現代のCSリーダーのためのチャーンを理解し、行動計画を立てる方法
Bessemer Venture Partners「Understanding churn and building an action plan to fix the proverbial “leaky bucket”」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
建設業特化バーティカルSaaSの雄Procoreでグローバル・カスタマーサクセスを率いるゲイブ・ミラー=スミス氏による顧客リテンションを高めるための取り組みについて解説した記事。興味深い点が、非ICP(ターゲット外の)のチャーン分析の重要性や部門横断の委員会設置、Time to Value(顧客がプロダクトに価値を感じるまでの時間)の短縮などについて触れられています。主な示唆は以下の通りです。
- SMBで健全なチャーンとは?
SMBにおけるICP(ターゲット)顧客では、「Good 10-15%、Better 5-10%未満、Best 5%未満」が妥当なチャーンレート - 非ICPでもチャーン分析は必要
非ICPでもチャーンレートが20-30%になる場合、ICPで無いとしても詳しく調べることが必要です。Procoreでは、サーベイでドロップダウンリスト(1. 価格、2. 装着の欠如、3.機能不足、4.競合乗り換え、5. 廃業・合併)形式でデータ収集に取り組んでいるとのことです。 - カスタマーサクセスはチームスポーツ
チャーンを減らすプログラムは、全社で取り組むべきです。まずはデータ分析で特定のセグメント、業界、地域、解約タイミングで発生するチャーンの共通理由を見つけ出すこと。1年目の解約が多い時は、値引きし過ぎか、Time to Valueに時間がかかっていることを意味します。 - Time to Valueを短縮する取組み
Procoreの課題の1つは、Time to Valueに60日かかっていた点です。それを30日に半減させるために、部門横断の委員会で、(1)プロセスの自動化、(2)認定プログラムの構築、(3)メールでのドリップキャンペーンを実施しました。 - データを深く掘り下げ、不採算顧客に見切りをつける
ICP全体でチャーンが低い状態でも、地域や業種、支出別などの切り口で分析すると、問題が隠れていることがあります。チャーン対処により、ICPが研ぎ澄まされ、チームが時間を投資すべき顧客を決定することに役立ちます。
SaaSユニコーンFrontの価格戦略のリスク回避法
Mathilde Collin氏「How we de-risked our SaaS pricing strategy」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSスタートアップにとって、プライシング(価格設定)は常に悩み続けるトピックの1つです。Sequoia Capitalなどから調達したSaaSユニコーンFront 創業者兼CEO Mathilde Collin氏による、同社の初期のプライシングに関する価格改善の取り組みや考え方を解説した記事を紹介します。Frontの価格設定は、フリーミアムからスタートし、繰り返し変更をしました。そこでの学びは以下の通りです。
- フリミアムからエンタープライズプラン追加
最初のトラクションを得た後、フリミアムを止めて、“テーラーメイド” のエンプラプランを追加しました。2年間で3回変更を実施し、価格設定において(1)LTV/CAC、(2)市場でのポジショニング、(3)買い手のペルソナ、(4)価格 v.s. 価値を注視して変更を加えました。 - 価格設定を頻繁に繰り返す価値
Intercomのチームとの対話から、「価格設定を頻繁に繰り返すことで、何が効果的で何が効果的でないかについて、より多くのデータを得る」と気付き、年1回から3週間に1回にまで、価格変更をできるように開発体制を変えました。少数の顧客で小さく変更を繰り返すことで、失敗の反動を減らすだけでなく、少しずつ変化させていくようにしました。価格設定を試さないということは、商品の価値や成長可能性を知ることができないということです。 - 実験的価格変更には、顧客の行動データと売上データの両方をチェック
最初は、顧客が何に価値を感じているか、「価値指標」を明確にし、簡単なアンケートでデータを集めることから始めます。続いて、実験する頻度(2ヶ月に1度を推奨)を決め手、価値指標がどう変化するかを調べます。コホート分析では、売上、エンゲージメント、リテンションの3つに注意が必要です。分析ツールが無い場合は、Amplitudeなどのツールの利用を検討してみてください。
ダウンマーケットでのSaaS企業のプライシングの変化
Anh-Tho Chuong氏「Pricing software products in a down market」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
シート(ID数)での課金体系は、SaaSでは一般的です。しかし、近年のレイオフの波によって、組織的に対応可能な総シート数に影響を与えています。また、シート課金は、近年のAI技術の発展とデータのネットワーク効果による、長期的な価値創造を制限してしまうため、長期的には好ましくないと考えられています。本記事では、このような環境下で、SaaS課金におけるビジネスモデルの見直しについて解説しています。
- Intercomの例
シート課金からの脱却を図るために、請求可能なメトリクス(Billable metrics)に基づいた「アドオン」を複数取り揃えるようにしました。 - Slackの例
Slackは「公平な請求ポリシー」を制定し、シート数ではなく、アクティブユーザー数に基づく請求に変更しています。これにより、前もってシート数を決めずに使えるので、買い手の心理的障壁を下げ、コストを押さえながら組織全体でツールを試すことができます。 - Crew(ATS)の例
HRテックのATSではシート数課金が主流でしたが、景気後退により価値基準(CRM上の人材数、求人数によるハイブリッド)に切り替えたクリエイティブな例です。
コンテクストを紐解き、お客さまの真のニーズを見つけ出す
Lenny's Podcast「The ultimate guide to JTBD | Bob Moesta (co-creator of the framework)」のPodcastの一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
「ジョブ理論」誕生の中心的役割を果たしたBob Moesta氏のPodcastをご紹介します。ニーズ探索のフレームワークとして利用される方も多いかと思いますが、改めてお客様の考え方を見直すきっかけになります。ここでは、Bob氏の話している内容をまとめたものを共有させていただきます。
- ジョブ理論に関する誤解
このフレームワークに関する最大の誤解の1つは、ペインとゲインを中心に展開するという考え方です。実際には、コンテクスト(文脈)とアウトカム(成果)を重視していることを忘れてはなりません。 - 不合理な決断とコンテクストとの関係性
誰かの話や決断が不合理であると考えられるとき、それは多くの場合、完全なコンテキストが分かっていないからです。完全なコンテクストを認識することで、一見不合理な決断も理解できるようになります。「誰かが自分の腕を切り落とす」ような、通常は誰もそのような思い切った決断をしたがらないケースにおいても、ある状況下では(適切な文脈があれば)人はそのような選択をします。ジョブ理論の目的は、人々が行動を変える可能性のある状況やコンテクストを見つけることです。
フルスタック・セールステック・プラットフォーム Appollo.io、シリーズDで$100M(約146億円)を調達
現状の市場開拓のためのセールステック・スタックは、セットアップが複雑で、統合が難しく、大多数の企業にとってコスト負担の大きい分野です。Appollo.ioは、営業インテリジェンスと実行ワークフローに、2億7,000万人以上の見込み客リストを持つ企業間取引バイヤー・データベースと組み合わせたプラットフォームを提供しています。主な競合はZoominfoですが、Zoominfoのプロダクトは買収によって拡張してきたため、顧客体験においては劣ると、Appollo.ioは指摘しています。今回ラウンドの投資家は、Bain Capital Ventures(リード)、Sequoia Capital、Tribe Capitalなど。評価額は前回の約2倍の$1.6B(約2,400億円)。
エンタープライズ向けリベニュー・イネーブルメントを実現するSaaS Mediafly、 $80M(約117億円)を調達
Mediaflyは、B2Bエンタープライズ企業のGTMチームが買い手のエンゲージメントを高め、価値を定量化することで、営業活動のパフォーマンスを継続的に最適化するための包括的な売上実現の支援をするプラットフォームを提供しています。直近18ヶ月で顧客数を164%増加させており、ネスレ、ハイネケン、Adobeなどのグローバル企業で導入されています。営業のみならず、マーケティング、カスタマーサクセス、イネーブルメント、オペレーション部門に渡るまで利用されています。今回ラウンドの投資家は、BIP Ventures(リード)、Boathouse Capitalなどです。
獣医師・動物病院向けオールインワンSaaS Otto、 シリーズBで$43M(約63億円)を調達
Otto(旧社名 TeleVet)は、診療スケジュール管理、決済、デジタル処方箋発行などを包括的に提供するバーティカルSaaSスタートアップ。動物病院でよく利用されている診療管理システム(Cornerstone、Neo、AVImarkなど)ともシームレスに統合されています。ペット人口は爆発的に増加する一方で、動物病院の数は減少しており、獣医師のバーンアウト問題は深刻です。同社の顧客数は600%に増加しており、8,000クリニック以上に導入されています。2025年までに黒字化を見込んでいます。本ラウンドの投資家は、シリーズAをリードしたMercury Fundが再びリードしました。
企業のコンプライアンスワークフローを最適化するSaaS Hyperproof、 $40M(約58億円)を調達
Hyperproofは、マイクロソフトでWindows Live IDを開発したAnger氏が創業した企業向けコンプライアンス管理を支援するスタートアップ。2018年に、コンプライアンスデータの記録システムとコラボレーション、作業管理システムを組み合わせたプラットフォームから提供を開始。現在では、約85のコンプライアンスやガバナンスの枠組みをカバーしています。顧客社数は前年比130%、売上高は前年比260%増と急成長しています。本ラウンドの投資家は、Riverwood Capital(リード)とToba Capitalの2社です。評価額は9カ月前の前回ラウンドから2倍に拡大しました。
国際決済を実現するオープン・バンキング・プラットフォーム Ivy、 シリーズAで$20M(約29億円)を調達
ドイツ・ベルリン発のIvyは、銀行APIを使って、顧客のために様々な通貨に対応した国際決済サービスを構築するオープン・バンキングを実現するスタートアップ。オープン・バンキングによる決済基盤は、欧州だけでも400社以上のプロバイダーが存在していますが、その多くが単一通貨による国内取引にしか対応できていません。現在、Ivyは50の地域で約5,000の銀行が同社のプラットフォームを利用しており、合計5億もの銀行口座をカバーしています。本ラウンドのリード投資家は、Fintech投資で有名なValar Venturesです。
■資金調達
セールスエンゲージメントクラウドを提供するログポート、シードで1億円調達
商談数を飛躍的に向上させることを目的としたクラウドサービス「シナリオリード」を開発、提供しています。営業アプローチを科学し、最適な営業アクションを提案することが可能です。これまでクローズドで一部のお客様へのみ先行販売を行っていましたが、現在は正式版が出ています。マネーフォワードやSchooなどが利用しているお客さまです。本ラウンドにはインキュベイトファンドが参画しています。
宿泊施設向けオールインワンサービスを提供するCheck Inn、プレシリーズAで1億円調達
Check Innは、在庫や料金を調整しながら予約を一括管理する「サイトコントローラー機能」、宿泊施設の現場作業からマーケティングまで一貫して行うPMS(Property Management System)機能、簡易な予約のフローにより離脱率低下を実現する「自社予約システム」を搭載したオールインワンサービスを提供しています。宿泊施設が抱える複数システム利用によるコスト増、業務の煩雑さ、宿泊者に対するUX向上を改善していきます。本ラウンドにはDNX Ventures、サイバーエージェント・キャピタルが参画しています。
AI映像対話システムを提供するシルバコンパス、シリーズAエクステンションラウンドで約2.9億円調達
AI映像対話システム「Talk With」は対話をメインとする対人業務支援を目的としたサービスです。BtoCビジネス(特にエンターテインメント、ヘルスケア、教育、観光など)へのサービス展開を想定しています。2023年9月には、リコーとの共同開発事業である「1on1トレーニングシステム」をTalk Withで実現し、公開に至っています。本ラウンドでは、クオラス、TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーション、ディ・コンプレックスほか、計4社と個人1名から調達を実施しています。
■IPO / M&A
メディカルインフォマティクス、子会社のOkitell365を吸収合併へ
メディカルインフォマティクスは、在宅医療用クラウド型電子カルテ「homis」や訪問看護用電子カルテ「homis Nursee」をはじめ、アウトソーシングやコンサルティングなど各種サービスを開発・展開している企業です。Okitell365は、在宅医療クリニックや訪問看護ステーションのスタッフが日々の診療や看護に専念するための医療・看護を専門とした「メディカルリモートデスク」や、24時間365日対応可能な在宅医療・訪問看護ステーション専門のコールセンターの運営、書類発送やデータ入力業務の代行サービスを展開しています。本合併により、全国の在宅医療クリニックや訪問看護ステーションへサービス提供からサポートまで一気通貫で対応できる体制を構築していきます。
キングソフト、子会社ワウテックと合併へ
キングソフトは、セキュリティソフトをはじめ、総合Officeソフトを提供するほか、メディア・コンテンツ事業、完全自立走行型のサービスAIロボットを取り扱うAI事業等を行っています。ワウテックは、ビジネスチャット・社内SNS「WowTalk(ワウトーク)」、クラウド型オフィスソフト「WPS Cloud Pro(ダブルピーエスクラウドプロ)」、クラウド型受付システム「WowDesk(ワウデスク)」、および法人向け名刺管理ソリューション「CAMCARD BUSINESS(キャムカードビジネス)」といった法人向けITソリューションの開発、提供を行っています。
- OpenAIがAPI公開などで売上急成長。今後12ヶ月で売上$1Bを超える見込み(The Information)
- Google CloudとNVIDIAが新しいAIインフラとソフトウェアを発表(80.lv)
- Google DeepMindが生成AIで作られた画像を識別する「SynthID」を発表(DeepMind)
- Google、生成AI新興企業の半数以上をクラウド顧客に獲得(Bloomberg)
- IBMとSalesforceが提携し、信頼できるAIの企業への導入加速を支援(PR Times)
- KDDIとAWSが連携 自治体ターゲットの生成AIスタートアップを支援(IT Media)
- DataRobot、新たに生成AI関連のサービスを提供開始(PR Times)
- 米ウォルマートが従業員向けに生成AIアシスタントを提供(Insider)
- AI21 Labs - イスラエル・テルアビブ発のテキスト生成AIツール。シリーズCで$155Mを調達。評価額は$1.4B。投資家はWalden Catalyst, Pitango, SCB10X, b2venture, Samsung Nextなど(TechCrunch)
- Elemental Cognition - ライフサイエンス、金融、公共セクターなど向けの高度な生成AIソリューション。シリーズBで$60Mを調達。投資家はBridgewater Associates, Breyer Capital, AME Cloud Ventureなど(FINSMES)
- Aily Labs - グローバル大企業向けの意思決定支援AI。シリーズAで€19Mを調達。リード投資家はInsight Partners(PR Newswire)
- Tavus - Sequoia Capitalが出資する企業向け生成AIビデオ作成ツール。シリーズAで$18Mを調達。評価額(Post)は$80M(The Information)
- Ideogram - カナダ・トロント発のテキストから画像イメージを生成するツール。シードで$16.5Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz, Index Venturesなど(FINSMES)
- Context.ai - 大規模言語モデル(LLM)活用アプリに特化したプロダクト分析ツール。$3.5Mを調達。投資家はGoogle VenturesとSaaSブログで有名なTomasz Tunguz率いるTheory Ventures(BusinessWire)
- Alias Technologies - マルチモーダルAIシステムでソーシャルメディアアプリを開発。シードで$3Mを調達。投資家はKhosla Ventures, ピーター・ティール氏など(FINSMES)