SaaSスタートアップCEOのための「利益を生む成長」を実現する戦術ガイド
Bessemer Venture Partners「A CEO’s tactical guide to driving profitable growth - Bessemer Venture Partners」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSスタートアップは、2021年までの「何が何でも成長」から現在の「利益を生む成長」に大きくシフトすることが求められています。このBessemer Venture Partnersの記事では、1. 粗利率、2.セールス&マーケティング、3.R&D、4.G&A(一般管理費)、5.人材、6.価格設定とパッケージングに分けて、40もの戦術アドバイスを掲載しています。ここでは、CEOが念頭に置くべき5つのポイントを紹介します。
- 成長性と収益性の両方に焦点を当てるのは難しいことです。
成長だけが重要視される時代には、ビジネスはもっと簡単でした。しかし、収益性を重視することで、新たな挑戦とチームが輝く機会が生まれます。そして、成し遂げた大転換を成功させたという誇りを持つことができるのです。 - ゴールデン・スタンダードは40以上の効率性スコア(ARR/売上成長率とEBITDA/FCFマージン%の和が40%以上)です。
売上成長のみを評価する市場から、収益成長と収益性の両方が重要視される市場へとシフトしました。経験豊富なPEファームが経営するソフトウェア企業の多くは、効率性スコアが40以上です。これは、ソフトウェア企業の投資家やバイヤーが期待するものです。もし、このベンチマークから外れていると感じたら、その理由とそこに至る明確な道筋があるかどうかを評価することが重要です。 - 人員削減による死は避けなければいけません。
2023年Q1時点で、レイオフやコスト削減の第二波がソフトウェアのエコシステムに波及しているのがわかります。コスト構造をリセットするのであれば、将来に痛みを残す重大なリセットは避けるべきです。 - カルチャーとコミュニケーションが鍵です。
SaaS企業は最終的に利益で評価されることを、チームは理解する必要があります。売上高マルチプルは、将来の利益創出のための代用品に過ぎません。経費をできるだけ抑えながら収益を上げることに集中する文化を作れば、後に利益を生み出すのはずっと容易になります。 - 経営チームに課題のオーナーシップを持たせましょう。
コスト削減計画をどのように展開するかを考えるとき、CEOやCFOがトップダウンで指示を出すという方法があります。これは効果的ですが、幹部と敵対的な関係になる可能性があります。そこで、目標を設定し(例:「40%ルールにする必要がある」)、そのための方法をチームで考えることで、チームに問題のオーナーシップを持たせることを検討します。それをコスト削減戦略の土台にするのです。
2002-2023年までのSaaSスタートアップのデータから見るARR $1M→$100M達成の現実
Notion Capital「From $1 to $100m revenue: Scaling VC backed SaaS with Notion Capital」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
欧州のSaaSに特化したNotion Capitalによる定量分析記事。2005-2023年の間に、世界では約12万社のSaaSスタートアップが設立されています。その内「ARR$100M達成 or $1B以上のExit」を達成したは、たった243社(全体の0.2%)。$3M以上のVC調達している会社の内でもたった1.8%です。ARR $100M以上を達成しているケンタウルススタートアップ168社のARR $100M達成までの期間は、中央値で9年という結果も興味深いです。T2D3達成、かつARR 100億円以上達成が世界的にみても、いかに難しいかがデータから読み解けます。SaaSスタートアップが乗り越えるべきマイルストン別に注視すべきポイントをまとめた、「1&3ルール」(ARR $1→3M、$3→10M…)も参考になります。
AIとBIをつなぎ、真のDXを実現するために必要なものとは?
The New Stack「The Next Wave of Big Data Companies in the Age of ChatGPT」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
エンタープライズデータカタログソフトウェアを提供するAlationの共同創業者、Aaron Kalb氏のインタビュー記事をご紹介します。企業が真にビッグデータを活用した経営改革を行うためには、ChatGPTのようなテクノロジーを活用する前に、データが十分に整う必要があると説きます。Generative AIは学習させたデータの質に大きく依存することを指摘しており、それぞれの企業に存在する個々のターミノロジーを踏まえることで初めて企業の中で有益に活用できるものと主張します。AIの進化に加え、データマネジメント周りの進化にも注目です。
「顧客理解」を再考する
小城 崇氏のnote「#3-2 顧客理解・ユーザ理解にサヨナラを(UX戦略の教科書)|小城 崇|note」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
株式会社ビービットの小城さんによる記事をご紹介します。記事の中で参考になる点は、「顧客」を理解するにあたって「顧客そのもの」ではなく「顧客体験」を理解することに焦点を当てている点です。プロダクトやサービスをお客さまに導入する際には(特に大手企業のお客さまに導入する場合は)さまざまなステークホルダーのことを考えて提案活動やネゴシエーションを行うかと思います。その際、それぞれのステークホルダーがプロダクトのことを聞き、実際に触れた時に感じる不自由さを捉え、それを解決するものを提案内容や機能開発に含めることで、お客さまに対する価値提供につながると考えます。ぜひ記事を一読されることをお勧めします。
SaaSのGTM戦略における難易度比(取引金額/商談に要する期間)
Bottom Up by David Sacks「The Difficulty Ratio」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
成功しているSaaSの共通項とは、受注に要する時間とDealサイズは必ず見合っている。
このDavid SacksとBrian Murrayの記事はアーリーフェーズの起業家がPMFを模索することにおいて非常に示唆的なフレームワークを提供してくれます。ACVが低いにもかかわらず、商談をクローズするまでに多くの時間を要しているというゾーンから抜け出すためには、ACVを高める or 商談期間を早める戦術的なアプローチを取らなくてはいけません。このアプローチでも難しい場合は、PMFを見直したり、ピボットを検討する必要が出てきます。
B2B向けのGenerative AIはシンプルな方が効果的か?
a16z「For B2B Generative AI Apps, Is Less More? | Andreessen Horowitz」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
a16zが、生成型AIアプリケーションが第1波であり、第2波のアプリケーションが情報の収束により意思決定を向上させるという記事を公開しました。以下は記事からの主要なポイントです。
- 第1世代の生成型AIアプリケーション(Wave 1)は、主に情報の発散に焦点を当てており、AIモデルは指示に基づいて新しいコンテンツを作成します。B2Bアプリケーションでは、Wave 1はブレインストーミングやドラフト作成に成功していますが、創造性とドメイン専門知識を必要とするタスクには人間の改良が必要です。
- B2Bアプリケーションでは、時間と品質に焦点を当てたコストと利益の評価が行われます。しかし、特に高品質な結果が求められる場合、Wave 1アプリケーションは人間の仕事に対して顕著な利点を提供しきれないことがよくあります。
- 第2世代(SynthAIとも呼ばれる)は、情報の収束に焦点を当て、利用可能なデータを統合して意思決定を改善します。SynthAIは、より多くのコンテンツを生成するのではなく、大量のデータを要約することで、人間がより迅速により良い決定を下すのを助けることを目指しています。
- SynthAIの実装は、ドメイン固有のデータセットでトレーニングされた複数の微調整されたモデルを使用する可能性が高いです。企業は、これらのモデルを競争力のある堀として使用して、B2Bソリューションで速度と品質を提供できます。
- SynthAIの最も有望なユースケースは、情報量が多い状況です。このようなシナリオでは、AIはニュアンスのある詳細を解読せずにテーマや洞察を抽出できます。
- 既存のワークフローソリューションとAIネイティブソリューションの間で、B2Bワークフローを所有する競争があります。究極的な目標は、B2B企業がどちらのアプローチが最も効果的であるかを判断し、それによって競争優位を獲得することです。
- B2Bの文脈においてAIが働き方を変革する可能性は非常に大きいですが、まだ開発の初期段階にあります。焦点は、より多くのコンテンツを生成することから、より良く、より速く働くことを可能にするシンセシスAIに移るべきです。
非営利団体向けAll-In-One SaaSを提供する米上場企業Blackbaud、株主からの買収提案を取締役会が反対表明
非営利団体(NPO)や教育機関向けに寄附集めのデジタル化を中心に支援しているBlackbaudが、同社の株式の18.3%を保有する投資ファンドClearlake Capital Groupから1株当たり71ドルの買収提案を受けました。この提案んでのバリュエーションは、$3.78B(約5,000億円)。これに対して、Blackbaud取締役会は、真摯に検討した上で、過小評価しているとの判断により、全会一致でこの買収提案を棄却しました。一方Clearlakeは、Blackbaudが競合他社に追いつくために資金調達を必要とすることを理由に、提案価格が妥当であると主張しています。
エンタープライズ向けデータインテグレーションSaaS Adeptia、戦略的グロース投資として総額$65M(約86億円)を調達
Adeptiaはエンタープライズが顧客、パートナー、サプライヤー間のデータ統合を、簡単かつ高速に実行し、ビジネス関係をより強固にするためのデータインテグレーションSaaSを提供しています。顧客には、金融サービス、保険、製薬、物流、製造業など、数百社のミッド、エンタープライズが中心です。AIを活用したセルフサーブ型での提供が特徴です。今回、グロースファンドであるPSGから$65Mの戦略的グロース投資を発表しました。今回の資金調達を受けて、PSGのシニアアドバイザーであるVance Loiselle氏がCEO、Paul Moriarity氏がCROに就任しました。2人は、SaaSとデータ分野で経験を積んだベテランで、今後は市場開拓(GTM)チームの拡大と売上成長、プロダクトのイノベーションの加速に重点を置いています。
企業のネットワークを高速化するエッジ・ネットワークSaaS Graphiant、シリーズBで$62M(約82億円)を調達
Graphiantは、2020年アメリカ・サンノゼに設立された、企業向けにWAN、ハイブリッドクラウド、ネットワークエッジ、クライアント、パートナーをつなぐネットワーキングソリューションを提供するSaaSスタートアップ。Graphiantのネットワークエッジに対する反応速度は、Cisco社のMPLSやViptela社のSD-WANに比べれば、はるかに速い性能を示しており、最大70%のコスト削減の成果を出しています。今回シリーズBで、Two Bear Capitalがリードしました。その他にSequoia Capital、Atlantic Bridge、Harpoon Venture Capital Partnersなどの投資家も参加しています。
医療機関の患者受け入れと診療プラン最適化を支援するFlorence、シードで$20M(約27億円)を調達
Florenceは、大手医療システムを開発していたエンジニアや医師で構成された、医療機関の患者を受け入れる運用負荷を削減しつつ、患者に優れた体験を提供するモバイル型のSaaSを提供するスタートアップ。モバイルベースの患者受け入れフォームの登録から患者のジャーニーマップの作成、他の医療機関向けシステムとのインテグレーションによる迅速かつ正確な意思決定をサポートしています。今回のシード調達は、Thrive Capital、GV(Google Ventures)、Salesforce Venturesという有力VC3社がリードしており、注目度の高さが伺えます。
SaaS企業の課金設定やマネタイズを柔軟に変更できるSaaS Orb、シードとシリーズAで合計$19.1M(約25億円)を調達
Orb創業者2人は、Asanaでエンジニアリングリーダーを5年間一緒にやっていた経験から、SaaSの価格設定やパッケージングを柔軟に変更する難しさを感じ、さまざまな請求形態を直観的に変更し、自動化できる価格設定SaaSを開発しました。今回正式に設立が発表され、すでにAirbyte、Duneなどの著名なSaaS企業が利用しています。シードではGreylockがリードで$5.1M、シリーズAではMenlo Venturesリードで資金調達を発表しました。
薬局DXを推進するカケハシ、約18億円を追加調達しシリーズCをクローズ。総額94億円調達
薬局体験アシスタント「Musubi」、薬剤師が患者に対して適切な処方を行うことができるおくすり連絡帳「Pocket Musubi」、Musubiのデータを活用した薬局業務“見える化”クラウドサービス「Musubi Insight」、薬局向けのクラウド型在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」などのプロダクトを開発、提供。薬局体験アシスタント「Musubi」の市場シェアは10%を突破。専用のタブレットを使用しながら服薬指導を行い、効率的に薬歴の作成が可能。薬剤師が効率的に患者に対するサポートをするだけでなく、患者目線では健康状態や生活習慣にあわせたアドバイスを受けられることで体験価値の向上につながります。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- プライベート・エクイティ・コインベスト、DNX Ventures、Aflac Ventures LLC、千葉道場ファンド
ノンデスクワーカーの才能を解き放つカミナシ、シリーズBで約30億円調達
現場DXプラットフォーム「カミナシ」を開発、提供。現場担当者が自らノーコードで業務アプリが作れるプラットフォームとして、従来の紙帳票での管理をデジタル化。作業者や管理者の業務を効率化します。導入現場数は累計7,000ヶ所以上、現在は食品やホテル、飲食、交通など30以上の業種に導入されています。今後は「業務」「人」「コミュニケーション」の3つの領域に関連するプロダクトを開発し、現場を丸ごとDXすることを目指しています。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- (第三者割当増資)Coral Capital、ALL STAR SAAS FUND、千葉道場ファンド、みずほキャピタル
- (融資)日本政策金融公庫、みずほ銀行など
フロントオフィスDXを推進するIVRy、シリーズBで13.1億円調達
電話自動応答サービスを開発、提供。電話応答の対応方法(AI自動応答やSMS返信、電話転送など)を自由に設定でき、顧客管理も同時に行うことができます。主にスモールビジネスや中小企業を対象にプロダクトを提供。月額3,000円から利用できます。2023年3月時点で、50業界以上、5000以上のアカウントが利用しています。T2D3を超えるペースで成長しています。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- フェムトパートナーズ、Headline Asia、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、三菱地所(BRICKS FUND TOKYO)
- GPT-4以上のAI開発の少なくとも6ヶ月の開発停止を求め、イーロン・マスク氏の他、多くの有力なAI専門家など署名した公開書簡(Open letter)を発表。(日本経済新聞)
- OpenAIが、ChatGPTなどのツールやサービスで、政治や法律、マルウェア作成等の特定用途での利用を禁止する利用規約(Usage Policy)を発表。(OpenAI)
- ChatGPT、イタリアが一時禁止 米では差し止め要請。(日本経済新聞)
- イギリスの科学技術庁が、ChatGPTのような生成型AIモデルを含む、あらゆる種類のAIについて、開発者や企業の利用に関して産業別で規制を変えるなどを盛り込んだ、5原則を発表。(UKTN)
- マイクロソフト傘下のGitHubがインド開発拠点のエンジニア全員を解雇したと発表。(CNBC)
- Stability AI CEO Emad Mostaque氏が、先週木曜日に開催されたCerebral Valley AIカンファレンスにて、「数年後にIPOを計画している」と発表。(TechCrunch)
- マイクロソフトが生成AIを活用したサイバーセキュリティソリューション「Security Copilot」のリリースを発表。(TechCrunch)
- Databricksが、企業が独自にChatGPTのような生成AIを保有するためのオープンソースの大規模言語モデル(LLM)である「Dolly」を公開。(Venture Beat)
- エンジニア採用のためのオーダーメイドソリューションを提供する技術コンサルティング企業Turingが、独自のAIを活用してエンジニアのドリームチームを作る「Turing Services」を発表。(Venture Beat)
- Readが、生成AIでビデオ会議の録画クリップを2分間に短縮する機能を発表。(TechCrunch)
- ChatGPTより高い精度を誇り、Googleに対抗する生成AI駆動型サーチエンジンを提供するPerplexityAIが、$25.6Mを調達。New Enterprise Associatesがリード投資家。(Bloomberg)
- ノルウェー発の商用人型ロボットを開発する1X Technologiesが、シリーズA2で$23.5Mを調達。OpenAI Startup Fundがリード投資家。(TFN)
- GPT-4を搭載したコンタクトセンターの会話型AIエージェンシーを提供するParloaが、シリーズAで$21Mを調達。EQT Venturesがリード投資家。(TechCrunch)
- ヘルスケア企業や研究機関の調達を最適化するAI SaaS×マーケットプレイス Labvivaが、シリーズAで$20Mを調達。Biospring Partnersがリード投資家。(Business Wire)