新興マーケット向けで、ARR 10億円越えを目指す際に注意すべき落とし穴
Andreessen Horowitz「Market Annealing」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSの対象する市場が、伝統的な巨大産業・業種の場合(製造業、営業など)と新興産業・業種の場合(Fintech、クリエーターなど)でGo-To-Marketで取るべきアクションは大きく変わります。特に後者の場合、競合が少なく、市場でのポジショニングが取りやすく、市場の急成長の恩恵を受けやすくなります。一方で、市場の立上りに時間がかかると、巨大産業・業種向けと同じステップを踏むと苦しい状況に陥ってしまうリスクがあります。本記事では、このような超初期の新興市場向けでARR 10億円越えを目指す上で注意すべきポイントを解説しています。ここで主に強調されているポイントは、以下の通りです。
- ビジョンを市場と協調しながら、浸透させる「市場アニーリング」が大切
- 正しいGTMは固定化せず、常に試しながら市場から学び続ける
- 創業者がセールスをARR 10億円前後まで関わり続ける
- 営業組織拡大に向けたセールスリーダー採用は、再現性のあるGTM戦略ができてから
- ジェネラリスト型のプロダクトマーケティングを早期に採用する
- リード獲得は創業者やVC等の人脈やコミュニティが主体で、マーケティングではない
エンジニア組織を成功させるためには、まずは信頼を築く
Index Ventures「To See Your Engineering Team Thrive, First Build Trust」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Microsoft、Google、Confluentでエンジニアリングリーダーを歴任したChad Verbowskiさんへのインタビュー記事。創造的かつオーナーシップを強いエンジニア組織作りに向けた、マネジメント手法や考え方についてChadさんが大切にしていることを解説しています。以下、参考になりそうなChadさんのコメントを紹介します。
- 「成功するかどうかの10回中9回は、その人のやる気で決まる。人に賭けて、チャンスを与えれば与えるほど、信頼関係が築かれていく。」
- 「厳しい意見でも率直に交わせることが大事。そして、正直であること、他の人の考えや意見を聞くことに抵抗がない環境が必要なのです。」
- 「アイデア は、多様な経験から生まれる種です。創造的なソリューションを生むためにはリフレーミングの能力が欠かせません。リフレーミングは異なる視点、議論、疑問という健全な緊張感から生まれます。それが当たり前の文化でなければ、取り残されてしまいます。」
- 「言われた仕事だけでは、自分とお客様とのつながりを感じられません。でも、お客様と直接話をして、自分が作ったものを気に入ってもらえたら、それが情熱と誇りになります。」
- 「幸せで生産性の高いチームは、より積極的で、より創造的で、より責任感のある行動をします。」
カスタマーサクセスの3つの類型
Tom Tunguz氏の「The Three Types of Customer Success Teams」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
元RedPointのTomasz Tunguzによる、カスタマーサクセスにおける体制を3類型に整理した記事。特にエンタープライズ向けのカスタマーサクセスのあり方について悩んでいる方にお勧めの記事。
日本においてもCSという概念が普及した今、CSMの役割や位置付けもアップデートのタイミングに来ています。セールスからカスタマーサクセスへバトンをパスしていくThe Modelのベースにしつつ”年間受注単価”(ポテンシャルも含め)を切り口とした顧客セグメントによって最適なチーム体制は大きく変化することが示されています。
今後評価されるSaaSの特徴とは
Patrick O'Shaughnessy氏のツイートの一部を日本語で紹介したものです。全ツイートはリンク先をご覧ください。
「Invest Like the Best」などのコンテンツを提供するとともに、投資家としても活動するPatrick O’Shaughnessy氏とソフトウェア投資家が、今後のソフトウェア業界の動向などについて整理したツイートを発信していましたので、そのご紹介です。今度のSaaS業界の行く末や、力強く評価される会社の特徴についてまとまっていましたので、ぜひチェックしてみてください(一部抜粋して下記に記載します)。
今後5年間でソフトウェア業界にはどのようなことが起こるか?
- 今後成長が不透明な状況で、粗利や営業利益などの利ざやの拡大と安定化が高評価につながる。加えて支出をより合理的に管理すること大事。それは2002年から2007年の状況と似ている
- 2002年から2007年はプラットフォームとしてのクラウドが誕生したように、今後5年はその進化をAIが担うかもしれない
SaaSが気をつけるべき経営のあり方とは?
- 成功している創業者やCEOは、あるべきプロダクトや販売体制に対する研ぎ澄まされた考えを持っている。そして開発人材を巻き込み、彼らに対して次世代のプロダクトや世界を作り出すワクワク感を共有することに長けている
- SaaSが成熟すると、他の業界から来ているCEOが成功しているケースがある(ServiceNowの元CEO John Danahoeなど)。彼らはビジョンの設定やビジョンセリングをすること、エグゼクティブの採用とそれらの人材に責任を課すこと、資本リソースの配分などに長けている
米SaaS VCが見る2023年の投資環境
SaaStr「WTF is Going On in VC? Are LPs Investing in New Funds?」の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先または以下動画をご覧ください。
北米で著名なSaaS特化VC「SaaStr Fund」のJason Lemkinが2023年の投資環境について語る。以下が要点です。
- 2019~2021年は業界2位でもユニコーンになれたが、今は業界#1であることがより重要になってきた。
- T2D3を達成してARR 100~200億円でIPOと言うSaaSスタートアップへの成長期待値は変わっていない。一方、効率性がより重要になっている。
- 成長率がトップティアであることと資本効率もトップティアを求められている。
- マーケティングとセールスに対してよりデータドリブンであることが求められている。ファイナンスチームやOpsチームが各部門のVPをサポートすることが重要。
- 資金調達環境は2023年末に回復すると予想をしている。
イギリス発B2B向け自動運転支援SaaS Oxbotica、シリーズCで$140M(約179億円)を調達
自動運転系スタートアップは、一時期の熱狂的な人気の一方で近年やや停滞気味。そんな中で、一握りは事業を成長させ、投資を集め続けています。Oxboticaは、イギリス・オックスフォードを拠点にする自動運転系ソフトウェアのスタートアップ。OxboticaはB2B向けに車両管理、ナビゲーションなど顧客が必要とするあらゆる機能を統合して提供しています。ターゲット業界は、農業、航空、エネルギー、公共交通など多岐に渡ります。今回のシリーズCは、日本のあいおいニッセイ同和損保とENEOSのCVC ENEOS Innovation Partnersが新規に参加し、その他にTencentや気候系ファンド Kiko Ventures等の既存投資家も追加で出資しています。
クラウドネイティブアプリの監視SaaS Chronosphere、シリーズCエクステンションで$115M(約147億円)を調達
クラウドネイティブな監視ツールは、コンテナ化等の技術により解決されたと同時に新たな問題も発生しているため、依然としてホットな分野です。Chronosphereは、拡張性が高く、カスタマイズ可能かつ信頼性の高いクラウドアプリの監視を支援するリーディング企業の1社。この分野では、AppDynamics、New Relic、Dynatraceなど数多くの新興企業がしのぎを削って競っています。同社によると、昨年9月にARRと従業員数が12ヶ月で3倍になったことを報告しています。今回の資金調達は、昨年$200M調達したシリーズCの追加ラウンドで、新規投資家としてGVとGeodesic Capitalから調達しました。バリュエーションは前回の$1Bから増加して、$1.6B(約2,000億円)。
イスラエル発クロスボーダー貿易金融プラットフォーム 40Seas、シードで$111M(約142億円)を調達
2022年創業した40Seasは、中小企業間のクロスボーダー貿易を促進しながらデジタルB2B決済を提供するスタートアップ。イスラエル・テルアビブに本社を置き、ニューヨーク、トロント、深圳に拠点を構える40Seasは、クロスボーダー決済、物流、貿易金融の分野で合計60年以上の経験を持つ業界専門家が創業しました。OECDによると中小企業間のクロスボーダー取引は全体の43%を占める非常に大きな市場。しかし、大手の多国籍起業に比べ、中小企業が貿易金融を拒否される可能性は7倍高いことが中小企業に大きな財務リスクです。2022年10月のソフトローンチ依頼、40Seasは数十社の中小企業取引に数億円以上の融資を実行しています。今回の調達は、Team8と米上場企業ZIMからの$11Mのエクイティ調達と、ZIMからの荷主向け融資枠$100Mを獲得しました。
ドイツ発自動翻訳AI×SaaS DeepLが約$100M(約128億円)を調達してユニコーンに
近年のOpenAI、GPTのお陰でAI系スタートアップへの注目が再燃しています。ドイツ・ケルン発のDeepLは、言語翻訳に特化した深層学習系スタートアップ。従業員の60-70%は、エンジニアと技術者を中心とした組織になっています。今回のラウンドでは、IVPがリードして、米国のBessemer Venture Partners、欧州のAtomico、日米のWiLが出資しました。今回調達で€1Bでユニコーンの仲間入りを果たした。DeepLのARRは昨年末時点で$50Mとみられており、売上成長率2xペースで成長している。マルチプルは20xと現状の市場から考えると強気だが、DeepLは黒字化間近であることも1つのポジティブ要因となっています。
サイバーセキュリティをゲーム感覚で学べるSaaS Hack The Box、シリーズBで$55M(約70億円)をカーライルなどから調達
米・英に拠点を構えるHack The Boxは、企業や個人向けにゲーム化された環境でサイバートレーニングを行う「ハッキングラボ」を運営するスタートアップ。企業に対する様々なサイバー攻撃の状況に対して、テストとトレーニングを行うことができます。SaaSのみならず、倫理的なハッカーを雇いたい企業と求職者がつながるキャリアプラットフォームも提供しています。セキュリティ専門家の需要の急速な高まりの一方、人材不足が深刻な状況です。今回のラウンドは、大手PE カーライル・グループがリード投資家。
従業員の医療費返済を支援する法人カード×SaaS Paytient、シリーズBで$40.5M(約52億円)を調達
2018年創業のPaytientは、雇用主と保険会社と提携し、従業員が医療費の自己負担分を簡単に支払うことを支援をするFintech×SaaSスタートアップ。無利子クレジット付 Paytient Visaカードの提供とカード保有者の予算に合わせた柔軟な返済計画を設定することができます。本シリーズBでは、Mercato Partners Traverse Fundなどから$33Mの出資と、Silicon Valley Bankから$7.5Mの借入を実施しました。
企業内情報の検索・タスク自動化を支援するAI×SaaS Inbenta、$40M(約51億円)を調達
2005年創業のInbentaは、オラクル元副社長Jordi Torras氏がコンサルティング企業として創業して、チャットボット、社内のナレッジマネジメント・検索エンジンなどを会話型AI×SaaSビジネスに転換したスタートアップ。Inbentaは、既存のウェブサイトやアプリ(WhatsApp、Facebook Messenger、Slackなど)に組み込んで、会議のスケジュール設定、オーダー変更などのタスクを自動化を支援しています。現在までに金融、旅行、EC、保険、自動車などの幅広い業界の250以上のブランド企業を顧客に抱えています。今回、Tritium Partnersから調達しました。
薬局DXを支援するカケハシ、シリーズCファーストクローズで76億円調達
薬局体験アシスタント「Musubi」、薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」、患者フォローアップアプリ「Pocket Musubi」、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」などのプロダクトを開発、展開。薬局体験アシスタント「Musubi」は全国7,000店舗以上の薬局で採択。薬局の業務効率化や経営改善を実現することに加えて、患者と薬局の関係性向上を実現し、中長期的には製薬メーカー、卸事業者、官庁などとの連携による医薬品の流通最適化や供給安定化の実現を目指す。今回調達した資金は、組織基盤を強化、新規事業の立ち上げに充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Axiom Asia Private Capita、第一生命保険、あおぞら企業投資、フォースタートアップス、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Ventures、ジャパン・コインベスト、Salesforce Ventures
ガイドナビゲーションツールを提供するテックタッチ、17.8億円調達
ウェブ上のシステムに入力ガイドを設置し、正しくゴールまでナビゲーションするツール「テックタッチ」を開発、提供。クライアントサポートや社内の問い合わせ対応といった業務の工数負担を軽減するソリューションとして、大手企業を中心に、情報システム部門や人事部門、コンタクトセンター、SaaSプロバイダーのカスタマーサクセスツール、官公庁などで利用されている。今回調達した資金は、人材採用、マーケティング、海外進出への投資に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- DNX Ventures、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、NTTドコモ・ベンチャーズ、電通ベンチャーズ、三菱地所(BRICKS FUND TOKYO)、ソニーベンチャーズ (Sony Innovation Fund)、The Breakthrough Company GO(THE CREATIVE FUND)、DBJキャピタル、Archetype Ventures
物流業界の進化を目指すLogpose Technologies、プレシリーズAで8,000万円調達
運送業界向けのSaaS「AI配車アシスタント LOG」を開発、提供。ファーストマイルやミドルマイル、ラストワンマイルに従事する運送企業や卸・3PL事業者が利用。輸送計画、ドライバー位置情報などを考慮した、リアルタイムの配送案件を運送会社にレコメンドし、荷主とのマッチングを最適化する。今後は、自動配車システムから運送会社のネットワーク化、さらには物流のマーケットプレイスへとプロダクトを進化させていく予定。今回調達した資金は、人材採用と組織拡大に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシア・ベンチャーズ
食品B2Bマーケットプレイスの確立を目指すICS-net、資金調達を実施
食品開発のための原料検索サービス「シェアシマ」を開発、提供。サプライヤーとバイヤーを繋げるWebプラットフォームとして、商品開発や原料調達、営業の在り方をアップデートし、さらには食品製造段階で滞留する原料在庫の再流通を促すことで、食品の製造段階におけるロス削減に貢献する。今回調達した資金は、サービスの拡充と会員数の拡大を加速化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- エアトリ、C&Rインキュベーション・ラボ、あしたば
BtoB決済サービスを提供するPayment Technology、資金調達を実施
買掛金・未払金の支払延長サービス「オクラス」、売掛金早期回収サービス「ハヤメル」、クラウド請求書サービス「請求書クラウド」、給与前払いサービス「前払いできるくんLITE」を開発、提供。中小企業を対象に、個人や法人に対するサービスを拡充し、資金繰りを改善するサービスを展開。今後は企業が給与のデジタル払いを支援する「エニペイ」も展開し、フィンテックサービスの強化する。今回調達した資金は、顧客獲得のオンラインマーケティングに充てられる。今回は、金融機関による融資によって資金調達を実施した。