大荒れの株式市場でも米SaaS株の見通しが明るいワケ
Battery Ventures「OpenCloud Report 2022」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米Battery Venturesによる現状のクラウドソフトウェア市場に関する分析レポート。SaaS起業家が現状の市況を乗り切り、経営をナビゲートする上で知っておくべき示唆を提示しています。このレポートでは、特にクラウドインフラ系やオープンソース系SaaSに関して、Battery Venturesは「ロングポジション(買い/保有)」だと明言しています。その主な理由は以下の通りです。
- SaaS企業は成長を維持している
急激な金利上昇で米SaaSマルチプルは75%も減少していますが、米SaaS企業の全体の成長はヘルシーなレベルを保っており、黒字化が見えている。 - SaaS企業全体が効率的な成長にシフトしている
成長を維持しつつも、大胆な人員整理によるコストカットでSaaS企業の収益体質は改善してきている。 - SaaSは成長耐性と収益性の両方がある
昨年11月のピーク時は、Rule of 40より成長が評価されていたが、今は逆転現象が起こっており、SaaS各社はこれに適応してきている。 - NTM ARR $1B以上のSaaS企業数が増加傾向にある
2010年以前にIPOしたARR $1B以上の米SaaS企業は6社しかいないが、過去4年間だけでも20社もいる。 - SaaSには高いインフレ率を抑制する効果がある
SaaSは生産性向上の効果があるため、現状のような失業率低下の環境では、歴史的に見てSaaS銘柄のパフォーマンスが良い。 - クラウド化はまだ始まったばかり
クラウドの浸透率は年々急速に広がりつつも、まだエンタプライズIT支出の36%しかない。クラウド化は選択肢の1つではなく、マスト。
PMFから外れたときに実践すべきこと
Saastr「When You Fall Out of Product Market Fit」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
一度PMFを達成し、アクセルを踏んで事業成長を進めるフェーズに入ったと確信しても、成長率が鈍化(例えば1億円までは急成長するが、5~10億円に向かう中で急速に鈍化するなど、)し「PMFから外れてしまう」ということは往々にしてあります。
SaaStrの記事で、PMFを失うとはどういう背景があるかについて整理されていたので下記に抜粋させていただきます。
- 強いマネジメントチームを構築できていない
- これが 90% の確率で起こる根本的な原因。製品担当VPがいなければ、ARR が数百万を超える顧客の要求に対応するのは困難です。VP of Sales がなければ、Urgent Needsを生み出し先行して販売し、新しいセグメントで競争することは困難です。
- パフォーマンスが出ないVPを雇ってしまった
- 時々、スタートアップは資金を得て、ひどい経営陣を雇うことがあります。多くの場合、前職のロゴが協力でも適切ではない可能性があります。。間違った人が貴重な時間を浪費し、うっかりして Product-Market Fit から抜け出す可能性があります。
- 新しいマーケティング チャネルを追加できていない
- 新しいチャネルを十分な検証と追加ができていない。ここでの根本的な原因は、Demand Gen の優れた VP を採用していないことです 。しかし、私はこれを何度も見ています。1 つのパートナー、1 つのチャネル、1 つの獲得戦略が機能します。そうではありません。
- 十分な機能を追加していません
- 最も一般的な原因ですが、製品やエンジニアリングの優れた VP を採用していないことが原因であることがよくあります。多くの場合、初期の段階では十分な数の顧客が製品を購入し、気に入ってくれますが、機能セットは非常に不完全です。多くの場合、その不完全な機能セットに劇的に追加する必要があります。そうしないと、より完全な機能を備えたソリューションを期待する「普通の」見込み客が増えるにつれて、徐々に取引を失い始めます。
Cloudflare CROによるスタートアップ拡大の教訓
SaaStr「Live from SaaStr Annual 2022: Lunch with Cloudflare’s CRO: Lessons Learned in Scaling Your Team...」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先、または以下動画をご覧ください。
Cloudflareの組織が50人の時にジョインし、ARRを1B+まで成長させた時にCROとして関わっていたChris Merritt氏によるLessonのご紹介です。経営者として事業や組織を大きくしてきた当人が、これまでの過程を振り返り、マネジメントをしていくにあたって必要だと考えるポイントをまとめています。
Phase 1 (<$50M):不確実な物事の確らしさを高めていく期間
- “ビルダー”を採用すること
- 恥をかく準備をすること
- 大きなWinを賞賛すること
- キャパシティの管理を適切に行うこと
- 学習のサイクルを高度化すること
Phase 2 ($50M → $250M):出来上がっているものを拡大する期間
- 一貫性を持つこと
- “ウィンチ”(巻上装置)を使うこと
- わからないことは「わからない」と言えるようになること
- 「あともう一歩」と言われることに備えること
- 惰性走行はしないこと
Phase 3 ($250M → $1B):IPOを遂げ、市場が会社の価値を判断する期間
- とにかく耐えること
- ガバナンスをケアすること
- 不快感に慣れること
- 評価されることに慣れること
- 経営メンバーが生み出すダイナミクスにこだわること
Always:フェーズに関わらず大事なポイント
- 常に実験し続けること
- スケールしないことに手を出さないこと
- 常に姿を表し、これから創っていくことをケアすること
- 心を込めて、本気で「申し訳ない」と言えるようになること
- 誠実であること
- 信頼を共有し、非難を受け入れること
景気後退か?米SaaSのQ3決算状況
Clouded Judgement「Clouded Judgement 11.4.22」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
先週金曜日の時点で上場している北米SaaS企業でQ3の決算発表を行ったのが約30社ほど。アメリカの景気後退が少し現れ始めている。Q3の予想コンセンサスを中央値で2.5%上回っている。一方、Q4のガイダンスを発表した企業のうち半分が予想コンセンサスを下回り、もう半分が上回ってる。今までは翌四半期のガイダンスを2-2.5%上げる企業が多い中、現時点で中央値がわずか0.1%に。どこまで景気後退の影響が米SaaS業界に影響が出るのか?今後の決算発表に注目。
AI×契約管理(CLM) SaaSユニコーン Icertis、$150M(約220億円)を調達
Icertisは、2009年に設立された調達、セールスなどの企業契約を管理するSaaSで、契約をAIで分析してリスク管理レポートや契約に基づく義務を追跡を支援するスタートアップ。11業種7,000種類以上の契約を処理することができる。2021年のARRは$100Mを超え、直近でARR $200Mを達成した。顧客にはマイクロソフト、グーグル、ボーイングなどの巨大企業が名を連ねる。これを実現している理由の1つには、独SAPとの強力な連携がある。今回のラウンドは、シリコンバレーバンクから$75Mの転換社債と$75Mの信用枠による調達。Icertisのバリュエーションは、2021年3月時点で$2.1B(約3,080億円)に達している。
データ分析チーム向けデータカタログSaaS Alation、シリーズEで$123M(約180億円)を調達
Alationは、元オラクル幹部Sangani氏のデータ分析チームが企業のデータの全容を把握し理解できるためのSaaSを提供するスタートアップ。Redshift、Hive、Presto、Spark、Teradataなどのソースからメタデータ、ユーザー権限などのデータを機械学習により自動的に解析し、整理することができる。顧客数は450ブランドを超え、ARR $100Mを超えている。本シリーズEは、大手PE Thoma Bravo、Sanabil Investments、Costanoa Venturesが共同でリードした。バリュエーションは、前回ラウンドから1.5倍の$1.7B(約2,500億円)に到達した。
iPadベースのレストランOS SaaS TouchBistro、$110M(約161億円)を調達
2010年にカナダで創業したTouchBistroは、レストラン向けのPOSシステムでスタートしたスタートアップ。最近ではMAやCRM機能、オンラインオーダー、配送管理、タッチレス決済などを組み込んでいる。50%以上のレストランが、収益を上げるためにデジタルチャネルに依存している状況である。今回のラウンドは、Francisco Partnersから調達した。
TV局とコネクティッドTV特化SaaS Amagi、シリーズFで$110M(約161億円)を調達
2008年にインドで創業したAmagiは、ジオターゲティングTV広告事業を皮切りに、ライブストリーミングプラットフォームへ転換したSaaSスタートアップ。Amagiの顧客には、NBCやパラマウントなどのTV局の他に、Samsung TV Plusや楽天TVなどのストリーミング配信企業も含まれる。すでに2,000以上のチャンネルを支援しており、米国、南米、欧州、アジアにおけるカバレッジを広げている。2021年は売上は2倍以上に成長し、顧客数も+59%と急増している。本シリーズFはGeneral Atlanticがリードした。
アプリケーション・セキュリティSaaS Apiiro、シリーズBで$100M(約147億円)を調達
Apiiroは、開発者やセキュリティ運用担当者がアプリケーションの脆弱性につながる問題を発見・解決し、先手を打つことができるよう取り組んでいるSaaSを提供するスタートアップ。Apiiroは、開発者とアプリケーションセキュリティエンジニアが、ワンストップでこれらの課題を解決するSaaSを提供している。同社はこの第三四半期でARRを400%に成長させている。本シリーズBは、General Catalystがリードし、GreylockとKleiner Perkinsが参加した。
サプライチェーンを可視化するSaaS project44、$80M(約117億円)を調達
2014年創業のproject44は、荷主、輸送業者などが輸送中の物品の可視性、ワークフローに関するインサイトを提供することにより、サプライチェーンの管理を支援するSaaSを提供するスタートアップ。 COVID-19の大流行は、世界のサプライチェーンに危機をもたらし、インフレを悪化させ、中央銀行に物価上昇を抑制するよう圧力をかけさせるようになった。今回の調達資金は、グローバルサプライチェーンにおける二酸化炭素排出量測定・削減のソリューション開発に投資する。今回のラウンドは、Generation Investment ManagementとA.P. Mollerホールディングが共同でリードした。バリューエーションは、$2.7B(約4,000億円)に達した。
組込型保険SaaS Cover Genius、シリーズDで$70M(約102億円)を調達
2014年に米・ニューヨーク創業のCover Geniusは、航空会社、小売業者、銀行、B2Bソフトウェア企業など幅広い業種に向けて、組込型保険を提供するスタートアップ。例えば、ライドシェアアプリのOlaは、Cover Geniusを利用してドライバーと乗客の両方に保険を提供している。同社は、ExtendやBolttechといったInsurtech系SaaSスタートアップと競合している。Intuit、Priceline、Amazonといった加盟店パートナー全体で、1050万人の顧客をカバーする強固な顧客基盤を持っている。本シリーズDは、Dawn Capitalがリードした。
オフィスコラボレーションSaaSツールを提供するNotta、約14億円調達
AIによる音声自動テキスト化サービス「Notta」を開発、提供。、日本語・英語をはじめとした104言語に対応し、会議中で繰り広げられる会話の録音、文字起こし、編集、共有が可能。2022年9月時点で、累積ユーザー数は66万人、チーム版利用企業数は200社を超える。今回調達した資金は、プロダクトや研究開発への投資に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Hillhouse Capital(GL Ventures)、Linear Capital、CDH Capital、PKSHA SPARX Algorithm Fund(PKSHAとSPARX Groupの共同設立ファンド)
HR techサービスを展開するROXX、シリーズBで10億円調達
クラウド求人データベース「agent bank」、オンライン完結型リファレンスチェックサービス「back check」を開発、提供。「agent bank」は月額利用料で利用でき、約4,000件の求人に対して転職者を紹介することが可能。「back check」は採用予定の職種やポジションに合わせて質問を自動生成し、オンライン上でリファレンスチェックを実施することが可能。2022年10月に累計リファレンスチェック実施人数3万人を突破。今回調達した資金は、事業への投資と採用活動の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- One Capital、グローバル・ブレイン、マイナビ、90s、Branding Engineer
イベントマーケティングプラットフォームを提供するEventHub、シリーズAで6.5億円調達
ウェビナー・カンファレンスを主軸に、展示会、学会や商談会を含むイベントを運営する企業に対してマーケティング活動を支援するプラットフォーム「Eventhub」を開発、提供。イベント開催やデータの分析、顧客とのコミュニケーションができる機能を搭載。2020年春のオンライン版のリリースを経て、累計350社以上のイベント主催者が1,000回以上のイベントで利用している。今回調達した資金は、人材採用と開発、海外市場への本格展開に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジャフコグループ、ユーザベース
小売企業のDXを加速するAppify Technologies、プレシリーズAで5.2億円調達
Shopifyの拡張機能を開発、提供。現在は商品を取り扱うブランドがShopify上でモバイルアプリを構築・運用できる「Appify Mobile」、ブランドがロイヤリティープログラムを展開できる「Appify VIP」を中心に事業を展開。現在100以上のマーチャントに導入され、合計700万人以上のバイヤー(エンドユーザー)が利用している。今回調達した資金は、既存・新規両方のサービスの展開に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ANRI、TSIホールディングス、R6B、エンジェル投資家
株式会社Appify Technologies、プレシリーズAで5.2億円を調達。Shopifyアプリの展開加速に投資
エンタープライズ向けSaaSを開発するパトスロゴス、シードで3億円調達
⼤⼿企業のバックオフィスを変⾰するHR共創プラットフォーム「パトスロゴス」を開発。各SaaS企業と業界標準となるデータベースを規定し、各SaaSとつながる仕組みを一括で提供。今回調達した資金は、事業拡張の投資と、人材獲得に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- シンプレクス
パトスロゴス、シンプレクス株式会社より3億円の出資を受けシードステージで総額12.5億円の資金を調達
EdTechスタートアップのlearningBOX、2.5億円調達
学習管理システム「learningBOX」、クイズ・問題作成ツール「QuizGenerator」、WEB 上で暗記カードを作成できる「CardGenerator」を提供。「learningBOX」を主力事業として展開し、登録者数は17,000人、有料契約数は800社を突破(2022年7月末時点)。ベネッセホールディングス、チェンジとの業務提携により、各社の学校・教育現場や社会人教育分野での知見やノウハウを活用していく。今回調達した資金は、プロダクト開発領域に必要な人材確保やユーザーのサポート体制の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ベネッセホールディングス、チェンジ
ベトナム向け飲食店DX・フードデリバリーサービスを展開するCapichi、プレシリーズAで7000万円調達
フードデリバリーサービス「Capichi」、飲食店モバイルオーダーシステム「Capichi OI」を提供。「Capichi」は中高級の飲食店舗を厳選して掲載するフードデリバリーサービスとしてのポジショニングを確立し、累計利用者数は10万人を突破。現在はMUJIやFamily Mart、AEON citimartなどの小売店も利用。「Capichi OI」は2022年7月にリリースし、同年10月時点で契約店舗数は100店舗を突破。今回調達した資金は、開発、営業、カスタマーサポートの強化、海外展開への投資に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 新規投資家
AI警備システムを提供するアジラ、シリーズB 2ndクローズの調達を完了
大型商業施設やオフィスビルなどの施設向けAI警備システム「アジラ」を開発・提供。既存のカメラシステムをAI化し、カメラ映像から、異常行動や不審行動を検知することが可能。また、導入後防犯カメラに映る人々の行動を学習し、検知する精度を上げることができる。結果、警備員の業務削減や、見逃し、見落しの防止を実現する。今回調達した資金は、「アジラ」の拡販体制強化、行動認識AIの高度化、コーポレートガバナンスの強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 阪急阪神不動産、創発の莟1号投資事業有限責任組合(鎌倉投信、フューチャーベンチャーキャピタルの共同ファンド)