エンタープライズ向けで新興SaaSが大手SaaSに勝つ方法
Stay SaaSy「Selling to the Enterprise: Challenging SaaS Incumbents」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
国内でもSaaSが増える中で、オンプレ vs SaaSのみならず、SaaS同士での競争が増えつつあるように思います。では、後発の新興SaaSが国内外の大手SaaSと対峙した時に、どの様に闘うべきでしょうか?本記事は、大手SaaSだからこそ生まれるスキを突く戦略について解説した記事です。優れたポジショニングを構築する上でも参考になると思います。ここで紹介している4つの戦略について概要を解説します。
- 優れたUI/UXかつ低コストで提供する
大手SaaSは市場拡大を狙って高価格化しやすくなります。それゆえに、低コストで市場に切り込む余地が出る。特に顧客企業が収益性を重視し、価格に敏感な時期はチャンスになります。低コストに加えて、1)シンプルなUI/UXや、2)短いセールスサイクル/PLGモーションがカギになります。但し、安かろう悪かろうではなく、顧客に戦略的な低価格であることを説得することも気を付けるポイントです。 - ニッチ市場にフォーカスする
SaaS企業が大型化すると、1)ホリゾンタルな製品群を広げる水平展開、または、2)特定市場の支配力を増す垂直統合の2つのタイプの戦略を取ることが多いです。いずれのケースにせよ、大手SaaSが見逃すニッチ市場が生まれやすくなります。このニッチ市場を攻める上では、SalesforceやShopifyなど、ニッチ市場においてよく使われているプラットフォームに乗った戦略を取ることも効果的です。 - 新しいテクノロジーの波に乗る
Salesforceのクラウド化。Zoomのビデオエンコード層の追加。FigmaのWebAssembly連携など。新しい技術スタックで立ち上げることで勝つパターンもあります。大手SaaSは新興SaaSより動きが遅い上に、新しいテクノロジーでプラットフォームを改修することは事実上不可能なケースも多くあります。但し、テクノロジーの波を早期に見極めることは難しいので、レアケースとも言えます。 - ゲリラ・マーケティングをする
エンタープライズ攻略では、大手SaaSはブランド力、パートナー連携、アウトバウンドセールス等のGTM戦略に絞って行うことはよく見られます。従って、大手SaaSはバイラル性の高いコンテンツ・マーケティングなどの戦略には弱く、手薄になりがちです。ゆえに新興SaaSがこの弱点を突いて、特に新興のエンタープライズを中心に落としていくことは可能です。
経営者にとっての読むこと・書くことの重要性
Paul Graham氏「The Need to Read」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカの名門アクセラレーター Y Combinator創業者 ポール・グレアム氏による「読むこと」の重要性を解説した記事。人は何かを読む時、新しい知識を得るだけではなく、書き方も同時に学んでいると言います。この読む能力と書く能力の協調的な成長は、知性発達学の権威 故ハーバード大学 カート・フィッシャー教授の理論でも触れられている内容です。
では、なぜ書くことは大事なのでしょうか?書くことは、人にものを伝えるだけでなく、課題解決や新しい考えを発見する上で必要不可欠だからです。特にビジネスのような、課題が曖昧で複雑な問題を解く時、書くことは必ず解決に役に立ちます。アマゾン創業者 ジェフ・ベゾス氏やマイクロソフト創業者 ビル・ゲイツ氏、稀代の投資家 ウォーレン・バフェット氏など、多くの著名経営者は、読書家であり、かつ書くことに強いこだわりを持っている事実からも、経営者にとって書くこと、そして書く能力を高めるのに不可欠な、読むことの重要性がわかると思います。
スーパーエンプラ向けSaaSのカスタマーサクセスオペレーションと組織づくり(前半 | 後半)
垣畑 陽氏「スーパーエンプラ向けSaaSのカスタマーサクセスのオペレーション、組織づくりで考えたこと(前編)」
「【後編:これまでの歩み】スーパーエンプラ向けSaaSのカスタマーサクセスのオペレーション、組織づくりで考えたこと」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
テックタッチでVP of Customer Successを担われている垣畑 陽さんのnoteをご紹介します。大企業をお客さまとなると、先方の複雑な組織構造・力学に対応できる柔軟性や、日々発展するDXの進捗に対応できる機動力などが求められます。その実践例をリッチに纏めていただいており、読み応えのある素晴らしい記事です。
B2B スタートアップがおさえるべき5つの重要な教訓
SaaStr「5 Critical and Company-Altering Learnings from B2B Startups with Y Combinator Managing Director of YC Continuity Anu Hariharan (Pod 595 + Video)」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
B2B SaaSの本質はお客様の業務に根付くサービスを提供するということに尽きます。業務をこなす上で “これがないと困る” という境地に達することがPMFの要件の一つです。この動画はSaaStrのカンファレンスにてYCの方がピッチしていた内容ですが、具体例を交えながらB2Bビジネスの要点を解説しています。事業推進に行き詰まっていたり、PMFに到達しきれないという方には是非この動画を参照してほしいです。
そのプロダクトは十分か?
- 実際のところ多くのスタートアップはシリーズA以降も十分なプロダクトを実は有していない。
- 見極めるための質問の例
- 明日プロダクトが使えなかったらどれくらい残念か?
- 期待している頻度でプロダクトが利用されているか?
- Inboudの流入数を確認する。
多くのB2Bスタートアップは低く売り過ぎている
- 元の150倍で売れたこともあった。Gustoも最初の数年で非常に安価に売っていた
すべてのお客様に対して十分に貢献することはできない
- 理想的なカスタマーへサービス提供にフォーカスしよう
セールスは創業者にとって反復的であるべき
- 早くセールス責任者を雇いすぎると成長の速度が落ちる
デフォルトで生きている状態に達する計画を策定する
- B2Bスタートアップはキャッシュフローが回りやすいので必要以上のファンドレイズをする必要はない
- 投資規律を持つことが重要
A.I スタートアップのMoat作り
Elad Gil氏「Defensibility & Competition」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
多くのSaaSソフトウェアは、最初は防御性が低く、時間とともに独自性やロックイン効果を築いていく。Moatを築くためには、以下のような要素が重要だと投資家のElad Gilは言及している。
- プラットフォーム化:ユーザー間の相互作用やネットワーク効果を生み出す
- データネットワーク効果:データの収集や分析でサービスの品質や価値を向上させる
- バンドリング:クロスセル出来るプロダクトを多く提供し、競合が入り込めないようにする
- カスタマイズ:顧客のニーズや業界特性に合わせてサービスを提供する
- ブランド:信頼性や認知度を高める
OpenAIを使ったソフトウェア企業は、本来のSaaSと変わらず、防御策は時間とともに生まれることが多く、独自のデータやワークフロー、セールスなどで築く。そして、プロダクトの開発や拡張を怠ると、他社に追い越されやすくなると警告している。
Alphabetからスピンオフした量子コンピュータ×SaaS Sandbox AQ、$500M(約671億円)を調達
Googleの親会社AlphabetからスピンオフしたSandbox AQが、$500Mという大型調達を発表しました。投資家は、Google元CEO Eric SchmidtやT. Rowe Price、Salesforce.com創業者Marc BenioffのTIME Venturesなど。Sandbox AQのSaaSは、企業のシステムをスキャンして、どの部分に古い暗号が使われているかを特定し、緊急に交換する必要があるものを特定したり、医薬品や材料開発を加速させるシミュレーションを支援しています。このシミュレーションは、現在のところ量子コンピュータを必要としない、とのことです。米国政府は、量子コンピュータを国家安全保障上の重要技術の1つに位置付けていて、Sandbox AQはすでに15以上の企業や政府機関の顧客と契約しています。
B2B企業の売上目標達成を支援するABM大手SaaS Demandbase、$175M(約235億円)を調達
2007年創業のDemandbaseは、米国のアカウント・ベースド・マーケティング(ABM)分野をリードするスタートアップ。Demandbaseの提供するSmarter GTMは、顧客の保有データに加え、Demandbase独自データとAIを組み合わせて、営業やマーケティングが購入する可能性が最も高いアカウントを特定することができます。直近の第4四半期では、大幅な売上成長と過去最高の受注額を獲得しています。今回の資金調達は、数多くの有力SaaS企業の買収で知られるVista Equity Partnersの子会社、Vista Credit Partnersから実行しました。
公共交通のオンデマンドアプリと運行管理SaaSを提供するVIA、$110M(約148億円)を調達
2012年創業のVIAは、公共交通機関やタクシー会社、学校など向けにオンデマンド型の交通運行の計画、最適化、運用をEnd-to-Endで提供するスタートアップ。VIAのモバイルアプリで、同じ方向に向かう乗客同士が相乗りすることをシームレスに実行できます。世界35か国以上の600の地域で利用されています。近年では、自動運転開発企業MotionalやMay Mobilityと業務提携し、自動運転シャトル事業もスタートしました。今回のラウンドは、$3.5B(約4,700億円)のバリュエーションで、83Northがリードしました。
シンガポール発のSMB向けFintech×SaaS Aspire、シリーズCで$100M(約134億円)を調達
Aspireは、中小企業(SMB)向けに金融オペレーティングシステムの提供を目指すFintech×SaaSスタートアップ。2018年創業から企業の銀行口座、法人カード、売掛金・買掛金管理、財務管理SaaSと連携した自動請求書処理などを提供しています。元々はSMB向けの運転資金の融資提供からスタートしています。過去12ヶ月で年間決済総額は$12B(約1.6兆円)に拡大しており、東南アジアで1.5万社以上が利用しています。本シリーズCでは、Sequoia Capital Southeast AsiaとLightspeedが共同でリード投資を実行しました。
アプリ開発者が簡単にパスワードレス認証を実装できるSaaS Descope、シードで$53M(約71億円)を調達
Descopeは、米上場企業Palo Alto Networkに買収された、セキュリティ運用SaaS「Demisto」のコアメンバーが2022年4月に創業したスタートアップ。Descopeは、開発者が数行のコードで、B2C・B2B アプリに認証、ユーザー管理、承認機能を簡単に追加するソフトウェアを提供しています。これにより、顧客企業はアプリの市場投入までの時間を短縮し、エンジニアリソースの効率を高めることができます。また、その先の顧客のIDベースのサイバー攻撃を防ぐことができます。今回のシードラウンドは、Lightspeed Venture PartnersとGGV Capitalがリードしました。
オーストラリア発の与信・決済Fintech×SaaSリーディングスタートアップ Shift、シリーズCでAU$27M(約25億円)を調達
2013年創業のShiftは、企業向けに当座貸越、設備資金の支払い、成長資金の調達、サプライヤーへの支払いなど、与信と決済ソリューションを提供するオーストラリアの代表的なスタートアップ。これまでに20億豪州ドル(約1,800億円)以上の与信・決済を提供した実績があり、過去3年連続で50%超の成長を達成。本シリーズCでは、Sequoia Capital Southeast Asiaがリードしました。今回の調達により、貿易決済ソリューションの提供も視野に入れています。
B2B Fintechツールと連携したスマート会計SaaS Puzzle、シリーズAで$15M(約20億円)を調達
現代のスタートアップは、決済はStripe、法人カードはBrex、給与計算・福利厚生はGustoなど、複数のB2B Fintechソリューションを組み合わせて運営されることが多いです。Puzzleは、複数のB2B Fintechツールのデータを活用した、新興企業向けの新しい会計ソフトウェアを提供するスタートアップ。一般的な財務会計に接続されたストリーミング財務基盤により、資金調達、税金、支払や給与などをリアルタイムで把握することができます。2019年のローンチ後、500社以上のスタートアップと協力してSaaSを開発してきました。本シリーズAは、General Catalystがリードしました。
脱炭素経営支援ソリューションを提供するゼロボード、シリーズAで24.4億円調達
GHG(温室効果ガス)排出量算定・開示・削減を支援するソリューション「zeroboard」を開発、提供。企業活動やサプライチェーン由来のGHG排出量をクラウド上で算定、可視化。併せて、サステナブルファイナンスや再エネ・省エネ、脱炭素ソリューション、原材料調達、人材の提供など、ユーザー企業の脱炭素課題に沿った支援を提供している。2022年10月時点で、導入社数は2,000社を達成。海外を含めたサプライチェーン排出量の算定をさらに推進するべく、英語やタイ語、中国語、スペイン語に対応している。今回調達した資金は、「zeroboard」のプロダクト機能開発、カスタマーサクセスなど専門人材の採用強化、海外展開に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Keyrock Capital Management、DNX Ventures、インクルージョン・ジャパン、ジャフコ グループ、DBJキャピタル、Coral Capital、長瀬産業、関西電力、三菱UFJ銀行、岩谷産業、豊田通商、住友商事、FFGベンチャービジネスパートナーズ、オリックス、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、デライト・ベンチャーズ、U3イノベーションズ
HRテックソリューションを提供するZooKeep、シードで1億1,100万円調達
採用管理システム「ZooKeep」を開発、提供。候補者管理や面接調整からキャリアーページ作成まで採用プロセスをE2Eで管理できる。また採用 / 人事担当者が抱える全ての課題をシームレスにサポートするべく、SaaSパートナーや採用・人事コンサルタントと連携。oViceやZAIKOなどの企業が現在利用している。今回調達した資金は、プロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 自然キャピタル、エンジェル投資家(エクイティ)
- 金融機関(デット)
郵便物や配達物をデジタル管理をサポートするトドケール、プレシリーズAで総額1億円調達
郵便物・配達物のデジタル管理ツール「トドケール」、および郵便物・配達物を遠隔で管理するミニBPOサービスを提供。ハイブリッドワークを中心とした柔軟性のある新しい働き方が一般化する中、物理的に対応が必要な郵便物や配達物対応の負担を軽減することを実現するべく、オフィスにおける総務業務の自動化および完全アウトソース化を支援。トドケールのシステム内で管理される配達物や郵便物の数は、サービスを開始した四半期と比較して42倍に成長しており、その数は成長している。今回調達した資金は、プロダクトの開発と改善、サービス認知拡大に向けたマーケティング、採用活動に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシアベンチャーズ
中小企業のデジタル対応や環境対応を促進するSotas、シードラウンドファーストクローズで5,300万円調達
化学産業に特化した生産/在庫管理・受発注システム「Sotas工程管理」、中小企業の埋もれた技術や製品、素材の流動性を向上させる化学産業データベース「Sotasデータベース」を開発、提供。特に近年進展している上場企業の気候関連財務情報の開示に対して、中小企業も含めたサプライチェーン全体のCO2の可視化が求められている中、未だ環境対応の熱量における大手企業と中小企業の間にあるギャップに着目。環境のアンテナが高い化学産業の中小企業に向けに、デジタルによる経済成長と環境負荷低減の基礎づくりをサポート。今回調達した資金は、「Sotas工程管理」「Sotasデータベース」の企業導入促進費用、海外展開に必要な人材の採用強化、プロダクト開発に充てられる。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- サムライインキュベート、日本材料技研