ARR100億円を目指す起業家のための『ケンタウルスレポート』 by Bessemer Venture Partners
Bessemer Venture Partners「The Centaur Report」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今年もCloud 100が発表されました。昨年までのSaaSスタートアップへの投資過熱により、評価額$1B以上の多数のユニコーンが生まれました。しかし、現在のような下落市場においては、より本質的な事業実績が問われるため、ユニコーン企業より未上場でARR $100M以上のケンタウルス企業が評価されるようになっています。BVPによると、現在ケンタウルス企業は160社程度で、ユニコーン企業よりも希少価値が高い状況です。
今年のCloud 100でも70%がケンタウルス企業で、今年の年末までに80%以上を超える見込みです。
では、ケンタウルス企業になるためにはどういう戦略を取るべきか?この記事では、ServiceTitan、Calendly、LaunchDarklyの3社の事例を元に紹介しています。
- ServiceTitan - 隣接産業展開とマルチプロダクト戦略
ServiceTitanは住宅サービス事業者向けのVertical SaaSのリーダー企業。初めに配管工事業向けで成功を収めた後、冷暖房工事、電気工事などの隣接領域に広げていきました。これに合わせて、CRMツール、決済、融資などマルチプロダクトでの「二の矢」の展開を加速させました。 - Calendly - 資本効率経営によるPLGとエンプラシフト戦略
Calendlyは、日程調整SaaSのリーダー企業。2013年創業当初、誰しもが日程調整アプリが大きなビジネスになることを期待していませんでした。創業者のTopeは、当初から資本効率を中核の経営理念に掲げ、外部資金に頼らないブートストラップで事業を拡大しました。この経営理念では、売上成長と収益性のバランスを取ることが需要なため、フリミアムを主体としたProduct-Led Growth(PLG)での成長戦略を取ると共に、プロダクトの拡張と外部ベンダーとの連携(Stripe、Zapier、Google、Microsoft等)も強化しました。また、エンタープライズセールスチームを強化し、年間10万ドル以上のこきゃくは昨年だけで10倍に増加させています。 - LaunchDarkly - プロダクトリーダーシップと市場の啓蒙によるカテゴリー確立戦略
LaunchDarklyは、エンジニア向けの機能管理SaaSのリーダー企業。2014年創業当初は、機能フラグを簡単に管理できるプロダクトからスタートしました。機能フラグは、ソフトウェア開発者の夢の機能である一方、実装が大変でエラーが起こりやすい問題も多かったため、LaunchDarklyは複雑な社内システムでも使いやすく、拡張性のあるプロダクトに変えました。また顧客満足度に徹底的にこだわり、顧客の啓蒙も積極的に行ったため、エンジニアからの口コミにより、急速に顧客基盤が拡大しました。
プロダクトリーダーの3つのタイプと強み・弱み
Shreyas Doshi氏「Product Management」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Yahoo、Google、Twitter、StripeなどでPMを務めたプロダクトリーダーとしてご活躍されたShreyas DoshiさんへのインタビューPodcast。現在はAirtableのアドバイザーなど、投資家兼アドバイザーをしています。このPodcastでは、起業家向けにPM採用でどういうタイプを雇うべきか?を考える上で重要なプロダクトリーダーのタイプを解説しています。創業者の特性やステージによって、必要なPM像が異なる点がポイントです。
Operator(オペレーター)タイプ
● 得意なこと
- 組織をスケールさせること
- ステークホルダーとの連携を取ること
- 業務遂行の障害物を取り除くこと
- ピカピカの経歴なこと多い
● スーパーパワー:「コミュニケーション」
● 苦手なこと
- 独自のプロダクトへのインサイトを生み出すこと
● その他
- 経歴がスゴイので採用されやすいが、アーリーステージのPMFやポジショニング構築のPMには向かない。CPO採用で間違いが起こりやすい。
- このタイプは、社内の他部門のリーダークラスや役員との時間を大切にする
Craftsperson (職人)タイプ
● 得意なこと
- 曖昧なゴールやビジョンからプロダクトを具現化すること
- プロダクトを通して素晴らしいユーザー体験を作り出すこと
- プロダクトの定義や戦略を立てて、プロセスに落とし込むこと
- 他のPMのメンタリングすること
● スーパーパワー: 「プロダクトインサイト」
● 苦手なこと
- 大規模な組織をマネージすること(そもそも興味が無いことも多い)
● その他
- このタイプは顧客、自分のチームと過ごす時間を最も大事にする
- どんなプロダクト組織にも不可欠な存在
- アーリーステージで最初に雇うPMとして一番マッチするタイプ
- 創業者のケイパによって適合する
Visionary(ビジョナリー)タイプ
●得意なこと
- Big Picture思考・メタ思考
- 世界でどういう潮流があるかをつかむこと
- プロダクトの未来がどうあるべきかに明快な回答を作ること
● スーパーパワー:「他の人が見えてないことが見える」
● 苦手なこと
- 彼らの見える世界を言語化して、具体的なステップに変換することが難しい
● その他
- もっとも希少なタイプ
- ビジョナリータイプは、職人タイプやオペレータータイプと協業することで機能する
- 優れたスタートアップの創業チームには必ずこの能力が高い人が多い
BizOpsとは?3つの分野と必要なスキル
上村 篤嗣氏「BizOpsとは?3つの分野と必要なスキル」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
「Ops」の重要性について、その期待役割や業務内容を整理しながら説明されており、理解をより一層深めることができるhacomonoの上村さんのnoteを紹介します。実際の国内外の求人票や実務経験から帰納的に解説をされています。
BizOpsの期待役割
"経営陣からのやっかいな課題(thorny business challenges)"、特定の部門に落とし込まれる前の、抽象度の高い複雑なイシューを扱う。
- 抽象度が高く複雑なビジネス上の問題解決を担う
- ステークホルダーを巻込み、コミュニケーションと合意形成を行う
- 現状を調査し、集めたデータを分析し、As isとTo beを描く
- 既存のオペレーション体制を見直し、生産性を改善する
- 社内向けコンサルタントでありピンチヒッターとして活動する
BizOpsの3つの整理
- 攻めの分野を切り出したSalesOps
- 守りの分野を切り出したRevOps
- データ活用を切り出したDataOps
ぜひ、それぞれについて具体的にわかりやすく説明をされていますので、Opsに携わる方や必要性を感じている経営者の方は必見の内容になっています。
“事業開発”と”PdM”の役割の整理
Estie「PdMと事業開発って結局何が違うんや」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
不動産業界向けVertical SaaSを提供するestie 束原さんの記事をご紹介します。
SaaS企業によって、事業開発(BizDev担当者)とPdMの役割や責任範囲は変わるものであり、正解を見つけるのは難しいテーマですが、とても読みやすく整理いただいています。プロダクト開発のプロセスから考える両者の役割をフレームワークなどを用いて読みやすく解説いただいています。
ブランド企業向けユーザーリテンションSaaS CleverTap, $105M(約139億円)を調達
2013年インド創業のCleverTapは、ECや大手ブランド向けに顧客リテンションの向上と売上改善を支援するSaaSスタートアップ。顧客にはキヤノン、エアアジア、イギリスのプレミアリーグなど1,200社の大手企業を抱えています。かつてブランド企業はアプリ開発とDL数増加に多大なる投資を行ってきましたが、近年では既存のユーザー維持に重点を置く傾向が強くなっています。今回の調達では、カナダで2番目に大きい年金基金であるCDPQがリード投資家。その他にTiger Globalも参加しています。
エンタープライズ向けブラウザSaaS, Talon Cyber Security, シリーズAで$100M(約133億円)を調達
企業は、社員が分散型の働き方に移行する中で、SaaSへの依存度が高まり、その反面セキュリティニーズが大幅に拡大しています。イスラエル発のTalon Cyber Securityは、通常だと複雑で高額なセキュリティを、あらゆるデバイス、OS、SaaSへの安全なアクセスを可能にし、簡素化させるSaaSを提供するスタートアップ。すでにCrowdSrikeとMicrosoftと戦略的パートナーシップを締結しています。今回のシリーズAは、Evolution Equity Partnersがリードし、CrowdStrikeのCVC Falcon Fund、同社の創業者兼CEO George Kurtz、Lightspeed Venture Partnersも参加しています。
パーソナルケア産業特化All-in-one SaaS Boulevard, シリーズCで$70M(約93億円)を調達
2016年米・LA創業のBoulevardは、ヘアサロンやスパなどの美容・ウェルネス分野の店舗運営に必要な予約、顧客管理、POS決済、マーケティングなどを一気通貫で提供するSaaSスタートアップ。この1年でARRは188%成長し、2,000社のヘアサロンやスパに導入されている。本シリーズCは、Point72 Private Investmentsがリード投資家。バリュエーションは非公開ながら、ダウンマーケット最中でありながら、昨年夏から3倍に拡大。
米国で急増する消費者ローンの提供者向け審査自動化SaaS Truework, シリーズCで$50M(約66億円)を調達
2017年米・サンフランシスコ創業のTrueworkは、Gusto、Zenefitsなどの給与計算SaaSと連携し、住宅ローンや自動車ローンの貸し手が、借り手の収入や雇用を瞬時に確認できるSaaSを提供するスタートアップ。2020年の住宅ローンの需要の高まりから、米国では消費者金融の借入が急増しています。ローン審査プロセスでは、いまだに紙の給与明細や書類を収集しており、収入・雇用証明の自動化ニーズは高まっています。本シリーズCは、リード投資家のG Squaredの他に、Sequoia Capital、Khosla Ventures、リクルートの子会社Indeedなども出資している。
Stripeの競合 決済組込みFintech×SaaS Finix, シリーズBで$30M(約40億円)を調達
Finixは、ソフトウェア企業が自由かつ簡単に決済処理を組み込む支援をするSaaSを提供するスタートアップ。2020年にSequoia CapitalからのシリーズB調達を発表しましたが、FinixがSequoia Capital投資先のStripeと競合する可能性が強まったため、全額返金しました。今回のシリーズBは、Bain Capital Ventures, Insight Partners, Lightspeed Venture Partnersなどが出資しています。
飲食業の食品の品質監視・需給予測SaaS PreciTaste, シリーズAで$24M(約32億円)を調達
米国の飲食産業は、クイックサービスレストラン(QSR)が急増する一方で、コロナ禍でのスタッフの離職や品質管理の課題に直面している。PreciTasteは、QSR分野でのデジタル最適化のニーズに答え、食品の品質を監視し、需要と供給を予測するSaaSを提供している。PreciTasteを活用することで、レストランの食品廃棄を85%カットすることができます。本シリーズAでは、Melitas VenturesとCleveland Avenueがリード投資家。
外科手術トレーニングXR×SaaS FundamentalVR, $20M(約27億円)を調達
FundamentalVRは、VRとMRを組み合わせて、ヘルスケア専門職向けに外科手術の没入型シミュレーションSaaSを提供するスタートアップ。ゲーム業界などのニッチ産業で広がったXR技術は、新人の医師や外科医がスキルを維持し、新しい手法を学ぶために活用されるケースが増えています。外科手術では技術の移転と手術の熟練が大きな課題になっています。FundmentalVRの顧客には米国のNYU Langone, UCLA、英国のImperial Collegeなどの医療機関、デバイスメーカー、新規治療法を開発する製薬メーカーが含まれています。本ラウンドは、EQT Life Scienceがリード投資家。
リサーチDXを推進するストックマーク、シリーズCで11億円調達
ニュースをレコメンドするビジネス情報収集サービス「Anews」、AIが市場調査をサポートするビジネスリサーチサービス「Astrategy」を提供。国内外35,000サイト、年間数億ニュースの解析を実現する国内最大規模の情報プラットフォームを活用し、新規事業や商品、技術開発における市場調査を「Astrategy」を通して支援。国内大手製造業企業を中心に活用が進んでいる。今回の調達を経て、今後はプロダクト開発や販路拡大、組織強化を目指す。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 大和企業投資、東北大学ベンチャーパートナーズ、博報堂DYベンチャーズ、Bonds Investment Group、ユナイテッド、三菱UFJキャピタル
決裁者マッチング支援を提供するオンリーストーリー、総額約9.55億円調達
決裁者マッチング支援SaaS「ONLY STORY(無料版)」「チラCEO(有料版)」を開発。決裁者向けスカウトメッセージ機能や掲示板機能などを提供。直近1年半で会員数が2倍以上の6000社を超え、大手企業決裁者とのマッチングも実現している。今回調達した資金は、マーケティング、開発体制、採用の強化、および新規事業立ち上げに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ニッセイ・キャピタル、エッグフォワード、ユーザベース、商工組合中央金庫、静岡銀行
AIデータプラットフォームを提供するFastLabel、シリーズAで4.6億円調達
教師データ作成の自動化機能や品質管理、プロジェクト管理、モデルの学習/評価機能を有するSaaS、および、教師データ作成代行やデータコンサルティング、モデル開発等のサービスを提供。製造業や建設業、通信・インフラ、ITサービス業界に導入が進んでいる。今回調達した資金は、プラットフォームの更なる機能拡大や採用に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジャフコ、NTTドコモ・ベンチャーズ、セーフィー、ソニー、ジェネシア・ベンチャーズ