メインバンクが経営破綻した際に起業家が取るべきアクション(SVBを例とした)
TechCrunch「A 10-step playbook for founders with Silicon Valley Bank accounts」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今週末はシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻のニュースでもちきりでしたね。銀行のような、事業のインフラで起こった想定外のリスクだけに、国内外のスタートアップに大きな衝撃を与えました。このTechCrunchの記事では、今回のSBV経営破綻に対する起業家が取るべきアクションを解説しています。スタートアップは、リスク耐性が低いため、今後のリスク管理体制を考える上でも参考になると思います。
- まずオフィスに行く:様々なシナリオを想定して、綿密な計画を迅速に立てることが求められます。最悪の事態に備え、冷静に、正確に実行することが一番です。
- 社内に3人のタイガーチームを組成する:CEO、財務責任者、プロダクトと組織を統括するリーダーの3人の少人数チームを組成します。リスクケースを乗り切った経験者のメンターがいれば、なお効果的です。
- 投資家とのコミュニケーションを行う:現在の投資家と連絡を取り、現状や資金ニーズについて情報共有をして下さい。優秀な投資家は、このような状況が永遠と続かないことを理解しているため、支援に乗り出してくれる可能性があります。
- 日次ベースのキャッシュバーンの財務予測モデルを作成する:給与支払、売上、サプライヤーや不動産に関して正確なモデルを作る必要があります。
- 新しい銀行口座を開設する
- 従業員の繰延報酬プラン作成する:キャッシュを安定させるための繰延報酬や、そのリスクに対する追加のSO付与などの計画を立てます。実行する前には、取締役会への提示が必要です。
- 未決済の発注や買掛金項目をすべてリストアップする:事業継続に必須のものとそれ以外で評価します。これをベースにキャッシュバーンモデルを更新します。
- 毎日従業員と会話する:全社にSVBの状況のメモを送りましょう。送信後に、緊急の全社ミーティングの予定を送ります。最悪の事態に対処する計画を話、全社に毎日最新情報を提供しましょう。
- 金融当局(FDIC)の最新情報にアンテナを張る
- キャッシュを確保するために他のあらゆる方法を考える:タイガーチーム内でアイディアを出し合い、優先順位付けと実行計画を作ります。
お客さまとの関係性を強固にする「カスタマーアドボカシー」のススメ
First Round Review「The Startup’s Guide to Customer Advocacy: How to Get Closer to Your Champions」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米iVCのFirst Round Capitalが、Asanaで最初のHead of Customer Advocacyを担ったKalina Bryant氏に行ったインタビュー記事のご紹介です。プロダクトを愛して利用してもらうだけではなく、プロダクトの良さが伝播するくらいに熱心になってくれるチャンピオンを見つけていくことが、スタートアップがビジネスを大きくしていく上で大事であると、本記事では説きます。今回は、どうやってカスタマーアドボカシーを実践していくかについて、一部内容を抜粋し、ご紹介させていただきます。
Step1: お客さまの中のチャンピオンを見つける
カスタマーサクセスチームと手を取り合いながら社内のチャンピオンを特定する。「プロダクトについてもっと知りたい」と連絡を取ってくるほどにプロダクトに熱中する人物を見つける。もしチャンピオンを見つけられないのであれば、社内でそのような方を特定できるプログラムを作る
Step2: チャンピオンをコミュニティに根付かせる
同じ課題や志をもつユーザー同士が交流したりプロダクトについて理解が進むコミュニティを、チャンピオンを中心に構築する
Step3: VIP待遇を提供する
チャンピオンは、自社の組織や従業員に対してプロダクトの付加価値を理解してもらえるような方法を能動的に見つけてくれるケースがある。そのような方々に対してVIPな体験を提供すること。この時、体験を提供する相手のセグメンテーションも重要であり、業種別にその体験に招待するのか、肩書きに基づいて招待するのか、さまざまな組み合わせを検討してみること
Step4: エグゼクティブ層をターゲットにする
自社の経営層と、より深い関係を築きたいと考えているトップクラスのお客さまとを引き合わせる機会や、エグゼクティブ・ブリーフィング・センター(お客さまが来社し、自社の会社や製品に必要なことを強調するための機会)を実施し、両社のパートナーシップに加えてそこにある共通のコミットメントを強固にしていく
Step5: 関係性の中で生まれる価値を大きくしていく
Step1~4までを実現できた後は、両社が協力して互いのブランド価値を高めてベネフィットを受けられるタイミング。お客さまの中でもVPクラスやCレベルのエグゼクティブが関わりたいということマーケティングチームに知らせ、彼らの活動に反映させる
業界特化型APIがVertical SaaSの次の波になる
Fractal Software「Verticalized APIs: The Next Wave of Vertical SaaS」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Vertical SaaS の投資家や創業者にとってのこれまでの成功則は、お客様に業界独特のワークフローのほとんどに対応すべきであるということです。これはToastやSquire、Mindbodyなどの先行プレーヤーによってプレイブックとして明らかになりつつあります。一方で、業界の中には自社の単一のソフトウェアだけでは、浸透させようにも複雑で独特すぎてワークフローを代替できないということがしばしばあります。その中で、業界固有の API ソリューション (例: 建設および金融) からすでに大きな恩恵を受けており、これらは今後加速していくと予想されます。以下はFractal Softwareの記事を引用しながら整理をしてみます。
■ API ソリューションの恩恵を受ける可能性のある業界の特徴
- デジタル化の強い追い風
- 複数のミッション クリティカルだがサイロ化されたソフトウェア システム
- 運用を成功させるためにコミュニケーションとデータ共有を必要とする利害関係者の複雑なネットワークに定着している
- データ共有に関する厳しい規制
■ この特徴で注目すべきなのはヘルスケアとロジスティクスである
■ ヘルスケアのケーススタディ
- 保健社会福祉省 (HHS)、メディケイド サービス センター (CMS)、健康情報技術のための国家コーディネーター (ONC) のオフィスなど、ヘルスケアの複数の規制機関が連携して、相互運用性を担保している。例えば各病院はプロバイダーと提携して、EHR、決済機関、請求ベンダー、遠隔患者監視ツールなどを含む複数のシステムを接続しています。これにより、財務ワークフローが容易になり、ケアの移行が可能になり、遠隔患者の転帰が改善されます。さらに、支払者はこれらのツールを活用して、プロバイダー全体の EHR および患者の受け入れデータにアクセスし、事前承認率の向上、ケアのギャップの特定、および医療記録の取得を行うことができます。
- また、医療機関にサービスを提供するソフトウェア会社も、これらの API と提携してプラットフォーム全体で臨床データと財務データにアクセスできるため提供価値が向上します。
- 相互運用性基準が向上することで、Redox や Lyniate などの API は、すべての医療システムが国家基準に準拠し、価値ベースの償還の収益性を高めるために必要なツールになります。
■ ロジスティクスへの拡張への期待
- Covid-19は、サプライチェーン管理に存在する重大な課題を明らかにし、必需品の不足、価格の高騰、工場閉鎖をもたらした。
- サプライ チェーンの可視性が 2022 年のビジネスの最優先事項でした。
- この需要により、 Project44やVizionなどのサプライ チェーンの可視性のための垂直固有の API に大きな注目と投資がもたらされました。これらのソリューションは、ライブ コンテナ追跡データを ERP、TMS システム、および荷送人またはロジスティクス ビジネスが活用するその他のソリューションにプッシュ通知を行う。
マーケティング・オートメーションSaaS Soci、融資とエクイティで総額$120M(約161億円)を調達
2012年創業のSociは、様々なチャネルでマーケティングを管理する数百~数千の拠点を抱える企業向けに設計されたSaaSを提供するスタートアップ。SociはARRが前年比149%増となり、顧客基盤も食品・飲料、小売、自動車、通信、食料品、健康・フィットネス、美容、金融サービス、保険など幅広い産業で、700社以上で利用されています。Pet Supplies Plus、Fordなどが顧客。最近では、OpenAIのAPIを利用して、レビューネットワーク(Yelpなど)のレビュー収集・分析から自動応答する機能をリリース。本ラウンドはJMI Equityがリードしました。
パーソナライズされたプロダクトデモ動画作成と効果測定SaaS Consensus、$110M(約148億円)を調達
2013年創業のConsensusは、パーソナライズされたプロダクトデモ動画を作成し、顧客エンゲージメントを高めるSaaSを提供するスタートアップ。Consensusで作成されたデモ動画を、見込み客は、自分が学びたいことを選んでパーソナライズされたデモを入手し、それをより他のチームに共有することができます。ユーザー企業側は、エンゲージメントをトラックし、見込み客の社内の新しい意思決定に関連するステークホルダーを発見できます。Consensusの顧客は、Coupa、Oracle、Autodeskなど、大手ソフトウェア企業30社のうち15社に及びます。2022年の売上は60%増。本ラウンドは、Sumeru Equity Partnersから調達しました。
インド発サプライチェーンファイナンスFintech Mintifi、シリーズDで$110M(約148億円)を調達
2017年創業でインド発のMintifiは、小売業者や物流業者向けにデジタル融資のプラットフォームを提供するスタートアップ。昨年は年間で4倍の成長をしており、年間でファイナンスした総額は$1Bを超え、FY24には$3Bに成長することを見込んでいます。今回のシリーズDでは、Premji Investがリードし、米VC Norwest Venture Partnersや世界銀行グループのIFCなども参加しました。今回の調達資金で、B2B決済やディーラー管理システムの開発により、プロダクトの拡充を狙っています。
金融機関やFintech企業向けセキュリティFintech×SaaSユニコーン Socure、$95M(約128億円)の融資枠を獲得
Socureは、Chime、SoFi、Robinhood、GustoなどのFintech企業や金融機関1,500社以上を顧客に持つ、デジタルID認証と不正検知サービスを提供しているSaaSユニコーン企業。過去2年間で顧客社数は3倍に増加し、多くの大手銀行や保険会社、医療機関などとも連携しています。今回の融資枠(クレジットファシリティ)は、JPモルガン、シリコンバレーバンク(SVB)、KeyBanc Capital Marketsが提供しています。
Amazonなどのマーケットプレイス出品のためのSaaSを提供するThreecolts、シリーズAまでの累計$90M(約121億円)を調達
元Amazon幹部が創業した英・ロンドン発のThreecoltsは、アマゾンビジネスなどのマーケットプレイスに出品するブランド企業や小売業者向けに販売チャネル管理をするためのSaaSを提供するスタートアップ。2021年のローンチ以来、約2万2千社の顧客を獲得しており、サムスン、パナソニック、ロレアルといった大企業だけでなく、小規模事業者も数多く含まれています。売上は前年比で6倍に成長。既に黒字化しています。Threecoltsは、融資を活用して、この2年足らずで14件の買収を成功させています。本シリーズAでは、Crossbeam Venture Partnersなどから調達しました。
AIを駆使したサプライチェーン可視化・予測を支援するSaaS Overhaul、融資とエクイティで総額$73M(約98億円)を調達
2016年創業のOverhaulは、貨物輸送の遅延の予測・可視化するSaaSからスタートしたスタートアップ。現在では、リアルタイムの業務データを用いて、チェックリストの様な管理ツールやアラート機能などを提供しています。現在350社以上の顧客を抱えており、ARRは年末までに$90Mに達する予定。同時に資本効率を維持し、2023年に黒字化の達成を目指しています。本ラウンドは、Edison Partnersががリードしました。
企業のクラウドコストを最適化するSaaS Vantage、シリーズAで$21M(約28億円)を調達
元TechCrunchのウェブ開発者が創業したVantageは、企業のクラウドコスト管理を支援するSaaSスタートアップ。現在、300社以上の顧客企業は、年間総額$1B以上のクラウドコストを同社のSaaS上で管理しています。初めは、より優れたAWSダッシュボードの構築をしていましたが、それ以降AzureやGCPも加え、その他にDatadogやSnowflake、Databricksなどもサポートに追加しています。本シリーズAは、Scale Venture Partnersがリードし、シードラウンドのリード投資家Andreessen Horowitzも追加出資をしました。
飲食業界のDXを支援するfavy、3億円調達
飲食店区画や物件を保有する企業に対し、飲食店舗の立ち上げからデザイン設計、施工、テナントのリーシング、システム提供や運営などをワンストップで提供するRaaS(Restaurant as a Service)事業に加え、顧客データ取得や実店舗における見込み客、来店客の計測・分析などを行うSaaS事業を展開。SaaS事業は2023年3月時点で3,500店舗に利用されており、不動産デベロッパーや電鉄事業者に機能が採用されている。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 阪急阪神ホールディングス、ケネディクス、アレン・マイナー氏(サンブリッジグループファウンダー兼 CEO)
ナレッジワーカー向けソフトを開発するmindbento、2,000万円調達
2022年10月に設立。メモ、画像、URL、PDF などの情報をオンライン上で一元管理するプロダクトを提供。将来的には東北大学のAI研究者の研究シーズを活用することも検討している。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- スパークル、MIRAISE
IoT在庫・発注管理SaaSを提供するスマートショッピング、私募社債による資金調達を実施
現場のあらゆるモノの実在庫をIoTで見える化し、在庫管理や発注を自動化するDXソリューション「SmartMat Cloud」、および日用品の買い物を自動化するスマートIoT家電「SmartMat Lite」を提供。「SmartMat Cloud」は、製造業や医療業界に展開されています。今回はSiiibo証券を活用した社債発行による調達を実施。
- 独マイクロソフトCTOがGPT-4が3月13日週に公開する可能性を示唆(CNET)
- 米Salesforce Venturesが生成AIに特化した$250Mのファンド組成を発表(TechCrunch)
- Intercom 機械学習分野責任者と米Bessemer Venture Partnersらによる、GPTの出現によってカスタマーサービスが新時代を迎えるという内容の対談。LLMを活用した粘着性のあるユースケースは確認されてきており、カスタマーサービスは有望分野の1つ(Intercom)
- ChatGPTによるエンジニア組織の再編の可能性を指摘する記事。エンジニアリングとデータサイエンスは現状分断されていますが、今後LLMを活用したプロダクトが基本になると、この両組織の融合が必要になると予測しています。(Tomasz Tunguz)
- ChatGPT以外にクリエーターが使える9つのAIツールの紹介記事。ここではSimplified、Livelogue、Rationale、Midjourney/Lexica、Mixo/Durable、Krisp、Runway、Sheet+、Eeselを紹介してます。(Medium)
- 米VC9社が作成した生成AIスタートアップマップのまとめ記事。生成AIを活用したサービスの検討する際に参考になると思います。(Medium)
- OpenAIの競合Anthropicが$4.1Bのバリュエーションで$300Mを調達(Crunchbase)
- OpenAI Dall-E2のライバル Stability AIが$4B以上のバリュエーションで調達中(Inside.com)
- トヨタなども使うカスタマーサポート向け会話型AIスタートアップ Ameliaが$175Mを調達(Inside.com)
- 元Appleデザイナーらが創業したAI×ハードウェアスタートアップ Humaneが$100Mを調達(TechCrunch)
- SNS上の有害コンテンツやリスク評価をするAIスタートアップ Unitaryが$8Mを調達(sifted)