Figma買収にみる「ディープ・コラボレーション」SaaSの未来
Emergence「Deep Collaboration: Why Adobe Had to Buy Figma」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
先日、AdobeがFigmaを$20B(約3兆円)で買収する意向を発表しました。この案件は、ソフトウェア企業への買収案件としては、史上最大規模。さらに注目すべきは、低迷する金融市場にもかかわらず、Figmaの買収価格が非常に大きかったことです。なぜAdobeは、リスクを冒してまでFigmaを買収する決断をしたのでしょうか?本記事では、この背景にある、JTBD(Job-To-Be-Done)に基づく「ディープ・コラボレーション」ソフトウェアの未来について、米VC Emergence Capitalが解説しています。
FigmaはJTBDを対象とした「ディープ・コラボレーション」SaaS
Adobeはデザイナーに特化したツールに対して、FigmaはデザインというJTBDに特化したツールです。デザインというJTBDは、デザイナーのみならず、PM、エンジニア、マーケティングなどの多くのペルソナが関わります。Figmaは、この「マルチプレーヤー」向けに開発されています。
SalesforceによるSlack買収も「ディープ・コラボレーション」狙い?
この買収もSalesforceの営業の生産性向上と、関連する部門・社外のコラボレーションを融合させ、営業のJTBDの在り方を変える狙いがあります。
ディープ・コラボレーションは市場を拡大させる
Figmaのように、語尾に”er”がつく特定職種ではなく、JTBDにフォーカスすることで、利用対象者が大幅に増やすことができます。米国のUXデザイナーは約100万人に対して、Figmaが対象とする職業は約800万人になります。これは、より大きなTAM(Total Addressable Market)機会を引き出すことができます。
JTBDベースの「ディープ・コラボレーション」SaaSになるための3つのポイント
- JTBDのスコープを定義し、最初にプロダクトがどこに焦点を当てるかを特定する
- 価格とパッケージング、無料ユーザー/ビューアーの設計が組織横断的な利用を促進する
- 最適なセールスモデルの特定と、どのペルソナの予算を最初に狙うべきかを明確にする
DXの夜明け前。あなたはVertical SaaSのポテンシャルを信じられるか?
野口 真平氏「DXの夜明け前。あなたはVertical SaaSのポテンシャルを信じられるか?」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今週はITANDI 代表の野口さんのnoteをご紹介します。Vertical SaaSの可能性を社内資料も大胆に共有いただきながらご説明いただいており、中長期の投資だからこその経営の難しさと面白さを再確認することができました。私の中で非常に印象的な部分を抜粋させていただきます。
- Vertical SaaSは時に、従来のインターネットビジネスとは異なる、反直感的で、逆説的なアクションが求められます。特に、ターゲット社数が限られているため、短期的なスケールを狙ってタイミングを間違えて拡販したり収益性を追い求めると、むしろスケールに向けた適切な投資にはならないと感じてきました。
- 産業のデジタルに対する価値観を変えることが、Vertical SaaSにとって、1つの重要なテーマであり、サービスがスケールするために必要だと考えるようになりました。
- 短期でスケールしづらい理由には、既存産業では根本的にデジタルの成功体験が少なく、IT企業やSaaSへの信頼・期待が低いということが挙げられます。デジタルの広まっていない既存産業で、積極的にデジタルを取り入れようとする企業はごくわずかで、大抵の場合は、デジタルへ投資するほどの信頼を得るまでに、明確なデジタルでの成功体験が必要です。
Thoma BravoらがUXインサイトSaaSを提供するUserTestingを$1.3B(約1,900億円)で買収し、UserZoomと統合へ
Thoma BravoとSunstone Partnersは、10/27に米上場SaaS企業 UserTestingに対して、$1.3B(全額キャッシュ)にて買収を発表した。UserTestingは顧客体験(UX)に関するインサイトを提供するSaaS上場企業で、昨年11月16日にNYSEに上場した。今回の買収により、Thoma Bravoが株式の過半数を保有するUXリサーチSaaS企業 UserZoomと統合される。2社統合で、UX向上の幅広いプラットフォームを構築することが狙い。UserTestingの取締役会は全会一致で買収条件に合意し、買収は2023年前半に完了する予定。
メディア/出版社のソーシャルエンゲージメント向上SaaS OpenWeb、シリーズFで$170M(約251億円)を調達
OpenWebは、メディア/出版社が記事にコメント欄や投票の埋め込みやデータ管理など、サイト 全体で効果的な広告を掲載を支援する、イスラエル発SaaSスタートアップ。課金体系は、SaaSの利用料課金と出版社の広告収入のリベニューシェアのハイブリットモデル。1,000以上の顧客を持ち、過去6年間、毎年売上は2倍の成長をしている。売上高ベースの解約率は年間1%以下と非常に低い。デジタル広告を支えてきたサードパーティー・クッキーの消滅に備える中、成長の機会は広がっている。昨年11月の資金調達で電通グループなどから資金調達し、ユニコーンの仲間入りを果たした。本シリーズFでは、Georgian Partnersがリード。
オンプレとクラウドの双方のネットワークセキュリティSaaS Versa、シリーズEで$120M(約177億円)を調達
Versaは、サービスプロバイダとの連携により、データ損失防止やファイアウォールなどのセキュリティ機能を備えた、クラウド、オンプレミスの両方に単一のインターフェースでユーザーを接続することを可能にする、SASE(Secure Access Service Edge)分野のSaaSスタートアップ。Apurva Mehta氏とKumar Mehta氏の兄弟が2012年に創業した。企業のクラウドシフトとリモートワークにより、セキュリティの課題は激増している。今回の株式と融資を組み合わせたシリーズEは、BlackRockがリードした。
Versa raises $120M for its software-defined networking and security stack
Amazon Goのようなレジ無し店舗を実現するSaaS Trigo、シリーズCで$100M(約148億円)を調達
2018年創業のTrigoは、Amazon Goで見られるようなレジ無し店舗を実現する、ハードウェアと画像認識AI搭載のソフトウェアを提供するイスラエル発スタートアップ。Trigoは食品スーパー大手に特化しており、英大手TESCO、独大手REWE、蘭大手ALDI Nordなどに導入されている。無人チェックアウトシステムのみならず、既に在庫管理も提供しており、マーケティング・分析機能を組み合わせたStoreOSも間もなくリリース予定。今回のシリーズCは、シンガポールのTemasekと83Northが共同でリード。また戦略投資家としてSAPを加え、同社の顧客である小売業者向けのシステム統合を計画している。
公共の安全を守る緊急対応サービスを支援するSaaS RapidSOS、$75M(約111億円)を調達
RapidSOSは、主要な機器メーカーやソフトウェアメーカーと協力して、ビッグデータを集約・分析を行い、緊急対応センターが迅速な対応をすることを支援するSaaSスタートアップ。RapidSOSは現在、90社のテクノロジー企業、50社の公共安全セクターのベンダーと連携し、世界に144億台以上の接続機器がある。現在、米国を中心に、英国、欧州、南米で既に事業を展開しており、今後、戦略パートナーであるNTTドコモと連携して日本への展開も予定している。今回のラウンドは、セキュリティ特化VC NightDragonがリードした。
幅広いSaaSとのインテグレーションを1つのAPIで可能にするSaaS Merge、シリーズBで$55M(約81億円)を調達
Mergeは、人事、給与、会計、CRM、プロジェクト管理などを中心としたAPI統合を支援するSaaSスタートアップ。TripActions、Rampなど2,500社以上が利用している。サードパーティSaaSとのインテグレーションは難しく、コストもかかり、メンテナンスし続けることは難しい。Merge はこの長年の課題をシンプルかつ手頃な価格で解決する。過去12ヶ月でARR 30倍に成長し、今回のシリーズBでバリュエーションは4倍に達した。本シリーズBは、Accelがリードした。
OpenAIがAll-in-One音声/ビデオ編集SaaS Descriptへ評価額$550M(約811億円)で出資
Descriptは、グルーポン共同創業者であるAndew Mason氏が2017年に創業した、Google Docのように簡単に音声やビデオ編集することができるSaaSを提供するスタートアップ。ユーザーが文字起こしされた文章を編集すると、Descript上で、録音された人物が実際に声を出したかのように聞こえる音声を合成することができる。今回の出資は、GPT-3やDall-E 2などを提供するGenerative AIスタートアップの一角 OpenAIの$100Mファンドからの出資。
OpenAIは、本件とは別だが、米写真素材サイトShutterstockと契約を締結し、ユーザーがOpenAIを使って画像を生成できるようになるサービスを提供すると今週発表した。
国際物流プラットフォームを運営するWillbox、シリーズAで総額約7億円調達
大型貨物(工業製品など)を取り扱う荷主企業と物流事業者をつなぐクラウド型サービス「Giho」を開発・提供。輸送費用削減、見積比較、発注業務改善など、物流に関わる生産性の改善を目指す。現在85社(そのうち、8割超が上場企業)の荷主企業が利用し、約160社を超える物流事業者がプラットフォームに登録している。今回調達した資金は、サービス開発及び国内事業の成長、台湾事業立ち上げに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、丸紅ベンチャーズ、ANOBAKA、Salesforce(Salesforce Ventures)、創新工業技術移転股份有限公司(Golden Asia Fund Ⅲ、三菱UFJキャピタルとの共同ファンド)、みずほキャピタル
宿泊・旅行業を中心としたDXを推進するaipass、プレシリーズAファイナルラウンドで総額2億円調達
あらゆるオフライン事業者の体験を支えるExperience System「aipass」を開発・提供。宿泊・旅行業者を中心に、旅行者の体験(UX)を向上するための事前チェックインや決済などの機能と、従業員の体験(EX)を高めるために接客や集客を含む業務支援を行うシステムを開発している。今回調達した資金は、プロダクトの開発及び組織体制の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Coral Capital、栖峰投資ワークス
WEBサイト運用のオールインワンプラットフォームを提供するaifie、総額7,000万円調達
ノーコードとAI・機械学習による自動化機能を搭載し、簡単にWEBサイト制作・運用・改善ができるサービス「smartLP」を開発・提供。ノーコードエディタや分析ツール、自動最適化、外部ツール連携などの機能を通じて、制作・改善の運用レベルを底上げし、スピーディなLP運用の実現を目指す。今回調達した資金は、プロダクト開発および採用・組織体制の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- B Dash Ventures、Skyland Ventures、個人投資家
エンタープライズiPaaSを提供するアスタリスト、第三者割当増資による調達を実施
SaaSの連携によって業務の自動化を実現するエンタープライズiPaaS「ActRecipe」を開発・提供。SaaSの導入コンサルティングやAPIを介したSaaS連携を提供してきたノウハウを活かし、業務目的に合わせた機能をパッケージ化した「レシピ」を選択する形でクラウドサービス間のデータ連携と自動化を即時に実現。業務の自動化を通して、属人的なオペレーションを排除し、業務効率化だけでなく内部統制およびIT統制の強化の実現も目指す。これまでの第三者割当増資による調達総額は約1億1700万円。
多言語AI電話を展開するディライト、エンジェルラウンドを実施
大規模コールセンターの着信・発信業務の自動化を目指す「ディライトアシスタント」を開発。30言語に対応しており、他システムとの連携などを通して高度な自動化を目指す。2020年4月に提供を開始し、現在まで累計約30ほどの外国政府機関(欧州)や自治体、企業で利用されている。今回調達した資金は、PMF(プロダクトマーケットフィット)に向けた事業推進に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- エンジェル投資家
法律事務所向けのコラボレーションサービスを提供するFISTBUMP、第三者割当増資による調達を実施
法律事務所向けクラウド事件カルテ「クラウドバランス(CloudBalance)」を開発・提供。事件情報や顧客情報などの管理をクラウド化することにより、紙媒体やExcelでの情報共有や管理を効率化する。交通事故事件管理や企業法務案件管理、メモ管理、請求書発行などが可能。今回調達した資金は、クラウドバランスの運営体制強化、カスタマーサービスの体制強化、人材・広告への投資に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、ライトアップベンチャーズ