米SaaSスタートアップのARR規模別成長率と効率性指標レポート
Iconiq Capital「Topline Growth & Operational Efficiency」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Facebook, Airbnb、UBERなどの投資実績のある米トップのグロースファンド ICONIQ Growth。Zoom、Notion、Airtable、ServiceTitanなど、SaaSに関しても屈指の投資実績を誇ります。彼らは徹底したデータ分析を行うことに定評があります。こちらのレポートは、彼らの投資先や上場企業も含めて、ARR規模別での成長率や資本効率指標が詳細に出ています。特にグロースファンドは上場マーケットと近いので、数値だけではなく、どういった指標を見てるかもチェックしておく価値はあると思います。
業界をリードするバーティカルSaaSになるための6つの鉄則
Index Ventures「With Hundreds of Billions up for Grabs, the Race to Power Legacy Industries just Got a lot More Interesting.」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカ屈指のリターン実績を誇るVC Index Venturesによる、バーティカルSaaSに関する解説記事。同社はServiceTitan(ホームサービス)、Built(建設)、ShopMonkey(自動車修理)、Tekion(自動車販売)、Seso(農業)など様々なバーティカルSaaSへの投資の経験から、バーティカルSaaSで業界をリードするための6つの鉄則(プレイブック)を解説してます。
- ディスラプトの機が熟した巨大産業を選んでください:
石油・ガス、医療、教育、物流、運輸、政府など。最も大きな産業のいくつかは、いまだにExcelと紙のメモ帳によって運営されています。これらはすべて$50Bドル以上の市場であり、ARR$100M以上を生み出すには十分なチャンスがあります。 - 業界の専門知識を身につける:
創業チームのDNAに業界に関する専門知識(ドメイン・エキスパート)が含まれていることほど強力なものはありません。Benchling、ServiceTitanは創業者達は元々顧客業界にいた人間です。PlanGrid創業者のTracy Youngの場合も、6年間建設現場で働いていました。 - たった1つの非常に大きなペインポイントを解決することから始める:
顧客にとってミッションクリティカルになるために、最も成功しているバーティカルSaaS企業は、とても明確な1つのバリュープロポジションから始めています。例えばProcoreは、プロジェクトでコラボレーションしながらドキュメントを閲覧するツールをユーザーに提供することから始めました。 - システム・オブ・レコード(SoR)になる:
SoRになることで、その後にプロダクトを生み続けることができます。メッセージング、コールトラッキング、スケジューリングなど、バーティカルSaaSが顧客のビジネスの”背骨”になることができます。 - 最終的にはシステム・オブ・エブリシングになる:
決済を統合し、さらに大きなTAMを獲得します。バーティカルSaaSが顧客のワークフローを押さえたら、次の成長のベクトルは、そこに出入りする全てのお金(決済)に対して力を発揮することです。SaaSを最初に構築することで、決済のようなFintechやマーケットプレイスで顧客をロックインをすることができるのです。Shopify、Mindbodyは、SaaSから始めて、現在では決済に重点を置いています。 - 隣接するバーティカルに広げる:
ある特定の産業バーティカルのシステム・オブ・レコードになる方法を見つけたら、同様に対応可能な隣接の巨大市場が存在するので、そこへもアプローチができます。ServiceTitanの例では、水道修理から屋根修理、害虫駆除などのホームサービス向けに広げました。
プライシングの基礎 by Y Combinator
Y Combinator「Startup Pricing 101」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
スタートアップにおけるプライシングは成長の要であり、これは絶えず見直しをしていく必要があります。多くのSaaS企業は「Value-based」でプライシングになると思います(もちろん、コストと競合は常に意識すべきです)が、その際に初期スタートアップがよく陥りがちな罠について基本から解説をされている記事です。
陥りやすい罠
- 価格が低すぎる
- コストを考慮できていない
- 提供価値を理解できていない
- 間違った顧客にフォーカスしている
日本のスタートアップに重要なポイントとは?
この中で、日本のSaaSスタートアップが意識すべきなのは3と4だと感じます。このプロダクトを使ってほしい「理想のお客様(ICP)」と抱えているペインは何か?そして彼らにどんな価値を提供するのか?というバリュープロポジションを徹底的に言語化していくことが重要です。
PMFという大きな概念に囚われていると、スタートアップが提供すべき「アーリーアダプター」のお客様への熱狂を起こすことができません。彼らは価格よりも価値・メリットにとにかく敏感です。プライシングで悩んでいるスタートアップは今一度「アーリーアダプター」を追いかけることを意識すべきなのです。
コラボレーション型デザインSaaSデカコーン FigmaをAdobeが$20B(約2.9兆円)で買収に合意
Figmaは、2013年に米・サンフランシスコで創業したデザインツールの一角をなす世界的なスタートアップ。同社は競合であるAdobeに$20Bでの売却に合意した。今年末のARR $400M、YoY成長率 +100%、NDR 150%と売上規模、成長性ともに素晴らしい。しかもキャッシュフローポジティブ。今回の取引で注目されたことは、50xというマルチプルの高さだ。現在の上場市場が10x以下であることを考えれば、破格とも言えるが、Figmaが現在以上の成長を可能性もある場合、1年足らずで市場水準に近づくと考えられる。YoY成長率が+13%と不振が続くAdobeとしては、Figmaのような「成長エンジン」がどうしても欲しかったとも読み取れる。IPOマーケットが凍結し、マルチプルが低迷するSaaS業界においては、久しぶりに明るいニュースと言える。
ビルセキュリティのハードウェア+SaaS Verkada、シリーズDで$205M(約293億円)を調達
創業6年のVerkadaは、監視カメラやセンサーなどのハードウェアとそれを管理するSaaSをall-in-oneで提供するスタートアップ。顧客はエンタープライズ企業を中心に、警察署、学校、病院など幅広く提供している。2年前の資金調達から、顧客社数は4倍の1.3万社、従業員数も1,000名以上増えて急拡大している。一方で、Verkadaは、メディアを騒がせる問題の多い企業。自社のセキュリティ体制が甘いためハッカーに侵入され、顧客の監視カメラの動画が流出させたり、男性的なカルチャー(Bro culture)が強く、自社の監視画像を使った女性社員への性的なからかいや言葉での嫌がらせが取りざたされたり、急成長の一方で問題を抱えるスタートアップとも言える。本シリーズDはLinse Capitalがリード投資家の他、Sequoia Capitalなど多くの投資家が参加している。バリュエーションは、$3.2B(約4,600億円)。
マルチクラウドのデータセキュリティSaaS Fortanix、シリーズCで$90M(約129億円)を調達
2016年米・サンフランシスコ創業のFortanixは、エンタープライズや政府機関などにデータ起点でのセキュリティ対応のSaaSを提供するスタートアップ。近年では規制要件が強化され、企業の罰金額も増加。Fortanixは、セキュリティをインフラから切り離すことでこの問題に正面から取り組み、データがどこにあろうと、データを保護できる。さらに、GDPR、HIPAA、PCI、ITARなど、世界各国のプライバシー法にも準拠できる。この3年で売上は552%増加。本シリーズCはGoldman Sachs Asset Managementのグロース投資部門がリード投資家。
世界の航空・海運輸送の運賃相場SaaS Xeneta、シリーズDで$80M(約114億円)を調達
ノルウェー創業のXenetaは、航空輸送・海運輸送の利用企業から「いつ・どこからどこへ・いくか支払った」のかのデータを収集して、貿易コストの適正化を支援するスタートアップ。現在の顧客は、P&G、ユニリーバ、ネスレ、ボルボ、ゼネラルミルズなど超大手企業が含まれている。今後1,000社の協力企業を目指している。本シリーズDはPEファーム Apax Digitalがリード。バリュエーションは、$265M(約380億円)。
クラウド利用料を自動で最適化するSaaS Zesty、シリーズBで$75M(約107億円)を調達
企業のクラウド利用量は、年率+30%程度で増えている一方、クラウドに余分に投資している”無駄”も増えている。Zestyは、マルチクラウドの利用企業に向けて、クラウドストレージをAIで自動で調節して、コスト削減を支援するSaaSスタートアップ。すでに300社以上が利用している。すでにARRは数十億円を超えている。本シリーズBはB CapitalとSapphire Venturesがリード。
カーボンクレジットSaaS Patch、シリーズBで$55M(約79億円)を調達
アメリカとイギリスを本拠とするPatchは、2020年に創業した企業同士のカーボンクレジットの売買を簡単にするSaaSを提供するスタートアップ。今後10年でカーボンクレジット市場は、$50B(7兆円)に拡大するとみられている。顧客数は1年間で、5倍の100社を超えるペースで増えている。本シリーズBはEnergize Venturesがリード。Andreessen HorowitzやCoatueなども参加。
建設業界特化のマテリアル管理SaaS Kojo、シリーズCで$39M(約56億円)を調達
Kojoは、2018年にAgoraと言う名で創業した、アメリカの建設会社が資材のサプライチェーンを「シームレスに」管理することを目指すスタートアップ。年間数十万ドルもの材料費を削減し、さらに注文処理時間を50%短縮することができる。昨年はARRが3.5倍に成長。ユーザー数も12倍に伸びた。本シリーズCはBattery Venturesがリード。
クラウド型建設プロジェクト管理サービスを提供するアンドパッド、シリーズDラウンドで総額約122億円調達
現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」、他アプリとの連携をサポートする「ANDPADアプリマーケット」を開発・提供。今回の資金調達に伴い、今後の戦略的投資の基本方針「ANDPAD Second Act」を定め、カテゴリーリーダーとして更なる成長や、M&Aおよび資本提携を通じた新サービスおよび新規事業の創出を推進する。今回調達した資金は、採用・人材育成、海外開発拠点の拡充、事業拡大のためのM&A・出資に充てられる。本ラウンドに参画した投資家および金融機関は、下記の通り。
- Minerva Growth Partners、米国機関投資家、T. Rowe Price、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Ventures、ジャパン・コインベスト、日本政策投資銀行、フォースタートアップス、三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫
CO2排出量見える化・削減SaaSを提供するアスエネ、シリーズBエクステンションラウンドで7億円調達
企業・自治体のCO2を代表とするGHG*排出量を算出できるクラウドサービス「アスゼロ」を開発・提供。GHGプロトコル(温室効果ガスの排出量算定と報告の国際・世界基準)におけるサプライチェーン全体の排出量の見える化をサポートする。また、製品・サービスごとのCO2排出量を、原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまで見える化する「製品LCA」機能もリリース。契約受注額は毎月平均+150%超、顧客数は約400社超にまで成長している。今回調達した資金は、人材採用、マーケティング、アジアへの事業展開、新事業開発、買収に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Salesforce Ventures、SBIインベストメント、GLIN Impact Capital
SaaSのインテグレーション開発を支援するDatable、シードで2.25億円調達
SaaS企業向けに、自社プロダクトとSFA/CRMなど複数のツールを連携させ、スムーズな運用を可能にする「datable(データブル)」を開発・提供。国内外のSaaSをはじめ、基幹システムやDB製品、クラウド上に置かれたファイルとの連携など様々なツールとの連携に対応することが可能。今回調達した資金は、プロダクト開発および採用・組織体制の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ALL STAR SAAS FUND、mint、個人投資家
代理店連携管理クラウドを提供するパートナーサクセス、プレシリーズAで2.2億円調達
ベンダーと販売パートナーをつなぐPRM(Partner Relationship Management)クラウド「PartnerSuccess」を開発・提供。プロダクトを導入する企業数は411社(2022年8月末時点)まで成長し、パートナー管理コストの大幅削減やパートナー企業からの紹介リード数の増加を実現する事例も出てきている。今回調達した資金は、人材採用とプロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- グローバル・ブレイン、B Dash Ventures、Coral Capital、ALL STAR SAAS FUND
商談獲得自動化サービスを提供するimmedio、シードラウンドで1.5億円調達
ウェブフォーム連動型の商談獲得自動化サービス「immedio(イメディオ)」を開発・提供。企業が利用するウェブフォームやフォーム登録完了ページに「immedio」が提供するタグを埋め込むことで、見込み顧客がフォーム登録後、日程調整画面が自動的に表示されるなど、商談化の効率化を実現する。今回調達した資金は、プロダクトの開発とセールスに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- DNX Ventures、デライト・ベンチャーズ、Sansan
遠隔施工管理サービスを提供するSoftRoid、シードラウンドで総額1億円調達
クラウド型AIサービス「zenshot」を開発・提供。360度カメラを持って建築現場を歩くだけで画像処理AIが360度現場ビューを自動で作成。現場監督の現場訪問にかかる工数削減や施工品質の担保を実現する。今回調達した資金は、人材採用・組織強化、販促・広告費、プロダクト開発、特許の国際出願に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- インキュベイトファンド
企業間海外決済プラットフォームを提供するRemitAid、シードラウンドで6,000万円調達
海外への輸入・輸出を行っているメーカー、小売業者、EC事業者などを対象に、海外取引先への支払いや受取りにおける法人のクレジットカードを用いた決済を、開発なしで搭載できるサービスを開発・提供。バイヤー、サプライヤー両者が抱えるプロセスの煩雑さや決済リスクなど国際決済に関わる課題を解決する。今回調達した資金は、開発リソースの強化、販売およびマーケティング活動に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシア・ベンチャーズ、プライマルキャピタル
プライバシーテックサービスを提供するPriv Tech、5,550万円調達
Cookie利用についての同意取得・取得状況管理から、他システム連携までをワンストップで実現する同意管理プラットフォーム(CMP)「Trust 360(トラスト360)」を開発・提供。パーソナルデータ活用とプライバシー保護の複雑性に課題を持つ企業をサポートする。今回調達した資金は、事業開発や人材採用に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- エンジェル投資家
ギフトプラットフォームを提供するギフトパッド、シリーズCラウンドセカンドクローズで資金調達
法人向けWEBギフトサービス「3X’s ticket(サンクスチケット)」やデジタルチケット発券システム「Ticket Button(チケットボタン)」などオンラインギフト機能を中心としたギフトプラットフォームを開発・提供。現在300社以上の企業・自治体が利用しており、セールスプロモーションやマーケティング、株主優待、福利厚生などの活動で利用されている。今回調達した資金は、サービス機能開発や認知拡大の企業連携・マーケティング活動に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 博報堂DYベンチャーズ
研究エンパワープラットフォームを提供するLabBase(旧POL)、シリーズBラウンドで資金調達
理系学生と企業をつなぐスカウトサービス「LabBase就職」、研究開発者・技術者と企業をつなぐスカウトサービス「LabBase転職」、研究室検索サービス「LabBase研究室サーチ」などを開発・提供。「研究の力を、人類の力に。」という新パーパスのもと、研究領域のサービスを拡充し、研究者や研究に関わる人材向けの提供価値を拡充する。今回調達した資金は、ソフトウェアエンジニア/リサーチエンジニアの採用や、新規事業の開発などに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、久能 祐子氏(元 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 アドバイザー)、高橋 祥子氏(株式会社ジーンクエスト 代表取締役)