全て支援するSaaSを提供。SaaSでは、医療機関のウェブサイト構築、マーケティング、予約管理、遠隔診療、電子カルテ、診療管理、決済・請求、分析と多岐に渡る。すでに従業員数は1,000名を超え、米国内9,000万人以上の患者に医療サービスを提供する10万以上の医療機関を支援している。本ラウンドは、Golub Capitalがリード。バリュエーションは、$1B越え(約1,400億円)。
Speech-to-Text AI開発のSpeechmatrics、シリーズBで$62M(約84億円)調達
イギリス創業のSpeechmaticsは、英ケンブリッヂ大学のAI研究から2006年にスピンアウトしたスタートアップ。同社のAIエンジンは、34言語に対応しており、既に170社以上の顧客を抱えている。強みは、Googleやマイクロソフトのような大手ベンダーを大幅に上回る精度の高さ。Susquehanna Growth Equityがリード投資家。
次世代の社内イントラネットSaaS Happeo、シリーズBで$26M(約35億円)調達
2017年創業のHappeoは、企業のソフトウェアやドキュメントの多くを一箇所に集中させる企業内ポータルサイト構築を支援するSaaS。リモートワーク化と企業内のSaaSが爆発的に増える中で、従業員が社内サービス全体を把握・管理することは難しくなっています。従業員が情報検索に費やす時間は、1日平均3時間強。1年前と比較して1時間も増えている。本ラウンドは、Endeit Capital、Smartfin、Evli Growth Partnersの3社が共同でリード。
売掛債権管理SaaS Tesorio、シリーズBで$17M(約23億円)調達
Tesorioは、Slack、Box、Veevaなどの大手SaaS企業を中心に顧荷物、売掛債権(Account Receivable)を管理するSaaSを提供するスタートアップ。同社のプロダクトでは、回収の自動化、回収状況のダッシュボード、決済までを一気通貫で提供している。本ラウンドは、BAMCAP VenturesやFirst Round Capitalなどから調達。
クラウド健康管理システムを提供するメディフォン、11億円超調達
医療通訳サービス「my mediPhone」やクラウド健康管理システム「mediment」を提供。medimentは企業の人事労務担当者向けサービスで、従業員の健康診断やストレスチェック、健康経営推進支援などを包括的に提供。昨年10月にサービスを開始し、アカウント数は18.4倍にまで成長。今回の調達資金は、mediment の更なるグロースに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は下記の通り(融資含む)。
- 東大IPC、FTI、ソニーグループ(Sony Innovation Fund)、ケップル、三井住友銀行、りそな銀行、三井住友信託銀行、日本政策金融公庫
データ分析SaaSを提供するSrush、プレシリーズAで1.8億円調達
データ分析に関わる業務をノーコードで実現するデータ分析SaaS「Sales Rush Board」を提供。700種類以上のツール連携が可能で、SaaS上にあるテンプレートを用いて連携データの分析が簡単に可能。今回は第三者割当増資と金融機関からの借入により資金を調達。調達資金は、Sales Rush Boardの開発強化とサービスの販売拡大、および人材採用の促進に充てられる。本ラウンドに参画した企業は下記の通り。
- マネーフォワードベンチャーパートナーズ(HIRAC FUND)、ニッセイ・キャピタル
奨学金領域をDXするSCHOL(スカラ)、総額約1億円調達
学生・保護者向けに奨学金情報サイト「ガクシ―」や奨学金運営DXシステム「ガクシーAgent」を提供。ガクシーAgentは2022年2月にリリースされ、財団、大学、企業、地方自治体様などに提供。奨学金の募集から審査、支給管理までをクラウドで一括管理することが可能になる。今回の調達資金は、ガクシーシリーズの開発・販売体制強化に充てられる。本ラウンドに参画した企業は下記の通り。
- みずほキャピタル、旺文社ベンチャーズ、KIBOW(KIBOW社会投資ファンド)、NOW