無料トライアルとフリミアムのハイブリッド課金モデル
Amplitude「Reverse the Trial: How to Use Freemium to Find Your Best Customers」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米Amplitude Head of Growthの方の記事。Product-LedなSaaSの場合、ユーザーのプロダクト体験を促進する目的で、無料で提供することは一般的です。そこで古くから、無料トライアルか?フリミアムか?という議論がされます。この二つの選択肢には双方長所・短所があります。そこで、本記事では、第3の選択肢として「リバース・トライアル」という課金方法を提案しています。
- 無料トライアルは、CVRを促進する一方で、顧客の利用状況が低いとプロダクトへの支持を広めることができません。加えて、トライアル期間が短いと、ユーザーが機能から価値を引き出せない可能性があります。
- フリミアムは、無料トライアルより広いプロダクト利用を促進するため、マーケティング投資を抑制しつつ、プロダクトへの投資に集中できます。しかし、より価値の高い有料機能への認知を進めることが難しく、マネタイズに苦労し易いです。
- リバース・トライアルは、この2つの戦略の組合せです。フリミアムの中で、有料機能を期間限定で無料トライアルで提供し、期間終了後は従来のフリミアムに戻すものです。これにより、プロダクトの利用促進と有料課金へのコンバージョンを高める方法です。
プロダクトを成功に導くプロダクト組織に必要な3つのアクセス
SVPG「The Foundation of Product」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
『INSPIRED』や『Empowered』の著者と知られるMarty Cagan氏が、本質に迫るプロダクトを創出する、強いプロダクト組織の土台は何か?という根本的なテーマについて解説した記事。プロダクト組織が効果的なソリューションを発見するためには、3つのステークホルダーに自由にアクセスすることが必要とのことです。もしプロダクト組織が、この3つのどれかにアクセスできない場合、失敗する可能性は非常に高いと、同氏は語っています。
- ユーザーや顧客への直接アクセス
プロダクト組織がユーザーや顧客に直接アクセスできなければ、価値や使いやすさで成功する見込みは殆どありません。これはPMやデザイナーだけでなく、エンジニアにも当てはまります。エンジニアが自社プロダクトで苦労しているユーザーを見ると「魔法がかかる」ので、奨励すべきです。 - ビジネス部門への直接アクセス
Viability(事業として成立すること)とは、マーケティング、セールス、CS、財務、法務など様々なビジネスの制約条件を解決して成立します。故にPMは、これらの利害関係者の懸念やニーズを理解し、ビジネス部門のリーダー層に直接アクセスできることは不可欠です。 - エンジニアへの直接アクセス
PMがエンジニアと日常的に接すること至極当然とも言えます。しかし、開発が外注されたり、国外でリモートの開発組織があったり、PMとエンジニアが分断されるケースも少なくなくなってきています。
18ヶ月でARR $1Mから$100Mまで成長したWizに学ぶ、圧倒的グロースに必要なポイント
Traction - A Community for Innovators「The Mistakes That Took Wiz from 0 to $6B in 18 Months with Yinon Costica」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先、または以下動画をご覧ください。
Wizの共同創業者 兼 VP of ProductのYinon Costica氏による創業から成長の過程で得た教訓をご紹介します。Wizはこれまでにないスピードで圧倒的な成長を遂げた会社ですが、それを支えたエッセンスを組織やプロダクト、セールス・マーケティングの観点から解説してくれています。
共同創業者の圧倒的な信頼関係
Wizの共同創業者(Assaf Rappaport氏(CEO)、Ami Luttwak氏(CTO)、Yinon Costica氏(VP of Product)、Roy Reznik氏(VP of R&D))は、10年近く共に働いている仲。お互いの強みや弱み、性格的な特徴などを熟知していて、堅い信頼関係が構築されている
とにかくお客さまヒアリングの量をこなす
VCや友人、過去のキャリアで創り上げたネットワークを活かし、100人以上のCISOとの繋がりを3ヶ月で構築
迷わずスピーディにピボットし、課題に合致したプロダクトを作り上げる
上記の3ヶ月の中で、3回ピボットを実施
大きいビジネスになるかどうかの判断軸を整理する
Wizは(1)次のステップが明確になっているか(2)お客さまの中で$1M払いたいと思う問題にアプローチできているか(3)$1Mの予算を確保したいと思うソリューションになっているか、の3点を判断軸にしてPMFを検証
お客さまは「あるべきソリューション」の姿を理解していない
組織全体がどう変化するべきかを示してあげること。何か特定の業務の作業スピードを上げるような最適化(optimization)ではなく、よりスマートに、新しい形で業務が執り行われるものを提供すること
初期のお客さま獲得は、持っているネットワークを最大限活用する
主にVCのネットワークを利用し、CISOにリーチ。VCネットワークにいるお客さまは、スタートアップと付き合うことに抵抗のないところが多く、プロダクトができていない状態でもスタートアップとどう会話して話を進めるべきか、その作法がわかっているので話が進みやすかった
無償で試験トライアルを提供してはならない
無償でプロダクトを利用しているユーザーは、お金を払ってくれているユーザーと比較して、課題が深刻であると理解していない
Customer-led Growthが効いた
最初に(Fortune 500級の)CISOにアプローチしてPMFができたため、大企業の間で口コミ的に広がるCustomer-Led Growthが実現
順を追って事業の拡大期に備える
Wizでは、最初のディールはプロダクトメンバーがセールスを行い、CEOがクロージングをしていた。継続的に成功するようになってからその成功パターンを型化し、セールスやマーケティングのリーダーを採用
カルチャーが何よりも大事
Wizの場合、「Customer First(お客さま第一主義)」というカルチャーを維持するために、VP of Product自身が30%の時間をお客さまとの打ち合わせに使っている
会社の名前選びは慎重に
いつかのピボットに備えて「一番最初の起業アイデアをベースに会社の名前を作るべきではない。汎用性のある名前を選ぶべき」
MVP(Minimum Viable Product)を作る上で大事なのは「何を作らないか」
起業家のFOMO(Fear Of Missing Out)は、作るべき機能のフォーカスを妨げることに繋がり、それが失敗へとつながるため、開発するべきものを特定し、それにフォーカスすること
お客さまは慎重に選ぶ
お付き合いするお客さまを賢く選択肢しないと間違った方向に事業やプロダクトが進化する可能性がある
シンプルさとわかりやすさを追求
プロダクトやお客さまのオンボーディングはシンプルさが全てであり、複雑性は敵である(Simplicity is everything, complexity is enemy)
スピーディに大きい価値を提供できるようなプロダクトKPIを設定
Wizの場合は、下記の3点をKPIに設定
- 獲得できている予算規模(=提供できている価値の大きさ)
- Time to Value
- 技術負債の量と開発スピード
フラットにコミュニケーションできる組織体制
チームリードを作らず、VP of Productが直接開発者にコミュニケーションして開発を依頼するようなフラットさを維持
とにかく前のめりにスピーディに動く
とにかくスピーディに動かないと市場の機会を失ってしまうリスクがあるため、Wizではフィードバックループを待たずに、常に高速で前進するカルチャーが定着
ネガティブな経験には、あえて目を向けない
成功体験やうまくいったことに着目してダブルダウンし、そこをさらに伸ばすためには何をするべきか、それを考えるための時間や労力を割くこと
エンタープライズ向けのセキュアなブラウザ Island、シリーズBで$115M(約160億円)を調達
米ダラス創業のIslandは、エンタープライズ向けに安全性の高いブラウザを開発した2020年創業のスタートアップ。Chromiumをベースとした彼らの提供するブラウザでは、コピー&ペーストやスクリーンショットなどの機能を無効にして、重要なデータが社外に流出することを防ぐことができます。その他にWebフィルタリング、ゼロトラスト・アクセスなど様々なセキュリティ機能を内蔵しています。今回のシリーズBは、ローンチからわずか数週間で実施され、Insight Partnersがリードした。その他に既存投資家のSequoia CapitalやStripesも追加出資。本ラウンドでバリュエーションは$1.3B(1,800億円)に到達した。
フランス発デジタルマーケティングSaaS大手Positive Group、$110M(約153億円)を調達
仏・リースに本拠地を構えるPositive Group(旧社名 Sarbacane)は、2001年創業のメールやSMSマーケティング、チャットボットなど、幅広いマーケティング系SaaSを提供する老舗スタートアップ。現在までにSMBを中心に2万5千社へ提供している。今回、M&Aを加速する目的でグロースファンドEMZ Partnersなどから資金調達を行った。今回のラウンドに合わせて、顧客データプラットフォームを提供する1BY1社の買収を発表した。2026年までにARR $100M越えを目指している。
オンラインとオフラインで統合された消費者データを構築するAI×SaaS Near、シリーズDで$100M(約139億円)を調達
Nearは、世界44カ国のデータパートナー、携帯キャリアなどから入手した膨大な顧客データを基に、匿名化されたユーザープロファイルを作成するAIプラットフォームを提供するスタートアップ。現在毎月16億ものユーザープロファイルを作成している。前年比100%のペースで成長しており、MetLifeやMastercard、WeWorkなどの大手顧客を抱えている。今回のシリーズDは、英・ロンドンベースのGreater Pacific Capitalが単独で出資を行った。
ブロックチェーン上の犯罪分析SaaS TRM Labs、シリーズBエクステンションで$70M(約97億円)を調達
TRM Labsは、世界中の規制当局、税務機関、金融情報部門に活用されている、暗号通貨関連の不正や金融犯罪の調査・分析するSaaSを提供するスタートアップ。インターポール、FBIなどの公共機関のみならず、Shopify、OpenSeaなどの企業が、金融詐欺の検出やマネーロンダリング対策(AML)に活用している。2018年の設立以来、売上は前年比490%で成長しており、従業員数も4人から150人以上に拡大している。今回のラウンドは、大手PE Thoma Bravoがリードした。その他にGoldman Sachs、Paypal Ventures、AMEX Venturesなども追加出資を行った。
スイス発のデスクレスワーカー向けSaaS Beekeeper、シリーズCにて€50M(約72億円)を調達
スイス・チューリッヒ創業のBeekeeperは、小売・飲食などの接客業のスタッフや医療従事者などのデスクレスワーカーの生産性を向上するモバイルベースのSaaSを提供するスタートアップ。「フロントライン・サクセス・プラットフォーム」と言う通り、デスクレスワーカーが直感的に使いやすいソフトウェアを、オール・イン・ワン型で提供している。パンデミック以来、売上は2倍以上に成長している。本シリーズCでは、EGSB、Kreos Capitalがリードした。
データコンプライアンス自動遵守SaaS Laika、シリーズCにて$50M(約69億円)を調達
Leikaは、SOC 2、HIPAA、GDPR などのプライバシー・セキュリティの枠組みへの対応を自動化するSaaSを提供するスタートアップ。約100種類以上のソフトウェアを統合し、統合監査、侵入テスト、セキュリティ質問対応などを一括して提供している。金融機関が主な顧客になっている。顧客数は約500社と過去12ヶ月で4倍に拡大している。本シリーズCは、Fin Capitalがリードした。
AI搭載型メモアプリSaaS Mem、Open AIが$23.5M(約33億円)を出資
Memは、SMS、メッセージアプリなどでどこからでも素早くメモを取り、リンクや画像を送信・保存することができるB2B向けメモアプリ。Mem上では、AIを使ってその人物に最も関連する可能性のあるノートを共有することで、ナレッジワーカーの生産性を向上させる。ナレッジワーカーの労働時間の50%は情報検索に使われており、この時間を削減する。今回のOpen AIからの出資を受けて、Generative AI(生成AI)の搭載を加速させる狙いがある。
リテール業界のDXを推進するフェズ、シリーズDファーストクローズで18億円調達
購買データや店頭データなどを管理・分析するリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を開発・提供。大手リテール事業者とパートナーシップ組み、約1億ID分のID-POSデータと連携。商品情報、店舗情報はどを格納するデータベースとも連携し、広告やID-POS分析、顧客行動データ分析などのソリューションを提供。今回調達した資金は、事業拡大のための人材採用や育成、プロダクト開発の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 電通グループ、住友商事
ロイヤル顧客の管理プラットフォームを提供するAsobica、デットファイナンスで3.6億円調達
コミュニティを中心とした統合型カスタマーサクセスプラットフォーム「coorum(コーラム)」を開発・提供。カインズ、グリコ、エポスカードなど、多くのブランド・製品が導入。広告宣伝費や開発費等への資金確保のため、無担保・無保証の条件にて融資枠の確保。今回調達した資金は、「coorum(コーラム)」の事業拡大のための施策に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 三菱UFJ銀行、りそな銀行、みずほ銀行、その他国内大手銀行
ナレッジシェアプラットフォームを展開するLIGHTz、プレシリーズAで総額3億円調達
AIを活用した技術伝承、知識共有プラットフォーム「Pincy Park®」を開発・提供。製造業向けAIソフトウェア開発、DXコンサルティング事業も併せて手がける。Pincy Park®はリリース後1ヶ月で大手、中小企業の30社超が導入。業務の属人化や口頭共有の状況を改善するべく、散在するドキュメントを1箇所にまとめるデータバンク構築を支援する。今回調達した資金は、システムのユーザビリティ向上、カスタマーサクセス等のビジネス基盤構築への投資、人材の確保に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Fiducia、筑波銀行、いわぎん事業創造キャピタル
NPO向け管理サービスを提供するコングラント、総額1.6億調達
非営利組織、NPO団体向け寄付決済・支援者管理サービス「congrant」を開発・提供。現在1,400以上の団体が利用。社会課題解決・SDGsに関心のある企業担当者がNPOにアクセスし、NPO団体が資金調達しやすくなるデータベースを提供する。今回調達した資金は、NPO向けサービス、企業向けの新サービスの拡充するための基礎となるNPOデータベースの構築に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシア・ベンチャーズ、福留 大士氏(株式会社チェンジ)
労務相談プラットフォームを提供するFlucle、シードで約1.2億円調達
労務相談プラットフォーム「HRbase PRO」を開発・提供。働き方の多様化など進化により、労務管理の整備(テレワークに伴う勤務ルールの整備、コンプライアンス強化など)をサポートする社会保険労務士の業務効率化を実現するコラボレーションサービス(資料の管理・共有、専用チャット機能など)を提供する。今回調達した資金は、プロダクト開発、事業拡大、人材採用の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシア・ベンチャーズ、みらいコンサルティング、日本政策金融公庫
製造業向け生産管理SaaSを提供するネクスタ、プレシリーズAで約1億円調達
製造業向けの生産管理クラウドシステム「スマートF」を開発、提供。バーコードを活用して現場での情報入力や、仕入部品や製品の入出庫記録が可能。これまでアナログで管理されてきた情報のDXを支援する。30人未満の町工場から1000人以上の上場企業まで数十社が導入。今回調達した資金は、プロダクト開発、人材採用、マーケティングに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- XTech Ventures、ニッセイ・キャピタル
採用候補者アセスメントサービスを提供するHRport、約1億円調達
採用候補者の能力・ポテンシャルを可視化するアセスメントサービス「Worksamples」を開発、提供。実際に現場で発生するビジネスタスクを新卒採用の候補者にオンライン上で実践してもらい、思考力を見極めることに役立てる。今回調達した資金は、プロダクトの品質改善、販促活動、採用に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- マネーフォワードベンチャーパートナーズ、ワンキャリア
商談解析サービスを提供するブリングアウト、プレシリーズAエクステンションで6,000万円調達
商談内容を自動テキスト化することが可能な営業DXツール「Bring Out」を開発、提供。独自のAIにより、商談内の予算や決裁ルートの把握、コンプライアンス規定に則った営業トークの有無などを、80%を超える精度で自動的に抽出することが可能。リクルートや日本M&Aセンターなどの企業で活用されている。今回調達した資金を通して、更なるサービスの進化を目指す。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 東京大学協創プラットフォーム開発、LtGキャピタルパートナーズ、佐々木食品工業
ウェルビーイング経営の実現を支援するバックテック、シリーズBセカンドクローズの資金調達を実施
健康経営の現状を可視化・PDCAをサポートする「ポケットセラピスト」を開発、提供。従業員の不調に対し、専門医との面談などを通してフィジカルやメンタルの不調対策をサポートする。現在は、関東及び関西を中心としたエンタープライズ企業・健保の顧客が主要。今後のスケールを実現するべく、今回の調達により、中小企業への事業展開を模索する。今回調達した資金は、人材採用・育成に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 池田泉州キャピタル
インサイドセールス向けSaaSを提供するジェイタマズ、資金調達を実施
企業と顧客の商談実現を効率化する「OPTEMO」を開発、提供。WEBサイトで企業と顧客が最適なコミュニケーションを実現するためのAIの開発し、セールス部門やインサイドセールス部門におけるリード不足の課題を解決する。β版での検証を経て、2022年11月にOPTEMOをサービスイン。今回の調達資金は、プロダクト開発および採用・組織体制の強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- PKSHA SPARX アルゴリズム 1 号投資事業有限責任組合(PKSHA Technology Capitalとスパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメントの共同運用ファンド)、みずほキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、千葉道場ファンド、SBIインベストメント