バーティカルSaaSがバーティカルOSになるために必要なもの
a16z「Vertical Operating Systems: One System of Record to Rule Them All | Andreessen Horowitz」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
オペレーティングシステム(OS)は、この世で最も価値のあるSystem of Record(SoR)です。バーティカルSaaSがお客様の業務の一部だけを支援するのではなく、他のSaaS(SoR)をつなぎ合わせる業務全体を支援するOS化することで、非常に強力なポジショニングを構築することができます。これによりバーティカルSaaSが、業務特化型のホリゾンタルSaaSのTAMをも浸食することができます。このAndreessen Horowitzの記事では、そのバーティカルOS化について解説した記事です。
- OSとは、ユニークかつ価値の高いSoR+エコシステム
他のSaaSを繋ぎこむレイヤーを持つためには、基礎となる顧客情報単位(Foundational customer unit)が必要になります。Salesforceの例で言うと、SalesCloudにおける顧客ID(SFID)がそれにあたります。SFIDを元に、自社の他SaaS(Pardot、ServiceCloud等)のみならず、MailChimpやZendeskなどの他のSaaSを連携するレイヤーになります。そのため、簡単に取り除くことができなくなります。 - バーティカルOSは、従業員が日常業務で最も時間を投資する場所
QuickbooksとToastの対比がわかりやすいです。Quickbooksは世界最大のSMB向けの会計SaaSですが、お客様のビジネス全体で使わないので、OSではありません。一方、Toastは、POSデータを基礎となる顧客情報単位として、自社のアドオン機能のみならず、Quickbooksの様な他のSaaSをパーツとして取り込みます。他の例では、Procore(建設プロジェクトデータ)やWrapbook(給与データ)があります。 - バーティカルOSの成長のカギは、高効率のGTM戦略を見つけることです
Toast、ProcoreなどはACV $12K(約150万円)あり、経済合理性を成立させる必要な商談規模があります。バーティカルOS(SaaS)のGTMの難しさは、お客様が積極的にSaaSを探さないことため、PLGの様な高速のGTMモデルが使いにくいです。しかし、代替製品も積極的にも探さないため、獲得後は定着率やLTVが高くなります。
お客さまの本心を見極める、仮説検証メソッド
A Smart Bear「The Iterative-Hypothesis customer development method」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
WPEngine(WordPressサイトの運営最適化サービス)を構築し、ユニコーン企業にまで成長させた創業者のブログをご紹介します。ブログ冒頭より「The goal is to uncover the truth, not to sell(ゴールは売ることではなく真実を明らかにすること)」とあるように、本記事ではお客さまの課題を明らかにする方法論がまとまっています。筆者がWPEngine時代に設定していたICP(Ideal Customer Profile)の具体性も参考になります。今回はお客さまの課題を明らかにするプロセスの部分を翻訳してご紹介します。記事もぜひチェックしてみてください。
■ 何の理解に努めるか、明確にする
B2B領域で新しいプロダクトを提供する立場であれば、顧客のペインポイントを明らかにすることが求められます。「自社におけるPerfect Customer(完璧なお客さま、PC)とは何か?」「PCはどのようなジョブを解決しないといけないか」「PCは日頃どのような時間の使い方をしているのか?」など、顧客の状態を明らかにしましょう。
■ 課題を解決する仮説を作る
仮説を作る理由は2つあります。1つは科学的に、自身の仮説を記録し、現実と照らし合わせてどう変化するかを観察するよう強いられると、人々はより真実を追求することにはるかに優れるようになり、またより客観的になることができるためです。もう1つは、インタビューに最適な質問を導き出すためです。
■ 仮説を検証するための質問を作る
質問はオープンクエスチョンであるべきです。再度忘れてはいけないのが、この検証のフェーズは売ることが目的ではなく、お客さまを知るための探索フェーズであるということです。売るモードに入ってしまうと、自社プロダクトが提供する価値や、お客さまが求めているものに誘導するようなYes/Noクエスチョンを投げかけがちになります。
■ 検証をする
検証の過程で何か意外なことを聞いたら、フォローアップの質問をしましょう。「意外性」や「驚き」は、あなたが学んでいることを意味します。このフェーズはお客さまを理解することがポイントなので、「驚き」を「もっと深く掘り下げるべき」というシグナルとして使うべきです。
■ 「驚き」がなくなったら、検証をストップする
検証の過程で新しい情報がなくなってきたら、他の方法(PoC、MVPの構築など)が必要になってきます。「驚き」が止まったら、それは「学習」が止まったということであり、そのプロセスを止めるべきです。
理想的なお客さまを再定義していく
Missives「Refining the ICP with David Apple」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アーリーフェーズのスタートアップにとってICP(理想的なお客さま)を発見し反復していく作業が重要です。元NotionのSales/CSのヘッドであるDavis Apple氏とEarly BirdのAkash Bajwaの対談記事から多くのインサイトを得ることができます。
ICPの発見・磨き込みのために顧客インタビューの価値を最大化引き出す方法は、顧客の仕事 (JTBD) について学ぶように質問することです。顧客が、自身のビジネスのどのような問題を解決するために、あなたの製品を採用したかを理解することをお勧めします。
【推奨している質問例】
- お客さまはどのようにしてあなたの製品を見つけましたか?
- お客さまが最初に解決したかった課題は何ですか?
- 既存のソリューションから変更する同期は何ですか?
- お客さまの「Wow」の瞬間は何でしたか?
- お客さまの決定基準と検討された代替案は何でしたか?
- 現在のユースケースは何ですか
- 製品がお客さまのビジネスの改善について、彼らが最も気に入っている点/気に入っていない点は何ですか?
- 解約することを考えたことがありますか?
インタビューの大部分はオープンな質問であるべきです。しかし顧客インタビューの最後に、特定の仮説をテストする質問を追加するのは有効です。
- Notion にいたときの最初の仮説は、人事チームに Notion を売り込むべきだというものでした。人事チームのユースケースは、会社全体に Notion を有機的に広める可能性が最も高いからです。最初の 12 回の顧客インタビューでその仮説をテストしたところ、それはおそらく間違っていることがわかりました。
- 次の十数回のインタビューで、最初のエンタープライズ顧客を獲得するための販売戦略を策定するのに役立つ、他の仮説をテストしました。
ICPをどのような指標で設定すべきか。
- ICP を定義することは、マーケティングおよび販売戦略を作成する上で重要なステップです。しかし、細かすぎてパラメータが多すぎると、プロセスが複雑になりすぎる可能性があります。
- 定着率と収益に最も大きな影響を与える 2 ~ 5 個の指標に注目することをお勧めします。CRM データを分析するときは、特定の業界、企業規模、または地域の顧客が製品を購入する可能性が高いかどうか、および/または LTV が高くなる可能性が高いかどうかを理解することが大切。
SaaS経営者がバーンアウトを避けるには
SaaStr「10 Tips To Avoid SaaS Burnout | SaaStr」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStrのJason LemkinがSaaS経営者がバーンアウトを避けるための10の提案をに関する記事。以下はになります。
- 素晴らしいVPを雇い、会社の大きなファンクションを完全に任せて、会社を次の段階に移行するための負荷の一部を一緒に負うようにします。
- $5m ARRに達したときには、COOを採用し、経営の20%〜40%を所有できる人材を見つけます。
- 出張が多いCEOは、ビジネスクラスで飛行し、まともなホテルに泊まります。旅行を少しでも痛みのないものにすることは、高いROIの投資になります。
- 1年に2週間の休暇を取り、ステイケーションは避けます。
- 本当のメンターを見つけ、公正な報酬を支払います(おそらく株式)。
- 余分な資金を調達し、バーンレートを増やさず、それを使わないようにします。
- スタートアップのストレスやドラマは、家族にとって重すぎます。仕事を家に持ち帰ることには注意してください。
- 必要以上の資金を燃やさないで、自分自身で運命をコントロールすることをお勧めします。
- 成長が速いことがストレスを軽減させることがあります。一方、成長が遅すぎると、リソースが足りなくなります。お客様の幸福度を向上させ、長期的にはストレスを軽減します。
- 幸せな顧客にフォーカスしましょう。顧客の幸福度を向上させ、NPSを向上させることは、常に効果があります。
EメールマーケティングSaaSの巨人Klaviyo、2023年後半にIPO予定
アメリカのテックIPOは、ここしばらく冷え込みが続いていますが、それが変わるかもしれません。Wall Street Journalによると、米ボストンを本拠地とするEC特化のEメールマーケティングSaaSの巨人Klaviyo(クラビヨ)が今年後半にIPOを予定しています。2021年5月の資金調達では、$9.5B(約13兆円)。ARRは$600M(800億円弱)ですでに黒字化しています。来年以降のIPOマーケットへの影響も出るため、注目されています。
金融にかかわるオンライン犯罪を防ぐAI×Fintech×SaaS Quantexa、シリーズEで$129M(約170億円)を調達
英ロンドンを本拠地とするQuantexaが、シリーズEでシンガポールの政府系ファンドGICがリードで$129Mの資金調達を発表しました。Quantexaは、金融詐欺などのオンライン犯罪を抑制するために、大手銀行やFintech企業、政府向けにAIをベースにしたユーザーの身元確認、マネーロンダリングの検出、金融調査の実施などを支援するツールを提供しています。BNY Mellon、HSBC、英国内閣府のPublic Sector Fraud Authorityなどが顧客になっています。過去18ヶ月で売上は倍増。来年にはARR $100Mを超える見込みで、2025年には黒字化する計画です。バリュエーションは、$1.8B(約2,400億円)。
サイバーセキュリティSaaSユニコーン Cybereason、ソフトバンクリードで$100M(約132億円)を調達
米ボストンを本拠とするCybereasonは、エンドポイントの脅威検知と対応を一気通貫で提供するサイバーセキュリティSaaSスタートアップ。拡張性が高く、ネットワークやアプリケーション上のコミュニケーションの可視化をできます。Cybereasonは、サイバーセキュリティ分野で最も資金を集めているSaaSスタートアップの1社で、すでに$800M以上を資金調達しています。今回の資金調達でソフトバンクのEVP Eric Gan氏がCEOに就任予定で、現CEOで創業者のLior Div氏はアドバイザーに就任するとみられています。
ビッグデータをサプライチェーン管理に活用するSaaS Everstream、シリーズBで$50M(約66億円)を調達
Everstreamは、「ビッグデータ分析」のアプローチを活用したサプライチェーン分野のSaaSスタートアップ。サプライチェーンデータをAI分析を組み合わせ、材料、サプライヤー、施設の場所レベルで評価した戦略的リスクスコアを生成します。独自のダッシュボードを提供していますが、既存の企業資源計画、輸送管理、サプライヤー関係管理システムとの統合も可能です。サプライチェーン技術に特化したスタートアップは、大手投資家の注目を浴び続けています。直近でもESG遵守のIntegrityNextやSCM特化セキュリティのOverhaulなどが大型調達を実施しています。今回のシリーズBは、モルガンスタンレーの1GT Fundがリードしました。
クラウドアプリケーションの監視SaaS Honeycomb、シリーズDで$50M(約66億円)を調達
HoneyCombは、エンジニアチーム向けにクラウドアプリケーションの監視(Observability)ツールを提供するリーディング企業です。2022年は世界600社以上の顧客に提供しており、売上2倍、Net Revenue Retetionは驚異の160%を超えています。顧客には、SlackやVercel、Robinhoodなどが含まれています。Headlineが今回のラウンドをリードしており、既存投資家のInsight PartnersやScale Venture Partnersも参加しています。
タクシーと地域交通の未来を支える電脳交通、シリーズCで総額12億円調達
クラウド型タクシー配車システム「DS」を提供しています。感染状況が収束し観光や移動ニーズが戻ってきた中で、業界全体の人手不足を解消するべく事業開発に取り組んでいます。配車室のオペレーターは配車に必要なお客様情報や乗務員・車両情報、動態管理などを1画面でチェックできます。乗務員は専用のタブレットを用いて、無線の情報やナビ情報を一元的に確認できます。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- JPインベストメント、ENEOSホールディングス、三菱商事、第一交通産業、四国旅客鉄道、沖東交通グループ、エムケイホールディングス、三和交通、阿波銀行、徳島大正銀行、いよぎんキャピタル
プライバシーテックで社会課題を解決するAcompany、シリーズAセカンドクローズで1.5億円調達(シリーズA累計調達額 約7.9億円)
企業におけるプライバシー保護とデータ活用の両立を支援する「Auto Privacy」を提供しています。商品企画やマーケティング活動で行われるデータ活用の場面で、さらにインサイト抽出を支援するサービスです。複数の事業者が保有するデータを、独自の技術で秘匿化(個人と特定できない状態に)し連携できるプラットフォームです。秘匿化する技術面と個人情報保護法などに対応した支援ができる法律面に強みを持っています。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- 三菱UFJキャピタル、既存投資家
建築現場の品質向上を支援するNEXT STAGE、約2億円調達
住宅建築、施工管理の生産性と品質向上を支援するクラウドサービス「QualiZ」を提供しています。施工現場で生じている不備の範囲や要因などを分析し、住宅事業者の施工に関する課題を解決するサービスです。製造プロセス全体を細かく項目に分解することで自社のリソース配分を最適化でき、それら項目を法令基準などと紐付けて最低限守るべき品質を維持することを支援します。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- イノベーション・エンジン、池田泉州キャピタル、中国電力
中小企業や地域のお金の悩みを解決するStayway、約1億円調達
補助金を必要とする地方の中小企業をターゲットに補助金申請をサポートする「補助金クラウド」を提供しています。国や自治体ごとに散在する補助金等の情報を収集・一元化しており、中小企業のニーズに合わせて情報取得可能です。補助金事業を行う地域金融機関や事業会社、士業・商工会にもサービスを導入しており、中小企業に対する間接的な補助金申請サポートもしています。本ラウンドに参画した投資家は、下記の通りです。
- ケップルキャピタル(ケップルDXファンド)、ベクトル、東大創業者の会ファンド、奈良県出身上場経営者の会、上場企業CFO会計士の会、公認会計士事務所、個人投資家
補助金クラウドを提供するStayway、補助金のDXとアライアンス強化を目的とした約1億円の資金調達を実施
- 2023年の生成AI系スタートアップの資金調達時における、pre-moneyバリュエーションの中央値が$90Mと前年から大きく躍進。(FORTUNE)
- YCombinatorの2023年冬バッチDemo Day参加スタートアップ全272社の内、生成AI系スタートアップが59社(22%)採択。(CBInsight)
- AWSが生成AI分野のスタートアップの支援プログラムを開始。10社に対して、最大30万ドルのサービス利用枠。(TechCrunch)
- ブルームバーグがファイナンスに特化した生成AIモデル BloombergGPTの開発の詳細をまとめた論文を発表。(Bloomberg)
- LayerXがLLM研究の専門組織「LayerX LLM Labs」を設立。(日本経済新聞)
- 金融業界のマネロン対策AIを提供するFourthlineが、シリーズBで$54Mを調達。Finch Capitalがリード投資家。(TechCrunch)
- AIネイティブなオープンソース型組込型データベースを提供するChromaが、シードで$18Mを調達。Quiet CapitalやHugging Face社経営幹部らが出資。(Silicon Angle)
- 営業データ上にChatGPTの質問機能を追加するSetSailが、$11Mを調達。Zoom Venturesらが出資。(TechCrunch)
- ブランド企業が生成AIによる消費者調査を行うNative AIが、シードで$3.5Mを調達。JumpStart VenturesとIvy Venturesがリード投資家。(Yahoo!Finance)
- コンテンツ作成・コラボレーション生成AIプラットフォームを開発するNarratoが、プレシードで$1Mを調達。Canva等の投資家で知られるオーストラリアのVC AirTree Venturesがリード投資家。(TechCrunch)