ARR 1,000億円を越える、エリートCEOが構築する「3つのシステム」
NfX「The Systems of Elite CEOs: Setting the Stage for Billion-Dollar Growth」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米シードVC NfXによる、ARR $1.4B(約1,840億円)を超える米SaaS上場企業Wixの創業者兼CEO Avishai Abrahami氏へのインタビュー記事。本記事では、ARR 1,000億円を越えるような優れたスタートアップCEOが構築する強力なシステム(仕組み)について解説しています。Wixならではのユニークな取り組みも垣間見えます。概要は以下の通りです。
- 採用システム(Hiring Systems)
採用活動に時間をかけ過ぎることはありません。Avishai氏はCMOを決めるまでに22人を採用しました。ここでは、1)面接以外にも、全ての採用候補者をテストすること、2) 肩書きは関係ないこと(社員に決めさせる)、3)間違いは即効修正すること、4)プロダクトやマーケティングなど、経験よりも才能が重要なポジションがあることを理解することについて解説しています。 - KPI計測システム(Measurement Systems)
起業家の多くは、中核のKPI測定は得意ですが、それらを構築するためのタスクの計測が苦手な傾向があります。ここでは、どの様にアプローチすべきかを解説しています。ここでは、1) 失敗をためらわず、測定しなければ、ビジネスの正確な姿はつかめないこと、2)測定データをを全社に共有すること、3)良い失敗と悪い失敗を区別することの重要性を説いています。 - スピードシステム(Speed Systems)
CEOは、個人でできることよりも速くスケールするシステムを構築する必要があります。企業は成長するにつれ、スピードは遅くなります。その原因として、社員の危機感の欠如と複雑な意思決定システムの2つをあげています。この解決策として、1)全てのプロジェクトに明確なオーナーを設定すること、2)リソースの待ち時間を無くすこと、3)拡張性のあるコードを書き、必要に応じてリファクタリングすること、4)無駄な会議を無くすこと、5)プロジェクトの責任者を見直し、会議を削減すること、について解説しています。
ハイブリッドワークでのニーズのピラミッド by Emergence Capital
Emergence「The Hybrid Work Pyramid of Needs」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaS分野の米名門VC Emergence Capitalによる、リモートとオフィスの融合を図るハイブリッドワーク化で生まれる企業のニーズの4段階ピラミッドについて解説した記事。日本でもフルリモートからハイブリッドにシフトする企業が増えており、この流れは今後数十年の間で主流になっていくとみられます。しかし、ハイブリッドワーク特有の課題がまだ存在し、そこに最適化された解決策がまだ見出されていないのも現状ではないでしょうか。裏を返すと、今後のSaaS市場の新たな機会にもなるのでご参考にしてみるのも良いと思います。
- 第1段の課題:企業の不動産管理
- 第2段の課題:「オフィスならでは」の体験の向上
- 第3段の課題:ハイブリッドでの社内コミュニケーションとコラボレーションの最適化
- 第4段の課題:チーム・企業のカルチャーの保全
今の市況を力強くサバイブするために
Notion Capital「The European Cloud Challenger Market」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ヨーロッパでSaaSを中心に投資活動を行うNotion Capitalによる2023年のクラウドレポートのご紹介です。チャレンジングな市況感の中で生き残る「質の高い」スタートアップの特徴を纏めています。
1/ コピーキャットではなく、カテゴリーリーダーである
- 資金調達が容易な時代では、比較的多くの類似企業が資金調達をすることが可能。一方で、厳しい市況下では、似たようなサービスを作っている会社のいくつかはより危うい状況になるものもあり、Power Lawのように真にトップ企業しか評価されなくなる
2/ 真のイノベーションを生み出せている
- 単に過去に起こった前例を参考にして履行するのではなく、真のイノベーションを創出することが求められる。イノベーションを生み出すために、優れた方法を見つけ出す才能とビジョンを持った、特定領域の専門家が必要
3/ 強力なトラックレコードを持つファウンダーが揃っている
- 過去に何らかの成功を収めた創業者を探すこと。またスキルを補完できる創業者が複数いることで、成功の可能性が有意に高まる
4/ 力強い成長率や効率性の数値が叩き出せている
- SaaSの優れている点の1つは、スタートアップを比較評価する時に、マーケットの中で確立された評価の指標があること。そして特に市況の厳しい今の状況においては、(下記のものを含め)効率性をウォッチするためにそれらの指標を参考に厳しく監視されるようになっている(Notion Capitalでは成長率、粗利率、NRR、ACV、CAC Payback、Burn Multiple、1人あたり売上高をチェック)
5/ ビジネスクリティカルな提供価値が作れている
- スタートアップはお客さまの業務に不可欠な存在になることを目指すべきであり、それはつまり、それなしでは生きていけないようなビジネスクリティカルな存在になること。現在、多くの企業はより合理化された世界の中でプロダクトが厳しく”選ばれる”状況だが、クリティカルなプロダクトを構築できれば、予算に制約のある環境下でもお客さまに共感して導入してもらうことができる
ソフトウェアのログ管理SaaSの米上場企業 SumoLogicが$1.7B(約2,234億円)で買収・非公開化へ
2020年9月にIPOしたSumoLogicが、投資会社Francisco Partnersからの$1.7Bの買収オファーに合意しました。SumoLogicは、多くのプロダクトからログを収集し、分析を行うことができる監視・分析SaaSを提供する米上場企業です。昨年12月Q3決算時のARRは$298.9M(YoY +25%)で、直近のEV/Revenueは4x程度でした。この買収の株価は、買収可能性を報じる前の先月の株価終値に対して約57%のプレミアムが乗った形です。この取引は、2023年の第2四半期に買収完了する見込みです。
看護師のお仕事マーケットプレイス ShiftMed、$200M(約263億円)を調達
ShiftMedは、看護師資格保有者に特化した人材マーケットプレイス。パンデミック前から看護師不足は大きな社会問題になっていましたが、パンデミック渦中で看護師の燃えつき問題もあり、課題は深刻になりました。そんな最中、出張看護師への需要が急増し、週給1万ドル(130万円超)をもらう看護師も出てきました。ShiftMedは、この出張看護師への依存度を減少させ、医療機関のコスト負担を軽減することを支援しています。その他に、医療機関側に給与の即日払い(Instant Pay)や給与計算、福利厚生のようなSaaSやFintechのサービスも転換しています。この2年間で売上は8倍に成長しています。今回の調達は、Panoramic Venturesがリードしました。
カナダ発のホームサービス特化vSaaS Jobber、シリーズDで$100M(約131億円)を調達
2011年創業のJobberは、空調工事、配管工事、住宅清掃などのホームサービス向けにモバイルベースのAll-In-One SaaSを提供する「カナダ版ServiceTitan」。アプリで、請求書発行、支払い、予約や、メール送信や見積書作成などのマーケティングツール、ユーザーへの融資機能など、さまざまな機能を備えています。外部の会計SaaSと統合可能。売上もこの2年間で3倍に増えており、$100Mを超えています。コアターゲットは従業員20人未満のSMBが中心です。本シリーズDは、General Atlanticがリードしました。
時系列データベース・分析SaaSのリーダー企業 InfluxData、シリーズEで総額$81M(約106億円)を調達
2012年創業のInfluxDataは、人気が高まっているプログラミング言語Rustで開発され、大容量・高速データをリアルタイムで取り込み・保存・分析を可能にする時系列データのオペレーション分析に特化したSaaSを提供するリーディング企業。ニッチと言われていたセクターですが、近年ではAmazon TimestreamやImplyなどのプレイヤーも登場し、大きく拡大しました。企業内のデバイスやセンサーの数が爆発的に増え続けているため、リアルタイム・エンジンを倍増させようという取り組みが行われ、顧客数は約2,000社に達しています。今回の調達では、デットとエクイティによる調達で、Princeville CapitalとCiti Venturesなどから調達を実行しました。
グローバルブランドの消費者調査SaaS Entropik、シリーズBで$25M(約33億円)を調達
2016年インド・バンガロール創業のEntropikは、ブランド企業向けに消費者の感情分析AIを活用した、統合型マーケットリサーチSaaSを提供するスタートアップ。特許取得済みのEmotion AIで、欧米、東南アジア、中東への提供を拡大しており、過去2年間で売上は7倍に成長しています。顧客にはP&Gや、ソニー・ピクチャーズなどを抱えています。本シリーズBは、Bessemer Venture PartnersとSIG Venture Capitalが共同でリードしました。
GitHub Copilotの競合 コード自動生成SaaS Magic、シリーズAで$23M(約30億円)を調達
Magicは、ソフトウェアエンジニアがコードを書き、レビューし、デバッグし、変更を計画することを支援するように設計された大規模言語モデル(LLM)を活用したコード生成ツールを提供するスタートアップ。最大の競合は、GitHub Copilot。Magicは、まだ従業員6人で売上は上がっていませんが、Copilotが既に120万人以上が利用し、急成長しているだけに期待が高い分野です。本シリーズAは、Googleの親会社AlphabetのCapital Gがリードし、米有数のソロキャピタリスト Elad Gilらも参加しました。
AIの専門知識が無くてもAIアプリを開発できるSaaS MindsDB、シリーズAで$16.5M(約22億円)を調達
MindsDBは、独自の機械学習エンジンを活用して、ソフトウェア開発者がAIアプリを簡単に開発できることを支援するSaaSスタートアップ。創業者の2人はオーストラリア国立大学の同級生で、2017年に創業しました。共同創業者兼CEO Jorge Torres氏によると、「EメールからCRMまで、AI機能を中核に据えた、新世代のアプリケーションに生まれ変わる」と市場を予測しています。既に20社が有料顧客がいますが、まだ売上は$1M未満とのことです。本シリーズAは、シリコンバレーの名門VC Benchmarkが2023年初のリード投資案件として実施しました。バリュエーションは$56M(74億円)。
法人営業のDXを推進するBaseconnect、シリーズBで総額54億円調達
「世界中のデータを繋げることで、ダイレクトに必要な情報にアクセスできる世界を作る」をミッションに、クラウド型企業情報データベース「Musubu」を開発、提供。法人営業の新規開拓を効率化するWebサービスとして140万件以上の企業・事業所データを格納。累計導入社数は10万社を突破。今回調達した資金は、プロダクト開発、新規事業機会の探索、経営人材の採用に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- (エクイティ)Z Venture Capital、ジャフコ、ユーザベース、京都信用金庫、日本郵政キャピタル、Salesforce Ventures、NTTドコモ・ベンチャーズ、エン・ジャパン、その他国内機関投資家や欧州系海外投資家
- (デット)みずほ銀行、三菱UFJ銀行、京都銀行、紀陽銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫
消費者と企業のブランド体験を向上させるwevnal、シリーズBファーストクローズで10億円調達
BX(Brand Experience、ブランド体験)プラットフォーム「BOTCHAN」を開発、提供。消費者に対する集客から購入における一貫した体験価値の向上を提供することを支援。心地良くないブランド体験によるCPCの高騰やサイト離脱率、フォーム離脱率(カゴ落ち)や解約率の高止まりを解消する。D2C 業界を中心に累計 400 以上のブランドが導入。今回調達した資金は、サービス強化や機能開発、データ活用を行うための人材採用、およびマーケティング強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ、Archetype Ventures、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル
カスタマーサポートDXを推進するカラクリ、シリーズBで10億円調達
AIチャットボット「KARAKURI chatbot」を始め、チャットボットとデータを一元管理できるFAQシステム・有人チャットなどのCXツール「KARAKURI Digital CS Series」を提供。カスタマーサポート/コンタクトセンターにおける顧客体験の改善とともに蓄積するデータの活用を推進する。メルカリ、SBI証券、髙島屋、セブン‐イレブン・ジャパンなどの企業が導入。今回調達した資金は、プロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- (エクイティ)SBIインベストメント、ALL STAR SAAS FUND 、ジャフコ
- (デット)商工組合中央金庫
ユーザーの行動習慣を変革するWizWe、総額5.4億円調達
習慣化プラットフォーム「Smart Habit」、チャーン防止・LTV向上を支援するサブスク事業者向けサービス「Smart Habit LTV」、ヘルスケア業界の習慣化をサポートする「Smart Habit Healthcare」などのプロダクトを提供。「Smart Habit」ローンチ後は、語学など教育分野の学習習慣化における実績をあげ、2021年にフィットネスおよびヘルスケア領域にサービスを拡大、横展開。現在は累計3万人のサポートを実現している。今回調達した資金は、事業成長の加速や株主(エムスリー、サントリーホールディングス)との協業に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- エムスリー、サントリーホールディングス、モバイル・インターネットキャピタル、ダイレクトマーケティングミックス、フュージョン、AIX Tech Ventures
製薬・医療業界向けSaaSを提供するシャペロン(旧フラジェリン)、シリーズAファーストクローズで総額約3.5億円調達
製薬・医療業界向けメッセージングプラットフォーム「Shaperon」を開発、提供。製薬・医療業界における営業活動のデジタルシフトに伴い、医療従事者へのデジタルプロモーションとコンプライアンスの遵守を1つのツールで完結するようプロダクトを設計。2019年のプロダクトリリース以来、累積で200万通以上のメッセージが送信されている。今回調達した資金は、プロダクト開発及び組織体制強化に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ALL STAR SAAS FUND、Cygames Capital
企業の海外における事業・経営リスク回避を支援するGlocalist、資金調達を実施
海外進出した企業のビジネスのリスクを検知・共有・整理するグローバルリスクマネジメントツール「Glocalist」を開発、提供。日系企業の海外拠点数の増加やSDGs/ESG・地政学リスク・経済安全保障リスクなどへの対応に追われる企業の海外リスクへの課題解決を支援する。主な機能として、官公庁・地方自治体・外郭団体が発信する情報を発信から24時間以内にツール上に掲載する「Publications」機能や自社ビジネスに重要度の高いリスクをタグ付け管理・共有できる「Risklist」などを搭載している。今回調達した資金は、機能拡充および拡販のための体制構築に充てられる。
これまでに参画した投資家は、下記の通り。
- クオンタムリープベンチャーズ、サイバーエージェント・キャピタル、ココナラスキルパートナーズ、ゼロワンブースターキャピタル、株式会社MS-Jap / ハヤテグループ(MS・HAYATE1号投資事業有限責任組合)
アフリカでスモールビジネス向けフィンテック事業を展開するLINDA PESA、約3,000万円調達
スモールビジネス向け経営管理アプリを提供。アフリカにおけるスモールビジネスの事業者の多くがアナログな経営管理を行っている中、正確な経営情報の蓄積がされず、結果として低い信用力や金融市場へのアクセスのなさが課題として蓄積。正確な経営情報を可視化するソリューションを提供していく。今回調達した資金は、アフリカスモールビジネスの金融インフラ構築を実現するための事業展開を加速に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- East Ventures、丸井グループ、スカイライトコンサルティング、ゼロワンブースターキャピタル
ガイドナビゲーションツールを提供するテックタッチ、2.5億円の融資を実行
ウェブ上のシステムに入力ガイドを設置し、正しくゴールまでナビゲーションするツール「テックタッチ」を開発、提供。クライアントサポートや社内の問い合わせ対応といった業務の工数負担を軽減するソリューションとして、大手企業を中心に、情報システム部門や人事部門、コンタクトセンター、SaaSプロバイダーのカスタマーサクセスツール、官公庁などで利用されている。今回調達した資金は、ビジネス開発および人材獲得への投資に充てられる。今回の融資をサポートした金融機関は、下記の通り。
- 日本政策金融公庫