2023Q2 Vendrレポートから見える米国SaaSの現状
Vendr「The SaaS Trends ReportQ2:2023」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Vendrは企業がSaaSの購買、更新、最適な管理を行うためのSaaSを提供するスタートアップで、四半期に1回、米国におけるSaaSの価格変動や注目カテゴリ、今回はSaaS企業のAI化のトレンドをデータで解説しています。直接的には日本には関係はありませんが、この18ヶ月は金融市場の変化やAIなど、米国SaaS市場が大きく変化への適応を求められてきた変化を読み取るには非常に役に立ちます。いくつか興味深いポイントをピックアップします。
- SaaSの平均年間契約額(ACV)は過去3年で最低:前四半期から45%も減少して$62,000(約868万円)。背景には、経費削減の波で購入者はID数の削減や手頃なプランへの変更をしたため。
- 一方で平均割引率は10%弱で低水準。モルガン・スタンレーなどによる外部調査ではSaaSの顧客企業からの値引き圧力が高まっていると報告されているが、Vendrの取引データでは割引率は明らかに低下している。SaaSベンダー側がリスト価格に近い標準化をしてきている。
- SaaSの購入カテゴリーTop3は、セールス・インテリジェンス、サイバーセキュリティ、クラウドデータ統合
- SaaSの各カテゴリーリーダーの60%は上場企業で、平均従業員数が約5,000人、ACVの中央値は$50,000ドルを上回る
- AIはホットな話題だが、Vendrのデータによると、AIの統合はSaaSの購買に強い影響を与えていない。SalesforceやAdobeなど、顧客にすぐ価値を与えるAIもあれば、ZendeskやAtlassianなど日常的には利用されず、価値が少ないケースも一般的。
- AIの急増は、新興企業よりも顧客基盤の大きい既存大手企業に恩恵をもたらすという予測
元Hubspot CROが語るデジタル時代で勝つ営業組織の方程式
logmi「営業職採用の過ちは「業界の経験」を重視しすぎること 元HubSpot社CROが語る、営業組織づくりの“定量的公式”」「メンバーが成長しないのは、採用と教育を任された管理者の責任 データを活用した“優秀な営業組織”の育て方」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
記事に登場するMark Roberge氏は、現在Harvard Business Schoolの講師であり、元Hubspot CROとして創業期から営業チームを支えてきた人物です。記事を読んでわかるのは、科学的なアプローチで営業活動や状況を分析することにこだわっていることと、買い手に寄り添った向き合い方を大切にしている点です。彼のHubspot時代の経験を中心に考えをシェアしてくださっているので、チェックされることをおすすめします。以下は、特に営業組織や営業メンバーの方が意識することについて、一部抜粋したものになります。
- 大企業のトップセールスを採用しても、スタートアップで活躍するとは限らない。自社にフィットする人物を採用すること。企業の状況に合わせて、成功に相関する技術や知識(属性)を整理すること。
- 「業界の経験」を重視しすぎてしまわないこと。製造業界であれば、製造畑の営業担当者を雇おうとするが、これが期待ほど機能しないことは、多数の分析が証明している。重要視しすぎてしまい、営業の基本的技術を過小評価しないこと。
- Gong社が実施した営業電話を分析した結果によれば、優秀な担当者は最初の営業電話で話す時間が短い。半分以上の時間は顧客が話している。成績が悪い担当者は電話中に話してばかりいます。「買い手が持つ視点」に目を向けること。営業とは、買い手の視点を理解し、自分が助けになれるかを判断すること。
真実を伝える方法
A16z「How to Tell the Truth | Andreessen Horowitz」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
リーダーシップにおいて、誠実さの重要性とその複雑さについてBen Horowitzがブログに書いています。要点は以下になります。
誠実さの認識
ほとんどの人は、自分自身を誠実だと考えているでしょう。では、同じように「完全に誠実な人は誰か?」と聞かれたら、答えにつまづくのではないでしょうか。誰もが自分は正直者だと信じているのに、同じ特徴を持つ人を特定するのが難しいというのはなぜなのか。実は私たちは、自分自身を欺いて、自分自身が誠実であり正直であると言っているだけのかもしれない。
真実の性質
真実を伝えることは、自然にできることではありません。人は、他人が聞きたいと思っていることを伝えようとすることがよくあります。真実を伝えるには、努力とスキルが必要です。
組織における信頼の重要性
リーダー、特にCEOにとって、不誠実は有害である可能性があります。組織の成功は、そのコミュニケーションの質に密接に関連しており、それは信頼に支えられています。従業員がCEOを信頼していれば、コミュニケーションはより効率的になり、実行が改善されます。
CEOのための誠実さの課題
「CEOが誠実であるべきだ」ということは明らかのように思えますが、現実には真実を伝えることが難しいこともあります。真実を伝えることがリスクのように思えるいくつかのシナリオが存在します。たとえば、売上の低下、潜在的なリストラ、キーとなる役員の退職、プロダクトの欠陥、評価の問題などです。
会社を破壊せずに真実を伝える方法
リーダーは、組織に害を与えることなく真実を伝える必要があります。これには、真実を受け入れ、それに意味を与えることが含まれます。たとえば、リストラの場合、リーダーは以下のことを明確に述べるべきです:
- 事実を明確に述べる
- 責任がある場合、状況がどのように生じ、再発を防ぐために何が学ばれたかを説明する
- その行動が会社の大きな使命のためになぜ重要であったかを強調する
会社の性格を定義する
リーダーは、困難な状況をイベントを明確にするだけでなく、組織の性格と価値を形成する機会として捉えるべきです。
エンタープライズ向けプランニングAI×SaaSを提供するo9 Solutions、$116M(約164億円)を調達
o9 Solutionsは、複数事業の統合した財務・売上成長計画、需要計画、サプライチェーン計画など、エンタープライズの様々な「プランニング」業務やその分析のためのSaaSを提供するインド発SaaSスタートアップ。顧客にはサムソン電子、Google、ネスレなど超エンタープライズ企業を抱えています。顧客企業の大幅な売上成長、運転資本の効率化、経費削減を支援しています。2022年のARR成長率はYoY +65%、直近の2023年Q2では+55%と堅調に成長。今回の資金調達では、General Atlantic傘下のBeyondNetZeroがリードし、既存投資家のKKRやGeneration Investment Managementも参加しました。本ラウンドの評価額は$3.7B(約5,200億円)で前回より評価額を+$1B上げて実行しました。
クリエーター特化の法人カード+ファイナンス管理SaaS Karat、シリーズBで総額$70M(約100億円)を調達
200万人以上のクリエーターは年間10万ドル以上の収入を得ており、パートタイムでコンテンツで収益を上げられるクリエーターは4,670万人以上います。しかし多くのクリエーターは、若年層で信用力が無いため、事業拡大に必要な資金を得ることができません。この課題を解決するために、Karatは高い限度額の法人カードと必要なファイナンス管理(月次会計、請求書発行、資金管理など)向けSaaSを統合して提供しています。創業者のEric Weiは、MetaでInstagram LiveのPMを務め、マッキンゼーやBlackstoneで働いた経験のある人物。今回のシリーズBでは、SignalFireリードでエクイティで$40M、追加TriplePoint Capitalからデットで$30Mを調達。この他に、Union Square Ventures、CRV、GGVなども参加しています。
エンタープライズ向けの「コンポーザブル」顧客データSaaSプラットフォーム Hightouch、$38M(約54億円)を調達
2018年創業のHightouchは、エンタープライズが異なるバックエンドのデータベースやシステム間で顧客データを同期するSaaSを提供するスタートアップ。創業者によると、現代のDWHのデータアーキテクチャの価値を見て、SegmentのようなCDPがなぜそうしないのか?疑問に思い、データ分析からビジネス価値を引き出すことを考えた顧客データ・プラットフォームを開発しました。現在までにSpotifyやNBAなどのブランドを含む、500社以上の顧客基盤を持っています。本ラウンドは、Bain Capital Venturesが評価額$615M(約870億円)でリード。その他にICONIQ Growth、Y Combinatorなどもこのラウンドに参加しています。
医療費決済・請求管理Fintech×SaaS Collectly、シリーズAで$29M(約41億円)を調達
アメリカでは紙の請求書などで医療機関の医療費の回収率は約55%と低水準になっていることが、病院経営の課題となっています。この課題を解決するために、Collectlyは、電子カルテや診療管理ソフトウェアと患者の請求業務を統合したSaaSソリューションを提供しています。同社の顧客である医療機関は、医療費の回収率を平均75%増加させ、未払い日数も通常の60-90日から12日に短縮するだけでなく、患者満足度も93%と向上させています。売上成長は前年比の3倍以上で、これまでに解約はゼロ。毎日30万人以上の患者が利用しています。今回のシリーズAでは、Sapphire Venturesがリードし、Y Combinatorなども参加しています。
テクノロジー企業のための戦略的経営管理SaaS Runway、シリーズAで$27.5M(約39億円)を調達
2020年創業のRunwayは、高成長のテクノロジー企業が財務から人事、営業、マーケティング、プロダクトに至るまでビジネス全体をクリアに可視化し、より良い意思決定を迅速に行うことを支援するSaaSスタートアップ。既存の会計システムや人事情報システムと接続することで、従来のスプレッドシートを直感的な財務モデリング、プランニング、レポーティングのワークフローに置き換えることができます。顧客にはSuperhumanやStability AIなどを抱え、Ripplingと緊密なパートナーシップを築いています。売上は前年比で10倍以上に成長する一方、バーンレートは$500K(約7,000万円)を切るレベルの効率的な成長を実現しています。本シリーズAは、Initialized Capitalがリードし、著名ソロキャピタリストのElad Gil氏なども参加しています。
■ 資金調達
建設業向けBPaaSを提供するフォトラクション、約17億円の調達
建設業向けのSaaS「Photoruction」と検査の準備や施工計画書の作成、工種別黒板管理などの建設業独自の業務プロセスを標準化するAI-BPOサービス(建設BPO)を提供しています。2024年4月に「働き方改革関連法」が適用され、生産性向上は喫緊の課題となっている中、建設現場の生産性を向上させるサービス提供を行なっています。Photoructionは大手ゼネコンをはじめとする20万を超える建設プロジェクトで導入されていますが、工事現場ごとに標準化された仕組みがない業務プロセスは効率化ができないという課題があったため、SaaSとAI-BPOを組み合わせたBPaaSを提供しています。この資金調達には、SMBCベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、ウィング・キャピタル・パートナーズ、GMO VenturePartners、みずほキャピタル、IFAC、北陸地域ベンチャーファンド、ヒューリックスタートアップ、山口キャピタル、大分ベンチャーキャピタルなどが含まれています。
外国人労働者の課題解決に取り組むCROSLAN、資金調達を実施
特定技能外国人管理クラウドサービス「SMILEVISA」を提供しています。特定技能外国人の管理や在留資格の申請をクラウド上で自動化し、受入れ企業の特定技能外国人受け入れを支援します。出入国管理局の発表によれば、在留する特定技能外国人は15万人を超え、初年度と比較して38倍に増加しています。また、特定技能2号は介護を除く全11分野に拡大されることが決まり、市場の拡大と期待が高まっています。この資金調達に参加した投資家は、STATION Aiです。
■ IPO / M&A
gooddaysホールディングス、スカイファームを持分法適用関連会社化へ
gooddaysホールディングスは、ITソリューション等の提供や不動産仲介サイトの運営を行っており、子会社オープンリソース株式会社が、クラウド環境でのRedx(リデックス)クラウドPOSを提供しています。スカイファームは、デリバリー・モバイルオーダー事業や次世代オーダープラットフォーム事業を展開しており、商業施設向けトータルオーダーマネジメントシステム「NEW PORT」もクラウドサービスとして提供しています。本件によりgooddaysホールディングスは、「Redx」と「NEW PORT」を組合せることでRedxのコンセプトである「ネットとリアルの容易な融合」の実現を見込んでいます。
エフ・コード、マイクロウェーブの新設分割会社を子会社化へ
エフ・コードは「CODE Marketing Cloud」等のCX向上SaaSの提供やDX戦略設計・実行支援、デジタルマーケティング支援を行っています。マイクロウェーブは、Webコンサルティングやシステム開発事業を行なっています。本件M&Aによりマイクロウェーブのデジタルマーケティングの技術やノウハウを活用し、グループの収益性向上や競争力強化を図る予定です。
エフ・コード、マイクロウェーブの新設分割会社を子会社化へ|M&Aニュース
メドレー、ファクタリング事業を展開するGCMを子会社化へ
人材プラットフォーム事業、医療プラットフォーム事業を行うメドレーが、医療機関・介護施設等向けのファクタリング事業等を展開するGCMを子会社化しました。メドレーは医療ヘルスケア領域におけるグループのより幅広いニーズに対応するとともに、顧客基盤を活用した事業拡大等のシナジー創出を図る予定です。
- Appleが生成AI「AppleGPT」の自社開発を急ぐ(Bloomberg)
- Metaが生成AIでMicrosoftと提携を発表(日本経済新聞)
- 米バイデン政権がAmazon、Google、Meta、MicrosoftとAIのセーフガードを合意と発表(WSJ)
- Stability AIは6月26日、画像生成AIの最新モデル「Stable Diffusion XL」を発表(ASCII)
- 東大発AIスタートアップLightblue、国内公開モデル最大規模の日本語LLMを一般公開(PRTimes)
- GPUクラウドプロバイダーのLambda LabsがNVIDIAから$300Mの追加調達を検討中(The Information)
- 大手保険会社向けに画像認識AIで自動車や物の損傷を遠隔評価するTractableが、シリーズEで$65Mを調達。投資家はSoftbank Vision Fundなど(TechCrunch)
- 11社のスタートアップが合同してできた、AIとブロックチェーンによるメタバースのインフラを提供するFutureverseが、シリーズAで$54Mを調達。投資家は暗号通貨投資会社10T Holdingsなど(Bloomberg)
- エンタープライズがLLM向けデータの準備を支援するUnstructuredが、シリーズAで$25Mを調達。投資家はMadrona、Bain Capital Venturesなど(TechCrunch)
- 金融業界向けにより良いLLMの構築を支援するCognaizeが、$18Mを調達。Argonautic Venturesがリード投資家(TechCrunch)
- MLOpsツールと分散型AI計算ネットワークを組み合わせるFedML、シードで$11.5Mを調達。投資家はCamford Capitalなど(TechCrunch)
- 投資家向けにリサーチ・投資仮説の構築を支援する生成AIを開発するPortrait Analyticsが、$7Mを調達。投資家はUnusual Ventures、.406 Venturesなど(Yahoo! Finance)
- エンタープライズ向けにAI、LLM、分析ソリューションの精度向上を支援するCleanlabが、シードで$5Mを調達。リード投資家はBain Capital Ventures(Businesswire)
- 生成AIを用いてSEOに最適化されたコンテンツ生成を支援するSpeedyBrand、$2.5Mを調達。投資家はGVとY Combinator。評価額(Post Money)は$15M(TechCrunch)
- AIと人間の専門知識を活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の実現を目指すGushwork.aiが、プレシードで$2.1Mを調達。投資家はLightspeed Venture Partners、B Capital、BEENEXTなど(TechCrunch)
- AIエージェントでワークフローの自動化を支援するReworkd AIが、プレシードで$1.25Mを調達。投資家はPanache VenturesとY Combinator(The SaaS News)