SaaS企業に特化したベンチャーキャピタル・ALL STAR SAAS FUNDのメンバーが、世界の最新SaaS・AIニュースをキャッチ!今、見るべき、知るべきトピックスをまとめました。
「SaaSの無いAIは無い」- SaaSをAIで加速させるための3つの戦略的指針
Anna Khan「There’s no AI without SaaS」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカのVC CRVのAnna KhanさんとVeronica Orellanaさんによる記事。投資先のSaaSスタートアップがいかに生成AIを取り入れた取組みをしているか?その結果としてお客様への価値を向上させたかを事例を交えて解説しています。日本のSaaSスタートアップでも「AIを自社プロダクトにどう組み込むか?」を検討されるケースが増えていますので、その上での心構えも含めて、勇気をもらえる記事だと思います。
- 戦略1. 自社が強みを持ち、顧客の粘着性が最も高いワークフローを選び、AIで加速させる
まず自社のSaaSプロダクトが得意とし、お客様がよく利用するワークフローを選ぶことが重要です。ただAIによる回答の精度が確認できるまでは「リスクの小さいユースケース」からはじめると良いでしょう。Zendeskが、顧客対応のエージェント支援を最初のユースケースに選んだ理由はそのためです。AIが生成したコンテンツが精度が高ければ、生産性は大幅に向上しますし、仮に不正確でも、エージェントは顧客に送信する前にチェックするのでリスクはありません。他にもCRV投資先のアノテーションSaaSのEncordやバーティカルSaaSのNorthspyreでも同様の考え方で実施しています。 - 戦略2. 既存顧客向けにAIによるプロダクト拡張を行う
生成AIにより、新しいサブプロダクトを迅速に立ち上げることができました。顧客基盤の強いSaaS企業の強みは、プロダクトの「流通」です。既存顧客でAI機能を迅速に試し、高い活用を確認した後、プレミアム課金しているケースは既に出てきています。CRV投資先のStoryboardが好例です。 - 戦略3. 独自のデータセットを活用してMoatを深化させる(=競合優位性を高める)
AIの価値創出での強力な差別化要因の1つは、データです。特に、誰でもLLMにアクセスできる現在では、業界や顧客固有のデータでモデルを調整できることが自社の優位性を高めることができます。CRV投資先のCiroがこの好例です。Ciroは、地元の中小企業向けに販売データ管理のSaaSを提供しています。彼らは独自のデータとワークフローを用いて、中小企業がワンクリックでEメールとコールスクリプトを自動生成できるようにし、プロダクトの粘着性をより高いものにしています。
SaaS界のリーダーたちが提供する、今の世界を戦い抜くためのメッセージ
SaaStr「SaaStr London: Efficiency, Alignment, Ingenuity, Unfundability, & Ice Cream」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStr Europa 2023のまとめ記事をご紹介します。Fintechサービスを提供するBrexのGTMストーリーや、UiPathによるカテゴリーリーダーになるための話、Hashicorpによる開発組織や理想的なリーダー像の考え方など、学びに溢れた内容になっています。成長戦略を描く上で有益な情報がまとまっていますので、ぜひチェックしてみてください。
(ちょっと告知:7/19より、ALL STAR SAAS FUND主催でSaaS企業の成長加速をサポートするための SaaS起業家向けオンライン集中講座「ALL STAR SAAS BOOT CAMP」も開催します!合わせてチェックしてみてください)
サイバーセキュリティ領域でプロダクトを構築するハードルと、その乗り越え方
Venture in Security「Challenges of building products in cybersecurity, useful metrics, and ways to focus on what matters」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
サイバーセキュリティ市場の大きさとその成長性の高さから、欧米を中心に多くのスタートアップがプロダクトやサービス提供をしています。しかし、サイバーセキュリティ領域で戦っていくためには、当該領域に対する高い専門性や、顧客となる企業の全体像・ステークホルダーの把握、競合ベンダーとの差別化を図っていくためにICPの課題を具体的に理解することが求められます。今回ご紹介する記事は、プロダクトを開発していく上での課題や焦点を当てるべき点についてまとめられています。これからサイバーセキュリティ領域でチャレンジする起業家の方におすすめです。
(サイバーセキュリティについてもっと深掘りたい方へ:サイバーセキュリティの国内外事例と日本国内での勝ち筋を考察したロードマップをALL STAR SAAS BLOGで公開中です)
GMV連動収益など、定額課金と異なる収益をARR計上するためのポイント
Christoph Janz「Apples plus oranges?」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Point NineのChristoph Janz氏による、主にVertical SaaSが決済手数料などのサブスクリクション収益以外の収益をどのようにARR計上していくかということについて解説されている記事です。
決済に参入するメリット
- Vertical SaaSが決済に参入する利点は、収益チャネルが追加され、ARPA が増えることです。そしてあまり目立たない利点は、トランザクションに絡むことによってサービスの粘着性が高まる点にあります
- 顧客は、ARPA が高く、解約率が低い可能性が高い。どちらも LTV の向上に貢献し、CAC に資金を費やす余地が広がります
粗利率が大きく異なる複数の収益チャネルがある場合はどのように報告するかがポイントになります
- 具体例を挙げながら説明をしています
フランス発の次世代ビジネスプランニングSaaS Pigment、シリーズCで$88M(約123億円)を調達
仏・パリに拠点を置くPigmentは、大企業の財務チームが複数で、ビジネスデータを集計・レポート作成・将来の計画作りを可能にするエクセル、Oracle、SAPキラーとも言えるSaaSを提供しています。エクセルに対する優位性は、他のソフトウェアとのリアルタイム連携性の強さにあります。ERP(NetSuite、SAP、Xero等)やHR(Workday、BambooHR等)、DWH(Snowflake、Redshift等)など数十のエンタープライズソフトウェアとのコネクターを構築しています。2022年には昨年対比で売上を600%も伸ばしており、Klarna、Miro、Figmaなどが利用しています。また最近ではOpenAIとのパートナーシップを結び、GPT-4 APIを使って自然言語を使ったデータクエリーを実現しています。今回のラウンドは、DatadogやSnowflake等のグロース投資家として知られる、ICONIQ Growthがリードしました。
エンプラ向けローコード・インテグレーションSaaS Digibeee、シリーズBで$60M(約84億円)を調達
Digibeeは、エンタープライズ向けにソフトウェア間のデータ連携を実行するiPaaS(Integration Platform as a Service)を提供するSaaSスタートアップです。MuleSoftやBoomiなどのレガシーiPaaSベンダーと競合するポジションを取っています。iPaaS市場は2021年には約27%の企業が導入しており、66%が今後1-2年の間に投資する予定と回答している成長市場の1つです。Digibeeの最大の差別化要因は、顧客企業が使った分だけ支払う、無駄のない利用量ベースの課金モデルにあるとしています。今回のラウンドは、ゴールドマン・サックスがリードしました。
傷害事件の法務文書作成AI×SaaS EvenUp、シリーズBで$50M(約70億円)を調達
EvenUpは、自動車事故、児童虐待などあらゆる傷害事件をAIで評価し、弁護士などが賠償案の法務文書を作成することを支援するSaaSを提供しています。アメリカでは年間数百万件の傷害事件が和解により実施されています。EvenUp上では、文書から関連情報を抽出し、人身事故の請求の法的・事実的根拠を述べ、賠償請求を含むテンプレート化された「要求パッケージ」に整理します。弁護士、パラリーガルスタッフ、法律事務所向けのセルフサービス型ソリューションとして提供されています。顧客には「トップクラスの裁判弁護士」や「アメリカ最大の人身傷害法律事務所」が名を連ねており、すでに黒字に近い状態とのことです。今回のラウンドは、Bessemer Venture Partnersがリードしました。
建設・工業特化のラストマイル物流プラットフォーム Curri、シリーズBで$42M(約59億円)を調達
Curriは、建設業界を中心に重機からパイプなどの資材など、複雑な荷物を迅速かつ安全に届けるラストマイル物流をオンデマンドで提供するスタートアップです。ユーザーは、注文を手配し、Curriアプリを開いて集荷場所と降車場所を入力し、サービスを予約。その後、Curriのドライバーが物資を受け取り、注文が正しいことを確認してから配送を実行します。オンデマンド配送だけでなく、リアルタイムの追跡から過去の分析、支店や顧客レベルまで細分化されたレポートまで、ラストマイルのサプライチェーン全体を可視化するソフトウェアも提供しています。今回のラウンドは、Bessemer Venture Partnersがリードしました。
組織全体の業務データを一元管理するSaaS Mosaic、シリーズCで$26M(約36億円)を調達
財務計画・分析チームは、一般的にデータ収集とプロセスの管理に大半の時間を費やしています。Mosaicは組織全体の業務データを一元管理し、リアルタイムでの計画作りと分析を可能にするSaaSを提供しています。Mosaicを使うことで、企業は、営業チームの拡大や新たな資金調達のタイミングなど、計画を実行するタイミングをより的確に把握できるようになります。現在、プラットフォームのAI機能を強化しており、カスタム財務指標の作成、分析、計画を可能にするMetric Builderのようなツールを更に拡充する計画です。今回のラウンドは、OMERS Venturesがリードしました。
■ 資金調達
現場業務のDXを支援するFairyDevices、シリーズB 2ndクローズで約21億円調達
「コネクテッドワーカーソリューション」を開発、提供しています。産業現場における「匠の技」をデジタル化し、作業効率と作業品質の向上を目指しています。主にメンテナンス工場やプラント、物流などのミスが許されない現場作業で利用されており、ダイキン工業やヤンマーエネルギーシステムなどが顧客として名を連ねています。利用者数は毎年約350%成長し、利用国数も18カ国に広がっています。フェアリーデバイセズは、現場データの収集とAI技術を活用することで、最終的には業務を支援する「熟練工AI」を実現し世界に届けることを目指しています。資金調達には、ダイキン工業、ヤンマーエネルギーシステム、NTTテクノクロスが参加しました。
在庫管理を通してサプライチェーン改革を進めるフルカイテン、8億円調達
在庫分析クラウド『FULL KAITEN』を開発、提供しています。在庫の最大化を通して、売上、粗利、キャッシュフローの最大化を実現します。主に小売業(EC及び実店舗)が利用しており、アーバンリサーチやパルグループホールディングス、美津濃などが顧客として名を連ねています。2021年6月から2023年6月までのMRRは約3.3倍、ARPAは約1.7倍に成長しています。新商品の需要予測機能のリリースを計画しており、この新機能は既存顧客とのPoCで3億円以上の余剰在庫抑制を実現しています。資金調達には、ジャフコグループ、三菱UFJキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、Spiral Innovation Partners、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル、宮銀ベンチャーキャピタル、あおぞら企業投資が参加しました。
動物医療DXを推進するBomo、シードで約1.3億円調達
動物病院専用のクラウド型業務改善システム「Wonder」を開発、提供しています。動物病院ではDXが進んでおらず、紙やホワイトボード、電話、FAXが多用され、獣医師・動物看護師のアナログで非効率的な業務にメスを入れるべく、プロダクトを提供しています。2022年12月に正式版をリリース。予約管理サービスに加え、受付・決済管理、診療・会計管理、CRM・再来院促進、発注・在庫管理など幅広く業務に対応できるように機能を搭載していきます。資金調達には、サイバーエージェント・キャピタル、East Ventures、その他複数の個人投資家(非公開)、および複数の金融機関が参加しました。
- テキストから動画を生成できるAI「Runway Gen 2」登場(Gigazine)
- アメリカ政府機関へMicrosoftがGPT-4の提供を予定(Reuter)
- Adobeが画像生成AI「Firefly for Enterprise」を公開(Adobe)
- オーストラリア政府がAI規制を計画(Reuters)
- 国内の対話型AIの各サービスの利用経験、ChatGPTは10.0%、Microsoft Bing AIは6.1%(MMD研究所)
- アシスト、生成AI搭載SaaS型Insight Engine「Glean」を国内で初めて販売開始(アシスト)
- エンタープライズ向け生成AIモデルプラットフォーム Cohereが、シリーズCで$270Mを評価額$2.1B超で調達(TechCrunch)
- AIの効率化を向上させるプラットフォームを提供するGranicaが、$45Mを調達。投資家はNEAやBain Capital Venture Partnersなど(Silicon Angle)
- エンタープライズの文書処理の自動化を支援するInstabaseが、シリーズCで$45Mを評価額$2Bで調達。投資家はTribe Capital、Andreessen Horowitz、NEA、Spark Capital(TechCrunch)
- 不動産業界向けの対話型AIプラットフォーム EliseAIが、シリーズCで$35Mを調達。投資家はPoint72 Private Investmentsなど(Businesswire)
- 企業のコンプライアンスニーズに合った生成AIを開発するContextual AIが、シードで$20Mを調達。投資家は、Bain Capital Ventures、Lightspeed Venture Partners、Greycroft、SV Angelなど(TechCrunch)