ポストクラッシュのVCマーケットの今後は?
Bothsides of the Table「What Does the Post-Crash VC Market Look Like?」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
セールスフォースに2回事業を売却した連続起業家で、Upfront Ventures創業者兼GP Mark Suster氏による、今後のVCマーケットに関する考えを紹介した記事。日本市場はアメリカ市場程のドラスティックな変化は起こりにくいですが、VCの状況は類似しているものがあると思います。今後VCから資金調達の際に、知っておいて良い内容だと思います。
- 2021年のマルチプルには戻らない
昨年のようなEV/NTMベースで24xには、今後戻ることは無い。過去のヒストリカルデータで考えると、10x程度に戻るのが妥当なライン - 未上場マーケットも今後上場マーケットの影響は受ける
未上場スタートアップの場合、毎日株が売買される上場企業と異なり、次の資金調達(6-24ヶ月)までバリュエーションの影響は出ない。しかし、レーターに始まり、シリーズA、シードにも影響は出てくる - VCマネーは潤沢にあっても、VCの目線は厳しくなっている
米国VCのOverhang(未投資のVCマネー)は、過去10年と比較しても4倍の$290Bもある。VCは、2019年/2020年に調達をしたスタートアップが、現在の「ニューノーマル」の目線を維持して出資を検討している。 - VCは「Super Size」と「Super Focus」に二極化している
Tiger Globalの出現により、VC版Goldman Sachsを目指して、「Super Size」VCにシフトした。一方で近年の市況を踏まえて、Upfront Venturesのように、ファンドサイズ以外の”エッジ”を持つ「Super Focus」VCも注目されている。そのタイプのVCは、他の投資家よりも何か(テーマ)あるいは、誰か(アクセス)をよく知っていることが必要。 - VCはPower Law(べき乗則)のビジネス
VCは全体の20%の投資が、80%以上の資金回収になるPower Lawがある。VCビジネスの美しさは、一時的なモーメンタムがなく、資金調達に苦労しようとも、他に真似できないような強力な強みを磨いた支援先を辛抱強く支援し続けることが、大きなアップサイドを取れるところにある。
BtoB SaaSスタートアップに必要な戦略
ALL STAR SAAS FUND メンターの戸栗さんのnoteのご紹介です。スタートアップは基本的に限られたリソースにレバレッジをかけて最大の効果を生み出していくものです。その土台としてICP(Ideal Customer Profile)、つまり理想的なお客様と彼らが抱えるペインをしっかり特定していくことが必要です。基本的なことですが意外とできていない企業も多いように思います。
改めて、オウンドメディアや広告などの施策の是非の前に、誰にどんな価値を提供していくのかという「戦略」に紐づいた議論が重要だと考えを深められる記事
コンテンツマーケティング(→オウンドメディア)を始めればいいってものではない話|戸栗 頌平(Shohei Toguri) | BtoB SaaS企業支援の株式会社LEAPT(レプト)|note
Value-ledで成長するために、Cloud 100の企業がやっていること
Salesforce Ventures「Cloud 100 Values」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Salesforce VenturesがCloud 100 2022の企業を調査し、それぞれの企業がどのようにして会社のバリューを大切にしながら事業や組織を成長させているか、その方法をまとめています。人材採用や組織開発、ブランディングなど、企業活動の隅々に関わってくる存在であるバリューですが、その維持や進化をさせるためにクラウド業界のトップパフォーマーが実践していることは、下記になります。
コミュニティを育てること
データ変換のソフトウェアをオープンソースで提供するdbt Labs(評価額$4.2B)は、「データ活用を専門にする人々をエンパワーし、組織のナレッジを創造し普及させる」というミッションの一部をサポートするために、データアナリストを育成してアナリティクスエンジニアに成長させる支援を行っている
Give Backすること
dTechスタートアップのGuild(評価額$4.4B)は、全従業員がボランティア活動のために利用できる5日分の有給休暇制度を提供している。またコラボレーションソフトウェアを提供するFront(評価額$1.7B)は「Pledge 1%」の方法を参考に、1%の資本と1%のプロダクトをNPOに提供し、さらには、従業員に年間で3日分のボランティアのために使える有給休暇制度を導入している
多様性を尊重する組織を支援すること
Guildでは、従業員の半分以上が6つのERGs(Employee Resource Group、従業員リソースグループ)に参加している。グループは「Black(黒人)」「Asian American/Pacific Islander(アジア系アメリカ人・太平洋諸島民)」「Latinx/Hispanic(ラテン系アメリカ人・ヒスパニック)」「 LGBTQIA+」「女性」「障がい者」で構成されている。ERGsのリーダーは四半期条件付きのストックオプションが付与され、それぞれのERGには予算が設けられている
声を上げること
セールスインテリジェンスツールを提供するOutreach(評価額$4.4B)のCEOであるManny Medina氏は、米最高裁が「ロー対ウェイド判決」を撤回した際「個人の権利が剥奪される時代において、会社のコアバリューをベースに会社をつくるのはとても困難だ」と言及し、従業員が医療サービスを受ける際の渡航費や食費、宿代などを支給するポリシーを制定した
カルチャーに生きること
Airtable(評価額$11.7B)の共同創業者でCEOのHowie Liu氏は、4つのバリュー「Humility(謙虚さ)」「Growth Mindset(成長志向)」 「Bias for Action(行動志向)」「Customer First(顧客第一主義)」を掲げており、それらが会社の成功を支えるドライバーになっている。例えば「Growth Mindset(成長志向)」 では、カルチャーとして従業員同士がフィードバックをしてそれぞれのキャリアの次のステップをアンロックすることに精を出したり、制度として書籍購入・トレーニング受講に充てられる予算を設けていたりする。また、新入社員の採用インタビューでは「過去にフィードバックを通して何か重要なことを学んだ経験をしているか?」という点をチェックしており、採用候補者の過去の経験や振る舞いが、会社の掲げるバリューアップにどう貢献するか、チェックしている。これを彼らは「Culture Add Interview(カルチャーアド・インタビュー)」と呼んでいる
会社のミッションと個人をつなげること
チームへのエンゲージメントを高めるために重要なことの1つとして、高い帰属意識をつくることが挙げられる。帰属意識があることにより、従業員が会社のミッションとつながっていると感じることができるからである
下記は、Cloud 100の会社が、単にソフトウェアを売ることではなく、それを超えてチームの目的意識を高めるために行ったミッションステートメントの事例である(一部抜粋)
- Databricks:レイクハウス・プラットフォーム上でデータ、アナリティクス、AIを統合し、お客さまのイノベーションを加速させる
- Guild:教育、技術支援、キャリア支援を通してアメリカの従業員の機会をアンロックする
- Snyk:世界中の開発者を支援し、デジタルの世界を全ての人にとって安全な場所にする
AWSに勝負を挑むクラウドストレージ Wasabi、シリーズDで$250M(約363億円)を調達
クラウドストレージ分野は、AWS、マイクロソフト、GCPが世界シェア65%を寡占している。2015年創業のWasabiはこの中でも、Amazon Simple Storage Service(通称S3)に競合するサービスを提供するスタートアップ。激しい競争にもかかわらず、世界で4万社以上の顧客を獲得している。Wasabiは、APIリクエストに料金を課さないため、そのストレージ料金はAmazon S3の5分の1になると主張している。S3に対抗するため、昨年、ロンドン、パリ、フランクフルト、トロント、大阪、シドニー、シンガポールにストレージ地域を追加し、合計13リージョンとなり、Amazon S3の約22リージョンに迫ろうとしている。本シリーズDは、エクイティ調達が$125M、残りの$125Mはデット調達で、L2 Point Managementがリード。バリュエーションは、$1.1B(1,600億円)でユニコーンの仲間入り。
飲食店のダークキッチン対応特化SaaS Not So Dark、シリーズBで$80M(約116億円)を調達
フランス発のNot So Darkは、フードデリバリー専業で飲食店がブランドを立ち上げるダークキッチンを支えるSaaSを提供するスタートアップ。当初はダークキッチンのネットワーク化で創業したが、シリーズA後にピボット。現在Not So Darkはフランス・ベルギーの100都市で展開しており、300以上のバーチャル飲食ブランドを運営している。課金モデルは、フランチャイズのようにリベニューシェア。本シリーズBは、Kharis CapitalとVerlinvestがリード。
フランス発のビジネスプランニングSaaS Pigment、シリーズB+で$65M(約94億円)を調達
フランス発のPigmentは、Salesforce、Workday、Snowflakeなどと接続し、事業プランニングやフォーキャスト作成を、リアルタイムで優れたUI/UXで実現するSaaSスタートアップ。小規模企業が使っているエクセルや、オラクルやSAPを利用している大企業をターゲットにしている。ARRは6ヶ月で5倍と順調に成長しており、FigmaやCartaなど100社が顧客になっている。本シリーズB+はIVPとMeritech Capitalがリード。
デスクレスワーカー特化採用・オンボード支援SaaS Workstream、シリーズBエクステンションで$60M(約87億円)を追加調達
米・サンフランシスコ創業のWorkstreamは、小売、飲食、倉庫などデスクレスワーカーを多く抱える産業向けに、モバイルファーストでの採用・入社オンボード支援のSaaSを提供するスタートアップ。直近1年半で売上は10倍に成長しており、現在4,000社、2万4千拠点で利用されている。導入企業としては、ホテル大手マリオット・インターナショナルや物流大手UPSなどが名を連ねる。本エクステンションラウンドは、既存投資家のGGV Capitalがリード。その他にFounders Fund、Coatue、BONDなど名立たる投資家が参加していることからも、Workstreamの成長力の高さを感じさせる。
AIでデータクレンジングを自動化するSaaS Flatfile, シリーズBで$50M(約73億円)を調達
データサイエンティストは、予測分析などの下準備としてデータクレンジングに60%の時間を費やしていると言われます。Flatfileは、この手間のかかるデータクレンジングを自動化するために、とりこんだデータを構造化する支援をするSaaSスタートアップ。Flatfileは、アマゾンのTextractや、マイクロソフトのForm Recognizerなどが競合サービス。ARRは$5Mを超えており、今後12ヶ月で2倍以上に成長すると予測している。本シリーズBは、Tiger Globalがリード。この他にGoogleのAIに特化したファンドGradient VenturesとWorkdayも参加。
エンジニアの社内ツール開発を高速化するSaaS Airplane, シリーズBで$36M(約51億円)を調達
Airplaneは、バイオテクノロジー研究者特化SaaSユニコーンBenchling元CTOにより2020年に創設された社内ツール開発を行うローコードSaaSを提供するスタートアップ。エンジニアは社内アプリ構築に30%以上の時間を費やしている。RetoolやSuperblocksが主な競合サービスだが、Airplaneはより専門的なツールやワークフロー構築を実現する。本シリーズBはThrive Capitalがリードし、Benchmarkも参加。
ビジネスの予測問題に取り組むデータ分析支援SaaS Kumo.ai, シリーズBで$18M(約26億円)を調達
Kumoは、グラフ・ニューラル・ネットワークというAIに特化したSaaSスタートアップ。PinterestやLinkedInでも利用されており、数億人のアクティブユーザーに対して、投稿や人物などをレコメンドするために使われている。Kumoは顧客ロイヤルティ向上、パーソナライゼーション、不正使用検出、金融犯罪検出など多様な用途に活用できる。本シリーズBは、Sequoia Capitalがリード。
国際物流プラットフォームを提供するShippio、シリーズBで16.5億円調達
国際物流領域のDXを推進するデジタルフォワーディングサービスを開発・提供。Shippioが取り扱う貨物に加え、他社のフォワーディング事業者が扱う案件を含む顧客の貨物全体の輸送状況をクラウド上で一元管理することが可能。貨物の輸送進捗がわかるシップメント管理や見積依頼、貿易書類・請求書作成、チャット機能などを搭載。今回調達した資金は、プロダクト開発、採用・組織体制の強化、事業領域の拡大に向けたM&A等に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- DNX Ventures、Spiral Innovation Partners、東京海上日動火災保険、みずほキャピタル、あおぞら企業投資、デライト・ベンチャーズ、環境エネルギー投資、ソニーベンチャーズ、アンカー・シップ・パートナーズ
マーケティングSaaSを提供するMicoworks、シリーズAエクステンションラウンドで総額6億円調達
顧客を見える化し、集客を最大化するマーケティングSaaS「MicoCloud」を提供。一人ひとりの興味・関心に合うメッセージをLINE公式アカウントを通して届け、集客からファン化まで一気通貫したサービス体験を実現。2022年8月末時点で導入企業は約500社、導入アカウント数は750を突破。BtoC事業を展開する企業を中心に、美容サロンや学習塾、百貨店、小売業、人材紹介業、不動産業などに導入されている。今回調達した資金は、開発体制の強化、Mid-Enterprise企業向けのマーケティング投資に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ALL STAR SAAS FUND、Eight Roads Ventures Japan
次世代B2Bコマースを開発するgooooods、シードラウンドで5.4億円調達
取引先発見・与信管理・債権回収をall-in-oneで行う次世代型B2Bコマースプラットフォームを構築。スモールブランドが課題として抱える資金繰りの管理難やデータ分析基盤・ノウハウの不足を解消していく。今回調達した資金は、創業メンバーの採用とプロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- XTech Ventures、Incubate Fund US、Vela Partner
360度フィードバックツールを提供するシーベース、4億1,400万円調達
本格的サーベイとフィードバックで人材育成と組織変革を支援する「スマレビ」シリーズを中心に、コンサルティングや各種研修などを通して企業の組織課題の解決を支援。クラウド型360度フィードバックシステム「スマレビfor 360°」は、大企業を中心に導入が進み、2019年から2年で約2倍の成長を遂げている。今回調達した資金は、サービス開発力強化と業務提携に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 三菱UFJキャピタル、SGインキュベート、静岡キャピタル
エンジニア向け給与データベースを提供するPROJECT COMP、プレシリーズAラウンドで2億円調達
エンジニアに特化した年収データが閲覧可能なデータベース「PROJECT COMP(プロジェクトコンプ)」を開発・提供。求人情報を集計した結果ではなく、データベースの会員個々人の給与情報を元にデータベースを構築。詳細な統計データを閲覧することが可能。今後は、データを活用し、企業向けに給与相場を踏まえた評価制度設計や適切な評価査定を支援する新規サービス(SaaS)を開発・提供予定。今回調達した資金は、既存データベースの開発と新規サービス(SaaS)を開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Spiral Capital、 XTech Ventures、Delight Ventures
工場向け自動化を支援するRobofull、総額約1.5億円調達
パッケージ型自動化設備の販売や営業支援データベース「AKINDO」を提供。AKINDOは2022年9月よりベータ版を提供。機械商社やメーカーを中心に、工場40,000社分の工程・設備データをもとにした顧客開拓を支援。特定の商材の販売において、有望顧客をレコメンドする機能や顧客への商談結果が可視化される機能を搭載している。今回調達した資金は、パッケージ型自動化設備の開発・ラインナップ拡充やAKINDO開発・販売の加速、人員採用・組織強化などに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- SBIインベストメント、ANRI、East Ventures、愛知キャピタル、NOBUNAGAキャピタルビレッジ
顧客体験パーソナライゼーションSaaSを提供するRevie、シードラウンドで1億円調達
BtoC企業を対象とした、顧客体験パーソナライゼーションSaaS「ReviewBank」を開発、提供。独自のAIモデルをベースに顧客の深層ニーズを収集・特定し、より深いレベルの顧客理解が可能な顧客データベースの構築をサポート。また、顧客のニーズを満たすコンテンツのレコメンドや訴求メッセージの自動生成・配信が可能。今回調達した資金は、プロダクト開発と組織体制に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシア・ベンチャーズ、DNX Ventures(J-KISS型新株予約権)
企業分析SaaSを提供するバフェットコード、複数人の個人投資家より資金調達
個人投資家や事業会社を中心に、企業調査・分析力の向上に寄与するクラウドサービス「バフェットコード」を開発・提供。今回調達した資金は、エンジニアやデータサイエンティストなどの人材採用、プロダクト改善、コンテンツの購入、マーケティングに充てられる。特にプロダクト開発に関しては、M&Aにおける買収候補企業の選定や、年度予算の策定、類似企業および自社の業績や市場評価の定点モニタリングといった用途への利用に向けて強化を進める。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 嶺井政人氏(グロース・キャピタル株式会社 代表取締役CEO)、複数人の個人投資家