SaaS企業の損益計算書の基礎
OnlyCFO's Software World「How to Read Income Statements - Software Edition」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSモデルは、高い粗利率やサブスクリプションのストック型売上モデルなど、収益モデルが投資家を惹きつける大きな理由の1つです。SaaSの収益モデルで重要な論点として、売上の計上タイミング(Revenue Recognition)と売上原価(COGS)に何を含めるのか?です。米国SaaS企業の分析をする上でも基礎になりますし、グロースステージ以降ではクリアに説明できるようにする必要があるので、参考になると思います。
- リカリング売上は課金体系によって、売上認識のタイミングは異なります。消費量ベースはソフトウェアが消費された時点の一方、サブスクリプションベースは、期間で比例配分して認識されます
- プロフェッショナルサービスは、サービスが実施された時点で売上認識されます
- リカリング売上の売上原価(COGS)には、通常以下が含まれます
- ホスティングコスト - AWS、GCP、Azure
- カスタマーサポート人件費 - 顧客サポート・チケットへの対応の人件費
- DevOps人件費 - アカウントのアップタイムと信頼性を保証する人件費
- DevOpsチームのソフトウェアおよびその他の費用
- カスタマーサクセス人件費 - ケースバイケース - SaaSの売上原価でよく議論になるのは、カスタマーサクセスを売上原価か、それとも販売管理費に計上すべきか?という点があります。結論から言うと、先行する米国でも、会計ルールで白黒つけられないのが現状です。従って、カスタマーサクセスが実際に何をやっているかを判断し、個社ごとに損益計算書のどこに計上すべきか決定する必要があります
- 米国での営業へのコミッション計上は、過去多くのSaaS企業で都度、費用計上されていました。ここ数年の米国会計ルールの変更によって、営業へのコミッションは資産計上して、3-5年間にわたり、費用計上する方法が一般的になっています
起業失敗からユニコーンへ。生成AIスタートアップ Jasper CEOに学ぶ起業時のレッスン
Bessemer Venture Partners「Dave Rogenmoser: Building lessons and gaining momentum in the AI revolution」の一部を日本語で紹介したものです。全文または、Podcastの全内容はリンク先をご覧ください。
Bessemer Venture PartnersによるJasper Co-founder Dave Rogenmoser氏へのインタビュー記事を紹介します。Jasperは自動で文章を生成するAIを開発しています。Jasper以前に創業したスタートアップの経験談を交えながら、起業・プロダクト構築時に留意するべき点について解説しています。
プロダクト開発で窮地に追い込まれないためにできること
- Dave氏曰く「初期の最大の失敗の1つは、プロダクト開発で技術的負債を抱えてしまったこと。全体を書き直さなければ、他のことは何もできないところまで来てしまっていた」
- そして、資金調達の余裕から「もう資金があるのだから、問題を解決する時間はある」と勘違いし、クリティカルな問題にスピーディに着手しなかった。ユーザーのペイン解決に集中せず、プロダクトローンチ時にはユーザーが本当に求めているものに触れていなかった
- その結果として、Dave氏はProof(Jasper創業前のスタートアップ)のメンバーほとんどを手放さなければならなかった
早い段階からトラクションに着目する(トラクションがなければ、ピボットも厭わない)
- Jasperの成功は約10年の歳月をかけて実現した。2020年10月にProofを閉鎖した後、Dave氏はマーケティングのコンサルティングとコーチングを実施。B2B SaaSマーケティング担当者に優れたFacebook広告の出し方を教えるビジネスを立ち上げることにした。しかし、彼が教えたものに対して、生徒が提出するコピーにまったく感心しなかった。良いコピーでなかったために、彼らの広告はコンバージョンに至らず、提供しているコースは失敗に終わるのではないかと心配した
- コピーをすべて書くことも考えたが、労働集約型になり生産性が上がらない課題も懸念にあった時、GPT-3についてのツイートを見てJapser CTOのJohn Philip Morgan (JP) にメールを送り、GPT-3 API用のシンプルなフロントエンド・インターフェースの構築を提案。MVPを初期のテスターに見せると圧倒的な興奮が伝わた。そして「“今日”これを手に入れるにはどうしたらいい?」という声も出た
エグゼクティブリクルーターは最高のROIをもたらす投資である
- Jasperの最初の1年は、誰も採用せずに、Zapierを使ってできる限り自動化を進めた。1年目の終わりにはARRが3500万ドルになり、たった2人のカスタマーサポートを含む、計11名で40,000人の顧客にサービスを提供していた
- 結果として、異常な組織の急拡大をする必要があった。一気に従業員を9人から180人に増やした結果として、素晴らしい新人が入ってきたのに、誰が何をしているのか知らない状態を作ってしまったり、彼らの上司が彼らの1週間前に入社し、その上司の上司はその1ヵ月前に入社したりする状態になってしまった
- Dave氏は、最初は投資を渋っていたがエグゼクティブリクルーターを使うという決断。結果として話をすることさえできなかった社長を採用することができ、曰く「約$150,000もかかり非常識だと思ったが、Jasperに費やしたお金の中でROIが最も高いものになった。堅実なリーダーシップがもたらすトリクルダウン効果は絶大である」
スタートアップでブランドを確立する方法
Digital Native「How to Build Your Startup Brand」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Index VenturesのRex WoodburyがRed Antler(Ramp、Allbirds、Casper、Opendoor、Hinge など数多くのスタートアップのブランディングを手がけてきた会社)へのインタビューをまとめた記事を紹介します。。ブランディングはコストではなく投資。事業成長はもちろん優秀な人材を巻き込んだり、資金調達などにもレバレッジが効きます。さまざまなスタートアップの実例をもとにブランディングを解説しているので、経営者やマーケ・広報担当の方におすすめです。
ブランド戦略とビジネスモデルは密接に連携する必要がある
- ブランドを構築するための最初の戦術的なステップは、ブランド戦略を定義すること。これは、あなたのビジネスが何を意味するのかを短く簡潔に述べたもの。
- しかし、ブランド戦略はミッションステートメントと同じではない。たとえば、Apple の企業理念はかつて「Have a computer in every home in America」だったが、そのブランド戦略はinnovation and creativityを中心だった。
B2Bプロダクトでも、ブランドも重要性が高まっている
- ほとんどの業界ではコンシューマー化が進んでおり、企業で使用される製品は従業員によって選ばれている。(例:Ramp 、Slack、Figma、Notion など)
- 結局のところ、意思決定を行うのは人間であり、人間はブランドに影響される。
米証券取引所 NASDAQが金融市場取引管理SaaSを提供するAdenzaを$10.5B(約1.5兆円)で買収合意
NASDAQは今月12日、ソフトウェアに強い米PE大手Thoma Bravo傘下の銀行や証券会社向けに取引管理の統合プラットフォームを提供するAdenza社を$10.5Bで買収に合意したと発表しました。今回の買収額は、Adenzaの2023年の予想売上の約18倍にあたる。今回の買収は、$5.75Bの現金とNASDAQ株8,560万株と交換で実施される予定です。今回の取引により、Thoma BravoはNASDAQの14.9%の持分を保有することになります。NASDAQは、2005年の規制緩和により、ブローカーとの競争が激化しており、買収により自社のテクノロジー・IPの強化を図っています。
医療施設のキャパシティ管理を支援するSaaS Dexcare、シリーズCで$75M(約108億円)を調達
2021年にプロビデンス社からスピンアウトし、設立されたDexcareは、医療施設の限られたキャパシティをデジタルケアを提供することで拡張し、患者へのサービス提供を迅速化するプラットフォームを提供するスタートアップ。アメリカでは地方病院の閉鎖や医師不足・燃え尽き症候群により、1億人以上が医療アクセスに課題に直面しています。すでに全米50州で5,700万人以上の患者にサービスを提供してきました。今回のシリーズCでは、Datadog、Snowflakeなど名立たるSaaS企業に投資してきたグロースファンド ICONIQ Growthをリード投資家に迎えて実施しました。
リアルタイム決済のグローバルインフラを提供するFintech×SaaS Volt、シリーズBで$60M(約86億円)を調達
2019年に設立されたVoltは、世界をリードするリアルタイム決済プロバイダーです。アカウント・ツー・アカウント(A2A)決済インフラを単一のアクセスポイントにまとめている点が特長です。現在、英国、欧州、ブラジルで利用可能なVoltは、その先駆的なリアルタイム決済技術をAPACに導入する計画で、2023年後半にはオーストラリア市場への参入を予定しています。今後、米国市場も視野に入れています。本シリーズBでは、CoinbaseやSlack等、40年以上の投資実績で知られるIVPがリード投資家に迎えたほか、Fintech分野の著名投資家であるEQT Venturesなども参加しています。
柔軟で安くシンプルなDevOpsプラットフォームを提供するRender、シリーズBで$50M(約72億円)を調達
Renderは、開発者がサーバーのセットアップ、デプロイメント、スケーリングに集中する必要がなくなり、よりコアなプロダクト開発に集中することを支援するDevOpsツールを開発するスタートアップ。Renderの顧客には、WatershedやRed Bullの様なFortune 500企業も名をつられています。同社は、2019年に開催されたTC DisruptのStartup Battlefieldで優勝した実績を持っています。本シリーズBでは、Bessemer Venture Partnersがリードし、General Catalyst、South Park Common Fund、Additionも参加しています。
トラック運送会社の輸送管理システム(TMS) SaaSを開発するRose Rocket、シリーズBで$38M(約55億円)を調達
カナダ発のRose Rocketは、トラック運送会社や物流会社向けにクラウドベースの輸送管理システム(TMS)を提供するスタートアップ。Rose Rocketのプラットフォームは、市場にあるいくつかのTMSと異なり、トラック運送業者、ブローカー、輸送業者、荷主、ドライバーが、1つのプラットフォーム上でコラボレーションできます。すでに1,000~1,500社で利用されており、今後3年以内にARRが$100Mに達すると見込んでいます。本シリーズBは、Scale Venture Partnersがリード投資家の他、AdditionやY Combinatorらも参加しています。
■ 資金調達
中小企業・個人事業主向け与信プラットフォームを提供するOLTA、約25.3億円調達
オンライン完結のファクタリングサービス、およびクラウド請求書プラットフォーム「INVOY」を提供しています。クラウドファクタリングは現在全国28の地域金融機関と提携し、多くの中小企業や小規模事業者が利用しています。一方、「INVOY」は、中小企業や個人事業主などの小規模事業者の入出金管理をサポートするクラウドサービスとして、請求書・見積書・発注書・納品書・領収書の作成・発行・管理のほか、入金消込、郵送代行サービス、取引先管理、請求書の定期自動作成などが可能です。今回の資金調達に参加した投資家には、ウイングアーク1st、AGキャピタル、岡崎信用金庫、ジェーシービー、Spiral Capital、筑邦銀行(ちくぎん地域活性化ファンド)、TIS、DGベンチャーズ、デライト・ベンチャーズ、とっとりキャピタル(とっとり地方創生ファンド3号)、NOBUNAGAキャピタルビレッジ(NOBUNAGA Raise Fund)、BIG Impact(ひょうご神戸スタートアップファンド)、三井住友信託銀行(SuMi TRUSTイノベーションファンド)、Yamauchi No.10 Family Office(Bach Capital)、あおぞら企業投資などです。
顧客とのエンゲージメントを最大化するスプリームシステム、シリーズAで5.1億円調達
BtoC企業のグロースを支援するEngagement Data Platform「aimstar」を提供しています。「aimstar」はBtoC企業が保有する様々なデータを活用し、顧客とのエンゲージメント強化を実現するプラットフォームです。個人情報保護法の改正や3rd Party Cookie利用の規制強化などにより、新規顧客の獲得が難しくなってきています。これに対応するため、既存の顧客とのエンゲージメントを強化し、リピート購入促進をはじめとしたLTV向上に焦点を当てた施策を実行するニーズに応えています。今回の資金調達に参加した投資家には、SBIインベストメント、TNBI、マリングロース、フォルトナベンチャーズなどです。
製造現場DXプラットフォームを提供するSmart Craft、総額1.1億円調達
製造現場の生産指示、工程管理、実績収集、データ分析といった一連の業務プロセスをタブレットやスマートフォンなどのモバイル端末を活用しデジタル化できるクラウドサービスを開発・提供しています。現場状況をリアルタイムで見える化し、製造データを一元集約します。これまでは、中小企業向けに「日報のペーパレス化」と「製造データの見える化」の2つの機能を備えたプロダクトを提供してきましたが、お客様から製造現場業務の包括的なDXや製造データの一元管理を望む声が寄せられ、製造現場の計画、実績収集、分析までを一気通貫でデジタル化するクラウドサービスに進化させています。現在、中堅〜上場企業を含む約10社に対して、β版のプロダクトを提供中です。今回の資金調達に参加した投資家は、ジェネシア・ベンチャーズ、ANOBAKA、三菱UFJキャピタル、エンジェル投資家の守屋実氏です。
人とAIの新たな関係をデザインするStarley、プレシードラウンドで1億円調達
Starleyは、人々の側に立つAIを創り、人と人、人とAIの新しいコミュニケーションのあり方を見つけながら、世界中のすべての人に寄り添うプロダクトの開発を目指しています。AIとの対話を目指すコミュニケーション関連サービスの開発に注力し、今秋にプロダクトのベータ版リリースを目指しています。Starleyは、エンジニア2名により2023年4月に設立された会社です。現在、創業メンバー及び副業で関わるメンバー含めて10名未満の規模の組織で運営されています。今回の資金調達に参加した投資家は、株式会社マネーフォワードです。
■ IPO / M&A
目標管理クラウドサービスを提供するResily、アドバンテッジリスクマネジメントの子会社へ
目標管理クラウドサービスを開発・提供するResilyは、経営支援サービスを提供するアドバンテッジリスクマネジメントの子会社になりました。エンゲージメント領域の商品・サービスを拡充する取り組みの一環になります。ResilyはOKRを軸としたSaaS型目標管理ツールを提供しています。企業の事業方針と各部署の目標設定の関連を可視化しつつ、事業方針に対しての各部署、各メンバーの戦略や実行プラン、タスクも可視化することが可能です。これまでSansanやPioneer、モリサワなど170社以上の導入実績があります。売上高は5,100万円です。
- 国産生成AIの開発支援 経産省、68億円拠出へ(日本経済新聞)
- ソフトバンクグループ定時株主総会で孫正義氏が「AIで反転攻勢」を掲げ、投資と実業両立へ(日本経済新聞)
- セールスフォース、信頼できるジェネレーティブAIで企業を強化する「AI Cloud」を発表(BRIDGE)
- 元GitHub CEO ナット・フリードマン氏とダニエル・グロス氏が$1BのAI特化ファンド「C2 Investment」を設立(Inside.com)
- AWSが生成AIの開発プログラムの支援に特化した$100Mの支援プログラムをローンチ(TechCrunch)
- Dropboxが生成AIに特化したCVC「Dropbox Ventures」をローンチ(TechCrunch)
- 英国政府が国民健康サービス(NHS)での生成AIの活用を支援する21Mポンドの基金を設立(TechCrunch)
- 元Google Sheet開発者が起業したAIボットベースのターミナルアプリを開発するWarpがシリーズBで$50Mを調達。投資家はSequoia Capital、OpenAIのサム・アルトマン氏、FigmaのDylan Field氏、SalesforceのMarc Benioff氏(Fast Company)
- 元セールスフォース Co-CEO ブレット・テイラー氏のAIスタートアップが$20M超を調達。投資家はSequoia CapitalとBenchmark Capital。評価額は$100M以上(The Information)
- 合成音声AIを開発するElevenLabsがシリーズAで$19Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz、元GitHub CEO ナット・フリードマン氏など(TechCrunch)
- 韓国発生成AIスタートアップwrttn(リートン)がシリーズAで約15億円を調達。投資家はCapstone Partners、日本のZVC他(BRIDGE)
- 音声→テキスト変換AIを開発するParrotがシリーズAで$11Mを調達。投資家はAmplify Partners、XYZ Venture Capital(TechCrunch)
- 画像やテキストから3D画像を生成するモデルを開発するMeshcapadeがシードで$6Mを調達。投資家は、MatrixやOculus共同創業者 ネイト・ミッチェル氏など(Yahoo! Finance)
- フランス発音声のリアルタイムテキスト変換APIを開発するGladiaがシードで$4Mを調達。投資家はNew Wave、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- AI開発者向けにデータ変換、インデックス作成、保存を行うフルマネージドサービスを提供するMetalがシードで$2.5Mを調達。投資家はSwift Ventures、Y Combinatorなど(Metal)