なぜ投資家はLTV/CACを重要視するのか?
A16z「Why Do Investors Care So Much About LTV:CAC? | Andreessen Horowitz」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaS業界では、よく顧客の生涯価値(LTV)が顧客獲得コスト(CAC)の3倍以上になれば、そのSaaS企業が営業・マーケティング投資に対して効率的なリターンを得ているベンチマークとして利用されます。特に現状のような「効率的な成長」が求められるマーケット環境では、より重要です。結論から言うと、「LTV/CACが高い」と言うことは、バリュエーションが高いため、投資家は重視します。LTV/CACが高いということは、より高いマージンを得られるということです。aaS企業は最終的にキャッシュフローをどれだけ生み出すかで評価されるため、利益率が高い程、バリュエーションは高くなります。a16zによる本記事では、「LTV/CACが高い」ことが財務的に何を意味するか?を詳細に解説しています。
- LTV/CACが高い=マージンが高い - a16zの分析によると、粗利率が高い企業ほど、事実としてR&D(研究開発費)とG&A(一般管理費)により投資する傾向があります。仮にこの2つのコストの比率が一定であれば、営業&マーケティング投資効率が良い程、利益率も高くなります。実際に、LTV/CACが2x→3xに改善すれば、粗利ベースの営業利益率は、+17%も改善します。
- マージンが高い→マルチプルが高くつく - 粗利が同じで、LTV/CACが2xの事業と3xの事業では、3倍以上の評価が付きます。5x以上であれば、5倍以上の価値があることになります。
粗利率の異なる複数プロダクトの合計ARRの示し方
Christoph Janz氏「Apples plus oranges?」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
欧州きってのSaaS VC「Point Nine Capital」、クリストフ・ヤンツ氏による記事。バーティカルSaaSスタートアップでは、複数プロダクトを扱うケースがほとんどです。そこで、決済機能のような粗利率が大きく異なる複数の売上を合算して、全体のARRと扱うケースがありますが、粗利率の低い決済売上が大きくなると、全体の粗利率が低くなるため、通常のソフトウェアARRと見なされなくなります。場合によっては、SaaSではなく、Fintechとしてみなされることがあります。この課題に対して、2つのアプローチをこの記事では提案しています。
- ソフトウェアARRと決済ARRを粗利率と共に分解する
- 粗利調整後ARR(=ソフトウェアARR+決済粗利率/ソフトウェア粗利率×決済ARR)で計算する
業績評価におけるTips(評価者 / 被評価者両方の視点から)
「Elevate Your Performance Review Conversations with these 12 Expert Tips」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
業績評価は、評価する側もされる側も、両方緊張感を持ってそれぞれが相対することになります。スタートアップの世界においては、マネージャーの経験が浅い中で評価をすることもあり、自信を持ってフィードバックができるか懸念を持つ人もいるのではないでしょうか。また、被評価者になる方々も、新しい環境に適応できずうまく成果を上げられない心配を抱えたり、多くのフィードバックを受けて整理ができなかったりするケースもあるのではないでしょうか。
今回の記事は米ベンチャーキャピタルのFirst Roundがさまざまなプロフェッショナルのインタビューを通して評価者と被評価者両方が参考にできるフレームワークやメソッドを取りまとめたものになります。
- 「自分専用プレスリリース」を書く自分自身の能力をアピールする手段として、StripeとFigmaの初期の従業員として活躍していたBrie Wolfson氏は、自分のプレスリリースを書くイメージで、達成したことや学んだこと、これからのやりたいことについてまとめていました
- 「4つの観点」からフィードバックするAirbnbでPMを務めたLenny Rachitsky氏は、マネージャとしてフィードバックをする際に「Accomplishments(達成事項)」「Superpower(優れた能力)」「High-level feedback(ハイレベルのフィードバック)」「Development areas(進化できる領域)」の4つの観点を用いて部下と会話していました
- 一歩下がって部下のキャリア観を整理する部下にフィードバックをする前に、改めて彼らの過去や未来のことを理解すること。モチベーションや価値観、突き動かしているものを理解しつつ、キャリアのゴールに到達した時のイメージを具体化した上で明確なタイムラインとアクションプランを一緒に立てること。その上で、今の状況でできていること、もっと改善できることをフィードバックする
- ハイ・パフォーマーとの面談には必要以上に時間をかけること高いパフォーマンスを発揮している人たちは、会社の業績を大きく上げる可能性のある人たちです。本当にうまくいっている人がいたら、「どうすればもっとうまくいくのか?どうすれば彼らの成長を爆発させることができるのか」ということを考える時間も十分に割くこと
- 厳しいフィードバックは率直に言うオレオ・メソッド(ポジティブなフィードバックから始まり、次に厳しい指摘を投げかけ、最後にまたポジティブなフィードバックで締めることで、安心感を残す方法)を適用することで、場合によっては相手を安心させ、ストレスのかかる事態を和らげようとすることができます。しかし、必要に応じては厳しい指摘をダイレクトに投げかけることで、部下の成長を促すべきです
- 対人フィードバックとパフォーマンスフィードバックの方法は区別する対人(チームメンバーとの関わりに関するもの)のフィードバックをするときは、期待する変化を共有します。パフォーマンス(仕事の成果との関わりに関するもの)のフィードバックは、そもそも何をするべきかは具体的に指摘しません。説明責任と自律性は密接に関係しており、自分が取りうる責任に対して負うべき成果を自律的に考える形でフィードバックをすること
- 伝わるフィードバックを与えるために「ある質問」を投げかける自分では明瞭にフィードバックをしているつもりでも、実際は言いすぎていたり、逆に少なすぎたり、違うメッセージを送っている可能性があります。そんなときは「このフィードバックはあなたの心に響きますか?実際に受けてみて、率直にどう思いますか?」と聞いてみること
- うまくいったこと、いかなかったことの両面を指摘するその人の好きなことや得意なこと(逆に苦手なこと)の整合性を見出すことで、その人の「ベストバージョン」を見つけることができます。「振り返りの質問」と「今後に向けた質問」の両方をすること
- 3つのステップを踏んでフィードバックを与えるフィードバックを初めて与える人は、伝えることがごちゃ混ぜになることもある。効果的でないフィードバックを与えることは、最善の場合でも混乱を招き、最悪の場合では何も変化をもたらさない。まずは客観的な事実を伝え、次にそれがどのようなインパクトを与えたのかを共有し、最後に具体的にどうなってほしいかを伝えること
- すでにあるフレームワークを活用する「SBIフレームワーク」や「スタート・ストップ・キープ(もしくはコンティニュー)」など古典的なフレームワークがこれまで残っているには意味があります
- フィードバックに対して身構えないよう、逆に質問する厳しいフィードバックを聞くと、本能的に自分の行動を正当化しようと考えるが、これを学習の機会だと捉えて好奇心を持ってたくさん質問すること
- 受け取ったフィードバックを振り返る時にはフィードバックに対して賛同できなくても、まずはフィードバックをくれた人に感謝し、受け取ったフィードバックを振り返る時間を設けましょう。心の整理がついたら、フィードバックに同意するかどうかを冷静に評価することができます。フィードバックをくれた人にフォローアップして、自分の反省点を共有しましょう
Generative AIのセカンドアクト
Sequoia Capital「Generative AI’s Act Two」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米VCセコイアキャピタルによる生成AIが突入している「Act 2」についての記事です。主なポイントはこちら:
- AIがもたらした“興奮”は、ヒステリーに近い域に達し、突如すべての会社が「AIコパイロット」として自社をブランド化しはじめました。 これによって資金調達、AIエンジニアの獲得戦争、そしてGPUの調達が急増しました。そんな中、すぐに課題が浮上しました。 機械で生成されたIP、倫理、および規制に関する議論が目立つようになりました。 多くのAIプロダクトが期待に応えなかったため、生成的AIの実際の有用性についての疑念が広がりました。
- 初期の成功の兆候にもかかわらず、多くのAI企業はPMFや持続可能な競争優位性を欠いています。
- 生成AIの初期の段階(「Act 1」)は、技術に焦点を当てていましたが、今は「Act 2」に入ろうとしています。「Act 2」は、顧客の視点からのソリューションに焦点を当てています。
- 主なフォーカスは、お客さまの課題を最初から最後まで解決することです。
- 「Act 2」のアプリケーションは、その前身とは異なります。 基盤モデルだけに依存するのではなく、これらのモデルをより包括的なソリューションの一部として使用します。
- 新しい編集インターフェースが導入され、ワークフローと出力の品質が向上していきます。
SaaSにおける販売代理店戦略の整理
Bessemer Venture Partners「The GTM guide to building SaaS channel partnerships」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米VC Bessemer Venture PartnersによるSaaSにおける販売代理店チャンネルの開拓に関する記事をご紹介します。販売代理店戦略の類型を整理し、チャネルパートナーとの関係性をどのように構築していくべきかというガイドラインを明記してくれています。
- 付加価値再販業者 (VAR)
追加のサービス、カスタマイズ、または統合 (これは「付加価値」の部分) とともにベンダーの製品を再販するチャネル パートナー。 - 再販業者
会社の製品またはサービスを割引価格で購入し、マークアップで最終顧客に再販し、販売ごとに利益を得るチャネル パートナー。 - サービスパートナー
会社の中核サービスを補完し、顧客に完全なソリューションを提供するために、実装、トレーニング、コンサルティングなどの追加サービスを提供するパートナー。 - 紹介パートナー
アフィリエイトまたは代理店と呼ばれることもあるこれらのパートナーは、潜在的な顧客に会社の製品やサービスを推奨しますが、直接販売には従事しません。代わりに、彼らは通常、取引が成功した際の手数料または紹介料と引き換えに、見込み客を会社に紹介します。 - マーケットプレイス
これらは、企業が自社の製品とその統合ツールを紹介できるオンラインの目的地であり、より多くの潜在的な顧客にリーチできるようになります。チャネル パートナー プログラムは、企業が外部パートナーを活用して、市場リーチを拡大し、収益を拡大し、専門知識、業界知識、およびローカライズされたサポートを通じて顧客により多くの価値を提供できるようにする戦略的アプローチです。
ログデータを統合管理するサイバーセキュリティSaaS上場企業 Splunkを企業ネットワーク大手Ciscoが$28Bn(約4.2兆円)で買収合意
Splunkは、企業のサーバー、ネットワーク機器、アプリケーションなどの様々なマシンからのログデータを収集し、リアルタイムで可視化・分析するSaaSを提供する、米上場企業。2003年に設立され、2012年にNASDAQに上場しました。 今回、ルーターなどのネットワーク機器の世界最大手Ciscoが一株あたり157米ドルと高いプレミアムを付けて、Splunkを評価額$28Bnという大型の買収をする発表を行いました。買収により、CiscoはサイバーセキュリティSaaSへの進出を強化し、さらに今後のAIによる次世代サイバーセキュリティ市場をリードすることを目指しています。すでに両社の取締役会で今回の買収については合意済みで、買収完了は2024年第3四半期になる見込みです。今週は、米上場SaaS企業 CrowdstrikeによるBionic買収のニュースもあり、サイバーセキュリティSaaS業界に注目が集まっています。
ネットワークセキュリティSaaS Cato Network、評価額$3B(約4,400億円)超で$238M(約353億円)を調達
イスラエル発のCato Networkは、ネットワークセキュリティの中でも、SASE(Secure Access Service Edge。通称サシー)と呼ばれる分野のサイバーセキュリティSaaSを提供するスタートアップ。SASEとは、セキュリティとネットワークを単一のクラウドサービスに統合するというセキュリティフレームワークで、米上場SaaS企業としては、ZscalerやCloudflareなどがあります。Cato Networkは、1,900社以上で導入され、およそ67万人のリモートユーザーを抱えています。昨年にはARR$100Mの大台を突破しました。今回のラウンドでは、Lightspeed Venture Partners(リード投資家)、Softbank Vision Fund 2などから資金調達を実施しました。
イスラエル発の統合型HR SaaSユニコーン HiBob、シリーズDで$150M(約222億円)を調達
2015年に設立されたHiBobは、新入社員の入社ワークフローの自動化、タイムシート、休暇の承認管理、アンケートの実施など、HRチームが労働力を管理するために必要な多くのツールを提供するSaaSスタートアップ。6年連続で「3桁の売上成長」を達成したばかりで、従業員数は過去1年間で2倍の、370人以上を新規採用しており、急拡大しています。今回のシリーズDは、10ヶ月前の前回ラウンドから+50%上げた、$2.45B(約3,600億円)という評価額で実施しました。投資家は、General Atlantic(リード投資家)、Bessemer Venture Partnersなどです。HiBobの競合であるドイツのPersonioも、評価額$8.5Bで$200Mを調達しており、HR SaaSは投資家から注目され続けています。
軽量データベースDuckDB+分析SaaS MotherDuck、シリーズDで$52.5M(約78億円)を調達
MotherDuckは、DuckDBを商用化し、このデータベースに向けた分析ソフトウェアを提供するスタートアップ。グーグルのBigQueryの創業エンジニアである、ジョーダン・ティガーニ氏は、企業のデータベース・ワークロードの大半が1GBから10GBという小規模なものであることを目の当たりにし、MotherDuckの設立を思い立ちました。現在MotherDuckのユーザー数は、2,000社を超えているとのことです。今回ラウンドは、Felicis(リード投資家)、Andreessen Horowitzなどから調達を実施しました。
エンタープライズの調達部門向けに調達管理SaaSからサービスまで提供するLevelpath、シード・シリーズAで総額$44.5M(約66億円)を調達
Levelpathの創業者2人は、2014年にRFPプロセス向けのSaaSを提供するスタートアップScout RFPを起業し、2019年にWorkdayに売却した連続起業家。企業活動において、調達に関するコストは比重が重いため、企業は常にコスト削減の余地を探し続けている一方で、調達プロセスは多岐に渡り、ブラックボックスになりがちです。Levelpathは、モバイルベースで、誰でも使い易いUI/UXで調達プロセスを統合的に実行、管理できるSaaSを提供しています。Levelpathは、シードでBenchmarkなどから$14.5M、今回のシリーズAでRedpointなどから総額$44.5Mを調達しました。
■資金調達
企業の契約業務DXを実現するMNTSQ、シリーズBで10億円調達
契約業務を変革するサービス「MNTSQ CLM」を開発、提供しています。契約書のドラフト作成から契約管理、データベース化まで、法務業務にまつわるすべてのデータを一元統合し、ナレッジマネジメントを実現します。現在IHIやISUZU、グリコなどの大手企業を中心に事業を展開しています。本ラウンドに参画した投資家はALL STAR SAAS FUNDになります。
企業の契約業務DXを実現するMNTSQ、シリーズBラウンドにて10億円の資金調達を実施
建機レンタルDXを推進するSORABITO、デットファイナンスで5.5億円調達
SORABITOは建機レンタルの営業をサポートするi-Rental注文や建設機械の点検業務を効率化するi-Rental点検、建機レンタルの受注業務を効率化する受注管理、建機レンタルの経営分析を支援するi-Rental AIなど各種サービスを提供しています。現 代表取締役 博多一晃氏は、2018年6月より取締役社長に就任し、全事業の戦略や意思決定において中心的な役割を担ってきています。今回は日本政策金融公庫、および静岡銀行から融資を受けて調達を実現しています。
AIスタートアップ Emiria、プレシードで調達を実施
自身用にカスタマイズしたAIエージェントを構築できるサービスを提供しています。テキストファイルやPDFファイル、Notion、Google Drive、Dropboxなどのソフトウェアと連携しデータを接続することで、ニーズに合わせたチャット型AIを構築し、ユーザーが処理したいタスクの解決を支援します。現時点ではベータ版を提供しています。本ラウンドにはEast Venturesが参画しています。
■IPO / M&A
会計AIを提供するファーストアカウンティング、東証グロース上場
ファーストアカウンティングは会計分野に特化したAIソリューションを提供しています。経理AIモジュール Robota(ロボタ)シリーズ、請求書処理プラットフォーム Remota(リモタ)、デジタルインボイス送受信サービス Peppol(ペポル)アクセスポイントのサービスの提供を通して、経理業務のDXを支援します。日本郵便や森永、JR九州など大手企業を中心とした取引実績を持っています。
ファーストアカウンティング、きょう東証グロース上場 会計AI提供:時事ドットコム
- マイクロソフトがウィンドウズとオフィス向けに生成AI投入へ(Bloomberg)
- 「Oracle Cloud Infrastructure Generative AI」限定提供開始、Cohereと連携(TechPlus)
- ソフトバンク、Arm上場後にOpenAIへの投資を検討(ZEENEWS)
- OpenAIが新しいテキストから画像へのモデル「DALL·E 3」を発表(OpenAI)
- グーグルが、テキスト生成とAI画像生成を組み合わせることに焦点を置いた「Gemini」を今秋発表予定(The Information)
- YouTube、AIでビデオ制作をもっと簡単にする新機能発表(YouTube)
- Helsing - ヨーロッパ発の防衛特化AI。シリーズBで$223Mを調達。評価額(Post)は€1.7B超の見込み。投資家は、General CatalystやSpotify創業者など(TechCrunch)
- Write - 企業向けフルスタック生成AIプラットフォーム。シリーズBで$100Mを調達。リード投資家は、ICONIQ Growth(TechCrunch)
- Pryon - 企業データのインデックス化・分析AI。$100Mを調達。リード投資家は、U.S. Innovative Technology Fund(TechCrunch)
- Corti - 医療従事者向けのヘルスケア特化Co-pilot。シリーズBで$60Mを調達。投資家は、Prosus Ventures やAtomicoなど(TechCrunch)
- Paxton - リーガルプロフェッショナル向けの法規制に関するAIアシスタント。シードで$6Mを調達。投資家はWVV Capitalなど(FINSMES)
- Aspinity -ゼロ・パワーAIソリューション。シリーズBで$5Mを調達。投資家は、Anzu Partners, Birchmere Venturesなど(FINSMES)
- Pliable - エンジニア不要で、データ整理・活用支援を行うAI×SaaSプラットフォーム。シードで$2.5Mを調達。投資家は、Resolute Venturesなど(FINSMES)
- Catalyte - エンド・トゥ・エンドのAI活用型リスキリングプラットフォーム。シードで$1.5Mを調達。投資家は、Green Street Impact Partners(FINSMES)