SaaSに死ぬほど重要な6つのリテンション戦略 by Intercom
Intercom「Customer retention: 5 best practices & 6 strategies for low churn」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaS企業が成長フェーズに入ると、お客様のリテンションは、売上成長を下支えし、将来のキャッシュ・フローを最大化するため、企業価値に大きな影響を与える最も重要なイシューです。特に現在のようにダウンマーケットで資金調達が難しくなり、不況で需要が鈍化してくるとなおさらです。こちらのIntercomの記事は、このリテンション戦略について具体的なアクションを詳しく紹介しているので、とてもオススメです。以下、ここで解説している6つの戦略の概要です。
- Time to Valueの時間短縮によるチャーン防止
Time to Valueは、お客様がプロダクトを使い始めてから”アハ・モーメント”(価値を感じる)までの時間を指します。お客様がプロダクトへの投資対効果を即座に実感できるようになると、定着する可能性はグンと高くなります。 - お客様がプロダクトを使いこなすためのサポート
カスタマーサクセスはお客様のオンボーディングから始まります。セルフサーブ型で独自で学ぶ熱心なお客様がいる一方で、自分から学ばないお客様もいます。そのためにお客様に積極的に「教える」ことが必要で、この「教える」行為自体がお客様のロイヤリティを生みます。 - プロダクトをお客様のワークフローに組み込む
Twitter、Google、Slackに共通するものは何でしょうか?ユーザーに習慣を作り出していることです。新規のお客様に、彼らの生活で繰り返し使っているプロダクトに自社のプロダクトを統合することで、習慣化の可能性は高まります。 - プロダクトをお客様の組織に組み込む
Asana、Slack、Intercomのようなチームで使うコラボレーション要素が強いプロダクトは、お客様がチャーンしにくくなります。上記の「ワークフローへの組込み」と組み合わせることで、企業の運営と目標達成にプロダクトが不可欠になります。 - 新しい機能でお客様のモチベーションを上げる
お客様がプロダクトを使わなくなる理由は、使うことを忘れるためではなく、興味を失うからです。解約しそうなお客様には、今後リリースされる機能を垣間見せることで、将来のプロダクトに期待を持たせることができます。 - 休眠しているお客様を再度活性化させる
お客様がプロダクトの活用を停止しているからと言って、永遠に興味を失ってしまったと考えるべきではありません。導入時に利用習慣が作られなかったことも深く影響します。その場合、1回限りのお得なキャンペーンを実施したり、新プロダクトのローンチなど、会社の大きな発表により、お客様の関心を再び集めることは可能です。
あえて「安く売る」という営業戦略
Tomasz Tunguz氏「Deliberately Underselling: A Powerful Sales Technique」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
RedpointのTomasz Tunguzによる記事。極端な事例ではあるが2つのケースを紹介しながら、戦略的に安く売ることで、セールスサイクルを短くし、その後のエクスパンションでNRRを最大化し、お客様の満足度も高めることの重要性をtwillioの事例も触れながら紹介しています。
この戦略の是非は市場、プライシングのロジック、競合状況などを踏まえて議論されるべきですし、やや理想的すぎるという感覚もあります。しかしお客様の成功を実現するかという観点で営業組織を見直すことは、非常に重要な論点だと感じまして、今回紹介させていただきました。
併せて、この戦略において適切なセールスのインセンティブ設計も考え方の一つとして参考になりますので、ぜひご確認ください。
SaaSのエンタープライズ攻略の6つのポイント(セールス、カスタマーサクセス編)
Battery Ventures「Growing Up Enterprise Part 5: Sales and Customer Success」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米ベンチャーキャピタルBattery Venturesによるエンタープライズ攻略に向けて留意するポイント。より複雑性が求められる大きなお客さまに対する接し方、組織のあり方、内部の管理方法などがまとまっています。ここではセールスの部分を抜粋して記載。詳細は記事をご参照ください。
- バリューセリング
経営層はツールではなく「ビジネスソリューションを購入する」ということに留意し、お客さま側で期待する効果(売上アップ、コストカット、リスク低減など)を整理する必要があることに留意する。プロダクトをセールスする担当者以上にその価値を知る人はいないため、その価値を定量化しお客さまに示すことが、セールスの役割である。
- セールスメソドロジー
セールス活動(ターゲティング、見込みの整理、バリューストーリーの作成、デモ・トライアル・PoCの実行、商談、受注)の一連について考えることを、ここではセールスメソドロジーと呼ぶが、セールスがどのような状況(i.e. 勤務している場所が異なる場合)でも、一貫性を持ってセールスサイクルを回せることが、セールスメソドロジーを導入する目的である
- お客さまのトレーニング
よいセールスチームは、お客さまの中でもビジネスサイドの関与者はAEがアラインし、より技術的な部分の関与者はSEがアラインをとりながら、お客さまのトレーニングを実施する
- セールスエンジニアリング
SE(プリセールス)の重要な役割は2つある。1つ目は、“プロダクト”と”バイヤーのビジネスニーズ”の関連性を作ること。2つ目は、プロダクト価値を定量化すること。エンタープライズにより深く入り込んでいく場合、SEがより技術寄りであるべきか、ビジネス寄りであるべきか、組織にとって役割を果たすべき役割を考える
- セグメンテーション
エンタープライズには法務や情報システム、購買が存在するため、セールスサイクルが長期化しやすい。セールスサイクルを分析し、Tierに応じたパターンを掴むこと。例えば、従業員が1,000名以上のお客さまでは、平均よりもセールスサイクルが30%以上長いなど
- セールス組織体制
セールスマネジメントには早くから注力したほうがいい。会社によっては、1人のセールスマネージャーにSMB系の取引とエンタープライズの取引を任せてしまう(1)、 または1人のセールスマネージャーに対して、多くのAEをつけてしまう(2)傾向があるが、これらには注意する必要がある
1の場合、セールスサイクルが1週間~1ヶ月で完結する取引と、数ヶ月かかる取引のコンテキストを交互に考えることは難しい。2の場合、より効率性を求め1人のセールスマネージャーに多くのAEをつける傾向にあるが、これは短期的かつ近視眼的なアプローチになってしまう
もしSMBからエンタープライズにビジネスをシフトする場合、それはコストがかかるものと認識するべき。高いARRを達成するまでは不安定で、新しい活動に組織全体が順応するまで予測がつかない。初期の頃は理想の人員配置の比率もわからず、お客さまのニーズを学習しながら、それに合わせた組織体制を構築していくことになる
PEによるSaaS上場企業買収の波!Thoma BravoがPing Identityを$2.8B(約3,800億円)で買収
米上場マーケットでのSaaS株の割安感から、大手PEのSaaS上場企業の買収が続いている。米・シカゴを本拠にする大手PE Thoma Bravoは、デジタルIDセキュリティSaaS Ping Identityを$2.8Bで買収を発表した。今年に入って、Thoma Bravoによる米SaaS上場企業による買収は、Anaplan($10.7B)とSailPoint($6.9B)に続いて3社目。Ping Identityは、この買収により未上場化。
アジア発サイバーセキュリティSaaSの雄 Acronis, $250M(約340億円)を調達
2003年にシンガポールで創業したAcronisは、企業向けにバックアップデータのサイバーセキュリティとファイル同期・共有のSaaSを提供している。現在はスイスに本社を移し、世界34拠点で活動している。世界150ヵ国以上に75万社の顧客を抱えている。世界のサイバーセキュリティ市場は2029年までに年率13.4%で成長が見込まれる急成長市場。今回はBlackRockから調達。バリュエーションは、$2.5B(約3,400億円)。
EC特化マーケティング・オートメーションSaaS Klaviyo, Shopifyから$100M(約135億円)の戦略的調達
2012年米・ボストン発のKlaviyoは、EC事業者向けに顧客へのメールやメッセージ送信を自動化し、豊富なテンプレートと予測分析ツールを提供するSaaSスタートアップ。今回の調達、EC構築SaaS大手Shopifyとの戦略的パートナーシップを強化する目的がある。KlaviyoはShopify Plusの推奨プロダクトで元々関係が深い。Klaviyoは、ユニリーバやシチズンを含む10万社の有料顧客を抱える業界のリーダー企業である一方、年々競争が激化しており、差別化を図る必要がある。またShopifyも近年レコメンデーションやMartechへの投資を強化しており、戦略も合致している。
AI支援型カスタマーサポートSaaS Aisera, シリーズDにて$90M(約122億円)を調達
2017年米・カリフォルニア創業のAiseraは、カスタマサポート、IT、セールスや運用の問題を自動解決する「予測型AI」を提供するSaaSスタートアップ。創業者兼CEOのMuddu Sudhakarは、VMWareやSplunkなどに買収されたスタートアップを複数創業した連続起業家。Aiseraのソリューションは、近年急速に進化する自然言語処理AIとRPAを組み合わせている。Aiseraの粗利率80-90%で、年間成長率は300%と急成長を遂げている。今回のシリーズDはGoldman Sachsから調達。
住民の自治体への支払いをラクにするSaaS PayIt, $90M(約122億円)を調達
2013年米創業のPayItは、自動車、税金、裁判所、公共事業などパブリックセクターに向けて、ウェブ・モバイルで住民がデジタル決済を可能にするSaaSを提供している。顧客には、トロント市、ノースカロライナ州などのデジタル化に先進的な自治体が含まれている。過去6年連続でGovTech100に選出されている。本ラウンドでは、Macquarie Capital Principal Financeから調達。
エンタープライズ経営の意思決定をAIで支援するSaaS Arena, シリーズAで$32M(約43億円)を調達
「企業の意思決定は自動化できるのか?」2019年創業のArenaは、予測アルゴリズムでこの難題に立ち向かうSaaSスタートアップ。現状の用途は、プライシングや在庫シミュレーションに使われている。創業者の1人Pratap Ranadeは、マッキンゼーでアソシエイト・パートナーを務めた後、Kimono Labsを創業し、2016年にPalantirに買収。もう1人のEngin Uralは、Goldman Sachsでエンジニアを務めた後、Palantirに入社し、Pratapと出会った。本シリーズAは、Initialize Capital、Founders Fundの他、Peter Thiel個人やY-Combinator CEO Michael Seibelも出資している。
プロダクト開発のユーザーリサーチを支援するSaaS Sprig, シリーズBで$30M(41億円)を調達
2018年米創業のSprigは、人材不足感が強いユーザーリサーチ業務を自動化し、リアルタイムで迅速かつ簡単に把握することでプロダクト開発を加速化するSaaSを提供するスタートアップ。テック企業のCEOは顧客体験を差別化要因と捉えているにもかかわらず、ユーザーリサーチを開発プロセスに組み込めておらず、投資が十分にできていない。Sprigは、この課題解決に挑戦している。本シリーズBは、Andreessen Horowitz、Accel、Elad Gilなど超一流の投資家が投資している。
フィールドサービス事業者向けSaaSを提供するミツモア、シリーズBラウンドで総額23億円調達
見積もり比較・受発注サービス「ミツモア」およびフィールドサービス事業者向けSaaS「MeetsOne」を提供。ミツモアのサービス経験から、業務生産性向上サービス「MeetsOne」を開発。 MeetsOneは、エアコン、電気工事などの短期工事系事業者の業務を現場からバックオフィスまですべてカバーする業務管理クラウドサービス。今回調達した資金を通して、人材とマーケティング活動を強化する。本ラウンドに参画した投資家は。下記の通り。
- Eight Roads Ventures、MPower Partners、三菱UFJキャピタル、Angel Bridge、WiL
データベース型iPaaSを提供するYoom、8.4億円調達
2022年6月23日付で新会社「Yoom株式会社」を設立。株式会社TimeTechnologiesよりYoom事業を譲り受け、合わせて株主割当増資により8.4億円を調達。様々なSaaSを連携したデータベースをノーコードで作成し、複数のSaaSをまたいだ業務フローを自動化。サービス利用社数は800社を超えている。今回調達した資金は、「Yoom」のプロダクト開発に充てられる。
顧客体験向上プラットフォームVideoTouch(旧Viibar)、7億円調達
Viibarから社名を変更し、これまで展開してきたクラウドソーシングサービスから顧客育成プラットフォーム「VideoTouch」に事業を一本化。VideoTouchでは、企業がカスタマーサポートや営業、社内マニュアル、研修など様々な場面における動画活用を支援する。2021年4月に正式リリース後、上場企業を含む様々な企業が導入。今回調達した資金は、プロダクトとビジネス体制の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は。下記の通り。
- フェムトパートナーズ、プレイド
製造業向けエッジAIを提供するフツパー、シリーズAで4.2億円調達
外観検査自動化AIソリューション「メキキバイト」をはじめとするAIソリューションを提供。撮像環境構築からAI構築/運用までワンストップで提供。30社を超える企業に導入されており、今後は検品・検査業務の自動化から不良品除去の自動化、製造プロセス全体の最適化に向けたトータルソリューションの開発を目指す。今回調達した資金は、人材採用の強化及びプロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は。下記の通り。
- フューチャーベンチャーキャピタル、池田泉州キャピタル、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、ANRI、グローブアドバイザーズベンチャーズ、広島ベンチャーキャピタル、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ
電子契約サービスを提供するサインタイム、シリーズBで3.9億円調達
2021年より電子契約サービス「サインタイム」の提供を開始。電子署名機能や契約書のテンプレート化、一斉送信機能、検索性向上のためのタグ機能などの機能を提供。日本を中心に、現在はアジアで事業を展開する企業もサービスを利用。本ラウンドに参画した投資家は。下記の通り。
- 自然キャピタル、アイティシーズ株式会社、エンジェル投資家 パトリック・マッケンジー氏
位置情報分析プラットフォームを提供するクロスロケーションズ、シリーズBで3.8億円調達
独自開発の位置情報ビッグデータ解析エンジン「Location Engine」とその機能を使ったクラウド型プラットフォーム「Location AI Platform」を提供。「Location AI Platform」では、自由度高くPOI(分析エリア)を指定でき、人流データをよりリアルタイムにチェックしながら、生活導線や顧客のライフスタイルを推測することが可能。今回調達した資金は、プロダクト開発、組織強化、新クラウドサービス「人流アナリティクス」のマーケティング活動に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は。下記の通り。
- ファンコミュニケーションズ、ジオテクノロジーズ、個人投資家