B2Bソフトウェアとしての現在の生成AIの限界とSaaS企業の機会
Emergence「Generative vs. Genuine: Why Today’s Generative AI Isn’t Tuned for B2B」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ここ最近、GPT-4など生成AIに関するリリースが多く、注目されている方も多いのではないでしょうか?この米VC Emergence Capitailの記事では、現状の生成AIのビジネス(B2B)での利用における制約と、今後ビジネスソフトウェアとしての生成AIが発展していく上でのポイントを解説しています。
- 現状の限界1:生成AIは正確ではない
現状の生成AIは人間の様に振舞いますが、人間のような正確性の保証はありません。現在のLLMでは特定時点のデータに基づき学習しているため、最新のデータを取り込むことができません。多くのビジネスソフトウェアでは正確性が非常に重要です。従って、現状ではマーケティングや広告などの正確性が低くても許容できるユースケースに限定されています。 - 現状の限界2:生成AIはアウトカム(成果)志向ではない
生成AIはアウトプット志向で、企業がソフトウェア導入の結果として期待するアウトカム志向ではありません。現状のモデルは、ビジネスの成果に基づいて学習する機能が欠けており、ビジネスで生成AIを活用するためには、ROIをベースに反復学習する必要があります。 - 現状の限界3:生成AIは企業固有のデータに基づく”深さ”が無い
現在のLLMは公開データで訓練されており、B2Bで必要な事業上の文脈や固有のIPデータへのアクセスが限定的です。生成AIをビジネスにおいて真に有効なものにするには、これらの起業固有のデータへのアクセスが必要ですが、企業のデータは競合優位性につながるので、まだ企業側はLLMにデータアクセスを渡すことに警戒しています。 - B2Bでの生成AIアプリには、大きな可能性がある
そのためには、上記の様な、正確性の問題、アウトカム志向へのモデルの進化、それを支える企業のIP/データの保護や拡張と公開されているモデルと企業独自のモデルを連結することが必要になります。
エンタープライズのクラウド投資傾向と、スタートアップが取りうるGTMの心構え
Battery Ventures「Breaking Down the Latest Battery Ventures Cloud Software Spending Report」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Battery Venturesによるエンタープライズのクラウド支出に関するレポート。テック業界は引き続きチャレンジングな状況が続いていますが、その中でエンタープライズにおけるクラウド支出の傾向に変化があるのか、2023年Q1の調査をまとめています。以下はスタートアップがマーケットを開拓する上でBattery Venturesが提案する心構えになりますが、記事中にはその他にも「エンタープライズが投資するクラウドサービス群の優先度」などがチャートでまとまっています。ぜひチェックしてみて下さい。
- 理想的な顧客像(ICP)とプロダクトの提供価値について、競合他社よりも深く理解すること
- クラウドソリューションプロバイダーのマーケットプレイスを評価してみること。直接的に売上を上げるためのものではないが、GTMを強化することに役立つ
- パイプライン以外のGTMを理解するために、下記のKPIをウォッチすること。従業員1人当たりのARR(APE, ARR Per Employee)、SQL、セールスサイクルの長さなど
- お客さまのトップから攻略するセールスではなく、ボトムアップによるアプローチやPLG戦略を検討してみること。今日のマーケットにおけるバイヤーは保守的な面もあり、これらはセールス戦略の一部であるべき(だが、すべてであってはならない)
- レイオフなどによってマーケットに流出した人材の優位性を活用しつつ、採用戦略には慎重を期すこと。持続的な組織の成長と健全な企業文化は、賢明で慎重な採用活動によってもたらされる
- 企業の購買行動の状況を理解し、適応すること。すべての業界が同じような購買行動を取らない。中小企業と大企業では購買傾向に顕著な違いがある
セールス組織の拡大に近道はない。急成長するか否かを分けるのは”意図”である
Fractal Software「There are No Shortcuts: Intentionality and How to Scale Your Sales Org」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Vertical SaaSへの投資やサポートに特化するFractal Softwareの記事。SaaSスタートアップの成長戦略において重要な示唆をもらえます。自社のマーケティング戦略に明確な意図はあるか。高成長を追求するあまりHow論に終始していないか。ぜひSaaSのマーケティングやセールス組織の拡大に悩まれている方に読んでいただきたい記事です。
アーリーアダプターを超えてスケーラブルなセールス組織へ
- PMFを超えてスケーラブルな営業を目指すにあたって、ボトルネックになるのはCEOである。ここで重要なのは権限委譲できる担当者をしっかりと採用することである。
- CEOと初期のセールス担当者が実施しなければいけないのは、商談機会を絞り込み精査すること。これは直感的に反するが、不可避なサービス利用に至るまでのハードルを乗り越えて優先的にプロダクトを活用してくれるアーリーアダプターをしっかり見つけてくる必要がある。
- 次に重要なのはパターン認識。学習曲線をいかに高めるかが、急速な成長を可能にする上で最も重要なスキル。再現可能なセールスモーションとは理想的な顧客プロファイルを絞り込み、それらの顧客自身の言葉を使用して、より似たような企業を引き寄せること。
ボリュームベースの勝負は問題がある
- 意図的に見込み客開拓は重要だ。アウトバウンドメールは、受信者に対して次の2つのことを証明する必要がある。これらをスケールで行うのは難しい。
(1)なぜ彼ら(そして彼らだけ)が受信者である必要があったのか
(2)なぜ彼らが(または近くにいる)転換点にあるという確信があるのか。
- 正しい顧客に正しい製品を正しい時期にターゲットを絞れずに効率の悪いセールス活動になってしまうリスクが発生する
すべてを測定する
- 現在のセールスエグゼクティブが受注率が低い場合や、継続的にチャーン発生する場合、セールスプロセスが根本的に壊れているため、セールス担当者を増やしても解決しないケースがほとんど。CEOがプロセスを磨く前にアカウントエグゼクティブを雇うと、問題が悪化し、失敗につながる
- 明確な意図を持ってセールスデータや指標を計測していくことは、推測に頼った成長を防ぐ。意図とメトリックに基づく文化は、CEOとセールスリーダーが問題を正確に診断し修正することを可能にし解決策自体が持続可能であることを保証する。
PlanGrid 共同創設者 Tracy Young による「$100mのARRへの道で得られた教訓」
SaaStr「TigerEye and PlanGrid's CEO: Lessons learned on the path to $100m ARR (Workshop Wednesday LIVE)」の一部を日本語で紹介したものです。全内容は以下動画、またはリンク先をご覧ください。
建設業界向けのプロジェクト管理および請求ソフトウェア「PlanGrid」を提供するTigerEyeの共同創設者であるTracy Youngが、ARR $100Mに到達するまでに得た教訓についてYouTube Liveで話していました。彼女が話した10のポイントはこちら。
- チームの構造ではなく、お客さまの問題解決に創造的であること
Tracy Youngは、チームの組織構造に対して創造的すぎないことの重要性を強調している。代わりに、創造性はお客さまの問題を解決することに集中すべきである。 - コミュニケーションの構造と階層が不可欠である
スタートアップが成長するにつれて、明確なコミュニケーションと定義された階層がますます重要になる。それらがなければ、コミュニケーションが崩れ、問題が発生する可能性がある。 - コアバリューを定義し、それに従うべきである
チームが共通の目標に向かって進むことを確実にするため、定義されたコアバリューを持ち、それに従うことが重要である。 - チームメンバーを評価する際は、直感を信じるべきである
Tracy Youngは、チームメンバーを評価する際に直感を信じることが重要であると提案する。直感は非常に知的であり、重要な決定を下すのに役立つ。 - プロダクトマーケットフィットを失うことがある
プロダクトマーケットフィットは、最初に達成した後でも失われる可能性がある。市場の変化に常に最新の情報を持ち、適応することが重要である。 - 人生に予期せぬことが起きたら、仕事に影響を与える
人生は予期せぬことがあり、平凡な瞬間にも幸せを見つけることが重要である。時間をかける価値のある問題を選び、人生の課題に適応できるように準備しておくべきである。 - 知識のある人々に囲まれることが大切である
自分よりも知識のある人々に囲まれることが重要である。他人から学び、成長する意識を持つことは、若い創業者にとって有益である。 - 文書化とコミュニケーションに厳格であることが重要である
チームと対処する場合は、文書化とコミュニケーションが明確で簡潔であることが重要である。会社を異なる方向に押し出す複数の戦略やイニシアチブを避けるようにする。 - オープンなコミュニケーションを重視し、難しい会話を持つことが大切である
オープンなコミュニケーションと難しい会話は、成功するチームに不可欠である。尊敬と開放性の文化を作り出すことで、より良いチームワークと問題解決につながる。 - 見せること、語ることではない
Tracy Youngは、チームメンバーに効果的なコミュニケーションと協力をどのように行なうかを示すことでリーダーシップを発揮することの重要性を強調している。これには、ユーザーインタビューに出席し、他の共同プロセスに参加することが含まれる。
従業員のオンデマンド給与支払Fintech Rain、シリーズAで総額$116M(約152億円)を調達
米・ロサンゼルス発のRainは、時給ベースで働く従業員が「オンデマンド」で給与にアクセスするプラットフォームを提供するスタートアップ。Rainは、SMBで利用されている給与計算・勤怠管理SaaSと連携しており、給与控除フローを自動化することができるため、従業員はシフト終了後にすぐに給与を引き出すことができます。従業員は稼いだ給与を引き出す度に、少額の手数料を支払います。1回の給与支払で総額の50%を超えて引き出すことができないように制限がかけられています。過去30カ月間で顧客社数を毎月20%以上増やしています。QED InvestorsとInvus Opportunitiesが$66Mのエクイティファイナンスをリード。Sound Point Capital Managementが$50Mのデットファイナンスを提供しました。
サプライチェーンのESGコンプライアンス監視の自動化するSaaS IntegrityNext、$109M(約143億円)を調達
ドイツ・ミュンヘンを拠点とするIntegrityNextは、多くのサプライヤーを抱える企業が、環境やサステナビリティに関する法令に遵守しているかどうかを自動的に監視するSaaSを提供するスタートアップ。これまで外部資金を一切調達せず、黒字経営を続けており、190ヵ国、100万社近いサプライヤーを監視するサプライチェーンデータベースを200社以上のエンタープライズに提供しています。今回のグロースラウンドの調達は、EQT Growth1社から全額調達しています。
急成長するデータコラボレーションプラットフォームを提供するHex、セコイアキャピタルなどから$28M(約37億円)を調達
2019年に米・カリフォルニアで創業したHexは、データサイエンスのためにコラボレーションを促進するSaaSを提供するスタートアップ。今回、Sequoia Capitalをリード投資家に迎え、Andreessen HorowitzやSnoflakeなどから$28Mを調達しました。投資家の関心の高さの理由は、昨年のシリーズB調達依頼、急成長しているためです。この1年間で売上は4倍に、顧客社数は10倍にまで拡大しています。現在、Notion、Brex、Toastなど450社の有料顧客を抱えています。先日、Hex Magicという生成AIを活用して、データに関する質問をしたり、インテグレーションを自動化できる新プロダクトをリリースしました。
エンタープライズ向けスキルアッププラットフォームを提供するWorkera、シリーズBで$23.5M(約31億円)を調達
マクロ経済環境で採用が困難になる中で、従業員のスキルアップを支援することは企業にとって関心が年々高まっています。Workeraは、元Google AI研究部門の1つであるGoogle Brainを率いていた、Andrew Ng氏を中心に立ち上げられた、企業向けのスキルアップSaaSを提供するスタートアップです。Workeraを利用することで、7,000以上のスキルにまたがる数百万の測定値を持つ「スキルデータセット」を使って、AIアルゴリズムをトレーニングすることで、スキル間の関係を把握し、誰かがスキルを持っているかどうかを推測して、より多くのスキルを短時間で測定することができます。また生成AIを使って、スキル評価用の問題を自動作成し、スキル評価をすることもできます。シリーズBはJump Capitalがリードし、NEAやSozo Venturesらから調達しました。
Jamstackウェブアプリ開発者が簡単にIDツールを組み込めるSaaS Clerk、シリーズAで$15M(約20億円)を調達
Jamstackウェブアプリのフロントエンド開発が人気になる一方で、従来のAPIツールでID構築に苦労することがよくあります。Clerkは、このJamstackとReactベースの開発で起こっている課題を解決するスタートアップ。Auth0のようなAPIベースではなく、Reactコンポーネントでソリューション構築するアプローチを取って入ります。開発者コミュニティで高い評価をされており、わずか5カ月で500%の成長を遂げており、ユーザー数は100万人を超えています。Madronaがリード投資家。Andreessen Horowitzらも、このラウンドに参加しています。
企業の脱炭素経営実現を支援するゼロボード、シリーズAセカンド及びサードクローズの調達を実施。総額約25億円のシリーズA完了。
GHG(温室効果ガス)排出量算定・開示・削減を支援するソリューション「zeroboard」を開発、提供。国内外のサプライチェーン排出量や製品別・サービス別の排出量のほか、削減貢献量や水資源などをクラウドで算定・可視化し、各種レポートの出力をすることが可能。また、業界特有の機能を備えたプロダクトである「zeroboard construction(建設業界向け)」や「zeroboard logistics(物流業界向け)」も提供。今回のサードクローズに参画した投資家は、下記の通り。
- 三菱商事、脱炭素化支援機構
従業員のウェルビーイングを後押しするvillio、累計1億円調達
人材育成SaaS「Talent Amp」を開発、提供。企業における従業員の内発的動機の引き出しや成長機会の提供の創出を通して、最高のパフォーマンス発揮を後押し。中でも「1on1」に着目し、マネージャーのスキルによって質にバラツキが生まれる部分を解消。現場の対話を可視化・改善していきながら一定のクオリティーを企業全体で担保することを支援する。対話内容を記録するメモ機能やネクストアクション管理機能、レポート・分析機能などを提供することで、体系的に1on1を実施することにもつながる。今回のラウンドに参画した投資家は、下記の通り。
- Partners Fund、ANRI、塩田 元規氏、水野 雄介氏、榎本 順彦氏
- GoogleがChatGPTの競合プロダクト「Bard」をリリース(The New York Times)
- AnthropicがChatGPTの競合プロダクト「Claude」をリリース(TechCrunch)
- OpenAIが「ChatGPTプラグイン」をローンチ(TechCrunch)
- Microsoftがマイクロソフト版Notion「Loop」をリリース(Microsoft)
- GitHubがOpenAIが提供するGPT-4を搭載した「GitHub Copilot X」をリリース(Reuters)
- Adobeがメディアコンテンツ生成AIツール「Firefly」のベータ版をリリース(TechCrunch)
- Canvaが生成AI搭載デザインツール「Magic Write」をリリース(TechCrunch)
- 好きなキャラクターや有名人をAI化するチャットボット Character.AIが、シリーズAで$150Mを調達。Valuationは$1B。Andreessen Horowitzがリード投資家(CNBC)
- 企業のデータスタックにAI導入を支援するNumbers Stationが、シリーズAで$17.5Mを調達。創業者は元スタンフォード大学PhD出身。Madronaがリード投資家。(TechCrunch)
- 画像や動画の非構造データを構造化することを支援するCoactive AIが、シード・シリーズAの累計で$14Mを調達。Andreessen HorowitzやBessemer Venture Partnersらが投資。(FINSMES)
- 生成AIを活用してコードチェックを自動化するCodiumAIが、シードで$11Mを調達。Vine VenturesとTLV Partnersが共同でリード。(TechCrunch)
- 生成AIでパーソナライズ化された動画作成ができるTavusが、シードで$6.1Mを調達。Sequoia Capitalがリード投資家。Accel、Index Ventures、Lightspeed Venture Partners、Y Combinatorらも出資。(Tavus)
- PC vs. 大規模言語モデル(LLM) - どちらがヒトの生産性を向上させるのか?:OpenAIと米ペンシルバニア大学の最新の論文「GPTs are GPTs:LLMの労働市場への影響ポテンシャルの初期考察」を踏まえて、LLMによりアメリカのGDP成長率は2倍以上になる貢献をすると予測されます。これは2005-2015年の間にパーソナルコンピュータの普及が労働生産性を2倍にしたことを超えることになります。(Tomasz Tunguz)
- AI×トラベルでの新しい機会:トラベル業界は、観光地、ホテル、移動手段、レストランなどの公開データが豊富にある領域のため、今後生成AIによって新たなビジネス機会が出ることを予測しています。(Andreessen Horowitz)