2023年のSaaSは本質的に何が違うのか?
SaaStr「What's Really Different in SaaS in 2023 | SaaStr」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
日本でも「SaaSの冬」と揶揄されますが、過去20年間の歴史をひも解いた時に2023年は、本質的に何が違うのかを考察したSaaStrの記事。
SaaS市場はマクロでは縮小していませんが、以前よりSaaSの事業運営のすべてが難しくなっています。これまではSaaSの好景気だったので、営業やCSも年々SaaSを売りことが年々楽になってきました。創業者・CEOもSaaSでの資金調達が年々楽になる環境で育ってきました。最近では株式市場だけでなく、SaaSの顧客企業側の予算が厳しくなり、これまで以上にSaaSを売ることが難しくなっています。資金調達も同じです。その観点では、「2023年は好景気のみで育ったSaaSスタートアップがこの変化の適応に苦労した年」と言えます。一方で、8年以上前より現在のSaaSのマクロ環境は良いのにもかかわらず、上場SaaS企業の売上高マルチプルが8年以上前と同水準である現状は、まだ低すぎるとも語っています。
SaaS企業の成長の健全性を示す上でのより重要になっているNDR・GDR
Index Ventures「While Everybody is Talking About GPT, Founders Know that GDR and NDR are the Metrics That Matter | by Paris Heymann | Index Ventures」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
近年のSaaS企業において重要なNet Dollar Retention(NDR。別称NRR)やGross Dollar Retention(GDR)に関する米トップVC Index Venturesによる記事。米国では、マクロ経済情勢の変化により、SaaS企業は高いROIや短いTime to Valueが実証できないと、新規顧客との契約が難しくなってきています。その環境下において、既存顧客でのエクスパンジョン(売上拡大)はより重要になっています。既存顧客でのエクスパンションは、売上成長のみならず、収益性にも大きく影響します。米ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)によると、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持に比べ5〜25倍のコストがかかるとしています。本記事では、NDR・GDRの基礎から、米上場SaaSでのベンチマーク指標などを解説しています。
AIに関するリソースのまとめ by Andreessen Horowitz
A16z「AI Canon | Andreessen Horowitz」を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
掲題の通り、a16zが厳選するAIに関するコンテンツのまとめ記事を紹介します。私自身もAIに関するニュースのキャッチアップやリサーチを行っていますが、日々多くのコンテンツが世の中に発信されており、情報の取捨選択をしながら研究することが大事だと日々実感します。この記事の素晴らしいところは、基礎編から応用編まで、段階別に記事やリサーチペーパーStandford Universityのレクチャーを取りまとめているため、自身の理解度に応じてインプットができる点です。ぜひチェックしてみてください。
GPT-4時代におけるB2BソフトウェアのMOAT作り
Christoph Janz「Building an AI fortress in the age of GPT-4」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ヨーロッパを中心に投資をしているPoint Nine CapitalのChristoph JanzがB2B SaaSのGPT-4時代のMoat作りについてのブログです。以下が要点になります。
- 生成AIは破壊的な力を持つ
B2Bソフトウェアに対する生成AIの影響を、iPhoneやインターネットの登場に例えています。これらはそれぞれの業界を劇的に変える重要な出来事でした。しかし、SaaS企業がこの変化によって必ずしも破滅するわけではないです。素早く適応し、よりスマートなB2Bソフトウェアへのシフトを受け入れることができれば、この新しい環境で生き残り、さらに繁栄することができるでしょう。 - AIファーストのSaaSスタートアップへのメリット
生成AIの到来とAIパワードのソフトウェアを構築する相対的な容易さは、AIファーストのSaaSスタートアップにとってのメリットが大きいのですが、防御性の問題が浮上します。Googleのような大企業でさえ、オープンソースの競争からの挑戦に直面しています。これはスタートアップがどのようにしてAIを使用してより防御的になることができるかという問いを提起します。 - すべてのAI機能が企業のMOATを強化するものではない
ビデオの書き起こし、テキストの要約、感情分析、ライティングアシスタンス、画像生成、データ分析など、多くのAI機能はプロダクトを改善し、顧客にとって魅力的にするために簡単に追加できるものです。でも、これらの機能は必ずしも深いMOATを作り出すわけではありません。これらは要塞のレンガのようなもので、全体的な強度に寄与しますが、企業の競争優位性を大幅に拡大するわけではありません。 - 実質なMOATは独自のデータが必要
AIで重要な競争優位性または「堀(MOAT)」を作り出すためには、他の人が入手できない独自データへのアクセスが必要であり、このデータは優れたモデルパフォーマンスにつながるべきです。しかし、AIの進歩により、「本当の独自データ」の基準が高まっています。GPT-4のようなモデルは、非常に大量なテキストドキュメントに対して訓練されており、将来のモデルはさらに広範で多様なデータセットに対して訓練される可能性があります。 - AIの先行者利益または不利益
数年間AIソフトウェアを構築してきた企業で、問題領域の深い理解を持つ企業は、最近AIに移行した新規参入者に対して大きな利点を持っています。彼らは時間をかけてアルゴリズム、モデル、データ収集プロセスを洗練してきました。しかし、先行者は、GPT-4 APIのようなAIサービスの導入により、彼らの技術の価値が侵食される可能性があります。これにより、先行者利益が先行者不利益に変わる可能性があります。 - 基礎モデルの未来
5〜10年後を見据えて、基礎モデルがどれほど高度に特定のユースケースに対応できるようになるかについての議論が一般的におきています。この急速に変化する風景で成功するために最も位置づけられているスタートアップは、深い業界の専門知識を持ち、AIの最新の開発に精通していると思われます。
EC特化マーケティング・オートメーションSaaSユニコーン KlaviyoがIPOを申請
米・ボストン本社のKlaviyoが新規株式公開に向けてSECに申請を実施。少なくとも$750Mを調達しよと考えている。ロイター通信によると、IPOに関わる証券会社としてゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シティグループ、バークレイズ、みずほ、ウィリアム・ブレアに依頼しているとの都とです。早ければ今年9月にもIPOが実現する可能性があるとのことです。Klaviyoは2021年5月の資金調達で$9.5Bのバリュエーションがついています。
データ統合自動化SaaSユニコーン Fivetran、デットで総額$125M(約176億円)を調達
創業11年のFivetranは、企業のデータパイプラインを自動で構築するSaaSを提供するスタートアップ。これまでAndreessen Horowitzなどの投資家から資金調達を実施し、直近の評価額は$5.6B(約7,900億円)です。CEOはこれまでデットでの調達を考えてこなかったが、株式市場の急落で適切な評価額が誰も判断できない中で、一種の「保険」として今の内にデットでの調達を判断したとのことです。今回のデットは、Vista Credit Partnersが全額提供しました。
銀行がネオバンクを設立する支援をするSaaS Nymbus、シリーズDで$70M(約99億円)を調達
Nymbusは、銀行や信用組合がレガシースタックを移行して、新規顧客を獲得するためにネオバンク設立を支援するバーティカルSaaSスタートアップ。ミレニアル世代やZ世代は、より良い金利を求めて従来の銀行に変わるオンラインバンクを利用する傾向があり、25-34歳のアメリカ人の約30%がオンラインバンクを利用しています。一方で、従来の銀行は堅牢なテックスタックを必要とするため、30年以上前の選択肢に限られています。Nymbusはこの課題を解決するクラウドベースのコアバンキングプラットフォームを提供しています。本シリーズDは、Insight Partnersがリード投資家です。
Dagsterベースのデータ・オーケストレーションSaaS Elementl、シリーズBで$33M(約46億円)を調達
創業者のNick Schrock氏は、Facebookで長年にわたりGraphQLを共同開発した後、Dagsterを開発し、Elementlを創業しました。現在はElementlのCTO兼会長で、Facebookの元同僚であるPete Hunt氏がCEOを務めています。この1年間でDagsterを使用するプロジェクト数は3倍になり、現在DoorDash、Flexportなどの企業がDagsterを実運用で使用しています。今回のシリーズBは、Georgianがリード投資家。その他に既存投資家のSequoia CapitalやIndex Venturesもこのラウンドに参加しています。
B2Bの購買体験をB2Cライクに変えるSaaS Logik.io、シリーズAで$16M(約23億円)を調達
米・シカゴ本社のLogik.ioは、インテリジェントなガイド付き商品発見・設定・レコメンドエンジンによるB2B購買体験のコンシューマー化を目指すSaaSスタートアップ。同社のミッションは、マーケティング、販売、コマース、サービスのすべてのチャネルにおいて、よりスマートな商品発見、レコメンド体験により、購入がをより早く完璧に適合したソリューションに結びつけることができ、ハイタッチな販売を排除することです。本ラウンドはEmergence Capitalがリードし、ServiceNow VenturesとSales Venturesも参加しました。
■ 資金調達
モビリティ領域の社会課題解決を目指すGO、シリーズDで100億円調達
タクシーアプリ「GO」や法人向けサービス「GO BUSINESS」を提供しています。「GO BUSINESS」では、タクシー予約や配車、経費精算、利用管理などが可能です。企業の経費精算の効率性向上や利用状況の可視化に伴うガバナンスの改善を支援します。タクシーアプリ「GO」は現在、日本国内43都道府県で提供されており、1,400万ダウンロードを達成。GO BUSINESSはNTTグループや京阪電鉄、ライオンなどの大手企業に導入されています。今回の調達に参画した投資家は、下記の通りです。
- ゴールドマン・サックス
データドリブンの物流社会を目指すHacobu、約15億円調達
クラウド物流管理ソリューションMOVO、および物流DXコンサルティングHacobu Strategyを提供しています。物流に関わる企業や自治体・ドライバーの業務を最適化するためにDXやコミュニケーションの改革を支援します。MOVOでは、配送トラックの予約受付や動体管理、配送案件管理が可能です。現在はアサヒやグリコ、花王などの大手企業が導入をしています。MOVO累計導入企業数は560社以上であり、利用事業所数は12,000カ所以上となっています。今回の調達に参画した投資家は、下記の通りです。
- Archetype Ventures、Sony Innovation Fund、Logistics Innovation Fund、Emellience Partners、三菱倉庫、IDATEN Ventures、日本政策金融公庫、その他国内投資家
営業現場の革新をサポートするマツリカ、プレシリーズCで約10億円調達
クラウド営業支援ツール「Senses」を開発、提供しています。営業現場のユーザー向けに、営業業務の属人化解消と働き方改革を実現するために開発されています。現在やリコーやソフトバンク、アコムなどの大手企業が導入しています。今後はプロダクトラインナップを一新し、マーケティング領域、BI領域、AI領域にサービスを独立・強化し、統合プラットフォームに進化する予定です。また、デジタルセールスルーム領域での新規プロダクトである、オールインワン商談プラットフォーム「DealPods」の強化も進めていきます。今回の調達に参画した投資家は、下記の通りです。
- 三菱UFJキャピタル、DNX ventures、Archetype ventures、いよぎんキャピタル、きらぼしキャピタル、tb innovations、Sony Innovation Fund、大分ベンチャーキャピタル
AI×SaaSで製造業を支援するスカイディスク、約8億円調達
AI×SaaSの製造業向けサービス「最適ワークス」を開発、提供しています。最適ワークスは生産計画の効率化と最適化を実現するためのAIによる生産スケジューラであり、このサービスを通して国内製造業のDXを支援します。2019年12月の経営体制を刷新し、組織再構築・事業再編、プロダクト開発によるストック型へのビジネスモデルチェンジを経て、最適ワークスが生まれました。現在はカルビーや永谷園など大手の企業に導入されており、2022年4月の正式リリース後わずか8ヶ月でARR 1億円を突破しています。国内の名だたる大手の製造業が導入しています。今回の調達に参画した投資家は、下記の通りです。
- DG Daiwa Ventures、NCBベンチャーキャピタル、佐銀キャピタル&コンサルティング、ゼンリンフューチャーパートナーズ、肥銀キャピタル、三井住友信託銀行
総合レンタルプラットフォームを提供するTENT、シリーズAで1.7億円調達
レンタルモール「カウリル」やレンタル専用在庫管理ツール「ZAIKA」を提供しています。 カウリルはアウトドア用品を中心としたレンタルプラットフォームで、サービスアップデートを進めGMVが2022年夏以降順調に伸びています。ZAIKAはレンタルサービス事業者向けクラウド型在庫管理サービスで、専用iOSアプリやRFIDリーダーを活用してレンタル品の在庫管理を簡易に行うことができます。今回の調達に参画した投資家は、下記の通りです。
- Logistics Innovation Fund、CBC、ほくほくキャピタル、他個人投資家1名
SaaS管理を通してDXを推進するzooba、1億円調達
SaaS管理サービス「zooba」を開発、提供しています。情報システム部門のSaaS管理の自動化を支援します。zoobaは情報システム部門の業務負担軽減やコストコントロール、セキュリティの課題を解決することを目指し、アカウントのリスク・コストの特定やアンケート機能などの特徴を持っています。このサービスを通して、SaaSの運用を自動化させ、部門がDXや事業の推進に集中できる環境を提供していきます。今回の調達に参画した投資家は、下記の通りです。
- デライト・ベンチャーズ、ゼロイチキャピタル
BCP(事業継続計画)の策定・運用をサポートするCloudBCP、シードで5,000万円調達
BCPの策定から運用までを支援するクラウドサービス「CloudBCP」を開発、提供しています。コロナを代表としたパンデミックや震災、セキュリティインシデントなどのアクシデントに適切に対応することが企業側に求められており、また介護事業所におけるBCP策定が2024年3月に義務化されることから、BCPの需要が高まりを受けサービスを開発しています。特に従来のBCP策定では、中小企業にとってコストが高い課題があり、それら企業を含めレジリエンスを高めていくことを支援します。
- GxPartners及びFFGベンチャービジネスパートナーズ(九州オープンイノベーション2号投資事業有限責任組合)、NES、フューチャーベンチャーキャピタル
- Stability AIが「DreamStudio」のオープンソース版「StableStudio」をリリースしたと発表(TechCrunch)
- KPMGとGoogle Cloud、企業へのジェネレーティブAI導入加速で提携を拡大(BRIDGE)
- 東京工業大学や富士通がスーパーコンピューター「富岳」で独自生成AIの開発を計画(日本経済新聞)
- SCSKが生成系AI「SCSK Generative AI」を構築。全役職員が業務での利用を開始(Biz/Zine)
- OpenAI出身のベテランが創業したAnthropicがシリーズCで$450Mを調達。評価額は$4.1B以上。投資家はSpark Capitalなど(TechCrunch)
- 英・ロンドンベースのソフトウェア開発自動化プラットフォームBuider.aiがシリーズDで$250Mを調達。投資家はカタール政府系ファンドなど(UKTN)
- ルーマニア発のAI活用型アプリケーション統合プラットフォーム FlowX.aiがシリーズAで$35Mを調達。投資家はDawn Capialなど(TechCrunch)
- GitHub 前CTOが創業したコード自動作成モデルを開発するPoolsideがシードで$26Mを調達。投資家はRedpoint Ventures(Newcomer)
- 弁護士版AI Copilotを開発するSpellbookが$10.9Mを調達。投資家はMoxxie Venturesなど(Yahoo! Finance)
- 英・ロンドン創業の不動産弁護士向け生成AIプラットフォームOrbital WitnessがシリーズAで£7.5Mを調達。投資家はParker89、Seedcampなど(TFN)
- インド発の生成AIベース動画制作プラットフォームGan.aiがシードで$5.25Mを調達。投資家はSequoia Capital(Surge)など(Tech In Asia)
- カナダ・バンクーバー創業のAIエージェントを開発するCognosysがシードで$2Mを調達。Google Venturesなど(betakit)