Deel CEOアレックス・ブアジズが考える急成長の課題と経営哲学
The Generalist「The Wisdom List: Alex Bouaziz, CEO of Deel」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
2022年初めに当時最速のARR $100Mを20カ月で到達した、超高成長SaaSスタートアップ Deel。2022年12月末時点で、ARRは$295Mに達し、既にEBITDA黒字も実現しています(現在の想定ARRは$354M)。本記事は、このDeelを率いる共同創業者兼CEO Alex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏の経営哲学についての学びを解説した記事です。記事からの主なインサイトを4つ解説します。
- Deelの最重要カルチャーは「スピード」
Deelは、ブアジズがトップダウンで高成長を狙ったビジネスです。その緊張感が、ハードワークを奨励する強烈なカルチャーを生み出しています。 - ハイパースケールでの課題
Deelの様な超高成長企業で、ブアジズが頭を悩ませたことは「経営幹部がスケールについていけない(スケールアウト)」です。リーダーシップチームが力不足に陥らないように、慎重な採用や継続的なサポートが大切です。 - カスタマー・オブセッション(お客様への飽くなきこだわり)
ブアジズは、規模が大きくなっても、お客様との個人的な関係を保ち続けています。多い時で、お客様とWhatsAppで数百回ものやり取りをしています。Deelの状況を把握するだけでなく、新しいアイディアを得る貴重な情報源になっています。 - 熾烈な競争に勝つ続ける執念
ブアジズは、Deelの競合他社より優れた存在であり続けることを、隠すことなく望み続けています。ライバルに先を越された時、Deelの最も儲かる機能をブアジズは考案しました。ブアジズの競合他社の先を行くという執念は、未だに衰えていません。
アーリーステージスタートアップは、どうキャッシュマネジメントするべきか?
Coding VC「Cash Management for Early Stage Startups」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
FlexportやRobinhoodなどの投資実績を持つSusa VenturesでGPを務めているLeo Polovets氏によるアーリーステージスタートアップのキャッシュマネジメントに関するまとめを共有します。昨今の調達環境からより効率的な管理が求められる中で、体系的なTipsや戦略がまとまっています。大きくは「キャッシュ獲得(資金調達など)」「コストカット」「レベニューアップ」「オペレーション効率化」の4つを考えるべきと著者は論じており、今回はそのうちの1つである「オペレーション効率化」を訳してご紹介します(他の3つも、ぜひBlogでご確認ください)
- とにかく実験をすること。例えば25,000ドルの広告予算がある場合、それらを一気に投じるよりも、5,000ドルをまず費やして10個のキャンペーンを行って実験し、残り20,000ドルで最も効果の高く出そうなキャンペーンに投資するほうがいいパフォーマンスが出るはず。
- 仕事を並列化する。何かプロダクトをリリースしてキャンペーンを打つプロジェクトを行う場合、エンジニアチームが機能開発を終えるのを待ってからマーケティングコピーを作成するように順を追って業務を行う必要はなく、機能の開発と同時にコピーを作成し、連続的に行うことで効率化を図ることができる。
- ファネル最適化ツールを使って、セールスやマーケティングのコンバージョンを向上させる。
- バットに当てる可能性を最大化すること。例えばニュースレターの記事を発行するたびにターゲティングの割合が1%向上すると仮定。毎月ニュースレターを発行すれば、ターゲティングの精度は今年約12%向上する。アクション→フィードバックのループを繰り返すこと。
- 次の資金調達までのROIを最適化すること。例えばキャッシュアウトまでに6ヶ月の場合、成約までに1年かかる見込み客にセールスチームを向けない。
- 最大のボトルネックを特定し、それに対処すること。例えば月に5件リードを獲得し、そのうちの80%が顧客になる場合、成約率を80%から100%に改善するよりも、5件のリードを50件に増やすほうがはるかに良い。しかし、月に5,000件のリードがあり、そのうち1%が顧客になる場合、リードの数を増やすよりも成約率を高める(またはリードの質が低い理由を突き止める)ことに注力すべき。
スタートアップが次々とGenerative AIを活用した機能をリリースしている。
GPT-4のリリースやLLMの進化が急速に起きている中、マイクロソフトやGoogleなどの大手企業以外にもスタートアップからのGenerative AIを活用したプロダクトリリースが最近目立つので主なところをまとめました。
- 企業と顧客とのコミュニケーションプラットフォーム「Intercom」のリリース
- グラフィックデザインツール「Canva」のリリース
- 添削サービス「Grammarly」のリリース
- 知識共有プラットフォームです「Quora」のリリース
- 音楽サービス「Spotify」のリリース
- 言語学習サービス「Duolingo」のリリース
- CRM サービス「HubSpot」のリリース
- リーガルテック「Ironclad」のリリース
米顧客体験管理SaaS上場企業Qualtricsが、$12.5B(約1.7兆円)での買収提案に合意
カスタマーエクスペリエンス管理SaaSのトップ企業Qualtricsが、Silver Lakeとカナダ年金制度投資委員会(CPP Investments)からの$12.5Bでの買収提案に合意し、非公開化することが明らかになりました。Qualtricsは、企業が顧客フィードバックを収集・分析・改善することができるソリューションを提供するNASDAQ上場企業。2002年に大学の研究者に設立され、現在全世界で8,500社以上の企業と100以上の大学で利用されています。今回、非公開にすることで、市場に左右されずに、柔軟に長期的な戦略的目標を達成することを目的としています。今回のバリュエーションは、2018年のSAPの買収時の4倍以上に評価です。本買収は、2023年上半期に完了する予定です。
SMB向け決済Fintech×SaaSの雄 Stripe、シリーズIで$6.5B(約8,600億円)を調達
米デジタル決済大手 Stripeが、先週水曜日に$50B(約6.6兆円)のバリュエーションで$6.5Bの調達を発表しました。当初は$2B程度と少なめの調達が予想されていました。本シリーズIでは、新規投資家としてGIC、Goldman Sachs Asset and Wealth Management、シンガポールのTemasekが参加しています。既存投資家からもSequoia Capital、Andreessen Horowitz、Founders Fund、Thrive Capital、General Catalystなども参加しています。今回の資金調達は、現在および過去の従業員のための流動性の確保、および株主報酬に対する税金対応が目的であり、事業運営上はこの資金は必要ないとしています。
HRとITをオール・イン・ワンで管理できるコンパウンドSaaSユニコーン Rippling、シリーズEで$500M(約662億円)を調達
日本でもおなじみの「コンパウンド・スタートアップ」の産みの親 Parker Conrad氏率いるRipplingが、$500Mの大型の資金調達を、たった12時間実施するスピード調達を発表しました。先々週あったシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻により、Ripplingは顧客が給与支払いに必要とする$130Mを支払えないリスクが顕在化しました。その結果、12時間という短期間での資金調達を実行しました。今回のシリーズEは、前回と同じ$11.25Bのバリュエーションで、Sequoia Capital、Founders Fund、Greenoaks Capital、Coatue Management、D1 Capital Partnersなどが参加しました。
BrexやRampを追撃する、EC事業者特化法人カードFintech×経費管理SaaS Parker、シリーズAまでの累計$157M(約208億円)の資金調達を発表
Y Combinator出身で2019年創業のParkerは、Eコマース事業者向けに法人向けクレジットカードと支出管理ソフトウェアを提供するスタートアップです。平均限度額を、AMEXやBrexと言った従来の法人向けクレジットカードの10~20倍に引き上げ、ECのための最初のチャージカードであることをアピールしています。主な顧客ターゲットは、年商$3M~$100Mあるミッドマーケットを狙っています。今回のシリーズAで、シードに続きValar Venturesがリードしました。その他にTriple Point CapitalやJefferiesからベンチャーデットでの調達も含まれています。
南米フォーカスの法人カードFintech×経費管理SaaSユニコーン Clara、ベンチャーデットで$90M(約119億円)を調達
Claraは2020年にメキシコに創業した、ラテンアメリカ(南米)地域に特化した法人向けクレジットカードと経費管理ソリューションを提供するスタートアップ。既に$1B以上の評価を受けているユニコーン企業で、今後ブラジルとコロンビアでの事業展開を強化する予定です。特にブラジル市場は、現在2,000社から5,000社に拡大することを見込んでおり、昨年の法人決済額$115Mの4倍を見込んでいます。今回のベンチャーデットは、米国のAccial Capitalから調達しました。
クラウド・SaaSに特化したサイバーセキュリティSaaS Mitiga、シリーズAで$45M(約60億円)を調達
企業は、パンデミック時にクラウドシフトしたと同時に、クラウド・SaaS導入が加速したと同時にセキュリティ問題が増加しました。Mitigaは、クラウドおよびSaaSへの攻撃に備えるためのクラウドセキュリティを提供するSaaSスタートアップ。イスラエル・テルアビブに本拠を構えるMitigaは、イスラエル国防軍の退役大佐であるAriel Parnesにより2019年に設立されました。本シリーズAは、ClearSky Securityがリード投資家として、Samsung Next、Blackstone、DNX Venturesなどが参加しました。
ギグワーカーに特化したオールインワン給与決済Fintech×SaaS Wingspan、シリーズAで$14M(約19億円)を調達
パンデミックにより、企業はギグワーカーと呼ばれる業務委託に頼ることが増えました。ギグワーカーを活用する企業にとって、給与決済や福利厚生の管理は大きな課題の1つです。2019年創業のWingspanは、個々のギグワーカーへの給与計算・決済、福利厚生、必要な電子署名書類の処理も含めた、オンボーディングを可能とするオールインワンプラットフォームを提供するスタートアップ。企業がメールで契約者を招待し、バックグランドチェックから即日給与支払いも可能にします。本シリーズAは、Andreessen Horowitzがリードしました。
受発注業務の変革を目指すユニラボ、シリーズCで25.8億円を調達
BtoB受発注プラットフォーム「アイミツ」を開発、提供。IT制作、広告販促、人事総務、経営管理などのサービスとのマッチングを実現する「アイミツ」に加え、最適なSaaSを見つける「アイミツSaaS」、見積業務の効率化や発注情報の管理・蓄積が可能な「アイミツCLOUD」を提供。コロナ過によるビジネスマッチング需要の高まり等を受け、累計発注依頼数が25万件を突破。今回は下記の事業者から資金調達を実施。
- (エクイティ)JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、モバイル・インターネットキャピタル、Spiral Capital、UB Ventures
- (デット)日本政策金融公庫、SBI新生銀行、商工組合中央金庫、メガバンク2行
小売事業者のDXを推進する10X、15億円の借入を実施
小売向けECプラットフォーム「Stailer」を開発、提供。スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売・流通事業者向けにユーザー向けのアプリ開発、バックヤード向けピックパック・配達管理アプリ、受注管理・在庫管理システム、BOPIS(店舗受け取り・ドライブスルー受け取り)を提供し、事業者のEC垂直立ち上げを支援。コロナ以降、消費者の選択肢の1つにオンラインショッピングが出てきたことから、小売事業者のEC参入へのニーズは高まっていることに着目し、DXソリューションを提供しています。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- 静岡銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、山梨中央銀行、Fivot、SDFキャピタル、Yoii
製造業のレジリエンス向上を目指すThings、プレシリーズAで総額2.2億円を調達
ノーコード型製品開発プラットフォーム「PRISM」を開発、提供。BOM管理や図面管理、原価管理など製品開発に必要な製品データベースをプログラミング無しで構築することが可能。パンデミックなどを起点に製造現場はレジリエンスが求められるようになったことから、最適なサプライチェーンを組むべく製造部門それぞれのデータを連携するニーズがあることに着目。製品開発情報を一元管理するソリューションを提供しています。現プロダクトは、中堅規模の加工組立型製造事業者向けに提供しています。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- グローバル・ブレイン、SMBCベンチャーキャピタル、静岡キャピタル、新生企業投資、PKSHA Capital、ANRI
セールスイネーブルメントを支援する**Sales Navi、**シードで1.7億円を調達
営業標準化システム「Sales Navi」を開発、提供。2023年3月にプロダクトをリリース。体系化されたセールスの教育方法がなく、感覚的に業務が執り行われている課題に対し、AIコーチによってプログラミングされたノウハウや習慣、心構えを指導するソリューションを開発。AIとの対話を通してセールス向けのコーチングを提供するとともに、活動内容のデータ化、分析、ベストプラクティスを社内共有が可能となります。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- ジェネシア・ベンチャーズ
安心安全な外国人雇用環境の実現を目指すエルティービー、プレシリーズAで8,000万円を調達
外国人雇用状況届出書、多言扶養控除申告書、外国人との多言語雇用契約書の3点を在留カードをかざして出力するサービスを開発中で、リリースは2023年秋を予定。中長期的には、募集から雇用管理まで一気通貫のサービス提供を目指しています。創業者は日本における高齢化や人手不足に課題感を感じ、外国人人材に特化したプラットフォームの開発を決意。今回は下記の金融機関よりデッドファイナンスを実施。
- 一般財団法人KIBOW、カオナビ、ユナイテッド、ブライダル・イン・プロジェクト
店舗事業の可能性を最大化するmov、デットファイナンスによる調達を実施
AI店舗支援SaaS「口コミコム」、インバウンド総合メディア「訪日ラボ」を開発、提供。Googleマップをはじめとする地図アプリや口コミサイトの店舗情報の一括管理ができ、同時にエンドユーザーの口コミ分析やクーポンの配信まで行うことができます。飲食店や商業施設、小売店、自治体などが活用。今回は下記の金融機関よりデッドファイナンスを実施。
- 三菱UFJ銀行、みずほ銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、静岡銀行、あおぞら企業投資
- OpenAIがGPT-3.5の性能を大きく超える「GPT-4」をリリース。ChatGPTの有料版Plusでも利用可能に。(OpenAI | ZDNET)
- イスラエルの生成AIスタートアップAI21 Labsが、最新の生成AIモデル「Jurassic-2」のリリースを発表。AI21 Labsは2017年創業で、シリーズBまでで既に$118.5Mを調達。(VentureBeat)
- グーグルが、Gmail、DocsなどのGoogle Workspaceに独自の生成AIの実装を発表。(Google)
- マイクルソフトが、Microsoft Word、ExcelなどのMicrosoft365アプリにGPT-4を搭載した「Copilot 365」を発表(VentureBeat)
- Stripeが、GPT-4をデジタル決済処理などに組み込み始めていると発表。現在、サンフランシスコ本社では14つのGPT-4プロトタイプを開発中。(Reuters)
- カスタマーサポートSaaS Forethoughtが、人間のように共感する会話、ワークフローの自動発見、完全なエージェント対応などを自動化する生成AIプラットフォーム「SupportGPT」を発表(VentureBeat)
- SaaS上などでテキスト指示でアクションに変換できる自然言語処理AIを開発するAdeptが、シリーズBで$350Mを調達。General CatalystとSpark Capitalが共同でリード。Addition、Greylock、Atlassian Ventures、Microsoft、Nvidia、Workday Venturesなども参加。(TechCrunch)
- 自動車保険の意思決定にAIを導入するFairmaticが、シリーズBで$46Mを調達。Battery Venturesがリード。(TechCrunch)